ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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 最新話です。クチバジム戦はまだです、すみません。


第14話 5番道路のフーディン老師

 ラプラスを仲間に加えたスミレだが、病み上がりであるため暫くはバトルが出来ない。しかし次のジムで出されるポケモンは3体、バタフリーとフシギダネはポテンシャルこそ高いがスミレのトレーナーとしての練度はまだまだな為、2体で十分なんて口が裂けても言えない。ヒマワリはヒトカゲ、ピジョン、ピッピの3体で挑むらしいが、スミレは1体ほど新たに捕まえようと考えた。現在歩いている5番道路に生息するポケモンの中だとロコン、ガーディ、ケーシィ辺りだろう。ガーディの進化形であるウインディはスピードアタッカーとして優秀、ロコンの進化形のキュウコンは火力に優れており、補助技も使いこなせる。ケーシィの最終進化、フーディンは火力も高く、トリッキーな戦術を得意とする。3匹とも、リーグ戦の上位陣も多用する強力なポケモンだ。スミレのポケモンのうち、バタフリーは能力値的にもアタッカー向きではない。火力に乏しいが【しびれごな】を【かぜおこし】でコントロールするなど器用さなは目を見張るものがあり、何度も交代しながら状態異常を撒き散らして相手のペースを乱す役割が天職と言える。ラプラスはまだ未知数だが種族柄、高耐久なので主に持久戦を担う可能性は十分ある。フシギダネは最後の詰めで、進化先であるフシギバナの特徴とポテンシャルから推測するに、耐久と火力に注力すれば、難攻不落の要塞に成長してくれるだろう。となると、序盤、中盤のアタッカーがいない。現状は火力不足が甚だしいので、火力が欲しいところだ。その上で変化も加えられるとより良いので、スピード型のガーディは除外する。後はロコンかケーシィなのだが、ケーシィは即戦力としては微妙なので、ひとまずロコンを第一候補に据えると、野良トレーナーや野生ポケモンを襲撃していると、とある噂を耳にした。

 

 道路西の大岩の上に、妙に強いフーディンがいる。

 

 スミレにとって、これは丁度いい機会だった。強いと噂のフーディンがどれほどかは分からないが、ジム戦前の最後の仕上げに丁度いい。スミレとヒマワリはポケモンの体力を全快させると、噂のフーディンがいる大岩へと向かう。そこにあったのはまるでゴローニャの岩の部分を巨大化させたような、丸くて大きい岩。そしてその前に立ち、群がるトレーナーのポケモン達を粉砕する、見るからに老いたフーディン。あれほどの実力のフーディンは、スミレとしても見たことがない。目の前のトレーナーがポケモンを全滅させられると、入れ替わる形でスミレは前に出た。

 

『ほうほうほう、次はお嬢ちゃんかね?』

 

フーディンが、そう言葉を発した。スミレはトキワシティで敵対したニャースで人語を話すポケモンがいることは知っている筈なのに、それでも驚いてしまう。スミレは、小さく頷く。フーディンはスミレの体を舐め回すように眺めたあと、言葉を続ける。

 

『なるほど・・・・随分と捻れたお嬢ちゃんじゃな。精神に曇りを感じる。実力の方は才能こそあれどまだまだ未熟、じゃな。して、其方の用事はワシの捕獲でいいかの?』

スミレを見ただけでこの分析、相当なサイコパワーの持ち主らしい。

「・・・そうとも言えるし、そうでないとも言えます。貴方をゲットして仲間にするか、もしくは貴方を介して有望なケーシィ、もしくはユンゲラーを仲間に加えようかと。」

フーディンはスミレの返しに、頰の髭を撫でる。

『ふむぅ、ぴちぴちのお嬢さんや。ちぃっとぱふぱふが足らんようじゃの。ナイスバディなら、条件付きで捕まってやっても良いのじゃが。・・・じゃがまぁ、とりあえず戦って見ますかな。』

ぱふぱふにギャラリーの男達が一斉に過剰反応する。

「ぱふぱふ・・・?それは兎も角、貴方は相当な強者と見ました。相手にとって不足なし。」

スミレは ぱふぱふ なるものの意味は知らないものの、すぐに流してボールを手に取る。出すのはエスパータイプに相性のいいポケモン。

 

「いくぞ、バタフリー。」

「フリィィィ!!」

 

『ほうほうほう、こりゃまたよく懐いたバタフリーじゃな。』

フーディンが感心したように呟く。

 

「バタフリー、【しびれごな】。続けて【かぜおこし】。」

麻痺を起こす粉を撒き散らし、風を操ってフーディンにピンポイントで飛ばす。

 

『ふむ、良いコントロールじゃ。じゃが・・・ほいっ。』

フーディンは目を輝かせるとバタフリーの放った【しびれごな】と【かぜおこし】をバタフリーに跳ね返す。バタフリーの体中を、電気のようなエフェクトが走る。麻痺させられた。

 

「まずいッ・・・。バタフリー、【かぜおこし】で急上昇。」

バタフリーは【かぜおこし】を地面に叩きつけて急激に上昇する。

 

『むぅ・・・太陽を目眩しに。』

飛んだバタフリーは明るく輝く太陽を背にしており、フーディンの視界を遮る。

 

「今。バタフリー、【たいあたり】しながら【むしくい】。」

バタフリーが急降下する。【たいあたり】で相手に突進しながら【むしくい】をし、二重のダメージを与えるコンボだ。

 

『甘いッ!!』

フーディンの目が輝き、バタフリーの体を怪しげなオーラが纏うと、バタフリーを空中で振り回して、地面に叩きつけた。

 

「ッ・・・・。バタフリー、お疲れ様。」

戦闘不能になったバタフリーを戻す。

 

『さて、もう1匹付き合ってやろうぞ。出しなさい。』

 

「貴方に託す・・・。お願い、フシギダネ。」

「ダネェェェェェ!!!!」

ここで相棒の登場だ。

 

『これまたよく懐いとるな。そして何より、そこらのフシギダネより余程才に満ちておる。ここで出会っておいて良かったわい。ここで一度負けておかねば、強くはなれぬ。』

 

「負けたとしても・・・ただでは負けない。フシギダネ、【やどりぎのたね】を連続で放ちつつ突進。近づいて【たいあたり】。」

「ダネダネダネダネダネダネダネダネダネダネェ!!」

フシギダネが放つ種をフーディンは躱わし、サイコパワーで防ぎ、跳ね返す。跳ね返された種を避けつつ突進する。

 

『まだ、足りぬな。』

フーディンは目を輝かせると、フシギダネは宙に浮き上がり、フーディンがスプーンを掲げて円を描くように回すと、フシギダネは高速で回転される。

 

『ほれっ。』

軽い掛け声と共に、フシギダネを吹き飛ばす。吹き飛ばされたフシギダネは地面を転がり、よろよろと起き上がる。

 

「フシギダネ、【つるのムチ】。」

今度は蔓がフーディンに迫る。だがフーディンはサイコパワーでフシギダネを引き寄せると、ガラ空きの顔面に、サイコパワーの塊を叩き込んだ。フシギダネが、再び吹き飛ばされて地面を転がる。今度はなかなか起き上がってこない。スミレの自信が、ガラガラと音を立てて崩れてゆく。なんだかんだで、これまで無敗だった。それ故に、自覚のない驕りがあったのだろう。何度も自分を律したはずだった。でも、律することが出来ていなかった。嬉しかったのだと思う。浮かれていたのだと思う。自分を想ってくれるフシギダネにバタフリーという仲間が出来て、孤独の辛さを共有できるラプラスもいて、スミレは1人じゃなくなった。ポケモンという、無垢な生き物達とだからこそ出来た絆で、スミレには、絶対的に信頼できる仲間という存在が、まるで麻薬のような依存性を含んでいた。だからこそ、彼らならなんでも出来ると思っていた。バタフリーならなんでも器用にこなせるし、追い詰められてもフシギダネがなんとかしてくれる、なんて夢想していた。そんなに現実は甘くなどないというのに。

 

『お主は才能もあり、実力も年に見合わぬ程じゃ。じゃが、今お主自身が気付いたように、お主には僅かな驕りがあったのじゃ。ポケモン達のポテンシャルが高く、お主の作戦も概ね上手くいき、本来のレベルに見合わぬ強さを示した事で、少しばかり全能感に囚われておったのじゃ。自身が未熟だと自認しながらも、それを知らず知らずの内に自戒ではなく謙遜として使っておったのじゃ。今はワシというその夢想では勝てない敵がおる。ここで一度、お主は折れた。ならばもう、立つしかあるまい、弱さを認め、前に進むしかあるまい。・・・違うかの?』

「・・・・。」

スミレは何も答えない。否、答えられない。

フーディンはそう静かに語る。

『のう、フシギダネや。お主は悔しくないかの?お主の主人がここまで心を砕き、傷つく様を見せられて。"いざとなればフシギダネが勝ってくれる"とまで信頼されたお主が、そうやって何も出来ずに這いつくばるとは・・・情けなくはないかの?そしてバタフリー、お主もじゃ。ワシにやられた傷は大層痛かろう。じゃが、今動かずしていつ動く?"バタフリーならなんでも出来る"とまで賞賛されたお主が、いつまでボールの中でスヤスヤと眠っておるつもりじゃ。そしてラプラス。"同じくらいの歩幅で進んでいける"とまで言われたお主が、友の傷に寄り添ってやらんでなんとする。』

その言葉に反応し、ボールからラプラスとバタフリーが飛び出す。ラプラスは立ち尽くすスミレの服に頭を擦り付け、バタフリーは周囲を飛び回り声を掛ける。そしてフシギダネは、ヨロヨロと起き上がり、スミレの目の前に向き合うように立つと、【つるのムチ】を出してスミレの頬を叩く。スミレの目に、僅かな光が戻る。

 

「フリ、フリィ、フリィィィィィィィ!!!」

「ラァァ、ラァ、ラプラァァァ!!」

 

「バタフリー・・・・ラプラス・・・・フシギダネ。」

スミレが、震えた声で呼びかける。

 

「ダネ、ダネダネ、ダネェ。」

フシギダネは傷だらけの顔で、ニッコリと笑い蔓でスミレの頭を撫でると、その全身を青白い光が包み込む。体が大きくなり、背の植物は成長し、フシギダネは姿を変える。

 

 

「ソォォォォォォォォォォォォウ!!!!!!」

その名をフシギソウ。フシギダネの進化形であり最終進化、フシギバナの進化前。相棒の信頼に応えるため、フシギダネはこのタイミングで進化を遂げた。

 

『なるほど、ここで進化するとは、面白い・・・!』

フーディンは、久方ぶりに心が踊るのを感じた。

 

スミレが頬を自らの手で叩くと、そこには先程までの情けないスミレではない。

 

「頑張れぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ヒマワリの応援が響き、ギャラリー達もそれに続く。

 

「フシギソウ。【つるのムチ】。」

テンションも技も変わらない。だが火力、速度共に増した【つるのムチ】がサイコパワーで作り出された防壁越しにフーディンに叩きつけられ、ダメージこそ防がれるが大きく吹き飛ばされる。

 

『なるほど・・・この火力、やはりそこらのフシギソウとは一味違うのぉ・・・。カッカッカッ。』

フーディンが愉快そうに笑う。

 

「突撃だ、【つるのムチ】で準備、高速起動【たいあたり】。」

蔓をフーディンの背後にある大木に巻きつけ、蔓が元に戻る力を利用して加速、そのまま【たいあたり】を決めんとフーディンに迫る。

 

『カッカッカッカッ・・・。さて、少しばかり本気を見せてやろう。』

フーディンは真剣な顔になり、周囲の空気が変わる。

 

「・・・不味いッ。」

 

『若人の可能性を見せてくれた礼じゃ、受け取れい!これがワシの、【サイコショック】じゃあァァァァァァ!!』

サイコパワーが爆発し、フシギソウは一撃で戦闘不能に追い込まれる。

スミレの、負けだ。・・・進化してなお、届かなかった。

 

「・・・ありがとう、お疲れ様。」

スミレは薄目を開け、申し訳なさげに小さく鳴き声をあげるフシギソウの頭を優しく撫で、ボールに戻す。

 

『さて、スミレや。お主に頼みが出来た。』

フーディンがスミレにそう言うと目を瞑り、体を不思議なオーラが包み込む。するとすぐ側に、1匹のユンゲラーがやって来る。恐らくはテレパシーによってメッセージを飛ばしたのだろう。

 

「そのユンゲラー・・・。」

『このユンゲラー、ワシがいる群れ1番の有望株でな、才能に溢れておる。じゃが此奴は臆病な上に世間知らずでな。元々ワシがここでトレーナー共と戦っていたのは、此奴を託せる者を探すためじゃった。そしてお主を見つけた。じゃからお主に、此奴を託そうと言うのじゃ。』

スミレは困惑する。なぜなら、

「しかし・・・私は負けました。」

『そうじゃな。しかし、お主たちはワシに未来を見せてくれた。夜の闇の中に美しく輝く月のような、闇に負けることのない輝きに満ちた未来を。此奴にその景色を共に見せてやって欲しいのじゃ。此奴は確かに臆病じゃ。じゃが潜在的なサイコパワーでは、ワシにも追い縋れる物を持っておる。能力に関してはワシが太鼓判を押すし、臆病さをどうするかはお主の裁量次第じゃ。どうじゃ?』

フーディンの言葉を受け、ユンゲラーを見る。このユンゲラーは性別メス。性格は臆病なようでバトル向きではなさそうだ。だが、図鑑でも調べた限り能力は相当高く、何より泣きそうな目でコチラを見るユンゲラーを、拒絶できない。スミレは、ポケモンからの押しにとことん弱かった。

 

「・・・分かりました、ゲットします。」

こうして、スミレのパーティーに、ユンゲラーが新たに加わった。

 

『さて、ワシはもう行こうかの。』

フーディンは大きくジャンプして岩山に乗ると、そう言った。

 

「あの、最後に1つ、いいですか?」

スミレが、ある質問をぶつける。

 

「貴方は一体、何者なんですか・・・?」

フーディンは大笑して、その質問に茶目っけを感じる笑顔で答えた。

 

『ワシは年寄りのフーディンでな、周りからは"フーディン老師"と呼ばれておるよ。では、その子を頼むぞ。さらばじゃ。』

 

最後にフーディン老師と名乗ったその謎のフーディンは、こうして姿を消した。きっと何処かでまた会える、そんな予感を残して。




 ありがとうございました。日常回という名のスミレ強化イベントでした。マチス戦とは違う形で強くしたかったからです。

スミレパーティにユンゲラー加入です。ラプラス加入の次話ですが、サトシ以上に捕まえてないので。このオリキャラ2人組・・・

ちなみに、あのフーディン老師のキャラを作る時にイメージしたのは、ドラゴンボールの亀仙人です。


フーディン老師は、本気で戦うとマスターズエイトのエース(切り札使用)にも匹敵する強さのガチ強者(全盛期の若い頃はさらに強かった)という裏設定があったりします。

3月15日、加筆、修正しました。ユンゲラーの性別をメス→オスに変更しました。
同日の13:48分、ユンゲラーの性別をメスに戻しました(新解釈が生まれたので)

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