空ガ晴れたら   作:ほろろぎ

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第五話 脅威:ヒーローでも敵いません!?

 突如ソラシド市に現れた謎の怪人──グロンギたちは、商店街やレストランを襲い食料品を根こそぎ奪い尽くしたあと、いずこかへと去っていった。

 幸いなことに市民への被害はなかったが、すべての店は営業することが不可能な状況におちいり、金銭的な打撃は大きい。

 

 そしてソラシド市から多くの食べ物を奪い取ったブタ種怪人ベ・ダブー・ダたちは、街はずれの廃倉庫へと集まっていた。

 倉庫内でベ集団の帰りを待っていたのは、彼らの支配者──カバの特性を持ったグロンギ怪人、『メ・ガバル・ダ』。

 ゲゲルの参加者の中で、ダグバの粛正から生き延びた唯一の個体である。

 

「ロゾデ・デビダバ」*1

 

 配下の帰りを待ちかねていたようにガバルが言う。

 その体は未だダグバから与えられた傷が治りきっておらず、()がれた表皮の下からは筋肉の組織が見え隠れしていた。

 

「ブギロ・ボザ。ブギロ・ボゾ・ジョボゲ」*2

 

 ガバルの言葉で、ダブーたちは街から略奪した大量の食糧を差し出す。

 と、ガバルは大口を開け、まるで何週間も飲み食いしなかったような勢いで、食料をむさぼり始めた。

 山のように積まれた数十人分の食べ物は見る間に減っていき、ものの数分でカバ種怪人の胃の中にすべて納まってしまう。

 

「ギギゾ。ズギヅン・ヂバサグ・ロゾデ・デビダ」*3

 

 本来の力を取り戻したガバルは、満足げに息を吐いた。

 重症だった怪我も、これまでに取り込んだ大量のエネルギーによって急速に(ふさ)がっていき、傷はあとも残さず消え失せてしまった。

 

「クウガ・ビボソガ・セロザジャ・ダグバ・パギバギ」*4

 

 ガバルはこらえきれないといった風に、グフフと品のない笑い声をもらした。

 それは、グロンギのトップであるダグバがクウガに倒され、いなくなったからだ。

 

「『バルバ』ロ・『ゴ』ンジャヅサロ・ギバギギラ……、ゴセグ・キュグキョブン・ジャリゾロ・ダサグ・ロボドバス!」*5

 

 ゲゲルの進行役であるバラ種怪人バルバ、そして先行するプレイヤーのゴ集団もすでにいない。

 目障りな存在がすべて消え去った今、メ・ガバル・ダの行動を制する者もまたいないということ。

 

 これを好機と見たガバルは、自らが「究極の闇をもたらす者」となることを宣言した。

 それはつまり、自身にルールを課す「ゲゲル」ではなく、好きなだけ人間を殺戮して回る権利を得た、ということである。

 

 暗闇の中でひれ伏すダブーたちを見て、ガバルはこれからやって来るであろう自らの天下を思い、ほくそ笑んだ。

 だが、そんな悪夢の世界などは決してやって来ない。

 それはこの世界に、まだヒーローというものが存在しているからだ。

 

 閉め切られていた廃倉庫の扉が、何者かによって開かれる。

 雨に濡れた肩を上下させながら立つのは、異世界からの来訪者──戦士である男、五代雄介。

 

「ボン・ビゴギ……ビガラ・クウガ・バ」*6

「ヨヨさんの言ってた通りだ。グロンギ全員集まってる」

 

 五代は家から出る時に、ヨヨからこの場所を教えられた。

 ミラーパッドに映っていた背景からヨヨが、怪人たちのたむろするこの倉庫の位置を割り出してくれたのだ。

 

「ゴロギ・ソギ。キュグキョブン・ジャリゾロダサグ・ラゲビ・ガゴン・ゼジャス」*7

 

 グロンギという種族にとって怨敵ともいえる五代を前に、ガバルは余裕の態度を見せる。

 これから起こることは、人間を殺してまわる前の、ちょっとした(たわむ)れだとでもいうように。

 

 五代は腰に手を当て、ベルト状の身体器官「アークル」を出現させる。

 やはり中央の霊石の傷はそのままだ。

 

 五代は自らの体を、戦うためのものに変えるためのポーズをとった。

 

「ぐっ……うぅ。変……身……ッ!」

 

 痛みを気合でねじ伏せて、戦闘形態へと変わるための言葉(キーワード)を叫ぶ。

 霊石「アマダム」が強い光を放ち、五代の体組織を強化された生体甲冑へと変化させていく。

 

 光が消え、超古代の戦士──クウガが今にその姿を現した。

 ガバルはその様を見て……あざける様な笑いを浮かべる。

 

「ゾグギダ・クウガ。ヅボグ・リジバギ・ララザゾ?」*8

 

 クウガの頭部──クワガタ虫を思わせる黄金の角は短く、体は本来の赤ではなく真っ白に退色していた。

 

「やっぱり、まだ『白』にしかなれないか……」

 

 両手を見つめ、五代は(くや)し気につぶやく。

 今のクウガは基本の戦闘形態「マイティフォーム」ではなく、それより一段劣る弱体化した状態、「グローイングフォーム」と呼ばれる姿なのだ。

 

 白のクウガは五代の心に戦いに対する迷いがあるか、アークルに不調がある時などになってしまう形態であり、今は後者の状況だ。

 

「それでも……やるしかないッ」

「ゴラゲダ・ヂパガ・ガデデギソ。クウガパ・ゴセグ・ジャス」*9

 

 体に不調があろうとも、クウガは果敢(かかん)に怪人に挑む。

 対するガバルは、配下のベ・ダブー・ダたちを下がらせた。

 数々のグロンギを打ち(やぶ)ってきたクウガを自らが倒すことで、名実ともに最強の座を得ようという魂胆なのだ。

 

「ボギ・クウガ! ゴセグ・ガギゴン・ギョグギャド・バス・メ・ガバル・ダ・ザ!!」*10

 

 メ・ガバル・ダは自分を、「最後の勝者となる」者だと名乗った。

 その意味は五代には伝わっていないが、グロンギが口上を述べる時は、自らの力に絶対の自信を持っている現れなのである。

 

 異世界から来た戦士と怪人、その戦いの幕が開けた。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 一方で、ましろもまた五代のあとを追いかけ、雨の降る街の中を自転車で疾走していた。

 家に残してきたソラとの会話が思い出される。

 

「ましろさんも、行くんですか……?」

 

 部屋を出ようとした時、ソラが言った。

 その瞳が揺らいでいるのは、なにも出来ない自分だけが取り残されることへの恐れか。

 

 ましろはソラを不安にさせないよう、いつもの柔らかな口調で言葉を紡ぐ。

 

「私が行ってもなにも出来ないんだろうけど……だからって、なにもしないままでいる、なんて出来ないから」

「なら、私も……!」

 

 起き上がろうとするソラを、ましろは制した。

 柔らかな温もりを感じたことで、ソラは今、ましろに抱きしめられているのだと気づく。

 

「私は戦えないから、ソラちゃんになにも言えない。言う資格がないと思う」

「ましろさん……?」

「でもね、これだけは言わせて」

 

 ましろはソラから体を離す。

 ソラの揺れる瞳をまっすぐ見据えながら

 

「世界の平和も大切だけど、友達のことも同じくらい大事だから」

 

 そう言って微笑(ほほえ)むと、ましろは自分の家を出た。

 

 少女は自分が無力であることを知っている。

 それでも、自分の大切な人たちのためになにかしたいと思った。

 その想い、願いは──きっと届くだろう。

 

 数十分も全力で自転車をこぎ続けて、ましろはようやく五代が向かった廃工場へとたどり着いた。

 全身雨でずぶ濡れだが、気にしている暇はない。

 工場の裏口。錆ついたドアから、ましろは恐る恐る中に入る。

 

「五代さん、大丈夫かな……」

 

 突然、ましろの横の壁が破壊された。

 壁を壊して倒れ込んできたのはクウガだった。

 ガバルの攻撃で白い装甲は歪み、所々が出血により赤く染まっている。

 

「五代さん!?」

「ぅ、ましろちゃん……!? なんでここに」

「私も、ただ待ってるだけじゃいやだから。なにか出来ることをやらなくちゃって」

 

 少女の真剣な瞳に五代は、危ないから帰れとは言えなくなってしまった。

 ガバルの足音が迫って来る。

 

「ゾグギダ・クウガ! ログゴ・パシバ!」*11

 

 グローイングフォームでは、「ズ」のグロンギにもまともには太刀打ちできなかった。

 相手がズより上の「メ」となれば、もはや力の差は明らかだ。

 このままでは、どうあがいてもクウガに勝ち目はない。

 

「……ましろちゃん」

「はい」

「危ないことを頼んでもいいかな?」

「はい!」

 

 五代の声には、ましろのことを見込み、自らの運命を託せるという信頼の響きがあった。

 ゆえに少女も、迷うことなく五代の頼みを即諾(そくだく)する。

 

 クウガの視線が、天井から垂れ下がる「高圧電線」に向けられる。

 電線は千切れ、先端からバチバチと火花が散っていた。

 

「あれを、俺の体に当てて欲しいんだ」

「えっ!? で、でもそんなことしたら、五代さん感電しちゃうんじゃ……」

「クウガ! ボバギ・バサ・ボヂサ・バサギブゾ!?」*12

 

 ガバルがすぐにでもやって来る。

 クウガは怪人の攻撃を受けて、思うように動けない。

 問答している場合ではないと悟ったましろは、火花を()けて電線をつかむと

 

「……えぇいッ!」

「う! ぐあぁぁッ!!」

 

 クウガの胸に、思いきり電線の先を押し当てた。

 クウガの全身が電気の(しび)れによって、ガクガクと痙攣(けいれん)する。

 

「五代さん!? ほ、本当に大丈夫なの!?」

「ああぁぁぁッ!」

 

 腰のベルト、アークルが反応した。

 霊石アマダムの色が、オレンジから金へと変色する。

 続けてクウガのボディーにも変化が訪れた。

 白い装甲の縁取りが金に染まり、全身からバチバチと(いかづち)のようなエネルギーが発散される。

 

「……ありがとう。おかげで力、戻って来たよ」

 

 起き上がったクウガは、ましろに礼を言った。

 

 クウガの姿は白と金──「ライジンググローイング」とでも言うべきフォームへと変化していた。

 ライジングとは本来、赤・青・緑・紫の四形態の上位の姿、いわゆるパワーアップした時の状態のことである。

 

 今、通常の四形態にもなれない五代は電気の力を使うことで、弱体化したグローイングの能力を底上げしたのだ。

 

 メ・ガバル・ダが、破壊された壁の向こうから姿を現す。

 クウガ ライジンググローイングが、対するように構える。

 ましろはクウガの背後で、彼に声援を送る。

 

「いくぞ!」

「ババデ・デボギ!」*13

「頑張れー! 五代さん!」

 

 クウガの右ストレートパンチが、ガバルの頬にヒットした。

 顔をのけぞらせながらも、怪人は笑っていた。

 

「ダギョグ・パヅジョブバ・ダダジョ・グザバ・ザグラ・ザザ」*14

 

 電気によって底上げされた力でも、元はグローイングフォームのもの。

 やはり赤のマイティフォームまでは届かないようだ。

 

 クウガはガバルの体に向かって、拳の連打を浴びせる。

 それもガバルは余裕で受け止めていた。

 

「ジャザシ・クウガ・ジョシ・ゴセン・ゾググヅ・ジョギ!」*15

 

 今度はガバルの拳がクウガの顔面をとらえた。

 クウガは大きくのけぞり、膝をつく。

 

 ガバルの腕がクウガのノドをガッチリとつかみ、その体を宙へと持ち上げる。

 クウガは首を絞められ、拘束をほどこうとするが怪人の力は一向に(ゆる)まない。

 持ち上げたクウガの体を、ガバルはサンドバッグを打つかのように拳で殴打した。

 

「ガフッ」

 

 クウガのマスクから血が吹き出る。

 ガバルはクウガの体を地面に叩きつけ、さらに蹴り飛ばした。

 クウガは地面を転がり、再び立ち上がると、怪人に挑みかかる。

 

 戦士の戦いを、ましろは瞳に涙を浮かべながら見ていた。

 

 今のクウガではグロンギに敵わない。

 それでも五代は、何度打ちのめされようが諦めず、怪人に立ち向かうことを止めない。

 それは彼に、守りたい、かけがえのないものがあるからだった。

 

「五代さん……クウガ……負けないで……ッ!」

 

 五代の想いがわかるから、ましろも逃げない。

 戦いからも目を背けず、ただひたすらに「ヒーロー」の勝利を信じていた。

 

 少女の背後に、揺らぐようにして大きな影が現れる。

 

「なんだ、あのクウガって奴、ずいぶんYOEEEのねん」

「! あ、あなたは……!?」

 

 ましろの友達、ソラ・ハレワタールと赤ん坊のエルをつけ狙う「敵」──カバトンがそこにいた。

*1
戻って来たか

*2
食い物だ。食い物をよこせ

*3
いいぞ。ずいぶん力が戻ってきた

*4
クウガに殺され、もはやダグバはいない

*5
『バルバ』も『ゴ』の奴らもいない今……、俺が究極の闇をもたらす者となる!

*6
この臭い……貴様、クウガか

*7
面白い。究極の闇をもたらす前に、遊んでやる

*8
どうしたクウガ。角が短いままだぞ?

*9
お前たちは下がっていろ。クウガは俺がやる

*10
来い、クウガ! 俺が最後の勝者となるメ・ガバル・ダだ!!

*11
どうしたクウガ! もう終わりか!

*12
クウガ! 来ないなら、こちらから行くぞ!?

*13
かかってこい!

*14
多少は強くなったようだな。だが、まだだ

*15
やはりクウガより、俺の方が強い!




プリキュアとクウガのクロスじゃなくて
ただのクウガの二次になっちゃってるなこれは…

次で共闘する…はずです
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