ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第133話『ミュウツーの逆襲』㉓: 大怪獣サイドン

 ラプラスを落とされたスミレは、ボールを投げてフーディンを呼び出す。6体目が分からない以上、最強のフシギバナはそう簡単に動かせる訳でもない。

「フーディンか、それでどうするのかね?大人しくフシギバナを召喚すべきだとは思うが」

サカキに尋ねられ、スミレは口元を綻ばせる。

「……フシギバナを使えば、消耗したゴローニャを倒すことはできる。でも消耗は確実だし、後を考えれば使う手はないでしょ?」

「勝算は?」

「ないと思う?」

「いや、無いな」

サカキは、スミレの問いに否定で返した。スミレの才能、現状の実力等を鑑みても、なんの勝算もなくフーディンを選出したとは考えづらい。

「……フーディン、【テレポート】」

「だろうな」

スミレが淡々と呟き、サカキは予想通りと頷く。フーディンが転移したのは、上空だ。

「【サイケこうせん】」

フーディンの【サイケこうせん】があっさりと命中し、ゴローニャは膝をつく。

「ゴローニャ、耐えれるな?」

「ニャッ!」

「(空から攻撃すれば、ゴローニャには反撃の手はない!)フーディン、【シャドーボール】!!」

サカキの発言で耐える方向性であると読んで、スミレは策を立て指示を飛ばす。フーディンは【シャドーボール】を生成し、投げつける。

「ゴローニャ、【あなをほる】」

対するサカキが選んだのは、【あなをほる】だ。ゴローニャが地中に潜り、無人の地面に【シャドーボール】が命中、爆発を起こす。

「迎撃準備!【サイケこうせん】で炙り出せ!!」

「【ロックカット】、壁を伝って飛び上がれ」

【サイケこうせん】が地を焼き、ゴローニャを穴から追い出そうと攻撃する。対して穴から飛び出したゴローニャは火花を散らして身を削りスピードを一気に上げた。そして壁に向かってジャンプ、壁とぶつかった瞬間に高速で回転し、落ちることなく壁面を走り出す。これにはスミレも困惑を隠せない。

「……ッ!【サイコ】」

「突っ込め!」

スミレの指示を遮るようにサカキの声が響き、壁を駆け上がったゴローニャは天井に到達、天井を蹴って飛び出すと、空中のフーディンを巻き込んで墜落する。

「フーディン!?」

「ディィ……ン!」

スミレの叫びに呼応するように、フーディンは立ち上がる。

「ニャ……ァ……」

対するゴローニャも立ち上がるが、既に瀕死寸前だ。もはや、後一撃で落とせる程。

「ゴローニャ、【じしん】」

「浮いて!」

ゴローニャが【じしん】を放つが、フーディンはサイコパワーで僅かに体を浮かせやり過ごす。

「ゴローニャ、突っ込め」

「【サイコキネシス】」

回転しながら突っ込んだゴローニャを、フーディンの【サイコキネシス】が捉えた。

「チッ……!」

サカキが小さく舌打ちする中、ゴローニャの巨体は少しずつではあるものの、確実に宙に浮いていた。

「……落として」

ゴローニャの体が天井付近まで浮かんだ頃に発されたスミレの冷たい言葉を聞き、フーディンは腕を上げ、思い切り振り下ろすような動作をする。すると、ゴローニャの巨体は頭を下に思い切り床に叩きつけられた。衝撃が広がり、床がひび割れる。

「成程、よもやここまでとはな」

サカキがゴローニャをボールに戻しながら語り掛ける。

「私には、まだ控えがある。……勝ち目は、ある」

「そうだな。だが勝ち目があるのは此方も同じだ」

サカキとスミレは睨み合う。ポケモンの数ではスミレ有利だが、サカキの表情には笑みが浮かんでいるのに対してスミレの表情には緊張の色があり、それはまるで両者の如何ともし難い経験差を表しているようだった。

(あわよくばフーディンで倒す。もしダメでもフーディンで可能な限り削って、フシギバナに託す。それで終わり)

「さあ、行ってこい。サイドン!」

「ドォォォォォォォォン!!!!!!」

ボールから飛び出したのは、怪獣と呼ぶのが相応しい風貌のポケモンだ。サイドン、スミレも所持するサイホーンの進化形。その姿から放たれる言いようのない威圧感に、スミレは思わず息を呑む。

「……それでも、勝つ!フーディン、距離を取って【サイケこうせん】!」

スミレは勢いよくサイドンを指差し、フーディンは上空に【テレポート】で転移すると【サイケこうせん】を放った。

「腕で防いで【うちおとす】」

サイドンは【サイケこうせん】を腕で受け止めると反撃の【うちおとす】を使用、サイドンの口から発射された岩石がフーディンを地面に叩き落とす。

「フーディン、【シャドーボール】!」

「サイドン、【じしん】」

フーディンの放った【シャドーボール】はサイドンの顔面に命中、爆発を起こす。しかし爆煙から全く効いてない様子でゆっくりと出てきたサイドンが腕を地面に叩きつければ、地面に立つフーディンを【じしん】の振動が襲った。

「くっ……!【サイコキネシス】!!」

ダメージを負いながらも立ち上がったフーディンが放つ【サイコキネシス】が、進撃するサイドンの動きを止めた。全身を包むオーラに捕まり、サイドンは不快そうに顔を顰める。

「フゥゥゥゥ……!」

フーディンが汗を流しながら懸命にサイドンの動きを止めるが、サイドンはジリジリと体を動かし前に進もうともがく。

「【ギガインパクト】」

サカキの一言で、空気が爆発した。サイドンの全身から溢れ出るそのパワーは【サイコキネシス】を消し飛ばし、その勢いのままにフーディンへと突っ込んだ。

「【テレ】……!」

「遅いな」

スミレが指示を飛ばそうと口を開くが、サカキはそれを『遅い』と断じた。フーディンは回避も出来ずにそのままサイドンの突進に巻き込まれ壁に激突する。そしてそのままサイドンの体と城の壁に挟まれ押しつぶされ、フーディンは苦しげな叫びをあげた。

「【テレポート】!!」

やっとのことで発動させた【テレポート】により脱出、巨大なダメージに息を切らせながらもサイドンの背後へと回り込んだ。

「ほう、脱出するか……」

「フーディン、【サイケこうせん】!!」

サカキの呟きに気も止めず、スミレは叫ぶ。【ギガインパクト】の反動で動けぬサイドンの背中に、連続で【サイケこうせん】が命中する。

「サイドン、動けるか?」

「まだ!【シャドーボール】!!」

せっかくのチャンスに追撃の手を緩める訳がない。続いて放たれた【シャドーボール】がサイドンの背中で爆発、爆煙がサイドンの巨体を包み込む。

「返礼だ、【ドリルライナー】」

「【サイコキネシス】」

だがしかし、サイドンは再び動き始めた。連続攻撃が降り注ぐ中フーディンに向き直ると思い切り地面を蹴って飛び出した。【サイコキネシス】で迎撃するフーディンだが、回転するサイドンのツノが次第にそれを食い破る。

「……そのフーディン、能力だけかと初めは思ったが案外戦士の素質があるかもしれん。大切なものの為に勇気を奮う、それはたとえ普段が腰抜けであったとしても敬意を払うべき所業だ。だがまだ青い、私のサイドンに勝つにはまだ足りんな」

その言葉が終わる丁度その時、【サイコキネシス】はまるでガラスを叩き割ったような音と共に弾かれ霧散した。そしてそのまま、サイドンは二の腕をフーディンの首に叩きつける。

「フーディン!?」

「さあ終わりだ、【ギガインパクト】」

スミレが慌てて振り返る。サイドンはフーディンの体を軽々と吹き飛ばし、次いで突進して追いつくとその太腕でラリアットし、壁に叩きつける。フーディンが叩きつけられると壁が抉れ巨大なクレーターを形成した。そのままサイドンはフーディンの顔面を掴むと、壁に押し付ける。

「ディ……」

フーディンはサイドンを睨みつけると、クレーターから剥がれ落ちるように地面に墜落。落下したフーディンはそのままピクリとも動かなくなった。

 スミレが慌てて駆け寄り様子を見れば、フーディンは気絶しているだけ。戦闘不能ではあるが死んではない。スミレは思わず安堵の息が漏れる。

「良かった……、生きてる…………。ありがとう、フーディン」

スミレはフーディンの頭を優しく抱きしめ労いの言葉を掛けると、最後のボールに手を伸ばす。

「次で最後か、楽しませてくれたまえよ」

「私のポケモンは強い。今までだって退屈はさせなかったでしょ?」

「フッ、違いない」

真剣な表情で睨みつけるスミレと楽しげな笑みを浮かべるサカキ、2人の視線が交錯する。

 

「みんながここまで繋いでくれた……。みんなが頑張ってここまで追い込んでくれた……。なら、最後は決めるよ!相棒!!」

「バナァァァァァァァァァァァァ!!!!」

そして満を辞して、フシギバナが降り立った。

 

「来たか、フシギバナ……!サイドン、【うちおとす】」

「【はなふぶき】!」

フシギバナの背中の花から、花弁の嵐が吹き荒れる。対してサイドンは連続で岩石を発射。花弁とぶつかり爆発を起こせば、周囲の花弁も巻き込まれて弾けた。

「ふむ、【ドリルライナー】」

サイドンがツノを回転させ、力強く走り出す。【はなふぶき】の花弁が前から、横から、背後から迫り花弁の雨がサイドンに叩きつけられるが、サイドンはそれでも突き進む。

「フシギバナ、【つるのムチ】」

突っ込んできたサイドンのツノを、フシギバナが伸ばした蔓が締め上げ受け止める。

「バナァ……!」

「ドォン……!」

ツノと蔓による押し合いは、僅かにサイドンが有利。技のタイプ相性により拮抗しているが、パワーでは確実にサイドンが勝っている。

「【うちおとす】」

吐き出された岩石がフシギバナの額を打ち、フシギバナは思わず目を閉じて怯んだ。

「フシギバナ、踏ん張って!」

スミレの指示でフシギバナはより一層足に力を入れる。

「サイドン、【ギガインパクト】!!」

「フシギバナ、【メガ】……いや、【ギガドレイン】!!」

サイドンが全身に強大なエネルギーを纏い、フシギバナの蔓を弾き飛ばすとその額に頭突きを決める。そのまま足を踏ん張り、フシギバナの巨体を引き摺るように壁へと押しやる。だが、フシギバナも黙って耐える訳ではない。【ギガドレイン】を発動してサイドンのエネルギーを吸収、自身の体力を回復しつつ衝撃に耐え続ける。

(パワーでは確実に負けてるッ……!でも、相性と回復による持久力ならフシギバナに勝ち目はある!!)

「押し込め!」

「踏ん張れぇぇぇぇ!!!!」

押し込むサイドンに引き摺られるフシギバナ。その巨体は壁に叩きつけられる寸前、それこそミリ程の距離を残して停止した。ダメージは少なくないが、【ギガドレイン】による回復を行ったため予想以上に消耗していない。

「何!?」

思わずサカキも、驚きを露わにする。

「【はなふぶき】!」

まるで竜巻のように回転しながら放たれた【はなふぶき】が至近距離で炸裂し、サイドンの体を押し返す。

「ぬう……、動けんか」

そう、サイドンは反動で動けない。その隙を、スミレは見逃さない。

「フシギバナ、【つるのムチ】」

「バナァ!!」

伸ばされた蔓が唸り、サイドンの頬を鋭く叩く。サイドン顔を顰めてよろめく。

「追撃、【はなふぶき】」

追撃の【はなふぶき】が放たれ、サイドンは壁に叩きつけられる。石製の壁が破壊され、隙間風が吹き込んだ。

 

「反撃だ、【うちおとす】」

「ドォォォォォォン!!」

反撃の【うちおとす】が放たれ、フシギバナはよろめく。その隙にサイドンは立ち上がり、フシギバナの眼前へと復帰する。

「【つるのムチ】!」

「【うちおとす】」

伸ばした蔓が、今度は岩石によって叩き落とされる。

「【はなふぶき】」

「【じしん】」

フシギバナの【はなふぶき】とサイドンの【じしん】が、すれ違い様に互いへと命中した。

「【つるのムチ】」

「捕まえろ!」

畳みかけようとスミレが指示を飛ばし、フシギバナが蔓を伸ばしてサイドンを狙う。だがサイドンはその蔓を自慢の剛腕で掴み引っ張った。

「……ならっ!」

スミレが状況を判断して指示を行う、その間にサイドンはフシギバナの眼前に迫っていた。

「こんなやり方は知っているかな?……【じしん】」

サイドンは【じしん】を引き起こすエネルギーを込めたその拳を、フシギバナの脳天に叩き込んだ。

 

 




フーディンのやられ方、お察しの方もいらっしゃるかも……。そして最後、白ひげ戦術をやりやがった怪獣サイドン。
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