ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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ハリー・ポッターの二次創作もちょっと書き始めました。基本的にこっち優先ですが、是非


第102話 花園の戦い

 ドロマルから逃げるようにワープした先にあったのは、張り巡らされたロープの陣。時に潜り、時に跨ぎ、ロープに触れることなく進まなければならない。しかし、それは難なくクリアする。スミレとしては極細の糸が混ざっていたり、ということも考えられたのだが、行動中は特段トラブルもなく、普通のアトラクションのようなものであった。

 ロープの罠を抜け、少し歩いた先にそれはあった。スミレは、異様な空間に眉を顰めて警戒心を上げる。

「……花園? 」

そう、花園だ。地面には天然の芝が生え、草木が生え、花が咲いている。先程までの忍者屋敷から打って変わって、タマムシジムのような光景であった。

「うん、花園だよ! 」

明るい声がスミレの耳を打ち、見上げると歳の近そうな少女がいた。次の部屋へ進むと思われる階段のその手摺りに腰掛け、こちらに笑い掛けている。

「……貴女は、ジムトレーナー? 」

「そうだよ! ……おめでとう、わたしを倒せば次はキョウさんだよ。ほんとはもうちょっと仕掛けたかったみたいだけど、チャレンジャーさん仕掛けに何回も引っ掛かっちゃうもん。せんせー、ちょっと呆れてたよ 」

ニコニコと無邪気な笑顔を向けるその少女はどこかヒマワリを感じさせる様子でスミレは若干力が抜けそうになるが、腰からひとつのボールを手に取った。

「……悪かったね。でも、貴女を倒せばジムリーダーとバトルできる。それに勝てば、何の問題もない 」

 

「ふぅん、まあいっか。これはお仕事だもん、ちゃんとやらなきゃ。……わたしはジムトレーナー、ハナコ。使用ポケモンはなんと2体、頑張って勝ってね 」

「勝つよ、どんな手を使っても 」

ハナコは、無邪気な笑みを崩さないままに、軽くボールを放った。

「やっちゃおーか! アーボック!! 」

飛び出したのはアーボックだ。進化前のアーボは、ロケット団のムサシが使用していたのをスミレは覚えている。

「……迎え撃って、フーディン 」

スミレは、少し迷った後にフーディンを選出。この場合、ベストな選出はどくタイプに有効なエスパータイプを持つフーディンのみだ。

「シャーッボ!!!! 」

アーボックが鋭い威嚇をフーディンに浴びせ、フーディンは少し肩を跳ねさせる。少し、気圧されているらしい。

 

「わたしたちは忍者だもん、あなたのフーディンくらい知ってるよ! アーボック、【にらみつける】! 」

「フーディン、【テレポート】で距離を取って 」

アーボックの初手は、【にらみつける】。フーディンは防御を下げられるも、【テレポート】で後方へと下がる。フーディンの最大の弱点である臆病さに対して、【にらみつける】といった手はかなり有効だ。威嚇と【にらみつける】によって散々に脅かされるということ、そしてハナコの発言から考えれば、フーディンだけでなく他のポケモンもまた情報を知られ、対策をされているということなのだろう。

 

「アーボック、【どくばり】!! 」

「フーディン、【サイコカッター】で撃ち落として 」

アーボックの【どくばり】とフーディンの【サイコカッター】が空中で激突、爆発を起こす。

「フーディン、【サイコカッター】で追撃 」

「今だよ、アーボック! 」

フーディンは追撃の【サイコカッター】を放つもそれは空を切って地面に着弾して爆発する。そして肝心のアーボックが何故かフーディンのすぐそばから現れ、フーディンの腕に噛み付いた。牙からは、炎が漏れてフーディンは表情を歪めた。

「……まさか、【ほのおのきば】? 」

「そうだよー! わたしたちは忍者だからねー!当然、気配を消す訓練だってやってるよね! 」

呑気に言うが、スミレにとっては厄介にも程がある相手だ。それこそ、ジムリーダーの前座としては申し分ないほどに。

「フーディン、【サイコキネシス】」

「お? 新技だ 」

目を丸くして感心するハナコを他所に、フーディンの【サイコキネシス】がアーボックを振り回して吹き飛ばす。しかし、アーボックは空中で体勢を立て直して着地すると、【どくばり】を飛ばす。【どくばり】をまともに受けたフーディンは、一歩退がる。しかしすぐに膝を突いた。

「……火傷 」

スミレは、その状態に顔を顰める。攻撃力の低下と継続ダメージという、厄介な状態異常だ。

(……この人、ふざけた態度の癖に強い。いや、あの態度は態とかもしれない。私の情報も知っていて、しかもポケモンの戦術も確立してる。更には状態異常で私のペースを崩してくる徹底ぶり。間違いなく、この人は私の上位互換……!)

(そろそろ、わたしの態度もわざとかもーって思い始めるよね? 分かるよー。でもちょっと、深読みがすぎるよね!残念ハズレ!!)

「フーディン、【サイコカッター】」

「アーボック、【アシッドボム】!! 」

フーディンの【サイコカッター】とアーボックの【アシッドボム】が空中でぶつかり、再び爆煙の煙幕が張られる。

「フーディン、【テレポート】で退避しつつ【シャドーボール】で牽制お願い 」

フーディンは今度こそ、と退避して【シャドーボール】を連続で放つ。爆風が吹き荒れて煙幕が晴れ、アーボックの姿が露わとなった。

「フーディン、【サイコキネシス】」

フーディンの【サイコキネシス】がアーボックを捉えた。アーボックの体をピンク色のオーラが包み込む。それこそが、命中の証だ。

「アーボック、【にらみつける】」

「投げて……!それから、追撃の【サイコカッター】!」

スミレの指示を受けたフーディンはアーボックをサイコパワーによって振り回し、壁に叩きつける。そしてすかさず放たれた【サイコカッター】が、アーボックを追撃した。

「アーボック、【アシッドボム】!」

しかし反撃の【アシッドボム】をまともに受け、フーディンは吹き飛ぶ。芝生を転がりながらもなんとか立ち上がるフーディンだが、火傷のダメージで行動が僅かに遅れる。そしてその隙を見逃さずに動いたアーボックが、フーディンの喉元に迫っていた。

「フーディン! 」

「遅いよ!【ほのおのキバ】!!」

喉元に噛み付いたアーボックにより、フーディンは倒れる。戦闘不能だ。

(……不味い)

スミレは、悔しげに唇を噛む。エスパータイプのフーディンは、ジムリーダー戦でも活躍してもらう予定だったのだ。それが、ジムトレーナーのポケモンを消耗させたはいいものの、1体も落とせずにやられてしまったのである。

 

「……仕方ない。行くよ、バタフリー 」

ここでスミレは、バタフリーを選択した。ラプラス、ゲンガー、ミニリュウはそれぞれ消耗している以上、ジムリーダー戦まで可能な限り温存したいフシギバナを除けば、動かせるのがバタフリーしか居ないのだ。無論、他のポケモンでも十分無理は効くのだが、それでも出来るだけ数は揃えて挑みたいのだ。

「バタフリーかぁ。正直、フシギバナよりめんどくさいなぁ 」

「面倒なら、そのまま負けてもらう……!【はかいこうせん】」

「避けて! 」

バタフリーの放った【はかいこうせん】がアーボックを擦り、ジムの壁にぶつかり爆発を起こす。バタフリーは反動のままに吹き飛び、アーボックの反撃が届かない空中で静止する。

「バタフリー、いつもの 」

スミレの合図で【しびれごな】と【かぜおこし】の連携を起動、アーボックを麻痺に陥れた。

「うーん……これは不味いね 【どくばり】」

アーボックは【どくばり】を放つが、フーディンのバトルによって消耗したことによりその動きは最初に比べれば緩慢だ。しかも、バタフリーには射程の有利がある。

「バタフリー、【サイケこうせん】」

立て続けに放たれた3発の【サイケこうせん】がアーボックの額、首筋、腹を撃ち抜いた。完璧な連続狙撃を受けたアーボックは、ゆっくりと倒れる。アーボック、戦闘不能だ。

 

「うーん、やっぱり8個目は上手だね! うんうん、才能だけの無能じゃなくて良かった! 実は、この花園の芝生を使えば、アーボックの音がちょっと聞こえちゃうんだよね。分かりやすい突破口として用意してたけど、使わずに終わっちゃったよ! やっぱり強くないと、楽しくないもんね!!じゃ、次のポケモンで行こっか! 」

「……バタフリー、戻って。ラプラス、出番 」

満面の笑みで喜ぶハナコに対して、スミレは何も返答せずにポケモンの交換を行う。出したのは、長期戦と地形操作に強いラプラスだ。

「おおー! 勘がいいね!じゃあ行くよー? いっけー、フシギバナ!!」

ハナコが繰り出したのは、フシギバナ。その厄介さは、スミレが1番よく分かっている。

「ラプラス、【こごえるかぜ】」

先手必勝とでも言わんばかりに、ラプラスは広範囲に冷気を撒き散らす。草木を凍り付かせながら迫る氷結に、ハナコは当然ながら一切の動揺もしない。

「行くよ!【やどりぎのたね】!」

ラプラスの放った【こごえるかぜ】がフシギバナを呑み込むが、ラプラスは【やどりぎのたね】を植え付けられた。これにより、ラプラスの継続ダメージとフシギバナの小回復という効果を与えてしまった。

「……でも、凍りついたフィールドなら、優位は取れる。【こごえるかぜ】」

ラプラスは、フシギバナに効果抜群技の【こごえるかぜ】を追撃として放つ。それで戦闘不能に追い込む事ができるだろう、と考えて。実際、スミレの策は正しかった。有利な技を有利な状況で放つ、ということは戦術的には合理的と言えるだろう。ただ誤算があるとするならば、そのフシギバナの技が予想外のものであったことだ。

 

「お願い、【ハードプラント】!! 」

芝生を覆う氷を突き破り、フシギバナに迫る【こごえるかぜ】を遮り、花園の至る場所から伸びる植物の蔓が、圧倒的な質量をもってラプラスへと襲い掛かったのである。それは一瞬にして花園全てに広がっていた氷を砕き、吹き飛ばしながらも勢いを衰えさせることはなく、ラプラスを飲み込んだ。

「……今のは 」

「くさタイプの究極技、【ハードプラント】。フシギバナが使える、最強の技。貴女のフシギバナが使う【はなふぶき】であっても抑え込めない、圧倒的な質量攻撃。……さぁて、一体どのポケモンで、どう突破する? 私はジムトレーナーだから、ちゃんと勝つか潰れるまで付き合ってあげるよ? 」

にこやかに、だがどこか寒々しい雰囲気を醸し出しながらハナコは言う。スミレの頬を、一筋の汗が伝った。

「……戻って、ラプラス 」

スミレは、ラプラスをボールに戻した。ラプラスの攻撃は、確かに有効打だ。しかし、【ハードプラント】で大ダメージを受けた上に、知っていても機動力が低すぎるため避けられない。

(……間合いの外からの高速戦闘、これに尽きる)

ゲンガーは、どちらかといえば中・近距離。ミニリュウも同じ理由で排除。フシギバナでも距離的には不安がある。と、なれば取れる択はひとつだけ。

(【ハードプラント】対策なら、当然あのポケモンだよねー。でも、簡単に突破出来るわけじゃないのは、分かってるんだよね?)

(読まれてはいる、多分。でも、他の選択肢だと心許ない。この子なら機動力も高いから上手く避けつつやってくれる筈だし、この子で負けたら大人しくフシギバナを切る)

「行くよ、バタフリー 」

「だよね、やっぱり 」

スミレはバタフリーを選択、ハナコは笑みを深める。

「……読まれていても、関係ない 」

「ふぅん、どうするの? 」

「力尽くで、押し通る……! 」

スミレが言ったちょうどその瞬間、放たれた【はかいこうせん】がフシギバナの耳を撃ち抜いた。

 

 

 

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