ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第127話『ミュウツーの逆襲』⑯: 少年達の決着

 シゲルが呼び出した最後のポケモン、カメックス。無傷の状態ならば兎も角、消耗したランクルスとの勝敗はもはや分からない。

「ランクルス、【アームハンマー】!」

「甲羅に入って躱わせ!」

ランクルスが迫り拳を振るうが、カメックスはその巨体を甲羅に仕舞うと地面を転がり、その背後に回り込む。

「しまっ……!」

「【こうそくスピン】!」

回り込まれたことに下っ端は動揺し、カメックスの【こうそくスピン】がランクルスを吹き飛ばすと壁に叩きつける。

「へぇ……ニブそうな癖にやるじゃない」

下っ端が引き攣った笑みを浮かべると、シゲルはそれを鼻で笑う。

「そういう君は知識不足だよ。【アームハンマー】は使う度に自身の速度を落とす諸刃の剣、あれだけ連打したなら当然の結果さ」

「ほんっと、壊し甲斐があるわね」

「残念だが、遠慮しておくよ」

下っ端とシゲルは、互いに強気な笑みを浮かべ、しかしその視線で睨み合う。

「ランクルス、【サイコキネシス】」

「殻に籠もれ」

ランクルスが【サイコキネシス】を発動するが、カメックスが全身を甲羅に収める。カメックスはまるでボールのように跳ね飛ばされて壁にぶつかる。

「【みらいよち】」

「全力でエネルギーを貯めろ、カメックス」

ランクルスは【みらいよち】を発動し、対するカメックスは背中の砲台にエネルギーを溜める。

「【サイコキネシス】!!」

「耐えろ!」

【サイコキネシス】がカメックスを襲った。カメックスはエネルギーを溜めながら、全身を襲う圧力に耐える。

「【アームハンマー】!!」

「耐えろ!」

ランクルスの拳がカメックスの頬を打つ。カメックスは、表情を歪めタタラを踏むが、持ち直す。

「……どういうつもり?」

「なんでもいいだろう?」

下っ端の疑念にシゲルは笑みで返し、下っ端は眉を顰める。

「【サイコキネシス】! 連打しな!!」

強烈な圧力がカメックスを引き摺り、壁に叩きつける。そして連続で放たれた【サイコキネシス】が、壁にぶつかったカメックスをそのまま減り込ませる。

「……そろそろか」

シゲルが、表情を引き締めてそう呟いた。視線の先にいるカメックスは、既に満身創痍だった。だが、その目には力強い光が宿っていた。

「これで終わりよ! 【みらいよち】!!」

そう叫ぶと同時に、上空から落ちてきた【みらいよち】のエネルギーがカメックスの全身を押し潰す。

「耐えろ、カメックス!!」

シゲルの叫びに、カメックスは笑った。そして、爆発が起こりカメックスを襲う。

「ガァァァメェェェェェ!!!!」

しかし、カメックスは立っていた。力強く咆哮をあげ、ランクルスを睨みつけた。その全身を、青いオーラが微かに包み込んでいる。

「一体……何がッ……!」

その光景に、下っ端は目を見開いて驚く。それを見たシゲルは、得意げに笑った。

「知らなくても仕方がないさ。これは、最新の研究を追っていなければ分からないことだからね。これは、" 特性 " と呼ばれている力だ。ポケモンがとある条件下で発揮する、個体や種族によって違う技と別の特殊能力。……そしてボクのカメックスの特性は、体力が消耗した時にみずタイプの力を増加させるというもの。だからこそ、ボクはカメックスにここまで攻撃を耐えさせたんだ。……特性で火力を上乗せした、最大最強の一撃をもって君に勝つために」

その言葉が終わったその時、下っ端はその光に気がついた。青いオーラに包まれたカメックスの砲台が、眩い光を放っているということに。

「……まさか、これは」

下っ端は、呆然と呟いた。凄まじいエネルギーが、空間を揺らめかせ、下っ端の腕に鳥肌を起こす。

「【アームハンマー】で速度の落ちたランクルスでは、この砲撃は避けられないだろうね。……感謝するよ、キミのお陰でまたひとつ強くなれる。だからこそ、ここで詰みだ」

 

◾️◾️◾️◾️

 向き合って立つリザードンとガブリアスが、至近距離で睨み合う。

「ガブリアス、【ドラゴンクロー】!」

「リザードン、【きりさく】!!」

その指示で一気に接近するとガブリアスの【ドラゴンクロー】とリザードンの【きりさく】が真っ向から激突。それまでの消耗によりガブリアスが僅かに押し負ける。

「チッ……!」

「【かえんほうしゃ】!!」

リザードンの放った追撃の業火がガブリアスを吹き飛ばすが、ガブリアスは空中で体勢を整えると火炎を振り払い着地する。

「【りゅうのはどう】」

「【かえんほうしゃ】!」

今度は、両者の遠距離技がぶつかり合い爆発を起こす。どちらの技も、相手には届かない。

「ガブリアス、【げきりん】だ」

ここで、下っ端が指示を飛ばしてガブリアスが【げきりん】を解放した。目が紅く染まり、その全身にエネルギーが充満する。

「ガァァァ!!!!」

ガブリアスが咆哮をあげて飛び掛かると、右腕を振り下ろす。その一撃はリザードンの頭を殴り、リザードンは膝をつく。

「【きりさく】で防御だ!」

サトシの指示でリザードンは【きりさく】を使用、振り下ろされた左腕に叩きつけて攻撃を逸らすと、ガブリアスの左腕が叩きつけられた地面にはヒビが入る。

「ガァァァ!」

ガブリアスは地面に突き刺さった左腕を抜くが、その隙をサトシは見逃さない。

「尻尾で反撃だ!」

「ガァ!?」

ガブリアスの体力を【やどりぎのタネ】が奪い、リザードンの尻尾が追い討ちのように顔面を打つ。

「グォ……、グオオオオオ!!!!」

リザードンはガブリアスの肌に傷つけられて顔を顰めるが、それも一瞬。尻尾を勢いよく振り抜くと、ガブリアスは後退する。

「【りゅうのいかり】!」

リザードンが放つ【りゅうのいかり】が、動きの止まったガブリアスを襲い爆発、大きく吹き飛ばす。ガブリアスは表情を歪めながらも着地する。

「やり返せ!」

ガブリアスは顔を歪めて痛みに耐えると速度を活かして突進、リザードンを掴んでそのまま壁に叩きつけた。

「グゥッ!?」

リザードンは苦痛に表情を歪め、声を漏らす。

「リザードン!?」

「グルルルル……」

サトシの声にリザードンは大丈夫だと唸り声で応えると、ガブリアスを睨みつけた。【げきりん】の火力により、リザードンも既に消耗している。今後を考えれば、あまり大きな消耗をし過ぎるのは吉とは会えなかった。

「ガァァァ!!!!」

「グオオオ!!!!」

両者が激しく吠えて突進すると、腕と腕を掴み合い手四つの体勢となる。純粋なパワー勝負では【げきりん】を発動したガブリアスが上回り、リザードンはじりじりと後退する。

「ガァ!」

まずガブリアスが頭突きを放ち、リザードンがのけぞる。

「グオオオ!」

リザードンがのけぞりながらもエネルギーを装填、至近距離から【りゅうのいかり】をぶつけ、ガブリアスは思わず後退しかける。しかし、リザードンに掴まれている現状では逃げることもできない。

「ガブリアス、噛みつけ」

「ガァァァ!!」

ガブリアスが、リザードンの肩に噛みついた。リザードンは驚きと苦痛で顔色を変えると、思わず掴んでいた腕を離す。

「【きりさく】! 引き剥がせ!!」

サトシの声が聞こえ、リザードンは後ろに下がろうとしていた足をもう一度踏み締めると、思い切り腕を振り上げた。それはガブリアスの顎を打ち上げ、噛みついていた牙を引き剥がす。

「【かえんほうしゃ】!」

「グオオオ!!」

そこに、至近距離の【かえんほうしゃ】。ガブリアスは炎の圧力によって押し戻され、膝をつく。するとガブリアスの目の色が元に戻ると同時に、その焦点が合わなくなった。混乱だ。

「まずい、回復をッ……!」

下っ端が道具を取るが、その間はこの場において致命的な隙だ。

「掴んで飛び上がれ!!」

サトシの指示で飛んだリザードンが、混乱するガブリアスを掴み宙を舞う。

「馬鹿な、ここは室内…………まさか!?」

下っ端はサトシの選択肢に困惑するが、それに気がついて上を見上げた。

「そうさ! ピカチュウが砕いてくれた天井からなら、リザードンは高く飛べる!!」

そう、ピカチュウが破壊した天井だ。結果的に上のフロアとの道を繋げ、リザードンに飛び上がるだけの余裕を与える。

「……いや、足りない!」

下っ端は、そう叫び笑みを浮かべる。情報で知っているその技を使うなら、まだ高さは足りていない。

「リザードン、ガブリアスを上に投げて【りゅうのいかり】!」

サトシが指示を飛ばし、リザードンは天井にガブリアスをぶつけると、【りゅうのいかり】を発射する。放たれた龍のエネルギーがガブリアスの腹に命中するとその体を押し上げ、そのフロアの天井を勢いよく破壊して更に上空へと吹き飛ばす。

「【りゅうのはどう】!」

しかしガブリアスは上空でエネルギーを溜めると【りゅうのはどう】を放ち反撃、リザードンに迫る。

「受け止めて【かえんほうしゃ】だ!!」

サトシとリザードンが選んだのは、その技を受け止めること。表情を歪めながらも胸で攻撃を受け切ったリザードンはすぐに反撃の【かえんほうしゃ】で攻撃、ガブリアスは飛ばされたフロアの天井すらもぶち抜いて、空へと吹き飛ばされる。

「ガブリアス!!」

下っ端が声を掛けるが、ガブリアスは力無く空中を漂っている。技を受けただけでなく硬い壁に叩きつけられた痛みが、ガブリアスの体力を大きく削っていたのだ。

「捕まえろリザードン!!!!」

そして、その翼で空を舞ったリザードンは凄まじい速度でガブリアスに追いつくと、その体を掴んで空中で激しく回り始める。

「ガァ……」

ガブリアスはあまりの回転に目を回し、リザードンの拘束を解いて逃げ出すことも出来ない。

「不味い……! これはッ!!」

「お前は強かった……、でもこの勝負、オレ達が勝つ!!!!」

「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

サトシの咆哮に応えるようにリザードンが吠えると、空中で静止し急降下を始めた。目指す先のサトシ達が居る地上へ、ただ真っ直ぐに。

 

 

◾️◾️◾️◾️

 

「エネルギー充填120%、放て! 【ハイドロカノン】!!」

「決めろリザードン、【ちきゅうなげ】!!」

 

 

 水流の巨大砲撃がランクルスの全身を飲み込んだ。防ごうと前に出された両腕は一瞬のうちに弾かれ、ランクルスは壁に激突する。激流が城壁を砕き、城の外までランクルスを吹き飛ばした。

「そん……な……」

下っ端が、呆然とした様子で呟いた。外から吹き込んだ風雨が、2人の全身を濡らす。

「ランクルスを回収しなよ。これでもう、勝負は付いた。……君がどんな事情を抱えてるのかは知らないし、何かが出来るわけでもない。でも、ボクは君に勝った。そしてこうして、先へ進む」

そう言って、佇む下っ端に背を向けて歩き始める。

「その先にある世界が、地獄だとしても……?」

下っ端の呟きに、シゲルは足を止めない。

「地獄と断定するにはまだまだ研究不足だよ、この世界は。だからこそ醜くもあり、楽しくもあるんだがね」

シゲルはそう言ってひらひらと手を振ると、階段をゆっくりと降りて行く。その姿を下っ端は、見ていることしかできなかった。

 

 

 リザードンが回転しながら急降下し、ガブリアスを地面に叩きつける。地面はひび割れ、激しく破片は飛び散る中、激しい衝撃がガブリアスの全身を打ってガブリアスは立つこともできずに目を回す。戦闘不能だ。

「……ガブリアスが。そんな」

下っ端は、ガブリアスが負けた現実を受け入れたくないというように呟く。サトシはそれに静かに視線を向け、口を開いた。

「お前はさ、そんなに凄いのにどうしてロケット団に入ったんだ?」

サトシに尋ねられ、下っ端は自嘲するように笑う。

「……別に、ただの成り行きだよ。前職の上司に、そいつがやらかしたミスの全責任押し付けられてクビになったんだ。それがとんでもない大問題でさ、その尻拭いを手伝ってくれたのがロケット団だった。だから俺は恩を返すために俺の人生をロケット団に捧げた。どこにでもある悲劇で簡単に腐っちまった、弱い人間だよ」

「それは違う」

サトシは、悲しげな目で下っ端の言葉を否定した。

「じゃあなんだってんだ?」

「辛さなんて、苦しさなんて誰かと比べるものじゃないさ。自分が辛いって思ったら、それは辛いことなんだから。それをオレは、人の不幸と比べて笑ったりも馬鹿にしたりもしないよ」

下っ端は、サトシの言葉に目を逸らす。まるでスミレが人から目を離すような、眩しすぎるものを見たかのような表情だった。

「……そうかよ。…………お前、ポケモンマスターに本気でなれると思っているのか? あんな曖昧なものを目指した先に、何がある?」

誤魔化すように、下っ端は尋ねた。サトシの目指す旅の終着点を。

「分からない。でも、オレは進むよ。ポケモンマスターって言葉の意味は曖昧だけど、この先の冒険の中にきっとあるって信じてるから。でも、ひとつだけハッキリとしていることがあるんだ」

「なんだ?」

「ポケモンマスターってのは、オレがなりたい自分自身ってことさ。ま、夢なんだから当たり前の話だけど。だから、なりたい自分になるために必要なことは、この先もずっとやっていかなきゃいけない」

そう言ったサトシの目に、下っ端は悟る。

「逃げないつもりか? どいつもこいつも、消耗してるだろうに」

「逃げないさ。だって、ポケモンは回復できるしまだやれることはあるからな!」

そう言ってサトシは、太陽のように笑った。

 

「……悪かった」

「ああ、分かってる」

背中合わせにそう声を交わして、サトシは前へと一歩を踏み出した。

 




リザードンがガブリアスを上空に吹き飛ばすシーンは、割とONEPIECEのクロコダイル戦のシーンを参考にしてます


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