ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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ほのぼの、試し書きです。


第107話 集結の交流会

 交流会をしよう、とスミレが思いついたのはジム戦後、ポケモンセンターにてポケモン達を回復させた直後のことであった。通常トレーナーは6体のポケモンしか手持ちに入れる事はできない。けれど、私有地やポケモンセンターの庭など特殊な場所で、その場所の所有者に許可を取った場合だけ、6体以上のポケモンを呼び出すことが出来るのだ。スミレの懸念は、サファリゾーン組とその他との交流の薄さだ。スミレ自身も、サファリゾーン組はホウセン戦で使った他、ほんのり育てたくらいしか交流はない。以前のスミレならば時間の無駄だと切り捨てて、交流など考えなかったが、今のスミレはそんなこともない。というわけで、一度皆を呼び出してポケモン同士、またポケモンとトレーナー間で交流をしようとスミレは考えたのである。

 ポケモンセンターで申請を済ませ、オーキドへと連絡して事情を話し、仲間達が入ったモンスターボールやサファリボールを腰のベルトやバッグに溜め込み、その庭へ。ポケモンセンターの庭には一面に芝生が生い茂る広い空間であるが、池などもあることでラプラスやアズマオウやコイキングを出しやすいのが良点であった。

「出ておいで」

まず出すのは、いつもの6体。フシギバナ、バタフリー、ラプラス、フーディン、ゲンガー、ハクリュー。交流会をやろう、というかつてのスミレらしからぬ計画に6体はご機嫌らしく、それがスミレにとっても嬉しかった。この少女、セキチクジム突破のハイテンションを、未だに引き摺っているのである。

「次」

続いて出すのは、アズマオウとダメ元で誘ったら来てくれたニドキングだ。アカマツに連絡した際、どうにも近くに居たらしい。相変わらず、大したセンサーの持ち主だ。

「これで、最後!」

最後に出したのは、サファリゾーン組だ。ボールを次々に投げ、ポケモンを呼び出す。パラセクト、ストライク、ケンタロス、ガルーラ、サイホーン、タマタマ、ドードー、ヤドン、コイキング。オーキド研究所で育てられたからか、最前線まではまだ遠いけれど、着実に実力が上がっているのが見て取れる。これで、スミレのポケモンが一堂に会した。そしてスミレは、言葉を紡ぐ。

「今回、私はジム戦を勝ってリーグへの切符を手に入れた。この先のリーグ戦は、多分サファリゾーン組を強化して挑む総力戦になる。だけど、この数をいっぺんに鍛えるなんて無理。だから、早いうちに交流して、性格を把握しつつある程度連携できるようになって欲しい。バトルはダメだけど、ガラル地方で有名なカレーでも作って交流しよう」

スミレの宣言に、ポケモン達は湧いた。まだまだ、相互理解が甘いところがあった。興味のあるポケモンも居た。これから一緒に戦っていく仲間なのに、交流が薄かった。だからこれは待ちに待った、と表現できる企画であった。スミレの上機嫌に任せた企画は、意図せずにスミレへの懐きを高めたのだが、スミレはポケモン達の歓喜に驚いて気付かない。

「凄い喜び様……。じゃ、じゃあジョーイさんに借りた道具準備するから、手伝える子は手伝って!他の子は待ってる間にも交流してて!」

スミレが呼び掛ければ早速手持ちに動きがある。バタフリーとフシギバナが目を合わせると、フシギバナはスミレの仕事を手伝いに掛かり、バタフリーは他のポケモン達に指示を飛ばす。その連携に、言葉を交わす必要は無かった。群れの王であるニドキングに命令できる辺りバタフリーは肝が太いと感じるが、それは兎も角フシギバナとバタフリーは最古参なだけあって盟友だ。その連携力は、スミレも目を見張るものがある。フシギバナの蔓が大きな鉄鍋を運び、ニドキングが焚き火台を用意する。その間スミレがやる事は、材料の準備だ。具材を切ったりする必要があるが、そこに自然にフーディンとストライクがやって来る。ストライクは寡黙な武人、といった性格だから臆病なフーディンとは相性が悪いと思ったのだから意外である。と思ったら、ゲンガーが少し遅れてやって来る。ゲンガーは悪戯っ子でノリが良く、他のポケモンへ話し掛けることも臆さない。恐らくは、ゲンガーが仲介したか背中を押したのだろう。

「ああ、お願いね」

スミレが頼むと、フーディン、ストライク、ゲンガーはそれぞれ食材の調理に取り掛かる。流石に食材を切りながらポケモンを見るのは危ないので、合間合間に手を止めながら周りを見る。

 水辺。手伝えない筆頭のポケモン達だったが、どうやらアズマオウを中心に何か話している。アズマオウもラプラスもサファリゾーン組とも交流があるので、仲介役だろう。ストイック故に態度がキツいことがあるアズマオウだが、なんだかんだで面倒見がいい。コイキングは意地っ張りでヤドンは無気力。そのコンビにラプラスという無邪気の権化を捌くのは大変だろうが、頑張って欲しい。癖が強いのは同じなのに、スミレはアズマオウに苦労人気質を見た。

 ケンタロスやサイホーン、ドードー、ハクリューが遠く離れた場所を競争している。空中で【かぜおこし】を行い、的確に土煙を処理しているバタフリーと、バタフリー程の精度はないが【ねんりき】で補助するタマタマがいるからこそできるゲームだ。普通、料理を作っている場所をポケモンが競争していたら土煙が飛んで不衛生なのである。ケンタロスは走り屋。研究所ではサトシのケンタロスと競争しまくっているらしい。サイホーンは好戦的で、よくバトルをしているらしい。ドードーは可愛らしい見た目に反して負けず嫌いのツンデレ、という奴である。そこにハクリューも混ざれば競争が起こるのは必然であり、バタフリーとタマタマを誘って上手く周囲への被害を防ぎつつも競争していた。因みに、パラセクトはぼーっとした様子で観戦している。その様子を見ていると、古参のバタフリーが其方に行くことで、新参のポケモン達に気を遣わせないようにしているのだろうと気付き、スミレは密かに感心した。

 フシギバナ、ガルーラ、ニドキングは焚き火を準備している。ガルーラとニドキングが物を運び、フシギバナが全体を見て位置を調整させて準備する。芝生に燃え移らないように焚き火台を借りているが、それらは多くのポケモンに食べさせるための超大型。超人なら兎も角超人擬きのスミレには準備が大変なのだ。その点、3体は力持ちで手際が良く、更には面倒見が良い方なので率先して仕事をしてくれる。ガルーラはポケモンの特徴からも察せるが、サファリゾーン組の母親のような立ち位置らしい。テキパキと動く様は、トウリが居る時のモモカみたいで、スミレとしては少し複雑であったが、自分のために働いてくれているのでそこは許容する。ニドキングは、普段こそ立場が立場なので世話をされる側だが、こういう時に積極的に動いて来るのは有り難い。因みに、現在はカレーライスのライス、即ち米を炊いて貰っている。流石フシギバナ。もはや熟練の主夫であった。

 

「ごめんね、待たせちゃって」

一通り見ると、食材の準備していたポケモン達に一言謝り、作業に戻る。ストライクも、フーディンも、ゲンガーも器用だ。食材の切り方が上手いので指導の必要はなく、あっという間に食材が用意されてゆく。この時、特に上手いのはフーディンだ。フーディンは【サイコキネシス】で包丁を幾つも同時操作し、食材を切り分けていた。

「お願いね」

スミレが不意に言葉を掛ければ、それを予知したかのようにどこからともなく伸びてきた蔓が食材を載せた皿を掴み、持ってゆく。その光景にストライクは驚いた様子だが、スミレやフーディン、ゲンガーにとっては普通の光景だった。フシギバナとスミレの関係、それはあくまでも相棒。だが、その " 相棒 " という言葉は、心の闇を抱えて生きてきたスミレにとっては、とてつもなく重いものだった。

 

◾️◾️◾️◾️

「うん、よく炊けてる」

フシギバナ達が炊いたご飯を確認し、スミレは頷く。スミレ自身は炊飯には全く関わっていなかったものだが、スミレの想定通り、介入の必要性はなかった。湯気を発し、艶を出す米は

 大鍋でカレーを煮込む、というのは大変な作業だ。スミレが火を起こし、まずは肉や野菜に火を通すと、ポケモン達がバケツリレー方式で水を投入してゆく。当然、水はちゃんと購入したもの。いくらなんでも、【みずでっぽう】などは少しばかり衛生面に不安があるからだ。

「やろっか」

スミレ1人では出来ないので、フーディンとゲンガーが補助に入り、具材を煮込む。ほのおタイプのポケモンをゲットしていないので火力増加による急速な完成は無理だが、その待ち時間は交流に使える。キッチンタイマーをセットし、蓋を閉め、注意はしつつも半ば放置して具材を煮込む。今回はチキンカレー。鶏肉の旨みがよく染み出したもの。ルーは市販のものだが、辛さは甘口。辛味の調節ができるような調味料は沢山用意している。それなら、大勢のポケモンの好みに無理矢理合わせようとしなくても良いだろう。因みにスミレは辛口派、刺激が欲しいタイプだ。結構好みは大人であるが、その真相は自殺未遂後の精神病院に入院していた時期に、ストレスによって味覚が麻痺していた時期があったので、その反動であるのは笑えない話だ。

「……うん、いいね」

食材を煮込み終えると、続いて火を弱め、ルーを入れてかき混ぜる。この作業、少しでも油断すると焦げてしまい台無しだ。そのため、スミレ、フーディン、ゲンガー、フシギバナの1人プラス3体で急いで混ぜると、完成だ。

「はい!できたよー!!」

スミレが声を張り上げれば、のんびりとした様子で作っている様子を窺っていたポケモン達が動き出す。バタフリーが何やら声を張り上げれば、ポケモン達は食器を準備し始めた。人間の紙皿だとひっくり返しかねないため、態々食器は用意する必要こそあるが、そこは覚悟の上で捕まえたので既に用意はある。だが、それを自ら用意できる辺りは、流石の統率力と言わざるを得ない。

「フーディンとゲンガーは私と一緒にルー。ガルーラとフシギバナはご飯お願い。ニドキングはポケモン達の列を上手くやり繰りお願い」

スミレが指示を出せば、ポケモン達はすぐに動く。基本は自由だが、その自由はスミレへの忠誠心を前提としたものであるのがスミレのポケモンへの基本方針。つまり、このような時に統率が取りやすいのはスミレのポケモン達の強みであった。ニドキングの指導のもと、取りにくるポケモン達にカレーを提供する。水中のポケモン達には、手が空いているポケモン達がデリバリーする。スミレは手を動かし、回って来る更にカレールーを注いでは渡す、といった作業に明け暮れた。なかなか大変な作業ではある。しかし、喜ぶポケモン達の顔を見れば疲れなど気にならず、むしろ嬉しさすらも感じられた。

(……私も、甘いな)

変わりたいと思ったけれど、変わっていると自覚するのは気恥ずかしいものであった。それに、どこか喪失感もある。何かを変えれば、元の何かは失ってしまう。それを分かっていてもどこか感傷的になり、思わず空が続く遠方を見る。

「バナ?」

そう声をかけられ、スミレは振り返る。フシギバナを筆頭に、ポケモン達の視線を感じた。

「ううん……、なんでもない。なんでもないよ」

ふっ、と笑って。スミレはポケモン達の場所へと戻ってゆく。孤独な思考から、温かい輪の中へ。

 

 

「さあ、手を合わせて」

スミレは、全体の顔を見回した。見返す顔は、誰も彼もが優しくて。

 

「いただきますっ……!」

スミレは、花が咲くように笑った。




ここで終了です。後はご自身で想像してください。
ああ〜、ほのぼの〜!!曇らせた自分が言うのもなんですが、幸せそうなスミレは見ていて良いですね。
まあ、不純物が混じってない、スミレとスミレのポケモンだけだからこそなんですが


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