ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
2/17 19:41 妙にUA多いなと思ったら日間ランキング入りしてました……本当にありがとうございます
ハクリューが負け、スミレは残り2体。対するキョウは、最後の1体。しかし、スミレのポケモンにはこれまでのバトルでの疲れが残っていた。それは、キズぐすりでは治せない気力の消耗。つまり、この後の2体が連続で倒される、ということはあり得なくもない。フシギバナは万全だが、くさタイプではひこうタイプと相性が悪い。
(……つまり、2体目で限界まで削らないといけない)
候補は、バタフリー、ラプラス、ゲンガーの3体。フーディンが落とされたのが不幸である。ラプラスは鈍足、ゲンガーとバタフリーはバトルでの活躍により気力の消耗が激しい。
「繋ぎ、お願いねバタフリー 」
選択したのは、バタフリー。フシギバナ戦での消耗はあるが、クロバットに攻撃を当てるならば、最も向いていると言えるだろう。
「バタフリーか、定石でござるな 」
「そうですね。ただ、定石に勝てなかったら赤っ恥ですよ? 」
「ファファファ……! 違いない 」
両者は睨み合うと、同時に口を開いた。
「バタフリー、【サイケこうせん】」
「【かげぶんしん】」
バタフリーは【サイケこうせん】を放つが、クロバットは分身を形成して避ける。
「【かぜおこし】」
対するバタフリーは、翅を力強くはためかせると強風を起こした。吹き付ける強風が、クロバットの翼の制御を狂わせる。
「クロバット、【エアスラッシュ】!!」
指示を受けたクロバットは、吹き付ける強風の中で体を回転させると、【エアスラッシュ】を放つ。バタフリーはその攻撃を受け、【かぜおこし】の風が止んだ。
「今だクロバット、【クロスポイズン】!」
「迎え撃ってバタフリー、【はかいこうせん】」
クロバットの放った毒の十字架を、バタフリーが放った閃光が貫いた。
「……!?」
バタフリーは目を見開く。放たれた【はかいこうせん】は、クロバットの分身を捉えたのだ。
「変わり身……!?」
「御名答 」
バタフリーの狙撃を信頼していたスミレは、【かげぶんしん】と本体による高速の位置変更と見抜き、キョウはそれを肯定してニヤリと笑う。
バタフリーは、確かに反動を使って後退した。完璧な立ち回りだった。しかし、それは【はかいこうせん】が命中した場合の話だ。
「クロバット、飛べ!」
距離を取る途上の、硬直が続くバタフリーへと飛びかかる。
「しまった……!」
スミレが己のミスに悔しげな表情を浮かべるも、バタフリーは動けない。
「クロバット、【どくどく】」
猛毒の液体が発射され、バタフリーに纏わり付いた。【どくどく】。毒を超える状態異常、猛毒を引き起こす、リーグでは搦手採用トレーナーの技構成でよく見かける比較的ポピュラーな変化技。猛毒の効果は、継続ダメージと時間によるダメージ量の増加だ。スミレは思考を巡らせ、バタフリーが【どくどく】を受けた直後に身悶えしたことで硬直の終了を悟ると、指示を飛ばす。
「バタフリー、【しびれごな】」
今度は、クロバットが受ける番であった。【かぜおこし】を同時発動することで全方位に放たれた【しびれごな】は、影分身も本体も関係なくその粉に包み込む。
「やるな……! 【エアスラッシュ】!!」
「迎え撃って、【サイケこうせん】」
【エアスラッシュ】が連続で放たれ、対するバタフリーは【サイケこうせん】を放つ。1発を撃ち落とすと、再度【サイケこうせん】。2発目、3発目、と短い間隔で【サイケこうせん】の連続撃ちを行い、【エアスラッシュ】の全てを叩き落とす。毒に蝕まれたバタフリーとクロバットは、そのまま空中を動き回り、撃ち合いを始める。火力はクロバットが多いが、クロバットの体を蝕む麻痺は、その速度を落とす。そのためスピードではバタフリーが上回り、またバタフリーは低火力ながらも技の連射が可能であった。とはいえバタフリーは全身を猛毒で蝕まれ、ダメージを負っている。総合力は、ほぼ互角。バタフリーとクロバットの空中戦は、互いに技を撃墜し、躱しながらも続いてゆく。
(……ダメージはクロバットの方が少ない。だが、麻痺は後にも続く消耗、一概に有利とはいえぬな)
(バタフリーの力で逆転するなら、【かげぶんしん】の攻略は必須。でも、猛毒を受けたのが痛すぎる)
「クロバット、【かげぶんしん】!!」
「バタフリー、【はかいこうせん】。横薙ぎで 」
クロバットは左右に【かげぶんしん】を展開、入れ替わりながらバタフリーに迫る。対するバタフリーが使った手は、点ではなく面の制圧だ。
横薙ぎに放たれた【はかいこうせん】が、【かげぶんしん】ごと本体を跳ね飛ばす。
「クロバット!?」
キョウがクロバットに声を掛けると、クロバットはダメージを受けながらも不敵に笑う。
「……駄目か 」
「良いぞクロバット、【クロスポイズン】!!」
クロバットの放つ【クロスポイズン】が、バタフリーを吹き飛ばした。しかしバタフリーは、ボロボロになりながらも空中で静止する。
「見事な根性。拙者のポケモン達にも見習わせたいところでござるな」
キョウは、素直に感心する。モニターで見ていたが、バタフリーはキョウ戦の直前にハナコのフシギバナを倒している。体力こそ回復していても、気力は削られた筈である。それなのに、クロバット相手にここまで持ち堪えている。それは賞賛すべきことだ。
「……ありがとうございます 」
そしてその賞賛を、スミレは素直に受け取った。自分が目を掛けて育てたポケモン達が、名のある実力者に認められるのは鼻が高いものだった。しかし、同時に予想外であった。正直バタフリーは捨て枠、麻痺さえ与えられればそれで良かったというのに、スミレの想定を超えた奮戦をしていた。
「だが、勝負は別だ。勝たせてもらうぞ 」
「……負けません 」
「クロバット、【かげぶんしん】」
「バタフリー、飛んで!」
クロバットは【かげぶんしん】を展開、対するバタフリーはただ真っ直ぐクロバットに向かって飛翔する。
「【エアスラッシュ】」
「ごめん ……お願い!!」
放たれた【エアスラッシュ】に、スミレは具体的な指示を出さなかった。ただバタフリーに向けて謝罪し、何かを願っただけ。
「フリィィィィィィィ!!!!」
しかし、その叫びは確かにバタフリーへと届いていた。毒に侵され、体力もあと少しのタイミングで、バタフリーは【エアスラッシュ】の嵐の中へと突っ込んだ。【エアスラッシュ】が唸りをあげ、バタフリーを打ち据える。バタフリーは、決して避けようという動きもせずに、【エアスラッシュ】の雨霰の中を駆け抜ける。その中でバタフリーの目は【エアスラッシュ】を放った個体……即ち本体に、既に狙いを定めていた。
「バタフリー、撃ち抜いて 」
スミレの指示と共に、バタフリーは【サイケこうせん】を放つ。まるで糸のように細く、針のように鋭く放たれたその光線は、クロバットの額を撃ち抜いた。思わずのけぞるクロバット。
「何!?」
驚くキョウを他所に、バタフリーは墜落する。バタフリーはここまでだ。
「バタフリー、戦闘不能! クロバットの勝ち!!」
「ありがと。……大丈夫、頑張るから 」
スミレは、バタフリーを労いつつボールに戻すと、最後のボールを手に取った。ミニリュウの進化、バタフリーによる想定外の奮戦は、最後のジムだというのに、スミレに不思議な落ち着きを与えていた。より良い方へと狂った作戦を、元の想定に戻す訳にもいかない。
「いつも通り、一番美味しいところ持って行くよ。相棒 」
スミレの呼びかけに、ボールは揺れることで応える。
「さあ、来い……!」
「言われなくとも……。これが最後、行くよフシギバナ!」
「バァァァナァァァ!! 」
最後の最後で、スミレは温存していた最強を解禁した。これまでバトルに参加できず、溜まりに溜まっていた戦意を全て解放し、クロバットを睨む。それを見たキョウとクロバットは、楽しそうな笑みを浮かべた。
「クロバット、【かげぶんしん】!」
「フシギバナ、【はなふぶき】!」
クロバットが再び【かげぶんしん】、大量のクロバットが空を埋め尽くす。しかしフシギバナの【はなふぶき】は、そのクロバット全員を飲み込むべく迫った。分身達が逃げ回る中、一体の回避が遅れて直撃、ジムの壁に激突する。本体だ。
「……成程。分身は所詮分身、虚像であるが故に消耗した本体の行動に合わせるのは至難の技か」
「そうです。分身は速く、だからこそ速度を殺された本体は悪目立ちする 」
「ファファファ……、よい策だ。だが、クロバットはそれしきで終わらんぞ? 」
「分かってますよ……!」
「クロバット、【エアスラッシュ】!!」
「フシギバナ、【はなふぶき】!」
【エアスラッシュ】に対し、フシギバナは【はなふぶき】を広く展開することで防御する。そして2つの技が、空中でぶつかった。高威力かつ相性有利なのは【エアスラッシュ】だ。結果として【はなふぶき】はあっさりと押し返され、フシギバナに【エアスラッシュ】の数発が命中する。しかし、それと同時に【はなふぶき】がクロバットを襲う。
「……なるほど。つまり、【はなふぶき】による拙者とクロバットの視界の阻害と威力の減退か。威力を抑えつつ体力で技を受け止め、視界を防ぐことによって散らした花弁による奇襲攻撃を成功しやすくする。そういうことか」
「そう……そして、止まればこっちのもの!」
その言葉と同時に、クロバットに【タネばくだん】が命中し、激しい爆発を起こす。クロバットは、ふらつきながらも持ち直す。
「小癪な……【クロスポイズン】!」
「【はなふぶき】で迎撃」
「【エアスラッシュ】だ!」
再び展開された【はなふぶき】を破壊し、【クロスポイズン】がフシギバナに命中する。フシギバナは顔を歪めるが、続いて【エアスラッシュ】が飛来、追撃を受ける。
「……くっ、まだ!」
「変わり身の術だ、クロバット!!続いて【エアスラッシュ】!!」
【はなふぶき】の一部がクロバットを襲うも、それはクロバットが用意した【かげぶんしん】に阻まれる。
「……なら、【タネばくだん】、【はなふぶき】で落として」
放たれた【タネばくだん】に【はなふぶき】の一部がぶつかり空中で爆発、余波がクロバットを襲う。よけようとするクロバットを、麻痺の効果が阻む。そして、空中で無防備となったクロバットを【はなふぶき】が襲う。
「クロバット!!」
キョウにできることはもはや、クロバットに声を掛けるのみであった。
「決めるよ、フシギバナ!!【つるのムチ】!!」
放たれた【つるのムチ】は、クロバットを捉え、空中で縛り上げる。
「いけぇぇぇぇぇぇ!!!!」
なりふり構わぬ、スミレの叫びとともにクロバットの体はフィールドに叩きつけられる。
立ち込める土煙。駆け寄る審判。そして
「クロバット、戦闘不能!フシギバナの勝ち!!よって勝者、チャレンジャースミレ!!!!」
宣告が轟き、どこからともなく歓声が聞こえる。それを他所に、スミレはフィールドに仰向けに寝転がった。どうしてか今までとは違った、おかしな疲れが押し寄せてくる。
「はぁ……はぁ…。か、勝った。勝ったよ、みんな」
リーグへ続く、最後のジムリーダー。それに勝った。そして、リーグへと挑む権利を得た。それを噛みしめるように、呟いた。
(なんでだろう……バトルしてるときもずっと、ふわふわしてた。体中が熱くて、胸がどきどきして……なんだろう、この気持ち。どうしてだろ……熱さが、消えない)
スミレには、まだその感情を言語化することができなかった。
8個目おめでとー!!!!
【裏設定】
サトシ、現時点でとある能力が原作以上に強化されている。それは家事能力で、スミレとヒマワリのトラブルで思うところがあったタケシによってカスミ共々指導を受けている。特に伸びが大きいのは料理で、面倒に思いつつもポケモン達や仲間が喜んでくれるのがなんだかんだ嬉しいらしい。
元のあの雰囲気を肯定してくれる人が居て嬉しい……低評価続いてて悩んでたし、本当にありがたかった。とはいえ、まだまだ書きたいけど、選択肢に『打ち切り』が脳裏をよぎるようになってきてるのがウザい。まだ書きたいんよなぁ。ネタバレ成分ですが、スミレvsサトシだけじゃなくて、スミレvsヒマワリとか、遠い未来だとスミレvsシンジ、サトシvsアラン再戦とか書きたいし、イッシュ編ではシューティー成長物語とか書きたいし……