ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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お待たせいたしました。最新話です。リアルが忙しく、なかなか更新できませんでした、すみません。

何人もの方に読んで頂けて、お気に入りや感想、しおりが増えるたびはしゃいでおります。ありがとうございます。


第11話 おつきみやまの出会い ヒマワリとピッピ

 ジム戦を終え、少しの間休むとすぐに町を出る。午前中のうちにジム戦は終えられたのだ。わざわざニビシティに一泊するくらいなら、その先のおつきみやまで鍛えつつ野宿した方が余程いい。スミレとしては、努力できるときにしないというのは、許せないことだった。ヒマワリは最初もう少しゆっくりしていきたいと渋ったのだが、置いて行こうとすると慌てて着いてきた。どうしてそこまでスミレと同行することに執着するのか、スミレには分からないことである。

 それは兎も角、スミレとヒマワリは次のジムがあるハナダシティに向かう。ハナダシティはみずポケモンと関わりが深く、ハナダジムは水族館も兼業しており、水中ショーは他地方向けの旅行雑誌でかなりオススメされているらしい。貿易関係の仕事をしているスミレの父がそう言っていた。スミレとしては早くジム戦を終わらせて先へ進みたいが、ヒマワリは水中ショーも見て行く気満々で困る。カントー人ならスクールの遠足やらで何度も見に行くというのに。

 

 ハナダシティに向かうには、3番道路を抜け、おつきみやまと言う名の山を越えて、その先にある4番道路を通過して行かなければならない。中々に長い道のりだ。おつきみやまと言えばピッピというポケモンの生息地として有名だ。また、ジム戦で戦ったイシツブテなんかも生息している。これは町を出る前に聞いた話だが、おつきみやまでは[つきのいし]という貴重な石やポケモンの化石などが発見されるのだそうだが、それを狙ってこの頃不審者が彷徨いているらしい。ヒマワリは心配そうにしていたが、トキワシティでの戦いの経験があるので、前回より恐怖心は少なそうだ。

 スミレはバタフリーをボールから出し、辻斬りの如く野生ポケモンや野良トレーナーにバトルを挑み、その尽くをズタボロにしていく。時々フシギダネに入れ替えるが、基本はレベルの低いバタフリーだ。不審者と戦うことになった時にフシギダネの体力が削られているとなると非常に不味い。バタフリーとフシギダネにとってタケシ戦はいい経験だったらしく、ジム戦前よりも格段に動きが良くなっていた。野生ポケモンや野良トレーナーのポケモンを叩きのめしつつ、素早く3番道路を抜けておつきみやま前のポケモンセンターでポケモンを回復、おつきみやまに入った。

 

「カゲちゃん、【りゅうのいぶき】!!」

「カゲェッ!!」

ヒトカゲの口から派手なエフェクトを纏いながら青白い光線が放たれ、野良トレーナーのイシツブテを吹き飛ばし、戦闘不能にする。

 

「バタフリー、【むしくい】。」

「フリィィィ!」

バタフリーが野生のズバットに食らいつき、ダメージを与えて倒す。

おつきみやまでの特訓で、バタフリーは技構成が大きく変化していた。

【いとをはく】が【むしくい】に、【かたくなる】が【しびれごな】に、と言った具合だ。戦法も従来の空中機動による撹乱に、【しびれごな】と【かぜおこし】を組み合わせた相手の妨害を組み込んだ戦法となっている。スミレのバタフリーの【かぜおこし】は、通常のバタフリーに比べても火力が低く、その代わりに風向きなどの微調整が可能だと分かった。このバタフリーは戦闘向きの個体というよりも、人間でいう所の職人のような個体らしい。ニビジム戦を終えた後、オーキド博士にテレビ電話越しで相談した所、そのような結論が出た。スミレ自身、バタフリーの凝り性は当然把握していた為、すんなりと納得できた。

 

 2人がおつきみやまを探索していると、異常なポケモンを発見した。そのポケモンはピッピ。ピッピ自体はおつきみやまに多く生息しているが、そのピッピは何故か傷だらけだった。ピッピは心優しい性格で、バトル等で傷ついた仲間を放っておかない。なので野生ポケモンとしてトレーナーと対峙し、捕獲から逃げ延びたボロボロのピッピを他のピッピが治療する姿がよく発見されている。野生ポケモンで良くある、色違いの排斥も見られない、そんなポケモンだ。しかしそのピッピは、傷だらけな上に、たった1匹でそこにいた。足元はおぼつかず、ふらふらと今にも倒れそうになりながら、どこかへ向かっていた。

 

「行こう、スミちゃん。」

ヒマワリが静かに、確かな意思を込めてそう言った。ヒマワリは昔からこうだった。人にも、ポケモンにも優しく、傷ついた者が誰であれまずは手を差し伸べる。スミレはそうして差し出された手を、振り払った事があった。

 

「・・・・分かった。」

スミレの脳裏を、かつての邂逅が蘇る。太陽のように笑う少女と、差し出された手。『友達になろうよ』と、そう言ったあの少女の言葉が怖くて、信じられなくて、手を振り払って逃げ出したあの日の思い出。しかしそんな事、もう思い出しても仕方がない。スミレは黙って、走り出したヒマワリに追従した。

 

「待ってぇぇぇぇ!」

ヒマワリがピッピに向けて走り出す。ピッピはそれに気づくと何とか逃げ出そうと、走り出す。そんな元気あったのかとスミレは驚愕し、動きを止めるためボールに入れていたバタフリーを呼び出す。

 

「バタフリー、しびれg「ダメ、スミちゃん!!」・・・何故?」

バタフリーに指示を出そうとするスミレだが、ヒマワリの一喝で中断する。【しびれごな】による麻痺は、【どくのこな】のようにダメージは与えない。【ねむりごな】が最適なのだが、覚えさせていない現状では使えない。攻撃は論外、なので【しびれごな】で動きを止めようとしたのだ。

 

「ピッピを攻撃しちゃダメだよ、スミちゃん。ヒマはピッピを助けたいだけだもん。」

 

「・・・逃げられてるけど。一旦確保しないとダメでしょ。」

「・・・そうかもしれない。でも、助けに来たのに攻撃したら、怖がらせちゃう。信じてもらえないよ。」

 

そもそも逃げられているので、信用もクソもないのだが・・・。とスミレは思う。だがヒマワリの意思は固い、これはテコでも動かなさそうである。

 

「・・・分かった。ただし、ピッピの処遇に関して私は介入しない。勝手にその辺で鍛えてるから、勝手に助けてればいい。」

スミレはそう告げると、バタフリーを連れてさっさと何処かへ歩いて行ってしまった。悲しそうな顔をするヒマワリを置き去りにして。

 

 

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

「おぉ〜い、ピッピぃ〜。どこにいるのぉ〜?傷つけないから、出ておいで〜。」

ヒマワリがそう声をかけながら、ピッピを探す。別れ際にスミレから、『あの傷ならそう遠くへはいけないはず』とアドバイスを貰った為、ヒトカゲと共に呼びかけ、ピジョンには偵察に行ってもらっている。スミレが居ないというのは、ヒマワリにとって堪える事だった。冷静で、判断も的確。知識も豊富で頭の回転も早い。少し冷たい所もあるけれど、なんだかんだ優しい。ヒマワリを嫌な顔をしつつもちゃんと連れて行っている辺り悪人ではない。今の性格になる前のスミレを、ヒマワリは僅かに知っているためにピッピを実質見捨てたスミレの態度には悲しさが溢れてしまったが、きっといつか昔のスミレに戻ってくれる、ヒマワリはそう信じている。

 

(今は、スミちゃんに頼らずにピッピを助ける・・・!)

ヒマワリは、人知れずそう決意を固めた。

 

 その時は、あまり遠くなかった。偵察に向かっていたピジョンが戻ってきて、案内されながら向かうと、傷だらけのピッピが気を失っているのを見つけた。ヒマワリは慌てて、荷物から[きずぐすり]と[オレンのみ]を取り出した。[きずぐすり]は患部にスプレーする事で傷を癒す道具、[オレンのみ]は食べさせる事で体力を回復させる木の実だ。[オレンのみ]はニビシティの八百屋で、スミレが比較的甘く、しかし熟し過ぎていない丁度いいものを選別してれたし、ヒマワリも試食済みなので酸味が強過ぎて美味しくないということはない。[きずぐすり]を患部に振りかけると、ピッピが傷口が染みるのか呻き声をあげる。

 

「ごめんね・・・痛いよね・・・・沁みるよね・・・。でもお願い、頑張って・・・。」

あまりに哀れなピッピの姿に、心優しいヒマワリはポロポロと涙を流しながらも[きずぐすり]を掛ける手を止めない。ピジョンとヒトカゲがピッピに励ましの声を掛ける。薄っすらと目を見開いたピッピは、必死になって看病する、一度は自身を傷つけた奴らの仲間かと思い逃げ出した相手の姿を見る。

 

「ピ・・・ピィ・・・。」

ピッピがわずかに発した言葉にヒマワリはパァッと顔を明るくさせる。

 

「よかったぁ・・・・目、覚めたんだぁ・・・・。」

「ピィ・・・。」

ヒマワリは[オレンのみ]を差し出す。

「オレンのみ、食べて。ヒマの友達が選んでくれたから、とってもおいしいよ。」

ピッピは初対面での警戒は何だったのかと言わんばかりに、警戒もなく食いついた。傷だらけ、泥だらけな顔を綻ばせながら[オレンのみ]を頬張るピッピに、ヒマワリも笑顔を浮かべる。

 

 

「よぉ、そこにいたか。ピッピ。」

その空間に水を差すような声が響き、ピッピの顔が凍りついた。

「誰⁉︎」

ピッピの顔色の変化に気づいたヒマワリが警戒心を露わにして問いかける。少しずつ、手先が震え出した。

 

「誰⁉︎は俺のセリフだよ、全く・・・回復なんてしちゃあダメじゃないか。」

そこには、黒服の男が1人。ヒマワリはこの男の正体は知らない。だが、トキワシティで対峙したあの2人組以上の悪意を感じた。

「あなたが・・・このピッピを傷つけたんですか?」

「そうだ、と言ったら?」

男はニヤニヤとしながら聞き返す。

「ヒマは、あなたを許さない。」

その言葉に、男は大笑いした。

「ギャハハハハハハッ!バカバカしい!テメェみたいなガキに許されなくてもなぁ?俺には関係ねぇ・・・退け、ガキ。じゃねぇと命はねぇぞ。」

ヒマワリの体が恐怖に震える。助けてくれるスミレもいない、あの時のようにサトシもカスミも、ジョーイさんもいない。ただ1人、危険な男と対峙する、そんな経験のないヒマワリは、恐れ慄く。だが、ふと後ろを見るとヒマワリの目にある光景が映った。それは、恐怖に怯え、震えるピッピの姿。途端に勇気が湧いてきて、男に向き直るため正面を向き、気づいた。

「カゲェ!!」

「ピジョォォォォォ!!」

ヒマワリの前に立ち、威嚇の声を上げるピジョンとヒトカゲ。

 

「嫌だ・・・退かない!ヒマは絶対、ピッピを守る!!」

「クソガキィ・・・。」

ヒマワリの啖呵に、男は額に青筋を浮かべる。

 

 

男もヒマワリも気づかない。それを見守り、何処かへ飛んでゆく一羽の蝶がいたことに。

 

「邪魔するなら消すだけだ、行けぇ!ベトベター!!」

「ベタァァ」

男がボールを投げ、どくタイプのポケモン、ベトベターが飛び出す。

 

「ポーちゃん、ピッピをお願い!やるよ、カゲちゃん!!!!」

「カゲェ!!」

 

「ベトベター、【ヘドロばくだん】!」

ベトベターの口から悪臭のするゴミの塊が投げつけられ、ヒマワリとヒトカゲは涙目になり、ヒトカゲは必死の形相で技を避ける。

 

「追撃だ、【ヘドロばくだん】!」

「迎え撃って、カゲちゃん、【ひのこ】!!」

ゴミの塊と火の粉が空中でぶつかり、相殺される。

 

「お願い、【りゅうのいぶき】!」

「カァァ、ゲェ!!」

「【とける】だ、ベトベター!」

ベトベターは【とける】を使い、【りゅうのいぶき】を避ける。

 

「今度は、【ひのこ】!」

「もう一発、【とける】!!」

火の粉を放つも、ベトベターは再び溶けることで技を避ける。

「うぅ〜、当たらないい〜!」

ヒマワリは攻めあぐねる。攻撃しても避けられ、かといって接近戦はあの悪臭に突っ込ませるようで嫌だ。足りない頭を必死に回転させていると、ある言葉を思い出した。それはヒマワリがポッポを使い、スミレのバタフリーと模擬戦した時にポッポがバタフリーに一撃も与えられずに翻弄され、どうやったら当てられるかを聞いた時のスミレの言葉。

『フィールドを使うといいかも。砂埃なんかで視界を塞いで、それに紛れて攻撃する・・・とか?バトルコートであんまりやり過ぎちゃうと、修理代を請求される羽目になるけど。』

 

ここは山の中、土や砂には困らない。

「カゲちゃん、地面に【りゅうのいぶき】!」

「カァァ、ゲェ!!」

 

「何⁉︎」

余裕の表情を浮かべていた男は突然のことに驚愕した。砂埃が一気に撒き上がり、ベトベターの位置さえ分からない。

 

「今だよ、【りゅうのいぶき】!!」

「カァァ、ゲェェェ!!!!」

 

男のベトベターは、困惑した。突然地面に放たれた相手の技、そして閉ざされた視界。どうにか逃げなければと思い独断で【とける】を使おうとして、やめる。あの男は、いつだって自分の思い通りにならなければ気が済まない男だった。指示に従っているのだって、男に捕まった上に従わなければ男やその仲間から暴行を受けたからだ。ベトベターは諦めに似た表情を浮かべ、青白い閃光に飲み込まれた。

 

 

ヒトカゲの【りゅうのいぶき】が炸裂する。砂埃に引火して爆発を引き起こし、吹き飛ばされたベトベターは気絶する。

ヒマワリの勝利だ。

 

「チッ、役立たずが・・・。」

男は悪態を吐きながらベトベターをボールに戻す。だが直ぐに、男は笑みを浮かべる。

「やるじゃねぇか、ガキィ・・・。だが、俺にはあと2人仲間がいる。少し手間取ってるようだがもう直ぐ山中のピッピを捕まえ終えた仲間がやって来る。そしたら、テメェは潰される。」

ヒマワリは疲労の滲んだ顔で男を睨む。

「ギャハハハハハハ!その生意気なツラが絶望に歪むのが楽しみだぜェ!!」

男が悪意に満ちた笑い声を上げる。

 

 

ドシャリ

 

 

背後で何か重いものが落とされる音がして、男は振り返り、驚愕する。2人の仲間が、気を失って倒れているのだ。先ほどの音は、仲間が壁に叩きつけられた音だった。

 

「全く・・・ピッピの謎の負傷に現れないピッピの群れ。不審者の噂を聞いてたから警戒はしてたけど、結末は随分と大した事がない。まさか三流のポケモンハンターの仕業だったとは、あのピッピも随分と運がなかったらしい。」

冷たく、透き通った声が響き、男は驚愕を、ヒマワリは歓喜の表情を浮かべた。スミレだ。

 

「ジュンサーさんはもうこっちに向かってる。そこの2人の手持ちは全滅してるしピッピの群れも無事。どうやらヒマワリが助けたそのピッピは、群れから逸れた個体らしい。と言うわけで、フシギダネ。」

「ダネフシャ」

スミレの指示に短く返事をしたフシギダネが【つるのムチ】で男を容赦なくぶっ叩き、気絶させる。

 

こうしてピッピを巡る攻防戦は、幕を下ろした。

 

 

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

 ポケモンハンターをジュンサーに引き渡し、スミレとヒマワリはピッピの群れと合流していた。ピッピと別れる時が来たのだ。

 

「ピッピぃぃぃ、嫌だぁ・・・別れたくないぃ〜・・・。」

メソメソとするヒマワリに、スミレは何も言わない。普段なら、『捕まえればいい』とか言うものだが、ポケモンハンターに狙われ、傷ついたあのピッピが、ヒマワリとはいえ人間と共に行くことを望むかと言われたら、自信を持って言うことができない。

 

「・・・ほら、行くよ。」

スミレの言葉に、ヒマワリは泣きじゃくりながら頷き、別れを告げる。

 

「ピィィィ!」

その時、ピッピが何か話し始めた。

「ピィィ、ピッピ、ピピピッピ、ピィ。」

 

何かを感じ取ったか、ヒマワリは恐る恐る問いかける。

 

「一緒に・・・来てくれるの?」

「ピィ!!」

ピッピは頷く。

 

「ありがとう・・・ありがとう!」

ヒマワリは、空のモンスターボールを取り出すと、ピッピに差し出す。ピッピは自らそのボタンを押して、ボールに収納された。1回、2回、3回と回転し、ゲットされる。

 

「ピッピ、ううん。男の子だしピーくん!ゲットだよ!!!!」

 

人間への恐怖心はあっただろうに、ヒマワリが紡いだ友情はそれを超越した。スミレはヒマワリのその眩しい姿に、思わず目を逸らした。スミレには、直視する事ができなかったのだ。




読んで頂き、ありがとうございました。

スミレは敢えてヒマワリと別行動を取り、原因の追求に向かいました。非合理でも、目の前のポケモンを第一に考えるヒマワリと、事態の原因究明に努めるスミレ。どちらかが欠けていれば、あのピッピはあのまま命を落としていました。ちなみにこの事件の少し後に、サトシ一行がやってきて事件が起きるため、おつきみやまのピッピ達は非常に不運です。強く生きろ・・・。



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