ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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お待たせしました、個人的にはサトシ、シゲルの決着回くらいは熱く書けたんじゃないか?と思います


第134話『ミュウツーの逆襲』㉔:決着!スミレVSサカキ

 フシギバナの脳天に【じしん】のエネルギーを纏った拳が叩きつけられ、フシギバナは思わず潰れたように地面に倒れ込む。辺りに衝撃波が広がり、スミレは息を呑む。

「フシギバナ!?」

「…………バ、バナァ」

スミレは叫ぶが、フシギバナは弱々しくも確かに声をあげる。フシギバナは、戦闘不能になっていなかった。しかし、安堵できる状況ではない。もしも【ギガドレイン】を使っていなかったらと思うと、体に震えが走る。

「まだやれる?」

「……バナァ!」

立ち上がったフシギバナに笑みを溢すと、スミレは息を吐いた。

「【じしん】」

「【つるのムチ】で捕まえて【ギガドレイン】!」

フシギバナの伸ばした蔓が、地面に叩きつけられようとしていたサイドンの腕を掴み引っ張る。そしてそこから【ギガドレイン】を発動、サイドンの体力を削りながらも自身の体力を回復する。

「ぬぅ、【うちおとす】!」

「【タネばくだん】」

飛ばされた岩石に対してフシギバナは【ギガドレイン】を一時停止、【タネばくだん】を放ち相殺した。

「蔓を引きちぎれ」

「手放して【はなふぶき】!」

サイドンは素早く蔓を引きちぎるが直ぐに花弁が再び竜巻のように舞い踊り、サイドンの巨体を押し出し距離を開かせる。

「ぬぅ……【ドリルライナー】」

「【タネばくだん】!」

回転するツノを向けて突進するサイドンに、フシギバナは【タネばくだん】を発射した。迫ってくる植物の種子をサイドンのツノが弾き飛ばせば、起爆しサイドンを爆発が襲う。

「【じしん】」

巨体と巨体では、互いの技を防ぐことはできても避けることはほぼ不可能だ。だからこその、真っ向勝負。サイドンが地面に腕を叩きつけ地震を起こすと、衝撃がフシギバナを襲う。

「くぅッ……!フシギバナ、【はなふぶき】!!」

「【じしん】を叩きつけろ」

花弁の嵐を【じしん】のエネルギーを纏った剛腕が殴り付け、【はなふぶき】は吹き散らされる。

「【タネばくだん】!」

「【うちおとす】!」

種子と岩石が空中で爆発し、両者は距離を取る。そして訪れる、僅かな膠着状態。

 

 

「ひとつ、聞きたいことがあった……」

ポツリ、とスミレが呟いた。

「ほう?」

サカキはスミレの発言に思わず眉を動かす。

「もしもこの世界が作り物で誰かの思い通りに動かされたとしたら、貴方はロケット団であり続けるの?」

「愚問だな」

サカキはスミレの質問に、敢えて胸を張った。

「…………貴方はもしかしたら、そうやって悪の組織でリーダーをしていないのかもしれない。正しい道で、正しい生き方が出来たかもしれない。それでも?」

「あり得ん話だ。作り物であろうが、この世界と私の意思が誰の思惑で動いていようが、私の野望を捻じ曲げることは誰にも出来ん」

「何故?」

スミレは、心の底から疑問に思った。

「私が私であるから、それ以上に説明は必要かね?」

サカキの堂々とした姿に圧倒され、スミレの背中を冷たい汗が伝う。

「……必要だよ、参考までに」

苦しげに、スミレは呟く。サカキはそれを見て鼻で笑うが、口を開く。

「私は親から組織を継いだ身だ。だがしかし、この身は過去に君臨したどのボスよりも野望に焦がれ、ロケット団としての生き方を望んだ男だ。そんな私が、世界の顔色を一々窺っているとでも思うかね?」

「世界など知らん、と?」

「ああそうだ。私が望み、実行するのは世界征服、征服されるもののご機嫌伺いなどすることは永遠にない。私はサカキという1人の人間としてこの世界に生まれ、この世界に部下を率いて侵略戦争を挑む。どのような世界であろうとも、そこは私が征服する場所でしかないのだ」

スミレの疑問にサカキは当然のように言った。

「貴方は、どうあっても意思を曲げないつもりなんだね」

「生き方に筋を通すとは、そういうことだ。たとえ親から継いだ組織であろうとも、私は私の意思でこの組織のトップとして君臨している。例えその道が悪であったとしても私は望んでこの生き方を選び、望んでこの道を歩んでいる。阻まれることは当然あろう、否定されることなど日常茶飯事であろう。だがしかし、一度歩むと決めた道から逸れることは我が人生全て、私に人生を捧げた全ての部下への裏切りだ、故に私は私自身の道から目を逸らすことを許さん。……そして命令した全ての悪事、行ってきた悪事の数々を私以外の者が背負うことは、たとえ我が部下であっても決して許さん」

ギラギラとした瞳に睨まれ、スミレは息が詰まる感覚が覚えた。悪党である筈の人間に感じてはいけない、人間としての敗北感。目の前の男が放つ圧力は、サカキが悪党として貫いた人生そのものだった。

「……そっか、それが貴方の生き方。悪の親玉として掲げる矜持」

「靡くなよ?」

まるで感嘆しているような、感服しているようなスミレの呟きに、サカキは睨みつけることで返答する。サカキにとって、スミレが簡単に意志を曲げるような人間であるならば即座に全力を出し、蹂躙して殺すだけである。だからこそ、そんなことはさせるなという警告を込めた視線で、スミレを牽制する。

「安心して。私は、ちゃんと私の誓いを曲げないから。ただ、少し参考になっただけ……私と貴方が、仲間になることは永遠に来ないよ」

視線を受けたスミレは、格上からの本気の圧に怯えながらも、その感情を胸の内に隠してサカキの目を見返した。

「ふっ……」

「……」

サカキが笑い、スミレが深呼吸をする。

 

「フシギバナ、【はなふぶき】!」

「サイドン、【じしん】」

花弁の嵐がサイドンへと押し寄せ、強烈な振動を起こすサイドンの拳によって振り払われる。

「【タネばくだん】、連続で!」

「【うちおとす】で迎え撃て!!」

爆発する種子と鋭い岩石が弾幕と形容できるほどに飛び交い、爆発が連鎖し巻き起こる。

「【つるのムチ】!」

「バナァ!!」

フシギバナから伸ばされた蔓が鞭となってサイドンを襲う。鋭い風切り音と共にサイドンを捉えた【つるのムチ】が力強くサイドンの頬を打つ。

「薙ぎ払え」

サカキが告げるとサイドンは腰を捩じり、体を鋭く半回転。放たれたのは技でもなんでもない、サイドンの尻尾を使った薙ぎ払い攻撃だ。だがその一撃は重く、フシギバナは地面を転がった。

「……フシギバナッ!!」

スミレが、悲鳴にも似た声を掛ける。

「バナ…………」

スミレを安心させるようにフシギバナは立ち上がり声を掛けるが、その声は弱弱しい。

(……足りない)

スミレは、そう痛感し悔し気な表情を浮かべる。それは覚悟や信頼でどうにかなる話ではなく、単純に技やポケモンの戦闘力の話だ。そもそも、回復と攻撃を併せ持つ【ギガドレイン】を所持し、タイプ相性は有利、相手は回避ではなく耐久を戦術とするサイドンだ。これだけの好条件で未だ勝てていない理由、それは単純な戦力差であった。差を埋められても逆転まで至れないスミレ側の決定打の無さもまた原因のひとつである。

(確か、種族的にフシギバナは物理技よりも特殊技の方が威力が出やすい……、私のフシギバナは【ギガドレイン】以外に、特殊技を持ってない。だから、微妙に威力が乗り辛くて決定打として機能しない。【千刃花】は使ってるけど、【じしん】で散らされるしただの技術でパワーの上乗せがされるわけじゃない。……あれ?確かあの技って…………)

必死に思考を巡らせ逆転の一手を探るスミレは、とある技を思い出す。それは高火力でフシギバナに進化してすぐ覚えられたが、デメリットを考慮して【はなふぶき】のままでいた技だった。

「(【メガドレイン】から【ギガドレイン】に覚醒したばかり……。でもこの子なら、私の相棒ならッ……!)フシギバナッッ!!!!」

「バ……バナッ!?」

スミレが、声が掠れるほどの声量で叫んだ。フシギバナは驚いたのか、勢いよくスミレの居る背後へ振り返る。

 

「【はなふぶき】を捨てるッ……、デメリットあるけど、もっと強い技にッッ……!もう一度、限界超えられる!?!?」

 

スミレが、前のめりになりながら叫んだ声に、フシギバナは悟ったような表情を浮かべる。いつだったか、嫌そうな表情で覚えさせないことを決めた技のことだと、フシギバナは直ぐに分かった。そうしないと、勝てない相手だと分かっていたから尚更だ。真剣勝負のこの場で新技を覚えることは、即ち限界を超えること。【メガドレイン】を【ギガドレイン】に進化させたばかりだが、そんなに頻繁に出来るものでもない。だがしかし、である。

(限界超えられなきゃ、仲間に合わせる顔がないよねぇ)

フシギバナは想う。ボールの中で見ていた、仲間達の戦いを見ていた。そして託された最終戦、フーディンが削ってくれた分もあるのに、勝てていない醜態。フシギバナには、自身がさらに強くならなければという思いがあった。

(僕はあの子の相棒だ。あの子にまた、苦しい想いをさせるわけにはいかない)

ずっと隣にいた相棒として、心強い仲間たちの後を任される大将として、敗北は決して許されない。

(僕に与えられた称号は、”最強 ”。なら、応えなきゃ)

信頼が嫌いで、でもどこか求めている少女から贈られた最強の称号。それに応えてこそパートナーだと、フシギバナは全身にエネルギーを漲らせた。たとえ代償があろうとも、ここで勝ってさらに強くなるため。【はなふぶき】を超えた新技に、フシギバナは手を伸ばした。

「……来たッ!!」

耳に届いたポケモン図鑑の音声に、スミレはフシギバナが新たな技を習得したことを悟り、歓喜に声を弾ませる。

「ここで限界突破か。なるほど、互いの体力を考えれば次で決着、といったところか」

サカキは傷ついたサイドンに厳しい表情で視線を向けると呟いた。ここまでの激戦を戦い抜いたサイドンではあるものの、効果抜群の攻撃を受け続けたその体はもはや満身創痍、次に高火力の攻撃を受ければ戦闘不能は確実だ。

 

「……おねがい、フシギバナァ!!!!」

「迎え撃て、サイドン」

声を裏返しながら必死に、懇願するように叫ぶスミレ。それに対し目を見開き、口元に綺麗な弧を描いて指示を出すサカキ。ほんのわずかな膠着が、永遠のようにも感じられる。

 

「【はなびらのまい】!!!!」

「【じしん】!!」

そしてその静寂を切り裂いて、両者の技が激突した。【はなふぶき】を遥かに超える量の花弁の嵐が、一直線にサイドンへと殺到する。【はなびらのまい】は高火力の花弁で攻撃する特殊技。一定時間は制御不能で技を放ち続けるものの終了すれば混乱の状態異常となる諸刃の剣。【千刃花】のような精密操作など以ての外、できる訳がない。デメリット付きの技だが火力は十分、サイドンのエネルギーを纏った拳と激突するも、その巨体をすぐさま押し始めた。

(成程な……、もしもこの技に耐えられたらフシギバナは混乱し、私に付け入られて詰む。だがそのリスクを取っても、勝利のため賭けにでるか)

「バナァァァァァ!!!!」

「ドォォォォン……!!」

冷や汗を流しながらも耐えるサイドンの体が押しやられ、踏ん張った地面がひび割れ砕ける。

 

「この一撃に全てを込めるッ……!」

スミレの必死な叫びを耳に収め、サカキは笑ったまま目を閉じるとその口を開く。

「…………見事」

 

「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

スミレの叫びに同調するかのように、【はなびらのまい】がサイドンの剛腕を弾くと全身を呑み込んだ。花弁の激しい乱打に打たれたサイドンの巨体が、スローモーションのようにゆっくりと崩れ落ちる。その目は既に閉じ、サカキの目にはすぐに戦闘不能だと分かった。

「ごほッ……ごほッ……」

大声を出したからか激しく咳き込みひざを突くスミレを他所に、サカキはサイドンをボールに戻し背を向ける。

「この勝負、貴様の勝利だスミレ。ロケット団としてはまだやることがあるが、私個人はこの一件が終わるまで一切の手出しをせんと誓おう。……貴様は、精々その道を違えるなよ?見る影もなく腐っていたら、この私が直々に殺してやる」

「……ごほッ、だいじょう、ぶ。ごほッ、ごほッ。私は私の生き方を貫く。そこに、一点の曇りもない」

 

まるで両者の歩む道は全く違うというようにサカキとスミレは顔を見合わせない。どちらも不意打ちもせず、スミレはサカキが去ってゆく足音をだまって聞いていた。

 

 

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