ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第115話『ミュウツーの逆襲』④:ポケモン屋敷攻防戦

 グレンタウンの一角にあるその廃墟は、ポケモン屋敷と呼ばれて偶にトレーナー達が入り込む場所。だが、そこにとある者達が現れた。

 

ロケット団。カントー地方の裏社会に君臨するマフィア組織で、その影響は政治にすらも影響を及ぼすという。しかし、今回のロケット団が行う任務は、ロケット団にとって面倒極まりない任務であった。本来ならば、幹部を1人と下っ端数人を派遣してミュウツー関連の資料を探して回収させれば良かったのだが、予想以上にワタルの行動は早いしとある戦犯が無駄に欲を掻いたお陰で手間が増えに増えたのである。

「汚い場所だねぇ、だがまぁ、あの下民を迎えるには丁度良い場所だ」

その原因は、ロケット団の部隊を率いる、太った中年の男。その男こそが、政治家のカラシだ。この男、数々の悪行を行いながらもしぶとく政界に居続ける、ロケット団員から見ても相当な悪人だ。しかも、強い者にはよく媚びる癖に立場の弱い者には高慢と来れば、そんな男の護衛任務など誰もやりたがりはしない。だが、そんな任務を任されてしまった男がいる。ロケット団幹部のランス、スミレに執着して迂闊に挑んだ挙句将来有望なメンバーを多く監獄送りにした男だったが、今回はこの任務を他の幹部であるラムダ、アポロと共にサカキに任されていた。因みに、ラムダとアポロはただの戦闘要員であり、カラシとのやり取りなどの面倒ごとはランスが任されている辺り、サカキからも罰ゲームと認識されている恐れがある。

「カラシ様、奴らはもうじきこちらへ参ります」

カラシが自分の部下に金箔をテカテカに貼り付けた椅子を用意させるのを冷たい目で見そうになるのを堪えて情報を渡す。カラシは、部下にワインを用意させて呑んでいた。ワタルが来るというのに、全くもってお気楽なものである。

「うむ……だが、ワタルは問題ないな?」

「はっ……。私、ラムダ、アポロの3人掛りで足止めします。その間に、カラシ様はスミレを殺害し、脱出してください」

ランスの言葉に、カラシは不機嫌に鼻を鳴らす。

「何を馬鹿言っている、スミレは殺さんよ。アレは馬鹿娘のせいでキズモノにはなっているが、まだまだ使えるやもしれん。それに、良い贈り物も用意した。きっと奴は、喜んでくれるだろう!」

「(コイツ、ロリコンですか?流石に奴に同情しますよ)……失礼致しました」

ランスは、鼻息荒く主張するカラシに内心で怯えつつも遜る。

(……あの小娘が、さっさとこの馬鹿を叩きのめしてくれるとありがたいのですが)

続く苦行に、ランスは思わず敵を応援してしまっていた。

 

◾️◾️◾️◾️

 「ロケット団、及びカラシがいるな。下っ端が数十名で幹部はランス、ラムダ、アポロを確認。……スミレ、ハンサム」

ワタルは、カイリューの背中から勢力を確認すると、地上に降下したカイリューから飛び降り、スミレとハンサムに声をかける。

「おう」

「……はい」

2人は、小声で返事を返す。スミレに間があったのは、カラシの存在を知っての動揺だろう。

「まず、俺とハンサムが突入して場を荒らす。出来るだけの雑魚掃討と、幹部を釘付けにする。スミレは、その間にカラシを討て。ある程度荒らしたら、ハンサムは離脱して資料の捜索を頼む」

「私で勝てるんですか?」

ワタルの指示にスミレが質問すると、ワタルは頷く。

「ああ、奴はポケモンバトルは接待でしかしたことがない。ポケモンはそれなりの個体だが全て密輸品、信頼関係などクソもない。それに、君にとっては因縁の相手だ。恨みも込めて、しっかり叩きのめして来い。……出来るか?」

ワタルに笑い掛けられ、スミレは即決で頷いた。

「やりましょう」

 

 

「ハクリュー、【りゅうのいかり】」

スミレの指示で放たれた、ハクリューの【りゅうのいかり】がドアを吹き飛ばす。その瞬間、館内にワタルとハンサムが飛び込んだ。

「こういう時の為に、ポケモンは増やしておいたのさ……!グレッグル、ウインディ!!」

ハンサムが投げたボールから、グレッグルの他にウインディが飛び出した。

「ならばこちらは……。行くぞ、サザンドラ、ナッシー」

ワタルが投げたボールから呼び出されたのは、サザンドラとナッシー。サザンドラはイッシュ地方に生息する、ドラゴンタイプでもトップクラスに凶暴なポケモンで、その育成は、気性の比較的穏やかな個体であっても相当に苦労するのだとか。ナッシーは、カントーに生息する種類ではない。ドラゴンタイプを持ち、巨体と長い首を持つアローラ地方のポケモンである。

 

ドアの破壊音に反応して、続々とロケット団員が揃い始める。

「おやおや、これはカントーチャンピオンのワタルさんではないですか。また一般人頼りとは、チャンピオンの名が泣きますよ」

笑みを浮かべて声を掛けたのは、ロケット団幹部のランスだ。その左右には、ラムダとアポロが立っている。

「ほう?貴様はランスか。シルフカンパニーでその一般人を相手に随分と惨めな敗北を喫した記憶があるが、性懲りもなく現れたか?」

ワタルがそう言って煽ると、ランスは表情を歪める。どうやら、舌戦ではワタルの圧倒的な勝負らしい。

「……今回は、私達幹部は貴方達2人の迎撃を言い渡されましたよ。どうやら、今回の主がスミレさんに会いたいと」

そう言ってランスが手を叩けば、ロケット団員達が道を開ける。あからさまに、奥へと誘われているのだ。

「あからさまな罠だな、信用できん」

「信用してください、としか言いようがありませんね」

ワタルがランスを睨みつけるが、ランスは意地の悪い笑みで受け流す。

ロケット団としては、別にカラシが失墜して貰っても別に代わりはいるので問題ない。むしろ、娘であるアクラのやらかしが周知されてしまったせいでかなり信頼を落としている現状では、碌な未来は見えないのである。

「これで、察しろよ」

と、横から発言したラムダがボールからゴルバットを呼び出す。それを見て、ワタルは苦々しい表情を浮かべる。これは、スミレでは勝てない。そしてスミレも、自分では幹部に勝てないと見ると一歩前に出る。

「……行きます」

「大丈夫なのか?」

ワタルが心配げな視線を向けるが、スミレは不安を押し殺すように頷く。

「やります。……でなければ終わりですから」

スミレの覚悟に、ワタルは力強く頷いた。

「分かった。無事を祈る」

 

スミレは、階段をまっすぐ登る。ロケット団の列を横目に、奥の部屋へ。だが、ランスの横を通った丁度その時、ふと立ち止まる。

「横から、攻撃するかと思った」

「しませんよ、あのクソ親父が五月蝿いのでね。……今回ばかりは流石に同情します」

疲れたような声で呟くランスに、スミレは恨みもそっちのけで憐れみの視線を向ける。

「そ……。随分と苦労してるね」

「貴女に言われたくはありませんね」

ランスの返答に、スミレは少し目を見開くと再び足を動かした。

 

◾️◾️◾️◾️

 

 「さて、始めましょうか」

スミレが奥の部屋に入ったのを確認すると、ランスは宣言してボールを取った。

「チャンピオン、ワタルを殺すのは流石に骨が折れますがね。下っ端共は左右に展開、取り囲みなさい」

横から口を出したアポロの命令で、下っ端達は屋敷のあちらこちらに散開してポケモンを呼び出す。呼び出したポケモンは、コラッタのような弱いポケモンからスピアーのような強力なポケモンまで様々だ。

「マタドガス、行きなさい」

「ブーバー」

ランスはマタドガス、アポロはブーバーを呼び出し、ラムダは呼び出していたゴルバットをそのまま起用する。周囲を包囲され、ハンサムは冷や汗を流す。ワタルが居るとはいえ、巨大組織の幹部3人の全力に屋敷を埋め尽くす程の下っ端達。

「……どうする?ワタル」

ワタルに視線を向けると、肝心のワタルは笑っていた。楽しくて仕方がない、とでもいった風に。

「そうだな。……サザンドラ、低火力で【トライアタック】。ナッシーは【じんつうりき】で援護しろ」

ワタルがまるで居酒屋で取り敢えずビールを頼むかのように、軽い調子で指示を飛ばす。すると、サザンドラは敵のいない真上に向かって3つの頭から【トライアタック】を放つ。誰も居ない場所に、通常よりも低い火力で技を飛ばすことに、ハンサムもロケット団も思わず頭に疑問符を浮かべる。

「ナッシー、今だ」

しかし、ワタルの合図が全てを変えた。ナッシーの【じんつうりき】で操られた【トライアタック】が分裂し、幾条もの細く鋭い閃光へと姿を変える。

「まさか……」

ハンサムが呟くと同時に、【トライアタック】の雨が、流星雨の如く降り注いだ。

「何ですかこの無茶苦茶な技は!?」

ランスが怒鳴るが、その気持ちは当然だ。技を技で操るというものは、余程息を合わせても失敗しかねない荒技なのだ。それをアッサリとやってのけるのは、もはや化け物の領域だった。降り注ぐ流星がロケット団のポケモン達を打ちのめす。幹部格にもなれば避けたり防御が出来るが、弱いポケモンを連れているような団員では不可能だ。弱いポケモンが続々と吹き飛ばされ、戦闘不能になる上に、強いポケモン達も無事では済まない。状態異常を付与されたもの、急所に当たったものもいて阿鼻叫喚だ。

 

 

「……申し訳ありません、サカキさま」

アポロは、苦々しい表情で呟く。油断はしていなかった。全力で警戒していたからこそ、弱くもすばしっこいポケモンや一撃必殺技を覚えさせたポケモンなどを連れた団員達を率いて臨んだ。だが、予想を遥かに超えてきた。これは無理かもしれない、と誰もが負けを覚悟し、しかしせめて一矢報いようと気合を入れる。

「さて、チャンピオンの戦いを始めよう」

ワタルは、自慢のマントを翻して堂々と宣言した。

 

「ゴルバット、【エアカッター】!」

「サザンドラ、砕け」

ラムダのゴルバットが【エアカッター】を放つと、それをサザンドラは右腕の頭で防御、右腕に付いた頭は【エアカッター】をまるで煎餅のように噛み砕く。

「ブーバー、【かえんほうしゃ】!!」

「ナッシー、【ドラゴンハンマー】」

【かえんほうしや】を真っ向から貫いたナッシーの頭が、ブーバーを吹き飛ばす。しかし、その頭目掛けてヘドロの塊が飛び、ナッシーはダメージを受ける。

「こちらを忘れて貰っては困りますよ、行きなさい!」

ランスのマタドガスが【ヘドロばくだん】を放ち下っ端の攻撃が後に続いて放たれる。アローラナッシーの巨体では、その攻撃は避けられない。

「させるかッ……。グレッグル、【どくづき】!ウインディは【しんそく】!!」

アローラナッシーに攻撃を加える下っ端のポケモンを、ハンサムのグレッグルとウインディが横から襲撃する。それを見たワタルは、もうひとつボールを手に取る。

「減らしておくか。……カイリュー!!」

呼び出したのは、自らの相棒であるカイリュー。ただでさえヤバい技を見せつけられたにも拘わらずこのタイミングでの最強の登場に、ロケット団達の空気が一気に張り詰める。

「不味い、カイリューを攻撃しなさい!!」

ランスの指示で一斉攻撃がナッシーからカイリューに向く。ナッシーがそれを庇おうと動くも、それをワタルは手で制する。

「撃て」

その言葉と共に放たれた橙色の閃光が、周囲を吹き飛ばした。館内に暴風が吹き荒れ、脆弱な建材が破壊される。そして下っ端達の多くもポケモンごと吹き飛ばされて脱落した。

 

そして、そんなバトルが行われている最中。スミレは、カラシと対面した。

 

 




あんな地獄でチャンピオン頑張ってるワタルが弱い訳がない
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