余生はロアナプラで   作:ヤン・デ・レェ

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第二ヒロイン(天敵その2)参戦。


狂乱の十年:南米

休暇明け。また狂乱の日々がやって来た。多分ね、俺だけ暮らしてる次元とか世界線が違うんじゃないかな?最近は強くそう思う。

 

アフリカの次は何処だ!?俺は何処に行けばいいんだ!?あぁん!?

 

俺もソフィーも粗方世界中を荒らした所為で、戦争に関しては少しマンネリ気味だった。俺たちの関係?ソッチは熱すぎて炉心融解するくらいなので心配はいらない。

 

その話はさておき、結局次の火種が燻り育ちきるまで、俺とソフィーはここまで実行した計画共同体の予行練習の結果を研究し、恒常的な影響力の確保に向けて国力増大に努める方針で合意した。

 

突然暇になると困ってしまう。この時も案の定困り、そしてふとソフィーの事で思うことがあった。

 

 

・-・ソフィー、誕生日に何が欲しい?・-・

 

夕食後、私室のソファで寛いでいたソフィーに声をかけた。ゆったりとしたバスローブがここまで似合う女もいまい。

 

足を組み本を読んでいたが、俺の声に反応して顔を上げてくれた。

 

「私のモンタナ、貴方がいれば私はそれでいい。貴方が私が生まれたことを…私との出逢いを喜んでくれる以上に嬉しいことはない。貴方と二人きりで少し気合の入った夕食を楽しみ、そのあとで貴方に抱いてもらう以上の幸福は存在しないよ。」

 

嬉しいことを言ってくれる。が、今回はそれに加えて何か日頃の感謝を伝えたいのだ。

 

気に入っている産地の葉巻か、喫煙具か、古風に恋文でも書くか…。

 

いやいや…最後のは他の奴らに公開されかねないのでナシにしよう。うん。

 

・-・ありがとう。では、質問を変えよう。君が僕以外から貰って嬉しい葉巻煙草はどこ産だい?・-・

 

葉巻だって好みがある。俺から貰っても…とか言うと何でもいいと真面目に言うから困る。

 

顎に手をやり少し悩んだあと、ソフィーは答えてくれた。彼女と寝るようになってから解ったのだが、実は結構童顔なのでは?柔らかい視線にドキッとするぜ。

 

「貴方以外から、か…ハバナ産だ。貴方が私にくれると言うなら両切りのアメリカ煙草でも喜んで吸うが?」

 

案の定、俺の問いが間違ってなかったことを証明してくれた。先に産地聞いておいてよかった。飛ぶ前に何時も吸ってるのを嗅がせて貰おう。参考までに、な。

 

・-・ありがとう。僕は今度、少し出かけるよ。・-・

 

葉巻を一本鼻と唇の間に挟んで嗅ぎつつ、俺は暫しの別れを伝えた。

 

「えぇ、気を付けていってらっしゃい。貴方。」

 

ソフィーは立ち上がってすべてを察した表情で頷いてくれる。いってきますのキスなどをして貰い考えた。

 

…こ、これはもう実質結婚しているのでは???

 

それはそれとして…

 

 

 

そ う だ 、 キ ュ ー バ に 行 こ う。

 

 

 

斯くして俺は世界に一本しかない最高のキューバ葉巻を実質:嫁の誕生日に贈るために、内戦と革命真っ只中のキューバに飛んだ。

 

目的がすっきりかつ簡潔だと俺が迷う必要はない。俺の頭はソフィーとであってからすっかり腑抜けてしまったが、使うべき機会が訪れれば地上で最も優秀な演算機能が備わっていることを忘れないで欲しい。つまり…あれだ、俺はやるときゃやる男だという訳だ。

 

早速ジャングルに分け入った俺は全力で、先ずは理想的な野生のタバコ葉を探索した。

 

これまで毒や薬の判断や美味しい食べ物をより美味しく食べることくらいにしか使用用途がなかった超絶敏感な味覚・嗅覚をフルに活用し、数日間不眠不休で探した。

 

砲火が飛び交う中での探索は困難を極めた。

 

タバコを探すのに邪魔な民兵や政府軍兵士っぽい生物を撥ねたことも百や二百じゃ効かなかった。

 

だが、それでも俺は念願の最も理想的なタバコ葉を発見し、そしてそれを摘み取る直前に真横から噴き出た火炎により跡形もなく焼き尽くされてしまった。

 

俺は不届き者を確認し、その場で縦に引き裂いた。服装から、この兵士は政府軍だったらしい。なるほど、あのタバコの近くに革命戦士の潜む洞窟があったわけだな。それで、そいつを火炎瓶で焼いていたら、近くのタバコの木まで燃やしてしまったと…。

 

俺は激怒した。かの邪知暴虐の政府軍を断じて除かねばならぬと。

 

腹を立てた俺は政府軍の兵士が狙った洞窟から革命戦士二人を救出し、ボディランゲージと筆談でその日のうちに革命の戦士たちの仲間入りを果たした。

 

あの二人とはその後も仲良くしてる。名前は片方が焼肉のタレみたいな名前…あっ!思い出した「よぉ!ゲバラ」っ奴だ。そんでもう一人がカストロって奴だった。カストロて…なんかちょっと下品な響きだけど大丈夫かな?

 

 

 

俺は次なるタバコ葉を求めてキューバで暴れまわったが、結局見つけることは叶わなかった。妥協を許せない俺はハバナで見つけたタバコ葉を越える究極のタバコ葉を実らせる木を持ち帰るべく、その探索の範囲をキューバ一国から南米全土に拡大することにした。

 

怒涛の十年とは言ったが…こうして考えると俺って最後の数年間ひたすらタバコ探してただけじゃないか?

 

いや、タバコ以外にもやることはやってた。要約すると革命と紛争が探索の邪魔なので消えて貰った。安心しろ、俺だって概念はまだ殺してない。ちょこっと革命を成功に導いただけである。首都を一つ落とすくらいなら俺一人で十分だったな。軍隊は必要なかった。土産の葉巻だけでこれだけ働いた革命戦士は俺しかいまい。

 

キューバの後も…コロンビアに、ベネズエラ、パナマ、ペルー、エクアドル、ブラジル…随分回ったな。

 

流石に南米は広かったよ。だが、それで諦める俺ではない。本気になった俺にとって民衆の扇動など容易いもの。その実はタバコを探すためだけに革命軍を組織してやったわ!南米の良いところは概ね火種がどこにでも転がってることだな。

 

流石の政府軍と他のゲリラもソヴィエトが死んだ今更になってマルクス・レーニン主義は時代遅れだと感じていたらしい。俺が考えたことになっている、ソフィーの思想を勝手に布教させてもらったが、驚くほど食いつくやつが多かった。

 

麻薬カルテルだって分別がある無しってものがあるんだが…下品な連中ばっかだな…。政府が仕事してないとこうなるんだが、アメリカがちょっかいかけてるせいってのも大きいな。この際だから麻薬カルテルはアメリカの犬ってことにして、ギャングとアメリカ憎しも煽るか…。メキシコのギャングと言い過激な連中が多いが、南米だって大差なかったなぁ。

 

次々に同士討ちで潰れていくギャングや親アメリカの利権でふんぞり返っていた連中はさておき、俺はかき集めた現地信者を総動員して必死にタバコを探す日々を送っていた。混迷時々停滞…嫌気が差したら俺が人間核弾頭よろしく先頭に立ち斬り込んで、後から信者が死に体の政府軍と過激派ゲリラを殲滅する。

 

およそ常時ディストピアな数年間だった。俺の信者たちはいつの間にか自主的に布教を拡大しており、その総体を彼らは"十字軍"と呼称するようになっていた。そして、本当に最近知ったんだが、誰かが俺のことを"ボードゥアン"と呼んでいるらしいのだ。

 

…ん~、否定しにくいことを、また。だが、いいセンスだし、確かに言い得て妙だな。

 

この際だ、俺が近づけていくスタイルにするか!

 

 

 

こうして、極めて軽快な調子で俺は如何にもな衣装を身に纏い始めた。無骨な鉄仮面は銀をふんだんに使用し、その表面には複雑な刻印と純金の象嵌など。身に纏うものは群青の服と白の頭巾みたいなやつ。金糸でエルサレム王国の紋章を刻むのも忘れない。まぁ、このことに深い意味はない。どうせやるなら徹底的にするだけだし、何だったらフロント企業の本社所在地だから関連が無いわけじゃない。

 

こうして南米の地で爆誕した"ボードゥアン"の神がかり的指導の下で、幾つもの革命と紛争が早々と終結していった。

 

暴走した犀の如き勢いで次々に過激なゲリラ勢力を撃滅したのは、"ボードゥアン"に率いられた自らを"十字軍"と名乗る多国籍武装集団だった。彼らは狂気に浮かされたように各地で激戦を繰り広げた。

 

最終的に、分裂し弱体化したギャングや革命軍分子を吸収して以降はよりその規模を拡大していった。

 

たったの二三年足らずで、南米の過酷な内戦と混乱は鎮静化され、また民衆主導の革命の多くも十字軍の指導の下で成功裏に終結へと導かれていた。

 

驚異的な速さで小康状態が訪れたことは、結果的に南米に復興の熱と余力を残したと後世には評価されることだろう。

 

 

 

…とか、そんなことは正直どうでもいい。俺にとって重要なコトは理想的なタバコを苦労したが見つけられたことと、俺の手足となって動く強力な私兵組織を現地で手に入れたことの二つだ。

 

前者はすぐさまキューバの知り合いに送って葉巻に加工して貰った。完成したらモスクワに持って帰る予定だ。

 

問題は後者の方、正直俺はこっちに関しては如何すればいいのかわかんない。いや、だってどいつもこいつも目がヤバい。

 

ジャングルを布教しながら歩き回った俺、その後ろをカルガモみたいについて歩くどっかの残党。元はと言えば、それが今で言う"十字軍"に膨らんでいったのだ。あちこちから引っ付いて来るもんだから食い物とかを用意するのが大変だった。誘蛾灯じゃないんだから…。いきなりデカくなったのは、南米来てから一番最初に信者になってくれた女の子が強引な売り込みで信者を増やしてくれたからだ。

 

何かと不器用な彼女だが、布教と戦闘に関してだけは別物だった。なんかもう、超ド変態なのだ。俺にだけは言われたくないと思うが、それにしたって人外じみた身体能力だと思う。

 

名前はロザリタで、俺の次に人間辞めてる子だ。俺はローザと呼んでる。

 

ローザは…ソフィーとは別のベクトルで危険な香りがする。

 

いや、素行とかはソフィーよりよほど敬虔な感じなんだが…一緒にいると常に俺の顔ばっか見てくるんだよなぁ。歩いてると後頭部に視線が刺さりまくるし。そんで俺が振り向くとすぐに告解したがる。いや、信心深過ぎて神の方はドン引きしてると思うよ?

 

俺は南米での夜の時間を全てローザの為に使ってやったと言っても過言ではないな。うん。

 

いや、毎日毎日よく飽きずに罪を告白し続けられるよ!!ジャングルの中で普通に爆撃に晒されててもお構いなしだった。俺だってこれはオカシイ事くらい分かるわ!?俺はさ、大丈夫じゃん?でもさ、君は死ぬでしょッ!?ねぇ!?どう??どうなのさ??

 

毎日きっかり寝る前の一時間を全く興味が湧かない他人の苦労話に費やされる俺の気持ちを思ってくれ…な?ヤベぇだろ?でも少なくともローザさんは真剣だし、爆撃に晒されてても跪いて祈りの姿勢から一歩も動かず告白を遂げる変態である。ダントツで変態。優勝だよ。もしかして君も死なないの…か?いや、流石にナイわな。普通に初めて会ったときはケガしてたし。

 

結局、俺に拒絶の選択肢はない訳。でも彼女は泣きながら本気で俺に縋りつくのだ。毎晩毎晩…いや、罪が多すぎません?重複してたりしない?それ。大丈夫?

 

言うまでもないが俺は全知全能ではない。

 

なので、出来ることと言えば話を聞いてから物凄く真剣な表情(仮面の中)を浮かべて、溜めに溜めた後で「許す」という気持ちを真剣に込めて彼女のその屈強な肉体に触れてやるくらいである。彼女に懇願されるままにその頭に、肩に…緊張で凝り固まった身体に触れた。

 

彼女は所謂、ゴッドハンドに並々ならぬ執着があるらしい。兎に角俺の手を丁重に丁重に扱うのだ。何でも彼女曰く、許しと癒しの効果が抜群なのだとか…いや、何処調べだよ。だがまぁ、手を置くくらいなら朝飯前である。頼まれずとも置いてくれるわ!

 

人生に絶望した挙句、蝕を起こせとか言われても俺には無理である。

 

彼女の素性を知る者も少なくなかったため部隊を任せようとしたときは反対された。

 

俺は過去の詮索とか全然興味ないけど、彼女も指揮官の柄ではないので結局部隊は任せなかった。

 

結果、俺の護衛を熱望して今に至る。おい、反対してた奴らはそっちは良いのかよ。四六時中ズッッと俺の隣に居る。トイレにもついて来る。あれ?ワンちゃんかな?

 

トイレの中にまで意地でも入ろうとしないで貰いたい。俺のは月一でやってくる冷却用水の排水に近いのだが…あぁ~間に合わなかった…出始めちゃったよ、もう止められねぇよ。ああああ!?ちょっと君ぃッ!言っていいことと悪いことがあるだろーがよ!?おいこら!聖水とか言うなよッ!?オッ、おまぇさぁ~…ホントにそういう所だよ、そりゃ指揮官が変態は困るよ。普通反対されるよ。もぉ~護衛がマジの変態だよぉ。

 

 

 

タバコも見つかり南米での用事がなくなった俺はソフィーに連絡して飛行機を寄こしてもらうことにした。長かった南米での生活も終わりである。折角仲良くなれたゲバラとカストロは悪人じゃなさそうだから放っとく。それに、今はソフィーのタバコの方が優先順位が上なのだ。

 

"十字軍"は残していくことにした。なんか「仲良くやれよ!達者でな!あと、ウチと貿易しようか。」みたいなことを言伝てから「離れるくらいなら死にます」と言って俺から離れないローザだけを伴って、船に乗った。船でアメリカに渡り、そこから飛行機でヨーロッパに…。

 

遠回りだったが俺の御遣いは無事に終わった。

 

 

うーん…ソフィーとローザが仲良くしてくれると良いのだが…。

 

 

あと、なんか今回でどっと疲れが出たから…どっかでのんびりバカンスでもしたい気分である。

 

…いっそ、アジアの方に引っ越すとかどうだろう?モスクワ寒いし、今度は暖かいとこにでも引っ越したいな。

 




・モンタナ或いはボードゥアン
…南米に舞い降りた破壊と再生の大魔王。こいつのお陰で南米の歴史が変わった。アメリカは既得権益を放棄せざる得なくなったが、結果的に友好と国交正常化までの時間が大幅に短縮される。キューバ産の葉巻を越える究極の一本を作るために革命をあちこちで成功させた。逃亡兵だったロベルタをたまたま拾った人。ロベルタの強引だが本気の布教で支持を集めたせいで多国籍武装集団を形成してしまう。麻薬が好きじゃないから医療用に限定してるのに、南米の麻薬カルテルが好き勝手に売り捌いていたのを見て怒りに任せて駆逐した。ついでに繋がってたFARCも逆鱗に触れたので粉砕された。南米に陽気な風土が戻るまで時間はかかるが、ナゾの宗教勢力のお陰でそのうち立て直されるはず。アメリカとも仲良くできるさ。要約するとヤバい人。

・ロザリタ・チスネロス
…もう一人のターミネーター。生粋の革命戦士。純粋すぎるが故に優秀過ぎるテロリストと化した割を食う側の人である。元はFARCに居たが色々あって脱営した。追手に追われ負傷し、ジャングルの中を瀕死で彷徨っている所でボードゥアンの衣装を着たモンタナと出逢った。これが彼女の運命を変えた。多分ずっと良い方に。少なくとも自分の命の責任は自分で負う主人、を得た彼女は案の定信仰に目覚めた。彼女の肉体が驚異的な回復力を誇っていたのだが、モンタナの手に触れたことで心身の傷が瞬く間に治癒していったことで感謝から狂信者にグレードアップした。死ぬか信仰かを迫るシンプルイズベストな布教活動に励み、一か月で数千人の兵士と武器弾薬を集めた。明らかにテロリストレベルの話ではない、もはや戦争機械として高みに達してしまった彼女を停めることは誰にもできなかった。結果、古巣のFARCと麻薬カルテルは勿論、南米中が圧力鍋で煮られることとなった。だが、お陰で早期にかつ丸く収まった側面は否めない。毎晩毎晩モンタナ(頼まれてボードゥアンの衣装着用)に自分の罪を告白し、その度に「許し」を与えられることに代替し難い快楽を得るようになってしまった。純粋ゆえの思い込みやすさと、過酷な現実を身一つで払拭してしまうモンタナに帰依。告白し許しを得ることへの依存が中毒性の域に達しており、もう後戻りはできない。でも本人は幸せそうである。最近はいよいよ告白できるネタが少なくなってきたので、「神聖な用を足す主の、無防備な御姿に欲情する罪深い自分」を許してもらってる。いや、神聖な用を足すとはなんぞや?…この件とは別に、既に罪が重複し過ぎており、重複した分も数えると一人で一万人以上殺したことになってしまう。おいおい、本当に大丈夫か?やろうと思えば出来そうなところが怖い。ゴッドハンド(神の手)に傾倒しており、モンタナから触れられるためなら本格的に人を殺しかねない。因みに、剣と呼ぶには大雑把すぎる大剣でもロザリタなら振れるはず。ただし親友の闇落ちや恋人の幼児退行とかは経験していない。両目両腕が健在なので多分違う人。アッ…でも怒るとインドラ(帝釈天)には成りかねないので注意が必要である。振るのは虚無の剣じゃなくてアンチマテリアルライフルの模様。要約するとヤバい人。
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