余生はロアナプラで   作:ヤン・デ・レェ

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神の国(ウルス)事件

1990年代のことである。東南アジア某国近海において、国際社会を震撼させる大事件が起きた。

 

東南アジアのロアナプラという島が武装勢力により占領され、事実上の治外法権として急速に都市化したのだ。この事態に対して当事国はすぐさま行動を起こそうとするも、この島嶼一帯を支配下に置いた勢力が展開する強力な経済網即ち、表には出来ない世界中の資金と物が流入し始めたことで状況は一変した。

 

当事国政府は自国の経済の一端を担うほどの新市場を閉鎖し、莫大な人流と物流を堰き止める覚悟が無かったのだ。

 

政府内の権力闘争・利権闘争が勃発したこともあり、結局この問題はロアナプラを実効支配する勢力が島内に当事国の司法官憲の拠点を受け入れることを提案、政府がこれに飛びつく形で合意し公表した結果、今日でもうやむやにされたままの状態である。

 

新たに誕生した行政単位である仮称<ロアナプラ政府>は、単体で強力な物資供給網を有する点からも、その組織力は少なくとも小国家に相当すると試算されており。その統治能力は厳格かつ急激なものである。

 

完全に組織的かつ戦術的に運用される武力を背景とした強権統治により、ロアナプラの最中央区画であり統治勢力の大型建築物が軒を連ねる高級住宅街、通称<グラウンドゼロ>の治安は皮肉なことに当事国政府統治下よりも遥かに向上しており、某極東の国の首都よりも圧倒的に安全だと言われているほどである。

 

一方で、その周辺部から港湾部や空港などの重要施設を除いた新しく開発された住宅地や繁華街の治安は、グラウンドゼロとは真逆で世界を見渡しても比類ないほどの悪さであると称されている。公的な税は存在せず意外なことに学校や病院の授業料は完全に無料である。

 

ただし島唯一の宗教法人リップオフ教会を始めとした、ロアナプラ島内で<金と物>のやり取りをする場合は別であり、必ず割り当てられた区画内に限定して、許可された事業内容で取引し、売り上げの最低一割を<ロアナプラ信用金庫>に毎月末振り込まなければならない。この最低というのは、暗に一割以上の納税も可という意味である。

 

悪党だからこそ金には恐ろしく厳密なロアナプラでは、案外規定通りに納税すれば全く問題ないのだが、何らかのトラブルが島内で発生した際には極稀にこの一割以上の文言がその効力を発揮するという。

 

 

 

通称<神の国(ウルス)事件>と呼ばれるこの事件は、80年代初頭から頻発した複数の革命・紛争にも重大な関与が指摘されて来た国際的な武装組織であり、つい先日正式にICPOから要警戒対象組織としてその名前が発表された巨大シンジケートによって引き起こされた。

 

組織の名は複数あり、最も代表的な名前として挙げられるものはロシアン・マフィアの最大派閥として知られている<ホテル・モスクワ>、また各国情報機関の極々一部の関係者のみが認識している特別な名称として<神の国(ウルス)>というものも存在する。

 

この組織は少なくとも10年以上の長きにわたってその全貌を秘匿し、また決して表立っては存在を主張してこなかった。そのため、本事件の終結と共に非公式に神の国(ウルス)の<建国>と、その道程における重要な工作の中に近年の革命への関与を一部認めるような趣旨の発言があったことは驚愕に値する出来事であった。

 

国交を樹立しようとする先鋭的な国家は流石に表れなかったものの、完全に未知数だった組織の一端が<国家レベル>であることを認めざるを得ない状況を目の当たりにした各国上層部や資本家層の動向に関しては、今後盛んに私的な接触を試みたり、その組織の全貌究明へと挑戦しようとするものが後を絶たないだろう。

 

 

 

世界は突然に鎮静化し、そして今再び加速度的に熱を帯び始めたのだ。

 

某国近海の島嶼が事実上占領され、3日後に秘密回線を通じて、ダークネット上での声明が公開された。

 

はじめ、画面に映ったのは謎の影絵のみで、怖いもの見たさや偶然見つけた裏社会の住人達ばかりで、視聴人数は疎らだった。

 

だが、その影が次第に人の形と成り、銀仮面を纏った伝説の英霊の如き貫録を醸し出すあたりには視聴者数も数十万人に跳ね上がっていた。

 

そして、謎の人物が<カッコいいポーズ>を次々に繰り出しながら、おもむろに語りだした瞬間から鎮静化されていた世界は狂気へと駆り立てられた。

 

画面越しに聞こえて来たのは電子音声じみた気狂いの笑い声。それから掠れ掠れ聞こえる、悪魔の誘惑の如き提案…いや、宣言だった。

 

 

 

「ゲロゲロゲロゲロ~♪……愚カナ群衆ドモ、そして権力に縋リ、余ノ平穏を乱ス神ヲモ畏レヌ咎人ドモヨ…余の、名ハ新世紀の唯一神ニシテ、戦士の国…神の国(ウルス)の永久王ボードゥアン也。」

 

「余の忠実ナル使徒の深淵なる智謀、そして黄昏に瞬きシ、煉獄ノ廉火ニヨって、我々は遂ニ不可塑の千年王国ヲ建国するに至った。」

 

「余ノ、望みシ者は忠実ニシテ敬虔の戦士。余の望みしモノは余ニヨル余のタメの新秩序構築と無窮の快楽に満ちた、究極の楽園の創造デアル。この地に、住まうものには、敬虔であるカギリ、自由がヤクソクされる。」

 

「その楽園ヘノ道は遠く、又狭きケワシキ門である。ダガ、アラタナル世界を求める者には必ずや真の戦士トシテ、余の洗礼を受けることが叶オウ。」

 

「余が住まいし新世紀の頂は、楽園ロアナプラ…余の王国ロアナプラである。ゲロゲロゲロゲロ~♪……!!」

 

 

 

暗黒世界の帝王としてスーパーアイドル並みの人気を誇って来た謎の大物<ボードゥアン>。その大物が世界へと自らの意志を明確に主張して見せたのだ。

 

闇を牛耳り、世界を大混乱に陥れた超大物。そんな彼が言っていることはこうだ。

 

 

「私に傅くことを許す。忠実に私の為に働けば相応の対価をくれてやる。ロアナプラはもはやどこの国にも属さない。私のクニである。このクニで暮らし、私に忠誠を誓えば貴様ら底辺の悪党どもにも特別に自由をくれてやろう。」

 

 

<そうだ!そう俺たちに選択を迫っているに違いない!!>

 

 

世界中の悪党どもから喝采と熱狂の唱和が始まり、それは一時裏サーバーをもダウンさせるほどであったという。

 

その日から世界中の司法機関は死人が出る程忙殺されることになった。突如として世界中の悪党と言う悪党が一路ロアナプラに集結しだしたのである。

 

闇の帝王への服従と引き換えに、ある者は殺人の自由を、ある者は肉体の自由を、あるものは薬物の自由を、ある者は革命の自由を、ある者は信仰の自由を…。

 

悪党だけにとどまらず、世界中のはみ出し者達がロアナプラに描いた夢へと舵を切った。

 

 

 

その後、一年足らずでロアナプラは<楽園>と化した。

 

 

 

仮面の王を絶対の頂点としたありとあらゆる欲望と快楽が集う究極の治外法権。形なき国家が構築した新しい秩序と完全に計画された自由が溢れる新世界。

 

人呼んで、<犯罪都市ロアナプラ>がここに誕生したのだ。

 




・モンタナ
…今更ながら、衣装のイメージはキングダムオブヘブンと欧陸戦争7のボードゥアン4世(超絶お気に入り)。彼が自分の評判に興味なさ過ぎるだけで実は裏業界では有名人。その人気は凄まじく厄介なオタクと勝手に確信した変態を量産している。気づいたら本人の知らぬところでグッズとか体液が販売されていた。普通のファンくれ。体液を売っていた奴は商品ごとバラライカとロザリタに燃やされたが、グッズは公式が内部向けに供給するようになった。怪しい印鑑とか壺は売らない。定価で買えるぬいぐるみやマグカップである。仮面を被り、本格的にキャラ立ちするようになってから伝説的存在、崇拝対象からスーパーアイドルにジョブチェンジした。尚、バラライカやロザリタも危険性が無ければいいと捨て置いていた結果、コアなファンまでできた。全員悪党なんだよなぁ、気の毒に…。最近は自分の恰好を気に入るように心がけている。信徒思いの良い信仰対象ですね。執務室の椅子とかをヴィンテージにしたりして、少し気分を味わって遊んだりしてる。最近体調が芳しくないらしい。大丈夫かな?それでも対戦車個人火器程度では発泡スチロールの剣でぶたれた程度のダメージしか受けないので、やはり頑丈さは折り紙付き。核で死んでない時点で昔の彼はゴジラより頑丈だったんだよな…。要約するとヤバい人。

・ソーヤーちゃん
…みんな大好き死体処理屋さん(クリーナー)。素手で敵対者を根こそぎ解体し、文字通り血の海に沈めてきたモンタナの大大大ファン。重度のオタクを拗らせており、殺した人間の体を道具無しで破壊し最低限の道具で効率よく解体する為に研究を欠かさない。今の筋力では不可能だと、そこで諦めれば良いものを、勉強熱心過ぎて今は本格的に秘孔を探し出そうとしてる。そのため内臓を持ち帰ったりする。根は真面目。多分ね…。淡々と華麗なるボードゥアンスタイルのまま自動小銃や重火器で応戦する敵を八つ裂きにするモンタナを偶然居合わせ、視て一目で最推しの為に死ねると思った思い切りの良い少女。若い頃から極悪人ではないが、単純にこっちに才能が有ったのでお仕事として割り切っている。まだまだモンタナの絶技に届いていないが、相当に腕利きである。面接の際はウグイス嬢みたいな候補が多かったため、逆転の発想で面接担当官だったバラライカとボリス君の前で自分の喉を素手で掻き切った。いや、何処のランボーだよ。全く驚かない面接官二人だったが、手際よく自傷個所を処置した自称メンヘラ(ヤンデレ)を見て、おもむろに感心した様子で採用した。モンタナは彼女のように補助装置があっても言語化できないのだが、実質おそろっちになったソーヤーは大変ご機嫌である。今やモンタナの声という大任を任せられたことで舞い上がっており、自分の声で「フレデリカ愛してる」と言えばその言葉はそのままモンタナから言われたことになるのでは?という天啓が閃いてしまった可憐な乙女。要約するとヤバい人。

・ロットン・ザ・ウィザード
…CV杉田智和。本二次創作では原作よりも厨二病を拗らせている。多分一番の被害者。いつも通りに防弾チョッキに命を救われた帰り道で、月下の闇で殺人舞踏を披露するモンタナを目撃する。これが全てを狂わせた。その後、この運が良いのか悪いのかわからない男は何度もモンタナの派手派手殺人現場に居合わせてしまう。バレない様に息をのんでボードゥアンスタイルのモンタナを観察し続けた結果、モンタナこそ我が終生の同志(厨二)として認定した。何を考えたのかはロットン以外には理解できない…いや、ロットン本人も理解しているのか疑わしい。兎に角、モンタナは自分がこのまま今の道(厨二)を進んだ結果、行きついた先で背負う宿命(黒歴史)を先駆者として肩代わりした結果、全身にウィザードの呪いを受けてしまった…とロットンは確信している。元よりモンタナの武勇伝に子供の頃から胸を躍らせて来た純な青年だったので、憧れが現実に顕現して自分自身も色々とこの場では語りつくせぬ拗らせ様だったので、今回の様な結果に行きついた。モンタナの願いは届かない。残念。モンタナのことは自分の前前前世の姿で、真のウィザードだから不死身なんだと思っている。あと自分のライバルでもあるらしい。…これもうわけわかんねぇな。自分が影武者になりたいと立候補した挙句、テスト(死合)と称してロザリタの本気の拳を肋骨数本を折りながらも受け止めた上で立っていたので見事合格した。真相は、立ったまま気絶していただけなのだが…。モンタナを勝手に兄の様な、師のような存在としてリスペクトしている。そんな恥ずかしい衣装を着こなせる度胸にも、目立ちまくる格好で人間を撲殺しまくるミステリアスな姿にも憧れている…などと告白されたらモンタナは立ち直れそうもないだろう。要約するとヤバい人。
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