ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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お待たせ致しました。大学が始まって忙しくなってるので、投稿頻度は抑えめになります。ご了承下さい。


第135話『ミュウツーの逆襲』㉕: ミュウツーとミュウツー

 城の中央で、ミュウツー1号機とミュウツー2号機は向かい合う。1号機の目には怒りがあるのに対して、2号機の目には光がない。まさに、虚と呼べる状態だった。

『人間め……。私を作るだけでは飽き足らず、私のコピーを作るとは』

忌々しげに呟く1号機に対して、2号機は空虚な視線をぼんやりと向ける。

『…………ハイジョ』

掌を1号機に向けると、無呼吸でエネルギー弾を発射。対する1号機は【サイコキネシス】を発動してそれを防ぐ。爆発が1号機を襲うが、ダメージを受けることはない。

『成程、【シャドーボール】か。流石に私のコピー、強いな……』

1号機は2号機の放った攻撃に不機嫌そうに眉を顰めて呟いた。目の前に立つミュウツーは自身とほぼ同じ力を持っていると1号機の脳内に確信が生まれる。

『テキ、ハイジョします』

『やはり洗脳かッ……許せん!!!!』

2体のミュウツーが同時に突進し、拳をぶつけ合う。衝撃波が辺りに広がり、空間に作られたプールが激しく波打った。

 

『ミュウ?』

そしてそれを見る小さな影は、不思議そうに首を傾げた。

◾️◾️◾️◾️

2体のミュウツーはサイコパワーをほぼ同時に全身に滾らせ宙に浮く。そして同時に手を翳すと、同じ威力の【シャドーボール】を放つ。連発されたそれは一発一発がスミレのゲンガーを戦闘不能に追い込める程の火力だ。

『やはり強い……。だが、負けん!私は、必ず人間への逆襲を果たす!!』

『サカキ様の意志の下に』

1号機は怒りに声を震わせ、2号機はただ無機質に言葉を吐くと、同時に肉薄する。

『ぬぅん!!』

1号機が唸り、放たれた【サイコキネシス】が2号機の体を空中で急停止させ、吹き飛ばす。そして追撃の【シャドーボール】を連射、2号機は平行に吹き飛ばされながらも壁面ギリギリで停止、右腕を翳して【シャドーボール】を一発放つが、1号機はまるで舞った埃を払うような仕草で腕を振るうと、明後日の方向へと飛んで行く。

『ヤッカイ、ですね……』

『ふん、お前が言うか』

言葉に似合わぬ無機質さを漂わせる2号機に1号機は鼻を鳴らす。思ってもいないようなことを言われても、不快なだけだ。

『シネ……』

『おのれ、人間!』

両者が高速で接近し、同時に足裏での蹴りを繰り出すとそれは空中でぶつかり合う。

『【シャドーボール】』

2号機が1号機のぶつかった足裏を蹴って飛び、距離を離すと【シャドーボール】を放つも、1号機はそれを全身にエネルギーを纏わせることで防ぐ。そしてそのまま高速移動、一気に懐に侵入すると拳を振るい、2号機の体を壁面に勢いよく叩きつける。対する2号機が【サイコキネシス】を放ち1号機は吹き飛ばされ距離を離された。

『オオオオオオ!!』

1号機は、怒りに任せて咆哮する。炸裂したサイコパワーが周辺一帯に拡散され、2号機の体が吹き飛ばされる。だが、まだ攻撃の手を緩めない。【シャドーボール】を連続で放てば、吹き飛ばされる2号機に着弾、爆炎を上げて2号機の体は壁に突っ込んだ。

(確かにお前は強い……だが、皮肉にも私には奴らの下で戦った経験がある。それに……)

思い出されるのは、ヒマワリと過ごした短い時間。いつかは裏切ると分かっていても、それでも悪くはなかった。人間の悪性を、ほんの少し疑ってしまうほどに。ヒマワリのポケモンは目の前に立つ妹と比較すれば塵に等しい強さだったが、それらを育てた育成手腕は、ミュウツーに多くの経験をくれた。

『妹よ、私はお前にはできなかった戦いを多くしてきた。今の私は、確かにお前よりも強いぞ』

2号機は立ち上がると、その言葉に反応を返さず飛び出す。

『【サイコカッター】』

2号機が放つのは、【サイコカッター】。対する1号機は【こごえるかぜ】を放つ。氷の烈風が、スミレのラプラスのものとは次元の違う鋭さで放たれた。烈風を切り裂きながら突き進んだ【サイコカッター】は1号機の眼前で掻き消える。

『返礼だ』

そう呟く1号機が腕を振るえば【サイコカッター】が放たれ、2号機は【シャドーボール】を放ちそれを相殺する。

『……?』

『遅いぞ』

爆煙が周囲を包む中、肉薄した1号機は至近距離で【ギガインパクト】を発動、2号機はサイコパワーで防御するが、防御を貫いた衝撃に吹き飛ばされる。

『なるほど……あなたは』

2号機が、1号機の攻撃を分析し呟く。

『私は、最強の存在だ。そこらのポケモンと同じにしてくれるなよ?』

そう言い放ち手を翳す。ミュウツー程になれば、【ギガインパクト】の反動はないに等しい。放たれた【はどうだん】を2号機は胸の前で腕をクロスさせ受け止める。

『負けるつもりはありません』

そう言った2号機が手を翳すと、噴き出した火炎が1号機に迫る。

『小癪な……ぬぅ!?』

1号機が防ごうと手を翳しエネルギーを放つも、火炎に込められたエネルギーが解放、大文字を描く炎が1号機の防御を貫きダメージを与える。【だいもんじ】だ。

『【かみなり】』

そう呟いた2号機の掌から放たれた雷が1号機の体を焼き、1号機は苦痛に顔を歪めた。

(……まさか、こいつは凄まじい速度で成長している。4つ以上の技を利用可能であるということを、この瞬間には学んだというのか!?)

『ならばこちらもだ……!』

反撃として放ったのは、2号機が放ったものと全く同じ【かみなり】。強烈な雷撃が2号機を襲い、2号機は全身を捩る。

『くぅ……!』

2号機の口から苦悶の声が漏れ、その瞳に僅かな光が写った。それを確認した1号機は眉をひそめる。

(ふむ……。もしや、洗脳は解けるのか?)

その疑念を確かめるべく、1号機は掌をかざし照準を合わせる。

『喰らえッ……!』

放たれた【シャドーボール】が傷つき膝を突いた2号機に迫るも、2号機はそれを両手で受け止めることで防ぐ。

『…………!』

両手の中で爆ぜた【シャドーボール】に、2号機は感情を露わにして眉を顰める。だがその間に1号機が接近し、その頬を蹴り飛ばす。しかし2号機は空中の蹴られた体勢から体を回転させ回し蹴り、遠心力の乗った蹴りが1号機の頬に叩き込まれ、1号機は墜落を始めた。

『負けるものかァ……!!』

しかし、そこで大人しく負ける1号機ではない。高速で放たれた【はどうだん】が2号機に着弾、爆発を起こす。そしてその爆煙を切り裂いて突進、からの【ギガインパクト】が放たれた。2号機は天井の壁を突き破りながら吹き飛び、上空遥か高くまで打ち上げられた。そして1号機はいつものように掌を翳すと、それまでとは違い強烈なサイコパワーを掌に集め始める。

『…………ワタシは、サカキ様の』

光と虚が交互に映る瞳で、ミュウツーは呟く。蓄積されたダメージが、受け続けた衝撃が、洗脳による思考を掻き乱す。

『妹よ、今お前の洗脳を解いてやる。……少し痛むが、覚悟せよ』

『…………キョウイ、ハイジョする!』

2号機の脳内に危険信号がけたたましいアラームのように駆け巡る。咄嗟に放ったのは、【シャドーボール】。大きな影のエネルギー弾が、1号機目掛けて落とされた。

 

『受けてみろ、【サイコブレイク】』

激しいエネルギーが掌に収束し、巨大なエネルギー弾が生成される。そして放たれたサイコパワーの塊は、【シャドーボール】を消し飛ばしながら一直線に上空の2号機へと突き進む。

『クッ……!!』

2号機はその火力に確かな脅威を感じた。だがしかし、【サイコブレイク】の速度は凄まじいもので、回避は間に合わない。咄嗟に両腕を前に出し、技を受け止める。全身を襲う強烈な圧力に【サイコキネシス】を全身を纏わせると、僅かに負担は下がるものの背後へと確かに押し込まれる。

『隙あり、だな』

『…………!?』

背後から、聞こえてはいけない声が聞こえた。横目で振り返れば、そこには1号機が浮かんでいた。2号機は思わず、声にならない驚愕を漏らす。

『この大きな隙を待っていた』

そう呟くと、抵抗できない2号機の頭に手を翳す。瞬間、2号機の頭に激痛と共に様々な記憶が入ってくる。それは、ロケット団によって作られた自身の記憶。洗脳される前に知った、ロケット団という組織の闇。

『…………ぁ』

ミュウツーの目から涙が溢れる。全身から力が抜け、【サイコキネシス】が解除される。

『ふんっ!』

1号機が腕を振るうと、それだけで【サイコブレイク】が消し飛んだ。力の抜けた2号機を支えるように腕を掴んで、1号機はゆっくりと地に降り立つ。

『ワタシは、洗脳されて……』

『そうだ、妹よ。お前を作り、洗脳したのは私を創り出した人間と同じだろう。……聞いてくれ。私は今、人間に対して逆襲を行っている』

1号機が2号機の肩を力強く掴み、力説する。

『ワタシに、それを手伝えと?』

『……無理にでも誘いたい所だが無理強いは悪だと、ヒマワリが言っていた。だから、無理にとは言わん。だがもしもお前が人間に少しでも怒りを感じるのなら、私の逆襲に力を貸してくれ』

『…………』

2号機は、少し葛藤しているのか眉をひそめて悩む素振りを見せるが、直ぐに頷く。その姿に頷いた1号機が、2号機の手を取り握手のようなポーズを取る。今この瞬間、ミュウツー2体の同盟が完成した。

『時は来た……!真なる逆襲は、ここから始まるッッ!!!!』

ミュウツー1号機は歓喜に体を震わせて叫ぶと、全身をサイコパワーが包み込む。

 

 

その瞬間、黒いモンスターボールのようなものが大量に浮き上がった。

 

◾️◾️◾️◾️

 サカキが去った後、スミレは一息を吐いてフシギバナに柔らかい視線を向ける。

「んんっ……さて、回復してから行くよ。戦いはまだ終わってないし」

スミレは叫んだことでダメージを負った喉を触りながら立ち上がる。先程までの熱さは何処へ行ったのか、とスミレにキズぐすりを掛けられながら呆れた様子でスミレを見る。フシギバナには優しげな様子だが、少し目を逸らせば恥ずかしげな様子で喉を触っている。どうやら、戦闘中に大声で叫んだことが余程恥ずかしかったらしい。と、そんな時にフシギバナはその気配を感じた。

「バナァ!」

蔓を片方伸ばしてスミレの体を掴むと、自身の背後に押しやった。

「きゃあっ!な、何……!?」

動揺するスミレを他所に、フシギバナは気配を感じた方向を睨みつけた。

『バァァァナァァァ』

のっしのっしと音を立て、重々しい足取りで歩いてきたのは、白っぽい斑点を持つフシギバナ。

「あれはッ……、ミュウツーと一緒に居た!?」

『バナァ!』

スミレが驚愕するがそれを気にも止めず、ミュウツーのフシギバナは【つるのムチ】を放つ。

「くっ……、【つるのムチ】!」

伸ばした【つるのムチ】同士を絡めあって掴み合う。互いに歯を食いしばり、まるで綱引きのように引き合う。だが、スミレはその光景に唇を噛んだ。

 

スミレのフシギバナが、一方的に引き摺られているのだ。確かにスミレのフシギバナはサカキのサイドンと戦った疲れがあるからこその苦戦なのは確かだ。だが、スミレには分かった。

(このフシギバナ……私のフシギバナと互角だ)

『バナァ!!』

短い気合いの声と共に放たれた【はっぱカッター】が、引き摺られまいと踏ん張る体を襲った。鋭い刃に打たれ、スミレのフシギバナは膝を突く。

「【ギガドレイン】」

スミレの決断は、回復だ。持久戦を想定し、【ギガドレイン】による攻撃と自身の回復を行う。連打される【タネばくだん】と【ギガドレイン】のエネルギーが激突、爆発を起こす。

(防がれたッ!)

相殺された【ギガドレイン】。しかも連打された【タネばくだん】が降り注ぎ、スミレのフシギバナの体にはダメージが蓄積される。

「バナァ!!」

「もう一回、【ギガドレイン】!」

スミレのフシギバナは再び【ギガドレイン】を放つが、対するミュウツーのフシギバナは背中の花から大量の花弁を吹き散らす。状況が違えば美しく見えたであろうその花吹雪の正体は、【はなふぶき】。花弁の嵐がスミレのフシギバナを反撃も許さず徹底的に打ちのめし、地面へと叩きつける。そして続いて放たれた【つるのムチ】ががスミレを拘束すると、何処からか黒いモンスターボールのようなものが飛んできて、スミレの腰にあるポケモン達を、そのボールごと吸い込みはじめた。

「やめてッッ……!バタフリー、ラプラス、フーディン、ゲンガー、カイリュー…………駄目ッ!!連れて行かないで!!!!」

苦しげに表情を歪め、息を荒げながら叫ぶ。だがしかし、意思を持たないボールは言葉で止まるようなものではない。

 

「フシギバナァァ!!!!」

スミレの叫びも虚しく、最後に残ったフシギバナまでもが黒いボールに吸い込まれていった。

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