突如ソラシド市に現れた謎の怪人──グロンギたちは、商店街やレストランを襲い食料品を根こそぎ奪い尽くしたあと、いずこかへと去っていった。
幸いなことに市民への被害はなかったが、すべての店は営業することが不可能な状況におちいり、金銭的な打撃は大きい。
そしてソラシド市から多くの食べ物を奪い取ったブタ種怪人ベ・ダブー・ダたちは、街はずれの廃倉庫へと集まっていた。
倉庫内でベ集団の帰りを待っていたのは、彼らの支配者──カバの特性を持ったグロンギ怪人、『メ・ガバル・ダ』。
ゲゲルの参加者の中で、ダグバの粛正から生き延びた唯一の個体である。
「ロゾデ・デビダバ」*1
配下の帰りを待ちかねていたようにガバルが言う。
その体は未だダグバから与えられた傷が治りきっておらず、
「ブギロ・ボザ。ブギロ・ボゾ・ジョボゲ」*2
ガバルの言葉で、ダブーたちは街から略奪した大量の食糧を差し出す。
と、ガバルは大口を開け、まるで何週間も飲み食いしなかったような勢いで、食料をむさぼり始めた。
山のように積まれた数十人分の食べ物は見る間に減っていき、ものの数分でカバ種怪人の胃の中にすべて納まってしまう。
「ギギゾ。ズギヅン・ヂバサグ・ロゾデ・デビダ」*3
本来の力を取り戻したガバルは、満足げに息を吐いた。
重症だった怪我も、これまでに取り込んだ大量のエネルギーによって急速に
「クウガ・ビボソガ・セロザジャ・ダグバ・パギバギ」*4
ガバルはこらえきれないといった風に、グフフと品のない笑い声をもらした。
それは、グロンギのトップであるダグバがクウガに倒され、いなくなったからだ。
「『バルバ』ロ・『ゴ』ンジャヅサロ・ギバギギラ……、ゴセグ・キュグキョブン・ジャリゾロ・ダサグ・ロボドバス!」*5
ゲゲルの進行役であるバラ種怪人バルバ、そして先行するプレイヤーのゴ集団もすでにいない。
目障りな存在がすべて消え去った今、メ・ガバル・ダの行動を制する者もまたいないということ。
これを好機と見たガバルは、自らが「究極の闇をもたらす者」となることを宣言した。
それはつまり、自身にルールを課す「ゲゲル」ではなく、好きなだけ人間を殺戮して回る権利を得た、ということである。
暗闇の中でひれ伏すダブーたちを見て、ガバルはこれからやって来るであろう自らの天下を思い、ほくそ笑んだ。
だが、そんな悪夢の世界などは決してやって来ない。
それはこの世界に、まだヒーローというものが存在しているからだ。
閉め切られていた廃倉庫の扉が、何者かによって開かれる。
雨に濡れた肩を上下させながら立つのは、異世界からの来訪者──戦士である男、五代雄介。
「ボン・ビゴギ……ビガラ・クウガ・バ」*6
「ヨヨさんの言ってた通りだ。グロンギ全員集まってる」
五代は家から出る時に、ヨヨからこの場所を教えられた。
ミラーパッドに映っていた背景からヨヨが、怪人たちのたむろするこの倉庫の位置を割り出してくれたのだ。
「ゴロギ・ソギ。キュグキョブン・ジャリゾロダサグ・ラゲビ・ガゴン・ゼジャス」*7
グロンギという種族にとって怨敵ともいえる五代を前に、ガバルは余裕の態度を見せる。
これから起こることは、人間を殺してまわる前の、ちょっとした
五代は腰に手を当て、ベルト状の身体器官「アークル」を出現させる。
やはり中央の霊石の傷はそのままだ。
五代は自らの体を、戦うためのものに変えるためのポーズをとった。
「ぐっ……うぅ。変……身……ッ!」
痛みを気合でねじ伏せて、戦闘形態へと変わるための
霊石「アマダム」が強い光を放ち、五代の体組織を強化された生体甲冑へと変化させていく。
光が消え、超古代の戦士──クウガが今にその姿を現した。
ガバルはその様を見て……あざける様な笑いを浮かべる。
「ゾグギダ・クウガ。ヅボグ・リジバギ・ララザゾ?」*8
クウガの頭部──クワガタ虫を思わせる黄金の角は短く、体は本来の赤ではなく真っ白に退色していた。
「やっぱり、まだ『白』にしかなれないか……」
両手を見つめ、五代は
今のクウガは基本の戦闘形態「マイティフォーム」ではなく、それより一段劣る弱体化した状態、「グローイングフォーム」と呼ばれる姿なのだ。
白のクウガは五代の心に戦いに対する迷いがあるか、アークルに不調がある時などになってしまう形態であり、今は後者の状況だ。
「それでも……やるしかないッ」
「ゴラゲダ・ヂパガ・ガデデギソ。クウガパ・ゴセグ・ジャス」*9
体に不調があろうとも、クウガは
対するガバルは、配下のベ・ダブー・ダたちを下がらせた。
数々のグロンギを打ち
「ボギ・クウガ! ゴセグ・ガギゴン・ギョグギャド・バス・メ・ガバル・ダ・ザ!!」*10
メ・ガバル・ダは自分を、「最後の勝者となる」者だと名乗った。
その意味は五代には伝わっていないが、グロンギが口上を述べる時は、自らの力に絶対の自信を持っている現れなのである。
異世界から来た戦士と怪人、その戦いの幕が開けた。
◇ ◆ ◇ ◆
一方で、ましろもまた五代のあとを追いかけ、雨の降る街の中を自転車で疾走していた。
家に残してきたソラとの会話が思い出される。
「ましろさんも、行くんですか……?」
部屋を出ようとした時、ソラが言った。
その瞳が揺らいでいるのは、なにも出来ない自分だけが取り残されることへの恐れか。
ましろはソラを不安にさせないよう、いつもの柔らかな口調で言葉を紡ぐ。
「私が行ってもなにも出来ないんだろうけど……だからって、なにもしないままでいる、なんて出来ないから」
「なら、私も……!」
起き上がろうとするソラを、ましろは制した。
柔らかな温もりを感じたことで、ソラは今、ましろに抱きしめられているのだと気づく。
「私は戦えないから、ソラちゃんになにも言えない。言う資格がないと思う」
「ましろさん……?」
「でもね、これだけは言わせて」
ましろはソラから体を離す。
ソラの揺れる瞳をまっすぐ見据えながら
「世界の平和も大切だけど、友達のことも同じくらい大事だから」
そう言って
少女は自分が無力であることを知っている。
それでも、自分の大切な人たちのためになにかしたいと思った。
その想い、願いは──きっと届くだろう。
数十分も全力で自転車をこぎ続けて、ましろはようやく五代が向かった廃工場へとたどり着いた。
全身雨でずぶ濡れだが、気にしている暇はない。
工場の裏口。錆ついたドアから、ましろは恐る恐る中に入る。
「五代さん、大丈夫かな……」
突然、ましろの横の壁が破壊された。
壁を壊して倒れ込んできたのはクウガだった。
ガバルの攻撃で白い装甲は歪み、所々が出血により赤く染まっている。
「五代さん!?」
「ぅ、ましろちゃん……!? なんでここに」
「私も、ただ待ってるだけじゃいやだから。なにか出来ることをやらなくちゃって」
少女の真剣な瞳に五代は、危ないから帰れとは言えなくなってしまった。
ガバルの足音が迫って来る。
「ゾグギダ・クウガ! ログゴ・パシバ!」*11
グローイングフォームでは、「ズ」のグロンギにもまともには太刀打ちできなかった。
相手がズより上の「メ」となれば、もはや力の差は明らかだ。
このままでは、どうあがいてもクウガに勝ち目はない。
「……ましろちゃん」
「はい」
「危ないことを頼んでもいいかな?」
「はい!」
五代の声には、ましろのことを見込み、自らの運命を託せるという信頼の響きがあった。
ゆえに少女も、迷うことなく五代の頼みを
クウガの視線が、天井から垂れ下がる「高圧電線」に向けられる。
電線は千切れ、先端からバチバチと火花が散っていた。
「あれを、俺の体に当てて欲しいんだ」
「えっ!? で、でもそんなことしたら、五代さん感電しちゃうんじゃ……」
「クウガ! ボバギ・バサ・ボヂサ・バサギブゾ!?」*12
ガバルがすぐにでもやって来る。
クウガは怪人の攻撃を受けて、思うように動けない。
問答している場合ではないと悟ったましろは、火花を
「……えぇいッ!」
「う! ぐあぁぁッ!!」
クウガの胸に、思いきり電線の先を押し当てた。
クウガの全身が電気の
「五代さん!? ほ、本当に大丈夫なの!?」
「ああぁぁぁッ!」
腰のベルト、アークルが反応した。
霊石アマダムの色が、オレンジから金へと変色する。
続けてクウガのボディーにも変化が訪れた。
白い装甲の縁取りが金に染まり、全身からバチバチと
「……ありがとう。おかげで力、戻って来たよ」
起き上がったクウガは、ましろに礼を言った。
クウガの姿は白と金──「ライジンググローイング」とでも言うべきフォームへと変化していた。
ライジングとは本来、赤・青・緑・紫の四形態の上位の姿、いわゆるパワーアップした時の状態のことである。
今、通常の四形態にもなれない五代は電気の力を使うことで、弱体化したグローイングの能力を底上げしたのだ。
メ・ガバル・ダが、破壊された壁の向こうから姿を現す。
クウガ ライジンググローイングが、対するように構える。
ましろはクウガの背後で、彼に声援を送る。
「いくぞ!」
「ババデ・デボギ!」*13
「頑張れー! 五代さん!」
クウガの右ストレートパンチが、ガバルの頬にヒットした。
顔をのけぞらせながらも、怪人は笑っていた。
「ダギョグ・パヅジョブバ・ダダジョ・グザバ・ザグラ・ザザ」*14
電気によって底上げされた力でも、元はグローイングフォームのもの。
やはり赤のマイティフォームまでは届かないようだ。
クウガはガバルの体に向かって、拳の連打を浴びせる。
それもガバルは余裕で受け止めていた。
「ジャザシ・クウガ・ジョシ・ゴセン・ゾググヅ・ジョギ!」*15
今度はガバルの拳がクウガの顔面をとらえた。
クウガは大きくのけぞり、膝をつく。
ガバルの腕がクウガのノドをガッチリとつかみ、その体を宙へと持ち上げる。
クウガは首を絞められ、拘束をほどこうとするが怪人の力は一向に
持ち上げたクウガの体を、ガバルはサンドバッグを打つかのように拳で殴打した。
「ガフッ」
クウガのマスクから血が吹き出る。
ガバルはクウガの体を地面に叩きつけ、さらに蹴り飛ばした。
クウガは地面を転がり、再び立ち上がると、怪人に挑みかかる。
戦士の戦いを、ましろは瞳に涙を浮かべながら見ていた。
今のクウガではグロンギに敵わない。
それでも五代は、何度打ちのめされようが諦めず、怪人に立ち向かうことを止めない。
それは彼に、守りたい、かけがえのないものがあるからだった。
「五代さん……クウガ……負けないで……ッ!」
五代の想いがわかるから、ましろも逃げない。
戦いからも目を背けず、ただひたすらに「ヒーロー」の勝利を信じていた。
少女の背後に、揺らぐようにして大きな影が現れる。
「なんだ、あのクウガって奴、ずいぶんYOEEEのねん」
「! あ、あなたは……!?」
ましろの友達、ソラ・ハレワタールと赤ん坊のエルをつけ狙う「敵」──カバトンがそこにいた。
プリキュアとクウガのクロスじゃなくて
ただのクウガの二次になっちゃってるなこれは…
次で共闘する…はずです