ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第138話『ミュウツーの逆襲』㉘:エリカvsミュウツー

 【はどうだん】の爆風を吹き飛ばしたミュウツーは、眼下に立つ乱入者を睨む。

『成程、そこの6人に比べれば相当に強い。……けれどその程度では、私には勝てませんよ?』

「勝てないからと、愛弟子とその友を見捨てて逃げる馬鹿が何処にいるのです?……ラフレシア」

エリカの呼びかけで一歩踏み出したラフレシアは、堂々とした様子でミュウツーとエリカの間に立ちはだかる。

「あのラフレシア……、相当強い」

ラフレシアを手持ちに入れているヒマワリが、感嘆の声を漏らす。

「私達もバッジ8個ゲットしたんだけどね、まだまだ差は大きいよ」

スミレが何処か誇らしげに呟くと、それを横目にエリカは笑みを溢した。

「では、ここで特別授業といきましょうか。……ポケモン育成において基本的な考えとして採用されているのは『レベル理論』です。これはポケモンの成長過程を100もの段階に分類したものですが、この考えはあくまでも目安。必ずしもレベル100が事実で、その段階に到達すれば成長が打ち止め、とはなりません。老いればたとえレベル100でも力は落ちますし、個体差、そして育て方や使役するトレーナー次第では同じ種類のポケモンで同じレベルであっても力の差が生まれます。……たとえこの世界が作り物だとしても私達にとってポケモンは生き物であり、ドットや文字や絵の集合体ではないのですから当然の話です。つまり、ポケモンの限界はポケモンと過ごす日々から見出すものであって、机上の理屈によって決定されるものではないということなのですよ」

エリカの質問に、4人は納得したように頷いた。それを見たムサシが、スミレの耳元に話し掛ける。

「ねぇちょっと、どういう意味?」

「……レベルの高さイコールポケモン本来の強さって訳じゃなくて、トレーナー次第で幾らでも変わるの。そしてレベルの高さも、ただ成長を測る物差しでしかない。だからレベルの数値で自身の強さを過大評価したり過小評価するなってこと、であってますか?」

「ええ、その通りです」

「へぇ」

スミレの説明をエリカは肯定し、ムサシは惚けたような声で返事を返す。

「貴女方はジムバッジを8個手に入れ、ポケモンリーグへの挑戦権を手に入れました。それは素晴らしいことではありますが、リーグ参加者クラスのトレーナーにとっては最低限でしかありません。そして8個のバッジを集められるトレーナーなど、数十年の歴史しかないポケモンと人間による共存社会においても様々な地方で大規模な大会を開ける程度にはたくさん居ます。……つまりその門は狭くともたかが知れている。この敗北で気を引き締めなさい、貴女がたはまだまだ強者として立つには未熟であると自覚し、後の成長に繋げなさい」

エリカの言葉に4人は聞き入るが、ミュウツーが不快そうに表情を歪めて口を開いた。

『それはまるで、この城から生きて帰れるとでも言っているように聞こえますが?』

その言葉に、エリカは微笑みを返す。

「ええ、そう言っているのです。この子達は生きて城から帰します」

 

『私に勝てると?』

「私が死を覚悟していないとでも?」

視線が合わさり、一瞬でミュウツーは腕を構える。対するエリカは一歩後退し、口を開く。

『ハァ!!』

「ラフレシア!」

ミュウツーの掌から放たれた【はどうだん】と、ラフレシアが放った【エナジーボール】が空中でぶつかり、爆炎を上げる。

『【シャドーボール】の雨、耐えられますか?』

「撃ち抜きなさいトロピウス」

その合図で後方にいつの間にか待機していたトロピウスから【ソーラービーム】が放たれ、ミュウツーは技を放つ間もなく技をまともに食らって吹き飛ばされる。

『チッ……!卑怯な!!』

「卑怯もラッキョウもございません、とでも言っておきましょうか。大切な人の命が掛かっている時に、お行儀よくポケモンバトルとはいきませんよ?……エルフーン」

続く合図でエリカの背後からはイッシュ地方に生息するポケモン、エルフーンが飛び出し、ミュウツーに向かい風が吹き始める。

「これは……【おいかぜ】」

シゲルが吹き荒れる風に言葉を漏らす。

「ラフレシア、【エナジーボール】。トロピウス、【エアスラッシュ】」

【エナジーボール】と【エアスラッシュ】が向かい風により動きの鈍ったミュウツーへと襲いかかる。

『ハァ!』

だがミュウツーは腕に力を込めると横薙ぎに振り払い、襲いかかる攻撃を衝撃波で自壊させる。そして一瞬にして【テレポート】。何もない空間に転移した。

「エルフーン、【ギガドレイン】、ラフレシア、【アシッドボム】」

放たれた【ギガドレイン】をミュウツーは【ほのおのパンチ】で迎え撃ち、弾き飛ばす。そして再び転移し、ラフレシアの攻撃を躱わした。今度転移した先は、トロピウスの頭上。

『堕ちなさい!!』

両腕を力強く握りしめて、ダブルスレッジハンマー。激しい衝撃がトロピウスの脳を揺らし、トロピウスは僅かに意識を保ちながらも高度を下げ始めるが、側面に転移したミュウツーは反撃も許さずその巨体を蹴り飛ばし、壁へと叩きつけ撃破した。だが、吹き飛ぶトロピウスのその影からは、パルデア地方の一部に生息しているポケモン、ヤバソチャが飛び出し奇襲をかける。

「【シャカシャカほう】!」

『無駄です!』

ヤバソチャの放つ砲撃をミュウツーは【かえんほうしゃ】によって吹き飛ばし、瞬間移動で肉薄。足を振り上げて大きく空へと蹴り飛ばした。大きく吹き飛ぶヤバソチャを倒そうと再び全身に【テレポート】のためのエネルギーを貯めるも、横からはエルフーンによる【ギガドレイン】が襲い掛かり、ミュウツーは技の発動を中止。全身にバリアを貼ってこれを防ぐ。

「ヤバソチャ、【マジカルリーフ】!ラフレシア、【アシッドボム】!」

上空のヤバソチャが【マジカルリーフ】を、ラフレシアが【アシッドボム】を放ちバリアへと負荷を掛ける。3体の一斉攻撃にバリアが軋み、スパークが迸った。

『【ふぶき】』

だが、やられっぱなしのミュウツーではない。バリアを一瞬で解除し、【ふぶき】を発動。吹き荒れる猛吹雪がエリカのポケモン達を呑み込み、結果としてはヤバソチャを戦闘不能にしただけでなくエルフーンとラフレシアに大きなダメージを与え吹き飛ばした。しかもそれだけでない。指揮をとっていたエリカもまた、【ふぶき】を食らい地面を転がった。

「くっ……」

エリカは苦しげに表情を歪める。吹雪に巻き込まれたことで自身の体温は下がり、凍える全身からは力が抜けそうになる。

『まだ立ちますか?』

「当然です…………。心臓が止まるその瞬間まで、私は逃げませんよ」

それでもエリカは、壮絶に笑った。そして唇を力強く噛み、口から血が垂れる。痛みによって意識を繋いでの戦闘続行、それはまさに荒技というべき所業であった。

 

『ならば死ね!!』

「まだ戦えますよ、ドダイトス!!!!」

エリカが吠え、ボールを投げると、シンオウ地方に生息するポケモンであるドダイトスが呼び出される。そしてドダイトスが着地すると同時に城の地面から大量の巨大な樹木が起き上がた。【ハードプラント】だ。

『究極技……!』

対するミュウツーは両手を翳して、【かえんほうしゃ】の炎を撒き散らす。だが相殺しきれぬ樹木の大波に、ミュウツーは【テレポート】を連続で行使し逃げ回る。だがそれを素早く宙を舞うことで追い縋る影がひとつ。【おいかぜ】で加速したエルフーンだ。

「【ギガドレイン】」

【ハードプラント】に意識を割かれたミュウツーの全身を、【ギガドレイン】のエネルギーが包み込み、体力を吸い上げる。

『ぬぅ!』

対するミュウツーは【ギガドレイン】を食らいながらも【だいもんじ】を発射、大文字を描く業火がエルフーンの全身を焼き、エルフーンは力無く墜落する。

 

「す、凄い……」

ヒマワリが、その光景に感嘆を漏らす。だがそれは、その場にいる全員の心境だった。

「多数で囲んで叩くのは変わらない。だがバトルのレベルが桁違いだ。ミュウツーも、ボクらと戦っている時よりずっと力を出してる」

「ああ。あれがジムリーダーの全力……。今のオレ達じゃあ逆立ちしても勝てない」

シゲルとサトシが、エリカとの力の差に悔しげに表情を歪める。

「……でも、勝てない」

スミレは、辛そうな表情で呟いた。状況を見れば分かってしまう。6体中3体、1体1体が自分らのパーティーを殲滅しうる戦闘力のポケモン達がやられている。そしてエリカ本人の消耗も見て取れる。つまり、余程の奇跡が起こらない限り、エリカはミュウツーに勝てない。常人のエリカにとって、殺す気で放たれた【ふぶき】は相当に辛いはずで、スミレならば一瞬で病院送りだ。それでも、エリカは立っている。スミレが見たことのないほどの歪んだ笑顔で、ミュウツーと対峙している。

「あと1枠ッッ…………!行きますよ、ダーテング!!」

エリカは、残るボールを投げた。飛び出したのは、ホウエン地方に生息するダーテング。これで再び3対1だ。

 

『それで最後ですか。……一応聞いておきますが、逃げる気は?』

「はぁ……はぁ……、ぐ、愚問ですよ」

『【だいもんじ】』

「【ハードプラント】!」

ドダイトスの【ハードプラント】が再び放たれた。【だいもんじ】がぶつかり、一部が消し炭にされる。だが、一撃で処理しきれなかった樹木が一斉にミュウツーへと襲いかかった。

『【かえんほうしゃ】』

両の掌から【かえんほうしゃ】を放ちながら空中で回転。放射された炎が【ハードプラント】を焦がす。だが、樹木の波を足場に駆ける黒い影が火炎を掻い潜ってミュウツーに踊り掛かる。

「ダーテング、【リーフブレード】!」

ヤツデの葉を思わせる両手を新緑に輝かせ、ダーテングはミュウツーへと斬りかかった。

『返り討ちにするだけですよッ……!』

ミュウツーは瞳を輝かせて【サイコキネシス】を放つが、ダーテングには一切が通用しない。ダーテングは、エスパータイプの技を無効化する力を持っている。あくタイプ、と仮称が付けられている新規タイプだ。

「ダァー!!」

振り下ろされたダーテングの斬撃を、ミュウツーは両手で白刃取りする。ダーテングはニヤリと笑みを浮かべ、ミュウツーは不快そうに眉を顰める。

「今です!」

エリカが叫んだ瞬間、側面から花弁の嵐が襲いかかった。両手と集中力を削られていたミュウツーは側面からの奇襲に対応できず、吹き飛んで壁に叩きつけられ小さなクレーターを生む。そしてそこに追撃、ミュウツーを吹き飛ばした威力はそのままに、億を超える花弁の嵐がミュウツーの全身を打ちのめす。ラフレシアの【はなびらのまい】だ。

「殺す気で放ちなさい!ドダイトス、【リーフストーム】、ダーテング、【ぼうふう】!!!!」

口の端から血を迸らせながら、エリカは吠えた。それと同時にドダイトスが【リーフストーム】を、ダーテングが【ぼうふう】を発動。3つの大技が、一斉にミュウツーに叩き込まれた。正規のポケモンバトルでは決して放つことの許されない、殺害を視野に入れた最大火力の一撃だ。それらが合わさり放たれた大爆発は凄まじい火力の衝撃波を生み出し、指示を下したエリカ自身の体を吹き飛ばす。

 観戦していたスミレ達にも、その衝撃が襲いかかった。巻き添えを避けるために離れていたこと、そしてヒマワリのピクシーが手を尽くして戦闘不能になっていたポケモン達が回復していたこともあり、シゲルのカメックスが中心になって壁となることで事なきを得た。しかし。

 

「…………エリカさん」

スミレの泣きそうな声が、フロアに響いた。よろめきながら立ち上がったエリカは、吹き飛んだ際に頭を打ったのか額から血を流し、和服はズタズタに引き裂かれて下に着ている強化スーツが見え隠れしている。前へと進む足取りは安定せず、まさに死に体だ。

『少しばかり、侮っていたようです』

だが絶望は、そこまでしても倒れない。エリカは焦点の合わぬ目で、ミュウツーの声を辿って顔を上げる。ミュウツーは一歩一歩、エリカへと向かい歩き出した。

「まだ……いきて、さすがに」

『【ふぶき】を発動し、バリアに重ねがけしなければ私といえど危なかったでしょう。ですがそれでもまだ、私には届かない』

「ドダ……トス」

ミュウツーの声が届いているのかいないのか、エリカが呟く。ドダイトスがミュウツーに立ちはだかる。

「ドダァァァ!!!!」

ドダイトスが地面を踏み鳴らし、【じしん】を放つとミュウツーは飛び上がってそれを回避、反撃の【だいもんじ】を撃ち背中に命中させるが、ドダイトスはよろめきながらも持ち堪える。

「はぁど……」

「ダァァァァ!!」

ドダイトスの【ハードプラント】が放たれる。再び放たれる樹木の波を、ミュウツーは冷徹な表情で見据えた。

『タネは割れました。はぁ!!』

全身にエネルギーを滾らせ、ミュウツーは【こごえるかぜ】を放った。全方位に放たれた烈風が、植物から速度を奪う。

「ダァ!」

ドダイトスが吠え、大地を踏み鳴らす。それを再び躱わすと、ミュウツーは拳に冷気を纏わせドダイトスの額をしたたかに殴りつけた。

 

◾️◾️◾️◾️

「成程……。植物は温度変化に敏感な生物だ。【こごえるかぜ】は対象の素早さを下げるほど低温の風。それをミュウツーの火力をもって放てば、【ハードプラント】とはいえ植物の成長による攻撃を誤差程度にでも遅らせられる。誤差であっても、ミュウツーほどの強者からすれば大きすぎる隙になる」

真っ先に技のカラクリに気付いたシゲルの解説に、スミレは顔を青ざめさせる。

「……助けなきゃ」

スミレが呟いた。割って入って負けるのは確定だけれど、一緒に逃げることは頑張れば不可能と言い切れない、とスミレは思った。視線の先では援護に入ったダーテングとラフレシアの攻撃で足止めを食らっているのが見える。

「無茶だよ、それは。わたしが行く」

だがそれを制したのは、ヒマワリだ。

「お前だって無茶だろ」

「うん。この騒動の責任は何処かで取らなきゃいけない。だから」

ヒマワリは覚悟を決めたのか、固く引き締まった表情で告げる。

「……死ぬ気なの?」

「死なないよー、頑張ればなんとかなるって!」

明るく笑うヒマワリだが、その表情はぎこちない。状況を考えれば、死は免れない。

「いや待て、隙を窺おう」

「そうだね。チャンスは必ず来る、来なければ全員で突撃して取り返す。それでどうだ?」

焦った様子を察してか、コジロウが間に入る。その意見にシゲルが頷き作戦を提示し、焦った様子のスミレを除く、全員が頷いた。

◾️◾️◾️◾️

 

 ドダイトスを中央に、左右にラフレシアとダーテングが立ちミュウツーを睨む。ミュウツーは涼しい表情で手をドダイトスに翳すと【かえんほうしゃ】を放ち、ドダイトスの全身が炎に包まれる。

「ダァ!」

だかそれを気にする素振りも見せず、ダーテングは【リーフブレード】で突撃、【かえんほうしゃ】を止めたミュウツーは拳に炎を纏わせ【ほのおのパンチ】を発動、ダーテングを迎え撃つ。

一撃目、拳と刃が激突し、力負けしたダーテングが吹き飛ばされるも空中で回転して降り立つ。二撃目、ミュウツーの拳を側面から弾き、ラフレシアの援護射撃でミュウツーは僅かに後退。三撃目、ダーテングが放った横薙ぎの一閃を飛び越え、空中で放った【こごえるかぜ】を落とす。効果抜群の技を【ぼうふう】で弾き飛ばしたダーテングだが、【テレポート】で側面より接近し、至近距離から【ほのおのパンチ】。崩れたダーテングには再度【こごえるかぜ】を放ち吹き飛ばし、戦闘不能とする。そして振り向きざまにエリカへ向けて【こごえるかぜ】を発射、これはドダイトスに防がれる。

「……ゴホッ、ラフレシアッ!」

口から血を撒き散らしながら叫んだエリカの呼びかけで、ラフレシアは【はなびらのまい】を放つ。花の刃は空中で集い、まるで魚の大群のように陣形を変えた。それはまるで一本の鋭い槍のよう。放たれた花の槍にミュウツーは全身にバリアを貼るが、それを貫いた槍は、ミュウツーの顎を的確に打ち抜いた。

『ぐぅ……ッ!』

「ししょうは、でしをまもらないといけないんですよ」

もはや立てなくなったのか、地面に倒れ込んだエリカはそれでも笑った。ミュウツーは、花弁を迎撃しながらもそれに耳を傾ける。

 

「せかいはあなたがおもうよりやさしいんだって、おしえてあげたいんですよ」

 

「たよっていいんだって、おもえるようにしてやらなきゃいけないんですよ」

 

「いきててよかったって、おもえるようにしてあげたいんですよ」

 

「あのこがせいちょうしていくすがたを、いきてみとどけたいんですよ」

 

 

「だから申し訳ありません、ミュウツー。私達、どうも諦めが悪いんです。……もう少しだけ、付き合ってくださいな」

地面に這いつくばり、全身から血を流し、視線は既に焦点があっていない。ポケモンだって、あとほんの少しで殲滅できる。なのに、その人間にミュウツーは戦慄すらも覚えた。

 

【はなびらのまい】を掻い潜るようにドダイトスが【リーフストーム】を放ち、ミュウツーはそれを焼き尽くす。

「これが私の切り札です」

そう呟いてゆっくりと立ち上がったエリカが投げたもの、それを認識する前に、瞬間でミュウツーの視界が暗転する。咄嗟に全身からエネルギーを放ちそれから逃れると、目の前には全身を覆うように展開された樹木と花弁があった。ラフレシアの【はなびらのまい】、そしてドダイトスの【ハードプラント】による合わせ技だ。煙を上げながら落ちてゆくエリカが投げた、自身の視界を暗転させたものを目線で追えば、それはトレーナーが持つ人間の叡智の結晶。赤と白に装飾された、球体状のそれは

『モンスターボール……!?』

モンスターボールに捉え、その隙に大技を撃つ。

「人間の技術の結晶、モンスターボール。たとえ捕まえることができなくとも、ちょっとの隙を作るにはいいアイテムですよ」

エリカの笑みに、ミュウツーは眉を顰める。

『よもやそこまで……。【サイコブレイク】!!!!』

その瞬間、ミュウツーはサイコパワーの塊を放った。全方位の一角に風穴を開けたその大きな弾丸は、エリカを庇ったドダイトスの体力を削り切り、戦闘不能にする。

「フレシャァァァ!!!!」

ラフレシアが怒りの叫びと共に、【はなびらのまい】を放つ。全てを賭けた一撃は凄まじいが、何度もそれを受けたミュウツーにはもはや通じない。

『【ねっぷう】』

放たれたのは、【ねっぷう】。広範囲に吹き荒れる【ねっぷう】が【はなびらのまい】を迎え撃つ。空中で激突し激しい押し合いになるも相性に反して、優勢なのは【はなびらのまい】。だがしかし、ミュウツーは大真面目に技の押し合いをする気など何処にもない。

 

『終わりです』

呟きと共に発射された【だいもんじ】に焼かれ、ラフレシアは遂に崩れ落ちる。これで、エリカのポケモンは全滅だ。

 

「もはや、これまで」

エリカは悟った表情で、そう呟いた。背後で、絶望した表情で逃げてと叫ぶ愛弟子の姿に微笑みを向ける。

『せめてもの慈悲です。……言い残す言葉は?』

「…………そうですね。なら」

 

「いいや?遺言にはまだ早い」

何かを言いかけたエリカを遮る声がして、一瞬にしてエリカの姿がミュウツーの前から消える。

 

「うおっ!?……エリカさん!?」

サトシが空から降ってきたエリカをなんとかキャッチする。エリカを落としたのは、ゴルバットだった。

「あぁ……エリカさん!!私のせいで!!!!」

「スミレちゃん、落ち着いて!早く手当しないと……!」

スミレとヒマワリが慌てて駆け寄るのを視界の端に捉えながら、シゲルとサトシは乱入者に厳しい視線を向ける。

 

 

『貴様はロケット団の……』

「ええ、幹部のランスと申します」

そこに立っていたのは、ロケット団幹部のランスだ。

『ポケモンは全て奪った筈、取り戻すにしてもあまりに早すぎる。貴方のポケモンは、オーキドという博士に倒されたポケモンしか無かったようですが』

その問いに、ランスは嘲るような笑みを浮かべる。

「心は読めても、その瞬間に " 忘れていた " 存在を探ることはしなかったようですね?だから私はたった1匹とはいえこれを隠す余地が生まれた」

『1匹で、何が出来ると?』

「カケラ程度なら消耗させられるかと。お前の反乱はサカキ様にとって大変都合が悪い。よって殺す、といきたいところですがあれほどの強さに1体で勝てる訳がありませんし、まぁ " 次 " が来るまでの繋ぎ程度に思って貰えれば」

『いいでしょう。どれだけ来ようと、倒すのみです』

「大変結構、それでは第2ラウンドといきましょう!ゴルバット!!」

エリカを救ったそのゴルバットが、ミュウツーに向けて牙を向けた。




エリカ→瀕死
スミレ→再び曇ってる
ヒマワリ→死ぬ覚悟は決めていたけど乱入者来て助けられた。


ランス→感想で無能扱いされてたのが作者的に割と気にしてたのでここで登場、舐めプゼロのランスは次回。
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