グロンギ怪人たちが秘かに集結していた、ソラシド市の外れにある廃工場。
そこで戦う五代雄介──クウガを助けるために、虹ヶ丘ましろはやって来た。
カバ種怪人メ・ガバル・ダと戦うクウガを見守るましろの背後に、この世界での敵──カバトンが姿を現わす。
「あなたは!?」
「そう、俺様こそアンダーグ帝国のポップでキュートな暴れん坊、カバトン様なのねん!」
「もしかして……五代さんを狙って」
冷や汗を浮かべるましろ。
ライジングパワーを得たクウガだが、元がグローイングであっては「メ」のガバルには及ばない。
その上カバトンまで敵に回っては、もはやクウガに万に一つの勝機もなくなってしまう。
カバトンは、ニタリと冷ややかな笑みを浮かべた。
「カモン! アンダーグ・エナジー!!」
カバトンが地面の底から発生させた闇のエネルギーが、ましろの乗って来た自転車にまとわりつく。
車体は巨大化、ハンドルが二本の腕に変形し、前面のカゴには特徴的なモヒカンと真ん丸の目が発生する。
「ランボーグ!」
「五代さん、危ないッ!」
自転車ランボーグが、戦闘中のクウガとガバルに突進した。
ましろの叫び声に反応したクウガは、防御の体制をとる。
その横を通り過ぎ──自転車ランボーグはメ・ガバル・ダを跳ね飛ばした。
「え……なんで」
ましろはランボーグの予想外の行動に、呆気にとられたようにつぶやいた。
カバトンの方を振り返ると、納得がいっていないような、苦々し気な表情を浮かべている。
「俺様もお前らの手伝いなんてしたくねーが、そのグロンギって奴らは俺様たちにとっても厄介な相手になりそうなのねん」
「じゃあ……助けてくれるの?」
「ふん! 今回だけは仕方なく、なのねん」
腕を組み、そっぽを向きながらカバトンはそう言った。
どうやらクウガの味方をする気らしい。
クウガは親指を立て、カバトンに礼を言う。
「ありがとうございます! 一緒に戦いましょう!」
「俺様の作ったランボーグの強さを、見せつけてやるのねん!」
白と金のクウガ、そして自転車ランボーグが共通の敵に向かって走る。
先ほど吹き飛ばされ、起き上がってきたガバルに自転車ランボーグは再び突撃。
今度は正面からキャッチされ、ランボーグは動きを止められる。
が、動きが止まったのは怪人も同じ。
そこにクウガが飛び蹴りをかます。
「おりゃぁーッ!」
力をこめたライジンググローイングキックが、ガバルの頭部にヒットした。
しかし封印のためのエネルギーが足りず、浮かび上がった紋章はすぐに消えてしまう。
ガバルは自転車ランボーグを持ち上げ、クウガに投げつける。
クウガはこれを避け、ランボーグも体勢を立て直し、両者は再びグロンギに向かった。
「グドドグ・ギギゾ・ビガラサ!」*1
メ・ガバル・ダの力は、赤のクウガ──マイティフォームより上だ。
今、白と金のクウガとランボーグの両者が協力することで、ようやくこれに対応できるまでになった。
クウガはパンチとキックで、ランボーグは体当たりで、ガバルに徐々にだがダメージを与えていく。
「グゥ……」
そしてついに、怪人は片膝をついた。
「今だッ」
クウガはなにを思ったか、自転車ランボーグにまたがる。
「ランボーグ?」
「力を借りるよ」
クウガは自転車ランボーグに声をかけた。
ハンドルを握り、戦士の能力である「物質を変化させる力」を発動する。
自転車ランボーグの姿が、より
それはクウガが相棒としていた昆虫型の金属生命体「ゴウラム」と、彼の愛車「トライチェイサー」が融合した戦闘マシンによく似ていた。
「行こう、ランボーグくん!」
「ランボーグ!」
霊石アマダムの力が注ぎ込まれ強化された自転車ランボーグは、通常の数倍の力を発揮。
時速六百キロ近い速度でガバルに突っ込んでいく。
「グガッ!?」
目にもとまらぬ速さでの体当たりは、ガバルにこれまでで最大のダメージを与えることに成功した。
「うおぉ、やったのねん!?」
「ああダメ、それ言っちゃ……!」
後ろで見守っていたカバトンはガッツポーズ。
対して横のましろは口の前で指でバッテンをつくり、焦りの表情を浮かべる。
「ジョブロ・ジャデデ・ブセダバ……ジュス・ガンゾ・ビガラサ!!」*2
致命傷ではあるが、やはり倒すにいたるまでのエネルギーが、今のクウガには不足していた。
フラフラと立ち上がったガバルは、部下のブタ種怪人ベ・ダブー・ダたちを呼び寄せる。
「ゴラゲダヂン・グデデゾ・ジョボゲ。グオオォォーッ!!」*3
ガバルは雄叫びを上げる。
と、それに反応したダブーたちの体が黒いモヤと化した。
大口を開けガバルはそのモヤを吸い込みはじめる。
怪人の行動に、カバトンは疑問を浮かべた。
「なにやってるのねん、あいつ? 手下を消すなんて」
「違うよ……仲間の力を吸い取ってるんだ!」
ましろの言う通り。
ガバルはダブーの肉体を純粋なエネルギーへと変え、それを自らの体内に取り込んでいるのだ。
別の世界で、ダグバとは違う
「ラ、ランボーグ!?」
「う……こ、これは!?」
ダブーだけではない。
自転車ランボーグの持つアンダーグエナジーも、さらにクウガが得た電気の力すらガバルは奪い取った。
周囲にある、あらゆるエネルギーを吸収したメ・ガバル・ダの体が変化していく。
体の色は闇のごとき漆黒に染まり、肩やひじの皮膚が突起のように鋭く突き出る。
「あ、あの姿は……ッ」
五代の脳裏に、悪夢のような強敵の影が
「フハハ! ボセゼゴセパ・ダグバビ・ジデデビグス・キュグキョブボ・ヂバサゾ・ゲダゾ!」*4
かつてコウモリ種怪人は、ン・ダグバ・ゼバの力の破片を得たことで「究極体」と呼ばれる姿へと進化を果たした。
これはその時と同じ。
メ・ガバル・ダは配下とアンダーグエナジー、ライジングパワーの三つを取り込むことで、疑似的な究極体となったのだ。
「これは、結構マズいな……」
再びグローイングフォームへと戻ってしまったクウガが、仮面の下で冷や汗を浮かべながらこぼす。
ランボーグの姿も消え、残るのは元の自転車のみ。
「ねえ! もう一度あのランボーグってつくれないの!?」
「さっきのあれで力使い切っちまったのねん!」
ましろとカバトンも慌てふためいている。
メ・ガバル・ダ究極体は、
「ガゴヂパ・ログ・ゴパシザ。クウガ・ロソドロ・ビゲソ!!」*5
ガバルは両手を天に向けてかかげる。
そこに闇と雷のエネルギーが発生した。
閃光。そして轟音が、ソラシド市の一角に響いた。
◇ ◆ ◇ ◆
無差別に放たれた闇の雷によって、工場は木っ端みじんに吹き飛んでいた。
アスファルトは大地震でもあったかのように砕け散り、所々には火の手が上がっている。
工場の屋根は消し飛び、
「……あれ……?」
煙の中で、ましろはゆっくりと目を開けた。
かなりの近距離でガバルの攻撃に巻き込まれたはずだが、服や肌がススで汚れている以外には、どこにも怪我がない。
そのことを不思議に思ったが、答えはすぐに出た。
「五代さん!?」
そう、クウガがとっさに怪人の攻撃から盾となり、少女を守ったおかげだった。
代償としてクウガは爆発の衝撃をもろに食らい、変身が解け人間の姿へと戻っている。
「ましろちゃん……無事でよかった……」
五代は全身に大火傷を負い、皮膚はただれ血を流していた。
重症の五代を見てましろは青ざめる。
「あぁぁ、どうしよう、どうしよう……!」
ハンカチで傷口を抑えるが、真っ白な布はすぐに赤く染まっていく。
「ラザギ・バンドパ・ギヅドギ・ジャヅザ」*6
「ッ!」
倒れた五代の前に、ガバル究極体が
いよいよ彼の息の根を止めるつもりだろう。
五代はましろに視線を向ける。
「早く、逃げるんだ……ッ」
「……いやだ」
「ましろちゃん……!」
少女は両手を広げ、怪人と五代の間に割って入った。
異形の怪物を前にして、ましろの体はブルブルと震えている。
今にも折れてしまいそうな心を必死に奮い立たせ、彼女は自らを盾とする。
五代を守るように立ちはだかるましろを見て、メ・ガバル・ダはバカにしたように笑いだした。
「リントグ・クウガゾ・ラロスボバ! ゴロギ・ソギ!」*7
ガバルの手が、ましろの首に伸びる。
万力のような力でノドを絞められ、宙づりにされた少女は苦しげにもがく。
しかし子供の力では振りほどくことができず、ただ足だけがじたばたと空しく宙を切るだけだった。
「や……やめろ……ッ」
「ラズザ・ボンリントゾ・ボソギデジャス。ゴラゲゾ・ジャスボパ・ゴン・ガドザ」*8
気道がふさがれ、息ができない。
が、窒息する前に首の骨を折られるのが先かもしれない。
ましろの両目に大粒の涙が浮かぶ。
それは死を目前にした恐怖からか。
それとも、祖母や友達との別れを想ってか。
はたまた、なにも出来ない己への無力感からか。
意識がゆっくりと遠のいていく。
なにも考えられない。
その中でましろの口が、無意識に発した言葉は──
「ソラ……ちゃ……」
「ましろさんを離しなさいッ!!」
不意に受けた横からの衝撃で、ガバルはましろをつかむ腕を離す。
倒れ込むましろを抱きかかえるのは、少女の友人──ソラ・ハレワタールその人だった。
「ソラちゃん……来て、くれたんだ……」
「遅れてすみません」
ソラは横たわる五代の隣りに、ましろをそっと降ろした。
五代はソラの横顔に問いかける。
「もう、大丈夫なの?」
「……いえ、まだ戦うのは怖いです」
正直に答えるソラの体は、やはり小刻みに震えていた。
だが少女の瞳には、これまでのような迷いはもう見えない。
ソラは究極体となったガバルを、キッと睨みつけた。
「怖いけど……これ以上こんな奴のために、ましろさんの涙は見たくない! 彼女には、ずっと笑顔でいて欲しいんです!」
少女の覚悟の気持ちを受け、腰にさげていたミラージュペンが変身アイテムであるスカイミラージュへと変化する。
「だから、見ていてください。私の……『ひろがるチェンジ』!!」
ソラ専用のスカイトーンをスカイミラージュにはめ込むことで、少女の体が淡い青に染まる。
そうして空色の衣装に身を包んだソラ、改めキュアスカイが誕生した。
「ボンパ・ゾグ……ゴラゲン・マパパパ・ゴセグロ・サダダ。ボボシロ・グダグ!」*9
「なにを喋っているのかわかりません! ここではこの国の言葉を喋りなさいッ」
キュアスカイが気合を込めた叫びと共に、ガバルに向けてパンチを繰り出す。
余談だが、メ・ガバル・ダが日本語を一切喋らないのは、喋らないのではなく
グロンギ族は復活してから人間──彼らの言う「リント」──の文化を学習し、身に着けてきた。
「メ」はおろか、それより下の階級である「ズ」、その中でもさらに下に見られていたコウモリ種怪人ですら、片言ながら日本語を操れるまでになった。
だがこのカバ種怪人は、メにありながらリントの文化を理解するほどの知能が、備わっていなかったのだ。
それゆえ影ではズの者たちからもバカにされ、ゆえにメ・ガバル・ダは他者を黙らせることが出来るだけの『力』を求めていた。
皮肉にもその「強い力」は、グロンギという種族が消え去ってからのちに与えられることとなったのだが。
「はぁーッ!!」
「グッ……!?」
キュアスカイの全力を込めたパンチが、ガバルの体にヒットする。
少女の拳が重い。
ガバルは思わずうめき声を漏らした。
キュアスカイの力は、ガバルの配下である最下級のベ・ダブー・ダにすら通じなかった。
だが今彼女の攻撃が効いているのは、プリキュアの力を体内に取り込んだことによって起こる、なんらかの共鳴現象か。
それとも、ましろや五代を傷つけられたことに対するソラの怒りが、キュアスカイのパワーを底上げした
「ヒーローガール・スカイパーンチッ!」
「グオ……!」
「ヒーローガール・スカイキーック!!」
「ガァァ!?」
キュアスカイ必殺の拳と蹴りが連続でヒット。
メ・ガバル・ダ究極体を、これまでにないほど追い込んでいく。
「ズビボ・スバ……ボンボ・ルグレグ!!」*10
怪人は両手の先から、闇の雷撃を放った。
接近していたキュアスカイは、攻撃をもろに食らって吹っ飛ばされる。
雷撃の余波はましろたちの元にも飛んできた。
「ッ!」
ましろは、たおれて動けない瀕死の五代の体に覆いかぶさる。
飛ばされた先でキュアスカイは、今まさに雷撃に打たれんとするましろを見て叫んだ。
「ましろさぁぁぁぁん!」
ましろは五代を庇ったまま動かない。
襲い来る痛みに耐えんと、ギュッと強く両目を閉じた。
少女に雷が襲い掛かろうとしたその時──崩れた瓦礫の中から
攻防が二転三転してますが、次回で決着します。
ついでにこの話も次で終わります。