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自分の人生がままならないと感じたことはあるか?俺はある。今がそうだ。
俺の目の前にはギロチンに首を差し出すみたいな姿勢で硬直したソフィーと、そんなソフィーを真剣な面持ちで見守る面々。
いや、なんだよこの状況。え?え?なんでや!?
どうしてこうなった?
ことの発端は数日前のソフィーの「指示」が原因だった。
ナゼかどこに居ても所在がソフィーにバレることには触れないでおくとして。
突然住む場所まで指定された俺は、大人しく彼女の言うことに従った。先日の狂乱が繰り広げられた巨大ホテルの最上階で暮らし始めた俺だが、どうにも俺はじっとしているのが苦手な質なのだ。
ましてや、常時完全武装のスペツナズ分隊が護衛に付いて回るような生活にはな!
食い物も旨い。大好きな強い酒も好きなだけ飲める。葉巻も吸い放題。多分…試したことはないが女だってご自由に、だろう。
なるほど、確かに理想的な環境だ。本当は何もしたくない俺にとってこれ以上の環境は無い。だが、それでも俺はまだそういう気分じゃないんだよ。なんたって世の中にはまだまだ俺の平穏を脅かす不届き者が山ほど居るンだからな。
俺はな、独裁者や虐殺者共がベッドの上で死ぬなんざあ断じて許容できないのさ。
意地でも。意地でも引きずり出してぶっ殺してやるんだ。
ちょび髭伍長は俺が殺す前に勝手に死にやがったが、他の奴らは自殺する権利すら与えん。
二度と、そういったフザケタ間違いを犯すヤツが出て来ない様に、徹底的に尊厳を破壊した上でこの地上から抹消する。
その為に力を、金を、コネを求めたんだからな。
俺がゆっくり暮らすのは、俺の敵が全て地球上から居なくなってからだ。その時が来たら…俺も嫁でも作って、ここまで温めて来た俺の純潔を捧げてもいいかもな。
その時が随分先だなんてことは百も承知してるが。
そういった意味では、ソフィーのヤツはイイ仕事をしてくれてる。アイツは俺の考えを十二分に「察してくれる」からな!
流石の俺もあれにはたまげたぜ。俺が筆談が面倒臭がってるのをアイツは理解してくれてるから、会議や取引の時に困ったときはソフィーの方を見れば一発なんだからな。
まぁ…この前の取引で、アメリカのギャングのボスを突然射殺した時は吃驚したが…。
俺は「仲良くね」って意味で頷いたんだが、どうやらソフィーの「仲良く」と俺の仲良くは少し解釈が違うみたいだな…ま、結局向こうが人身売買に手を染めてたのが分かった後なら同じ指示を出したと思うから、ソフィーには感謝だな。お陰で手間が省けた。
まあ、そんなソフィーでも説明が足りない時がある。
今回がそうだった。今朝部屋を抜け出そうとする俺がドアを開けた先でソフィーが待ち構えててな。
アイツも、何を考えたんだか知らんが俺にこう言ったんだ。
「チケットは準備しておきました。遂に、第二段階に計画を移行する時が来たのですね。」
「
「今回は連邦内に強力な同志が居たため、我々にとっては大変簡単な仕事でしたが…主は主のお気に召すまま、どうぞ存分に。後片付けの心配は必要ありません。貴方を煩わせる全ては我々の手で処理します。」
「ああ、私も貴方と肩を並べて戦いたかった…しかし、今回は軍曹に譲ります。今後、こう言ったことは何度も続くのだから。」
色々と不穏すぎるので既に頭がパンクしそうだった。俺の率直な想いを言わせて貰えれば、「はぇ!?けいかく?だいにだんかい?何の事じゃい!?」である。いや、本当にさぁ、ソフィーのそういうところが俺は少し心配である。
思うところはあったのだが、明らかに「あの日」と同じヤバい表情のソフィーとこれ以上会話するのは心臓に悪いので、結局、その場では何も言えなかった。
俺はいつも通り屈強な兵士達に護衛されて、黒のクッソ頑丈な鋼鉄塊削り出しの戦車みたいな車に詰め込まれて空港に送られ、そのまま機上の人に。寝てる間に飛行機から降ろされるどころか、ホテルのベッドの上に完全武装状態で移されてて死ぬほどビビった。
まぁ、核でも死なないんですがね?
それはそうと、ありゃ誰でも驚くと思う。
いやいや、起きた瞬間に視界一杯の全身防弾装備フルフェイスヘルメットの
なぁにがっ!「おはようございます、同志
お陰で色々追いついてない。
俺は詳細に関してサッパリ理解できなかったが、ここが外国で、俺たちがこれから国際法的に完全にBLACKなことを敢行しようとしていることは完全に理解した。
俺は起き上がるや否や「ちょと待て」の意味で厳かに手を上げた。
強く頷くボリス君。違う。そうだけど多分そうじゃない。
すぅぅぅ…ーーーあーはい、ヤリましたわ。これは。えぇ、もうね、また間違えたって絶対。
「全ては閣下のお望み通りにッ!!同志諸君!遂に"我々の国家"が世界にその産声を轟かせる時が来た!!この時の感動を終生忘れるな!いいな?よし。命令は下った!指令内容は一つ<チャウチェスク抹殺と政権奪取>だ!我々の行動こそがこの世界に"
ほらああああああああああ!?(絶望)
やってくれたなぁッ!?おい!ボリスぅ!おま、えぇぇ…?嘘だろ。おま、ええぇ…ホントにさ、いい加減にしろよ。
辟易とした俺の考えなど知らないボリス君たちは寝起きの俺を丁重に担いで、どこからともなく現れた装甲車に詰め込んだ。
暫しの運転の後、停車したかと思えば「存分に!」とか言われて送り出された。目の前には馬鹿みたいにデカい建築物、あ、これ見たことあるよ。確かルーマニアの国会議事堂じゃーん……え?
あーあーあー完全に理解した。俺は完全に理解したぞ!
つまり、こういう訳だな?
意訳:「ドクサイシャ、コロス。コドモ、タスケル。ジユウ、バラマク。」
OK、承知した。そういうことなら話は別だ。目の前の明らかに一人の手じゃ余る状況も、"俺の敵"を絶滅させる為ならば甘んじて受け入れよう。
ソフィー達が何考えてるのか正直全然理解してないけど、まあ、しょうがないな。
それよりもだ、俺はドクサイシャって奴が、ローマ元老院並みに大っ嫌いでなぁ。
特に私利私欲に走った挙句、他人様を不幸にするような輩が心底嫌いなんだ。
俺はこういう奴らが散々世の中を引っ掻き回した挙句自分は勝手におっ死んだり、逃げ切っちまう、そんな世界線が我慢できねぇ。
女、子供ばっかり不幸になるしよぉ。本当に、そういう奴らを綺麗サッパリ掃除してからじゃなきゃ俺は安心して童貞も卒業できないんだよォッッ!!
そこで、目の前の相手について考える。
ふぅぅむ…北朝鮮に感化されてクソ未満のクソ独裁をクソ夫婦で始めたクソ未満のドクソ、か。
百点満点で完璧。真っ黒のギルティだ。
俺の中で奴らへの量刑は決まった。あちこちから狼煙みたいに煙も上がってきてるし、もう頃合いだろう。
さあて…仕事をしようか。
世の為、人の為、そして何より自分の平穏の為に、手始めにこのデカいだけで中身の伴ってない建物の中の害虫駆除を俺がこの手でヤッてやろう。
俺は止まらないぞ、この世から俺の気に入らないヤツを一人残らず消すまでな。
其処までの道のりを邪魔する奴は…女、いや…美女と子供以外は全員死刑だ。憎たらしいブスは流石に好かん!
この日、一つの独裁国家が地上から姿を消した。
独裁政権の主権者であったニコラエ・チャウチェスクとその妻は国会議事堂内で何者かによって護衛共々惨殺され果てた。
特に国家元首夫妻は文字通り、ありとあらゆる肉体の部位が散乱するほどに八つ裂きにされていたため、身元が判明するまでに実に一週間がかかったと言う。
当初は惨憺たる死体が散乱する部屋で本人だと判断することは不可能であり、また国会議事堂内部の武装警官や兵士は悉くがまるで自動車事故に遭った時の様な状態で打撲が原因で死亡しており、国家元首が失踪として処理されるまでにさえ半日を要した。
そして、元首失踪から間もなく突如として武装した民衆数千人の手による"革命"が宣言され、国会議事堂を始めとする国家の中枢を占拠することに成功。間もなく臨時政府の樹立が宣言された。
その後のチャウチェスク死亡が確認されるまでの一週間は更に怒涛の展開が続いた。
当初、政権及びソヴィエトによる武力鎮圧を想定し、傍観を決め込んでいた主要各国大使館の予想を遥かに裏切り、驚くほどの戦略的的確さでデモ隊は地方にも同時多発的に波及し、然したる反撃や内紛の火種になるような時間的猶予を現政権に与えることもなく、瞬く間に全土を掌握してしまった。
現政権の頼みの綱だった筈のクレムリンも、何故か運悪く部隊の補給に致命的な遅滞が発生したために間に合うことはなかった。
結果、最小の出血と引き換えに、民衆の支持を強固に受ける臨時政府が誕生したのだ。
その後、これまた不自然な程に円滑なソヴィエトとの交渉により、自由民主主義の領袖たるアメリカの非公式の使節団が現地入りを果たした。これによって実に奇妙な話ではあるが、ソヴィエトの半容認状況下でのルーマニアの民主化が始動したのである。
…と、ここまでが公式に知られている表の話である。
ここからの話は謂わば非公式の事実であり、また今回の革命の実態を示すものである。
今回の革命で主導的な役割を担ったのは民衆を中核とするデモ団体だったが、一方で事実上の致命傷を独裁政権に対して与えたのは国際的な組織犯罪の世界において"ホテル・モスクワ"としてその名を知られる、ある巨大シンジケートによるものであった。
また、この計画の成功には両超大国…即ちアメリカ合衆国とソヴィエト連邦内部に協力者が、それも余程の高官や実力者との関係が不可欠であり、またそのことを終始秘匿することに成功している状況からも、情報機関に深く根を張る人物と通じていたことを嫌でも察することが出来た。
加えて、この犯罪シンジケートはフロント企業に多数の有名PMCを掲げていることからも、元特殊部隊員や対テロ部隊員などの強力な武装要員を多数そろえており、その武力は今回の革命成功の最重要要因として列挙される、<国家元首の首狩り作戦>の成功や、<主要軍事拠点及び国家中枢機能の情報通信機能の封殺>を計画・実行したのみならず実際に成功させている点から鑑みても、文字通り、腐敗が続き弱体化していたとはいえ小国の中枢機能を破壊できるほどの極めて高い水準にあると断言できた。
その武力は正に"国家"レベルのものだと判断すべきであろう。
このように非合法組織が極めて強力な武力を有していることに関して、諸国は警戒し対策を練るべきであるが、実際問題として名前こそ知られているものの、果たしてこのような巨大組織が存在しているのか、肝心の強権捜査に踏み切る上での決断に足る証拠が未だ存在していないのである。
そのため、今回の革命への犯罪シンジケートの関与もまた陰謀論として聞き流されているのが現状であった。
世界の警察を自負するアメリカによる追及どころか、あまつさえその合衆国と合衆国に並び立つソヴィエトを動かす程の強靭なコネクションは言わずもがな、他の如何なる犯罪組織にもない"外交的権威"の甚大さを物語っており、如何なる陣営とも協調しない姿勢や、その過激な行動が超大国による追及を呼び込みかねないリスクをも恐れない武力への自負…それらを総合すれば、"ホテル・モスクワ"は…いや、彼らが自分達"我々"を指す時に使う言葉を借りれば彼らの"
この脅威に気付き得る者、既に気付いている者は少なくない。
だが…その台風の目に当たる一人の男自身は、自らの境遇も、その向かう先にも全く以て無頓着な様子であった。
・革命君
…十年以上前倒しにされた挙句に史実の数倍エグイ終わり方をした。花山薫も瞬殺されるレベルの握力を持ってすれば素手で人間をミンチに変えることなど朝飯前なのだよ。
・ボリス君
…バラライカの忠実な副官。優秀だが、上司と同様に恐怖すら覚えるレベルで良くも悪くも的確に"察して"しまうため一番重要な分岐点で100%モンタナが望んでない方向に舵を切る。ある意味達人。モンタナをアフガンで視てからは、バラライカの最初の"同志"となった、真の意味で。モンタナをガチ武神だと思って信仰してる。仏像があれば買うレベル。モンタナは我、武神…とかは言わない。言わないったら言わないのである。そもそも、その手の武神よりもモンタナの方が既に化け物である。直近の夢はモンタナから何か私物を貰うコト。出来れば携帯できるナイフとかがイイ。でも髪の毛でも十分ご利益があると確信してる。要約するとヤバい奴。