空ガ晴れたら   作:ほろろぎ

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最終話 青空:ヒーローとのお別れです!

 まるで爽やかな朝日を浴びているような暖かさ。

 ましろと五代を包むスカイブルーの光は、メ・ガバル・ダ究極体の攻撃から二人を守った。

 

「バンザ・ボン・ジバシパ」*1

 

 予想外のことに、ガバルはわずかに動揺する。

 

「あなたはこっちです!」

「ウッ、ザバゲ!」*2

 

 二人の前から怪人を遠ざけようと、キュアスカイはガバルの体に組みつき、力づくでましろたちの元から離れていった。

 

 残されたましろ。

 自身を包んでいた光が消え、温もりも失せた。

 しばし呆然としていたが、我に返り、光の発生源をたどって瓦礫(がれき)を取り除けていく。

 

 見えてきたのは、大きなお尻。

 それは瓦礫に埋まって気絶していたカバトンのものだった。

 

「ねえ! 起きて! 起きてってば!」

「うぅ~ん、死ぬかと思ったのねん」

 

 声をかけ尻を引っ張り、カバトンを叩き起こすましろ。

 どうやら怪我もなく、意識を失っていただけの様子だ。

 

「それ、なんなの」

 

 ましろが指さすのは、カバトンの服についているポケット。

 そこから、先ほど少女らを守った青い光が漏れ出ていた。

 

「これは……」

「スカイジュエルだ」

 

 カバトンがポケットから出したのは、一個の青い宝石。

 それは、ましろとソラがエルちゃんのためにと裏山に行った際に、カバトンが持参していたスカイジュエルだった。

 

「あ、おい! なにするのねん!?」

 

 宝石の青い輝きを見つめていたましろは、突然カバトンの手からジュエルを奪い取った。

 

「ごめん! でもこれちょうだい!」

「えぇ……なんなのねん」

 

 普段のましろらしからぬ強い語気で、一方的にスカイジュエルを貰うことを告げる少女。

 カバトンの方も、必死さを見せる彼女の様子に異を唱える間もなかった。

 

 ましろはスカイジュエルを持ち、五代の元へ戻った。

 五代は彼女の行為に首をかしげる。

 

「一体、なにを……」

「私もわからないけど、多分こうすれば」

 

 それはスカイジュエルが少女に与えた直観か。

 ましろは宝石を、五代の腹部に浮かぶ変身ベルト──アークルに近づけた。

 

 霊石と宝石は共鳴を起こし、スカイジュエルは青い光の粒子となって、五代の体内にあるアマダムへと吸収される。

 

「! すごい……力が湧いてくる……!」

 

 スカイジュエルのエネルギーを取り込んだことで、ダグバとの戦いで受けたアマダムの亀裂は修復され、同時に五代の負っていた怪我もまた急速に治癒された。

 ガバッと上体を起こした五代は、自分の身に起きたことに喜びの笑顔を浮かべる。

 

「ありがとう、ましろちゃん!」

「よかったぁ。私でも、少しは役に立てたみたい」

「少しなんて、とっても助かったよ!」

「おいおい、スカイジュエルを持ってきたのは俺様なのねん?」

「カバトンさんも。も~ほんっとに、ありがとうございます!」

 

 喜びに沸く五代たちだったが、事態はまだ切迫している。

 究極の力を得たメ・ガバル・ダは未だ健在で、キュアスカイと攻防を繰り広げているのだ。

 

 五代はソラの助けになろうと、起き上がり再び戦士へと変わるための構えをとる。

 

「これならいける……『超・変身』ッ!」

 

 アークルから発生した強烈な光に包まれ、五代はクウガへと変わる。

 その姿はこれまで誰も見たことが無い、まったく新しいフォームとなった。

 

「これは……二色(・・)か!」

 

 通常クウガは赤・青・緑・紫の、どれか一つの色を基本としている。

 が今のクウガの体は、空のような鮮やかな水色と、ふわりと広がる優しい光のような白色の、二つの色に染まっていた。

 その二つの色彩は五代の体に、ソラの持つ力強さと、ましろの心根の優しさが加わった表れでもあった。

 

「いくぞッ」

 

 奇跡の新形態を得たクウガがキュアスカイの元に駆ける。

 スカイのパワーは究極体のガバルを押していたが、グロンギを倒すためにはクウガの持つ封印エネルギーが必要なのだ。

 

「体が軽い! それに……すごく暖かい感じだ!」

「私も、五代さんが一緒に戦ってくれて、とても心強いです!」

 

 クウガとキュアスカイが正しき力を振るい、怪人はもはや防戦一方だ。

 

「ゴボセ……ゴセグ・ボンデ・ギゾゼ・ジャサセス・ドゴログバ!!」*3

 

 ガバルの体から闇の雷が(ほとばし)り、戦士たちは距離をとる。

 雷撃は周囲にあるものを手当たり次第に破壊し、天に立ち昇った闇は曇り空をより深い暗黒へと染め上げた。

 

「このままではソラシド市全体に被害が出てしまいます! 五代さん、早くグロンギを倒さないと」

「そうだね。でも今の俺、かなり力が強くなっちゃってるから、この状態で奴を倒すと、爆発の影響が酷いことになるかもしれない」

 

 クウガは元の世界でライジング化した際、カメ種怪人を倒したことで起きた爆発の範囲が、周囲数キロに渡る影響をだしたことがあった。

 もし今ダグバに匹敵する力を持つガバルを倒せば……その被害範囲はソラシド市はおろか、日本全土に及ぶ可能性すらある。

 

「グフフ。ビガラ・サビ・ゴセパ・ボソゲンゾ」*4

 

 それを知ってか、ガバルも余裕を見せ、挑発的な態度を取る。

 手を出しかねていたクウガに、カバトンが声をかけた。

 

「おい、クウガ! あいつの吸い取ったパワーを、吐き出させればいいのねん!?」

「そうですけど……どうにかできるんですか?」

「カバトン様に不可能はねーっつぅーの!」

 

 カバトンはガバルの前に立つと、くるりと背中を見せ、尻を突き出した。

 

「おい、このキャラ被り野郎!」

「バビゾグ・スヅロ・シザ」*5

「天国へ、行っといで~」

 

 バブブッ。

 と聞くに堪えない音と共に、カバトンはおなら(・・・)をガバルの顔面に浴びせた。

 予想だにしない反撃に対して、無防備だったガバルはおならを思いっきり吸い込んでしまう。

 

「グバァッ!? バンザ・ボン・ジゾギビ・ゴギパッ!! オボェエエエエッ」*6

 

 耐えがたい強烈な悪臭に、怪人はたまらず嘔吐した。

 口からこれまで取り込んできた食べ物と共に、吸収したはずのエネルギーもすべてが吐き戻される。

 

「グゥゥゥ……ヂ、ヂバサグ・ブベス」*7

 

 メ・ガバル・ダの究極体としての変身が解け、通常対にまで逆戻りする。

 勝機が訪れた。

 

「今なのねん!」

「分かりましたッ」

 

 キュアスカイの右拳に、青く清浄な力が宿る。

 

「ヒーローガール・スカイアッパーッ!!」

「ゴバッ!」

 

 顎を打ち抜かれたガバルの体が、その勢いで天高く舞い上がった。

 

「五代さん、後は頼みます!」

 

 クウガはうなづき、両足に水色と白のパワーを込める。

 

「うぉおりゃぁあーっ!!」

「ダババ・ゴセグ・ボボゼ……ゴンバァアー!!」*8

 

 空へと飛び立ったクウガは、空中でガバルに追いつき、両脚蹴りを叩き込んだ。

 怪人の体内に注ぎ込まれた過剰なまでの封印パワーが、ガバルの腰につけられているバックルと反応し、グロンギの体を爆発・四散させる。

 

 地上へと降り立った五代、その側に駆け寄るソラとましろの元に、天からの光が差し込んだ。

 ガバルの爆発によって起きた風の圧力によって、ソラシド市を覆っていた雨雲がすべて吹き飛ばされたからだった。

 

 久しぶりに見える晴れ渡った青空に、一同は清々しい気分を覚えた。

 

「これで怪人は全部いなくなったの?」

「うん。俺の腹の中の霊石も、もうグロンギの気配は感じないみたい」

 

 ましろの言葉に五代も、もう安心だといった風に答える。

 

 かたわらでカバトンもやれやれと肩を揉み、帰り支度を始めた。

 

「はぁ~。ったく、しんどい仕事だったのねん」

「カバトンさん! 今日は助かりました!」

「お前らと馴れ合うのはこれっきり! 次からはまた敵同士なのねん」

「あ、やっぱりそうなりますか。なんとかこれからも、ソラちゃんたちと仲良くできませんか?」

「無理な相談なのねん」

 

 カバトンはあっかんべーをして、三人を残し異空間への通路を通って姿を消した。

 和解を提案した五代に、ソラも異を唱える。

 

「あの人はエルちゃんを狙ってますからね、私も仲良くはしたくありません」

「う~ん……でも、これ(・・)でしかやり取りできないなんて、やっぱり悲しいからね」

 

 五代は自らの拳を打ち付けながら、残念そうに言った。

 戦士としての力を持ちながらも、なるべくなら暴力には頼りたくない。

 それが五代雄介という男なのだ。

 

「……あぁーッ!!」

 

 出し抜けに、ましろの叫び声が響いた。

 少女の視線の先には、先ほどカバトンが使った様な空間の(ひず)みが浮かんでいる。

 

「これって」

「うん。どうやら俺、元の世界に帰れるみたいだ」

 

 アマダムの導きのような感覚で、五代はこの空間に飛び込めば、自分の世界に戻れることを察知する。

 

 三人の別れの時は、突然訪れた。

 ソラもましろも、名残惜しそうな表情を浮かべている。

 だが、いつまでもここに残るわけにもいかない。

 五代は、二人に背を向けた。

 

 去ろうとする五代に向けて、ソラが声をかける。

 

「五代さん! 私は……五代さんの戦う(つら)さや苦しみを知らず、ただヒーローだからといってはしゃいでしまって……本当に、すみませんでした!」

 

 頭を下げ謝る少女に、五代は変わらず優しい微笑みを向けた。

 

「俺のことは大丈夫! ソラちゃんもこれから先、また苦しいことや嫌な思いをするかもしれないけど……平気かい?」

「きっとまた、つまずくかもしれません。でも……私にも、守りたい大切な人がいますから」

 

 隣りに立つましろと手をつなぎながら、ソラは力強く言った。

 その言葉を聞き、五代は満足そうにうなづいて見せる。

 ソラは今一度問いかけた。

 

「そうだ、最後に一つ聞きたいことが」

「うん?」

「五代さんがやっていた、あの親指を立てるポーズは、なんなんでしょうか?」

「サムズアップ! 俺の尊敬する先生に教えてもらったんだ」

 

 それは古代ローマで、満足できる、納得できる行いをした者にだけ与えられる独特の仕草。

 五代はそのポーズを、別れの前のソラとましろに送った。

 ソラも、ましろも親指を立て、五代に返礼する。

 

 異なる世界に住む者同士だが、三人は確かに同じ(こころざし)を持ち、共に行動することで心を通い合わせた。

 そして、五代は歪みの中へと飛び込む。

 

「さようなら、ソラちゃん! ましろちゃん! 元気でね!! ヨヨさんとエルちゃんにも、ありがとうと伝えておいて!」

 

 異世界で得た出会いと絆に感謝しながら、五代は元の日常へと戻って行った。

 

 残された二人の少女は、五代の姿が消えた後もしばらく、黙ってその場にたたずんでいた。

 やがて、どちらからともなく帰りを切り出す。

 

 家路につく道を歩きながら、ソラは気合を新たにする。

 

「これからこの世界は、私だけで守っていかなければなりません。五代さんに心配をかけないよう、もっと強くならなければ!」

「強くなるって、具体的にはどうするの?」

「それは地道なトレーニングしかないですね。まずは、明日の朝からランニングでも始めましょう」

「それじゃあ、私も付き合うよ」

 

 二人は笑い合いながら、青空の下を歩いて行く。

 ふいに、ましろがなにかを思い出したように、あっと声を出した。

 

「そういえば……せっかく見つけたスカイジュエル、五代さんを助けるために使っちゃった」

「なら、もう一度見つけに行きましょう」

 

 ソラはまぶしそうに天を見上げて言った。

 

「こんなに空が晴れているんですから」

*1
なんだ、この光は

*2
離せ!

*3
おのれ……俺がこの程度で、やられると思うな!!

*4
貴様らに俺は殺せんぞ

*5
なにをするつもりだ

*6
なんだこの酷い臭いは

*7
力が抜ける

*8
バカな、俺が、ここで……そんなぁあー!!




最後までお付き合いくださりありがとうございました。

この後五代君は、一条さんや桜子さんたちに「ただいま」を言いに行きました。
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