異端の騎士は歴史の闇に消え、口伝も書籍も僅かな噂も残されていない。
私はそれを知る最後の人間、だから語るのだ。
アーサー王は何故異端の騎士を円卓へ導いたのか、それは異端の騎士がまだアスノと言う名前を持っていた頃に遡る。
◆
あれはまだ若く向こう見ずな行動を取っていた頃、キャメロット城で騒ぎが起きた。
──全裸の男が城内で逃げ回っている。
頭を抱えた、
「ここは私が参りましょう」
「ベティヴィエール卿、頼んだ」
ここは速やかに騒ぎを治める為にベティヴィエール卿が出向くようだ、丸腰―というか全裸だが―相手に彼がわざわざ手を出す事は無い、円卓の騎士として取り上げなかった者達も力が有り勇猛果敢だ、それでも動いたのだから何か思うところが卿にはあったのだろう。
程なくベティヴィエール卿は戻ってきた、我が玉座の間にキャメロットへ侵入した不届き者を引き連れて。
成る程確かに全裸、今はボロ布を被せて居るがその下には何もない。理由は、何だ? ここまで来たのだ無策な訳がない。
ただ、この不届き者は見目麗しい女人のような美を持っていた、生まれ持った自然な美を。少し見惚れてしまい己を恥じるくらいに引き込まれる、呪いの類ではないのが尚更厄介だな。
さて、即斬首では意味がない。コヤツの背後にいる何者かを炙り出さずに殺してやる程甘くないのでな。
「よく来たな、阿呆めが」
「反論出来ないな……たはは」
「お前の名は?」
「え? 名前? 知りたいですか? ……ゴトウアスノ、アスノで良いですよ」
あの間はなんだ、偽名か、それとも本当の阿呆だから名前すら忘れたか? ええい惑わされるなアルトリア、私は王だ、アイ・アムキング!
「ではアスノ、お前は何故ここに侵入したのだ?」
「侵入だなんてとんでもない! 私は迷い込んだのです! 慣れない力を使って事故でここに落ちてきてしまいました! 本当です! 誓っててもいい!」
ふむ、これは嘘だな。大方魔術による身体強化で外縁から忍び込んだか、それとも空から侵入したか。どちらにせよ侵入される穴があったということだ。警備の隙は今後改めるとして、次の質問だな。
「お前の背後には誰がいる、誰に雇われた?」
「雇われ? いやいや無職です。私は異世界人ですので」
──ザワッ
この場に居た騎士たちはざわついた、何と言うカミングアウトか、嘘をつくならもう少しマシな嘘をつけ。そう言わないのは奴の態度に偽りが感じ取れないせいだ。
こと直感には自信があるが肌がひりつく程に真実だと告げている、そしてこの直感を後押しするような助言をした魔術師がいた。
「そうだな、では『魔法使い』なのかな? アスノ君」
マーリン、協力者であり導きの師。
彼はのらりくらりして煙に巻く発言ばかりが目立つが今回はほぼ確信めいた物言いだ、『魔法』と言う単語には心当たりがある、魔術を超えた力であると言うことは聞いている。
「魔法使い? 分かりません、気が付いたらこの世界に居ました」
「そうかい、所で……君は僕達を
「ヌッ?! そんな事はないですよ? マーリン様も人が悪い」
動揺、瞳孔の揺らぎ、あからさまな言い訳、アイツから何を引き出そうとしているんだマーリン。我らの首を狙う賊ならば我らに詳しいことが前提だろう、それをあえて聞くその真意はなんだ?
「名乗ったかな?」
「え? あっ! マーリン様は有名ですから分かりますとも」
「異世界出身の君なのに?」
「おあっ!?」
「あっさり化けの皮が剥がれたね、さぁ洗いざらい話しなさい異世界人。君の知るブリテンを全てをね」
マーリン、お前は何が見えている、そしてアスノ、貴様は何者なんだ? 異世界とは一体……?
私の心中は荒れ狂う荒波の如く疑問が渦巻く、しかしそれを全て打ち払う衝撃がアスノからもたらされた。
「この世界は、物語でした、私の世界ではただの作り話。ハッキリ言いましょう、恐らくは一番聞きたくない答えですが、ブリテンは滅びます、アーサー王、私の知る物語ではあなたはブリテンは救えなかったのです」
反射的に玉座から飛び出し奴の首を斬り落としかけたが、そこをガウェイン卿が止めに入る。今の私は冷静ではないぞ、何も知らぬ者に我が王道を馬鹿にされて何故冷静で居られるか!
「退け、退けと言っている」
──ギリッ
同じ産まれの聖剣同士が鍔迫り合う、今程その聖剣が恨めしく思ったことはない!
「退けません、彼の話が全て真実なのか嘘なのかさえ誰にも分からない、その状況で手を掛けるのは」
「ガウェインッッッ!」
エクスカリバーを握る手に一層力を込めてガウェインを跳ね除け、アスノの前へ立つ。元々コイツの罰は決定していた。斬首刑だ、それを私自らが行うだけに過ぎない。妄言諸共その首跳ねてやる。
「あ、アーサー王!?」
「死ね」
ベティヴィエール卿の静止の声を無視して私は振り上げたエクスカリバーを奴の首に振り下ろした。
頭が宙を舞う、つながりを断たれた体と頭はごろりと床に落ち物言わぬ死体だけが玉座の間に残されている。だがおかしな事に血が流れていない、まぁ人外であっても聖剣の一撃を耐えられるものではない。
これで良い、これで……いつも通りだ。
「うわぁぁぁぁぁ死んだァァァァ…………あれ? 死んでない?」
「なん……だと……?」
首を切って生きているだと!? まさかそんな事はあり得ないあり得ないあり得ない! しかし現にこうして喋っている、人間だと思っていたがどうやら悪魔の類、ならば本当に容赦などいらぬ! ここで消し去ってくれる!
「あー死んだかと思った……え? ちょっお待ち下さい! 明日まで明日までお待ち下さい!?」
「今度は確実に殺してやる、そこになおれ!」
「え!? ま、まさかエクスカリバーですかぁぁぁ!?」
「YESYESYES!」
「う わ ら ば !」
聖剣の力を開放して加減無しの星光を浴びせてやった、もう死んだ筈だ、キャメロットを無茶苦茶にしてしまったのは奴のせいだ、そうだな、うん。
だが何だこの胸騒ぎ……まるで部屋の中に黒いカサカサするアレを見つけた時のような感覚が────成る程やられたな
「な、なんか生きてる……俺生きてる? アレ死んだ? どっちなの?」
光の中からあいつが変わらない様子で出てきた、まさか生き残るとは、原理が分からないまるで理解の外にある存在だ、異世界人というのはもはや間違いではないのか?
だとしたら、その口から語られた事もここへ来た経緯も、全てが嘘ではない可能性があるのか、真実があまりにも非現実的になると判断が出来なくなる。
「エクスカリバーを受けてなお生き残るとは、アスノ、お前の身柄は私が預かる、その不死性を暴くまでは帰さん」
「え? あ? はい……え?」
◆
こうしてアスノはアーサー王の元に置かれるのだった、自らを異世界人と名乗り全てを話したのはアスノが前世でアーサー王ことアルトリアが予知に類する直感を発揮すると知っていたから、それにあのマーリンという魔術師がいる限り嘘を吐いても通じないだろうと諦めていたからだった。
ただ、新たに浮上した彼の不死の力は果たしてどこから来ているのか、本人さえ知覚していなかった能力、そもそも誰が彼を異世界転生させたのか、その目的は? 彼は一体何を望まれてそこにいるのか……それを知る者は果たして誰か。
真相は霧の向こうにしかないのだろう
???「死んだらギャグになりませんので」
???「仕事疲れにこれが効く・・・あぁ〜^たまらねぇぜ」