ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第144話 開幕!カントーリーグ

 ミュウツーとの戦いから少し経ち、スミレはセキエイ高原に到着した。あの戦いが終わってからはタマムシジムに入り浸り、療養中のエリカ監修の元、ジムトレーナー相手に訓練を積んでいた。元々は幼馴染4人で色々と話し合う予定もあったのだが、ワタルからヒマワリの処分が決定された際に、延期を決定したのである。

「……セキエイリーグ。ここが、私達のカントー地方の旅最後の戦い」

目を閉じれば、悲劇やら悲劇やらが思い出されるが、しかしその旅路は地獄だけでなかった。温かい人と出会って、自分の弱さと向き合って、向き合おうとしてこなかった人と向き合うことができた。旅に出て良かったと、スミレは今なら心から言える。ひとつ心残りがあるとするならば、ヒマワリとポケモンリーグで戦えなかったことであるが、仕方がないことだった。

「よぉ、スミレ!元気してたか?」

感傷に浸るスミレは、背後から声を掛けられ振り向くと、そこにはエビル団が立っている。

「ああ、エビル団のみなさん。こっちはなんとか……。みなさんはリーグ出場ですか?」

「まぁな、とはいえ幹部から俺含めて5人だけだ。他はみんな、まだ8個集め切ってなくてな」

ホウセンが答える。どうやら、背後の大勢はみんな応援団らしい。

「なるほど、つまりは応援ってことですか?」

「そうだ。そっちのお仲間はどうだ?ヒマワリは欠場なのは知ってるが、後2人は出れるんだろ?」

「はい。サトシとシゲルって言います。どっちも強いトレーナーですよ」

「いいね、楽しみにしてるぜ。……おっと、エントリーと席どりしなきゃな。悪い、先行くな」

「当たったら、負けませんから」

「こっちの台詞だよ。さあ行くぞお前ら!!」

そんなやり取りを交わすと、ホウセン率いるエビル団は堂々と歩き始める。

 

「おっ、エビル団かー」

「あそこはいっつも良いところで負けちまうからな、今年は期待だ」

「いいよね!私好きなの!!」

観客たちの噂話が聞こえるが、聞いた限りでは明らかなヤンキースタイルでも、意外と好印象であるらしい。

 辺りを見回せば、ミュウツーの一件の時に港で見たことのある顔が、続々と集まっていた。中にはピエロの格好をしていたり着ぐるみを着ていたりとインパクトの強いトレーナーも居て、スミレの緊張感を加速させる。

「やあスミレ、元気か?」

そんなスミレの肩に手を置いて話し掛けたのはシゲルだ。

「ああ、シゲル。仕上がりは?」

「まぁ悪くない。……が、かなり緊張してるよ。慌ててポカやらかしそうだ」

そう言って苦笑するシゲルに、スミレは首肯する。

「サトシは見てない?」

「ああ、アイツならさっき見かけた。タケシさんの案内で参加手続きをしに行ってたな」

サトシは元々寝坊気質だったが、どうやら改善傾向にあるらしい。ひとえに経験から来る意識の変化だろう。

「へぇ……。エビル団は見たけど、他は人が多過ぎて。スズキさんとかも見てない?挨拶くらいはしておきたかったんだけど」

「さあ?ボクはサトシを見かけたくらいだが。……まぁ良い、その内会えるだろう。まずは受付だ」

そう言うシゲルに頷いて、2人は受付のあるテントがある場所へと向かう。受付はかなり簡単であり、トレーナー免許やポケモン図鑑を受付に渡して、参加者のデータと参加ポケモンの情報を送るだけ。今回、スミレはニドキングを迎えての総力戦に挑む予定なので、参加ポケモンの設定は実に楽であった。因みに、リーグにおいて参加ポケモンの制限はない。それはつまり、強い者が順当に勝ち弱い者が順当に負ける、という完全なる実力主義であるということである。

「まずは予選突破、話はここからだよね」

「……ああ」

2人は、大勢が入る会場を見上げた。カントーリーグは、現状世界最大のポケモンリーグだ。参加者も多いため、会場は幾つかに別れている。

「じゃあ、またね」

「ああ」

受付を済ませると、スミレとシゲルはそう言って別れた。お互いに、緊張で固くなっていた。

 

◾️◾️◾️◾️

 受付が終了し参加者が出揃うと、トーナメント表が開示される。予選リーグは16ものブロックに別れ、それを突破するには4回もの予選試合を勝ち抜かなければならない。そして勝ち抜いた者が、ベスト16にあたる決勝リーグへ進むことができるシステムだ。兎に角、大掛かりな大会だ。バトルの聖地として大中小様々なリーグ用の会場が乱立しているセキエイ高原でなければ、不可能な話だろう。しかもリーグではフィールドを入れ替えつつ試合をするため中々に予算を使うが、それでも毎年世界中からバトルマニアが集まり大きな黒字になるそうなので、経済効果としては凄まじいものがある。

「サトシはリーグ1、しかも第1試合。シゲルはリーグ3、第4試合。……で、私はリーグ8、最終試合。見に行けるね。……うわっ、シゲルのリーグ、ホウセンさん居る。どっちかは落ちる、よね……」

スミレは、3人の試合準を見て動き出す。スミレの両親やサトシの母親も来るらしいが、スミレとしては1人行動の方がやりやすいし、サトシの母親は兎も角自分の両親とは色々気まずいので接触はできるだけ避ける。

 サトシの試合を見に行くと、大勢の観客が詰めかけていた。試合内容は、サトシ対コーム。コームというトレーナーには心当たりがないが、ディスプレイに映る顔写真を見る限りは少年なので、新人なのだろう。新人同士の試合でも会場が埋まる辺り、カントーリーグの集客力が伺える。

『お集まりの皆様、初めまして!!わたくし、カントーリーグのヤマザキと申します!本予選リーグの、実況を担当させて頂きます!!そしてこちらが解説にお招きした、シオザイジムのジムリーダー、カジキさんです!宜しくお願いします』

『おう、宜しく頼む!』

『それではカジキさん、今試合の見所を教えてください!』

『そうだなー、サトシ選手もコーム選手も、今大会が初出場となる期待の若手だ。初出場であるということは、それだけ戦術のタネが割れていないということ。どちらにも知られていないというアドバンテージがある以上、その未知である点をどう活かすのか、相手の未知にどう対応するかが鍵になってくる。更に今試合は、水のフィールド。フィールドを利用してどう立ち回るのか、そこに注目したい』

『なるほど。それでは、選手入場です!!』

その合図と共に、スタジアムの両端からサトシとコームが入場する。どちらも真っ直ぐと前を見据え、巨大なプールとその上に浮島のあるフィールドの端に立つ。

「これより、予選リーグ第1試合を始めます!使用ポケモンは3体、それではポケモンを!!」

審判の号令でサトシとコームは、ボールを構えた。

「行け、ナッシー!!」

「クラブ、キミに決めた!」

ボールを投げ、飛び出したのはナッシーとクラブ。相性ではくさタイプを持つナッシーが有利だが、フィールドを考えれば有利なのはクラブだ。

『この対面、どう見ますか?』

『純粋な相性じゃあクラブが不利だ。だが、フィールド内の移動範囲ではナッシーはクラブに劣る。……今気になるのは、クラブがキングラーに進化していないことだな。見るからに鍛えられていて進化出来ないレベルじゃないのは分かる。だが、進化出来るはずなのにしていない状況が、却って混乱を誘ってくるな。さて、どう出るか』

「ナッシー、【ねんりき】!」

「潜れクラブ!」

まずナッシーが【ねんりき】で攻撃するが、それを察知したサトシの指示で、クラブは水中に逃げ込んだ。

「くっ……【ソーラービーム】準備!」

「今だクラブ、浮島に【クラブハンマー】!!」

ナッシーでは水中の相手を追いかけられないと、コームはナッシーに【ソーラービーム】のエネルギー充填を指示した。しかしサトシが命じたのは、ナッシーへの攻撃でなく浮島への攻撃。困惑するコームを他所に、水中で放たれた【クラブハンマー】が浮島に叩きつけられ、ナッシーは浮島諸共宙を舞う。

『クラブによる【クラブハンマー】が炸裂!ナッシーが宙を舞うー!!』

『こりゃあコーム選手は不味いな。水中戦に対応できないナッシーが、水中に引き摺り込まれちまった。サトシ選手は、咄嗟に浮島攻撃というアイデアが出る辺り頭の回転はかなり早い。ここからコーム選手が巻き返せるかで、勝負は変わってくるが……』

「【ねんりき】で自分の体を軽くしろ!浮島に急ぐんだ!!」

コームは水中に落とされた時の対策は考えてきたようで、ナッシーの全身を【ねんりき】のエネルギーが包み込み、近くの浮島へと急ぐ。

「クラブ、【みずでっぽう】!!」

しかし、サトシとしても逃す手はない。水中で放たれた【みずでっぽう】は水圧の塊となって飛び、一心不乱に浮島を目指すナッシーの無防備な腹に命中、ナッシーの【ねんりき】が剥がされる。

「しまっ……!」

「追撃だクラブ!【クラブハンマー】!!」

クラブが水中でエネルギーを貯めた鋏を振り下ろすと、爆発したエネルギーが渦潮となり、ナッシーを水中へと引き摺り込んだ。

「これで決めるぞ!【クラブハンマー】!!!!」

そしてサトシの宣言と共に【クラブハンマー】によるアッパーを食らったナッシーが水面から高く高く打ち上げられ、浮島に叩きつけられる。

 

「ナッシー、戦闘不能!クラブの勝ち!!」

審判の宣告が下り、サトシは水上に上がってきたクラブを抱きしめて喜びを露わにする。

『ここでナッシーが戦闘不能です!カジキさん、この試合はどう見ますか?』

『そうだな。みずポケモンが使いやすいフィールドでくさポケモンを使うって発想は悪くない。でも今回は完全に、サトシ選手の作戦勝ちだったな。ナッシーを身動きの取れない水中に引き摺り込んで、的確に攻撃を叩き込んだ。フィールドをどう使うかってところで、サトシ選手はコーム選手の上を行ったんだ』

『なるほどー』

解説の言葉にコームは悔しげに表情を歪めると、ナッシーを戻して次のボールを投げる。

「行け、シードラ!!」

飛び出したのは、シードラ。このポケモンであれば、水中戦は可能だ。

「次は……」

それを見たサトシは2体目を考え、しかしその思考は中断された。青白い光がクラブを包み込み、その全身はより大きく、強くなる。

「コキッ、カキコキ!」

そう、キングラー。クラブは、このタイミングでキングラーに進化したのである。

「キングラー……。よし、次もキミに決めた!」

クラブの進化を見たサトシは、続投を決意し笑みを浮かべる。

『さあ、コーム選手2体目はシードラ、こちらは水中戦への対応が可能なため先程と同じ手は通じないでしょう!そしてサトシ選手、なんとこのタイミングでクラブがキングラーへと進化しました、これについてカジキさんはどう思われますか?』

『そうだな。コーム選手の選出としては先程良いようにやられた水中戦に対応できる良い選出だ。しかしここでクラブがキングラーになっている。元のクラブでも強かったが、種族としての力がクラブ時代よりも更に強力になっている。一筋縄で行く相手じゃないが、コーム選手としてはここでキングラーを落としておきたいところだ』

「必ず勝つ!シードラ、【りゅうのいぶき】!」

「迎え撃てキングラー、【みずでっぽう】!!」

水中から技を放つシードラと、浮島から迎え撃つキングラー。両者の技が激突し、爆発が起きる。

「もう1発だ!」

「迎え撃て!」

両者は同じ技を再び放ち、爆発が起きる。

「浮島を狙うぞ、【みずでっぽう】!!」

対するコームはサトシの作戦を真似、浮島の真下にシードラは回り込む。そして、【みずでっぽう】は打ち上げた。誰も居ない、浮島を。

「今だキングラー、【はさむ】攻撃!」

側面から強襲したキングラーは、その硬い鋏でシードラの胴体を挟み込む。

『シードラの反撃届かず、キングラーに捕まったー!!』

『頂けねぇな。水陸両用のポケモン相手に浮島吹き飛ばしたとて、水中戦に移行するだけだ。それに相手は、先に同じ戦術を使ったトレーナー。戦術を真似たところで、弱点を突かれるだけだな』

『ほうほう、弱点ですか?』

『まあな。浮島の下に移動して打ち上げる技の特性上、発動直前は視界が狭まるんだ。だから、ああやって横からぬるりと来た相手に対応が遅れる。サトシ選手のキングラーは、水中への入り方がかなり上手かったな。まるでセキチクの忍びかってくらいには、音を消して移動してた。……さあ、コーム選手が反撃するのか、はたまたサトシ選手がここでも勝利するのか。注目だな』

「くぅっ……!ならシードラ、【りゅうのいぶき】!!」

しかしシードラは水中で【りゅうのいぶき】を放つと、キングラーを引き剥がした。

「今度はこれだ、【クラブハンマー】!!」

しかしキングラーはその鋏にエネルギーを溜めると、水中を泳いでシードラへと向かう。

「逃げろ、シードラ!」

対するコームの判断は、逃げ。【クラブハンマー】を躱し、水中を逃げ回る。

「ならッ……、【みずでっぽう】!!」

激しい水圧が、シードラを襲った。逃げた先に打ち込まれた【みずでっぽう】がシードラを打ち、シードラの動きを止める。

「キングラー、【はさむ】攻撃!」

その隙にキングラーは接近、その大きな鋏で再びシードラを捕まえる。

「逃げ出せシードラ!」

「いいや、その前に決める!キングラー、【はかいこうせん】!!」

至近距離から放たれた【はかいこうせん】がシードラを吹き飛ばした。その火力は絶大で、シードラはそのまま目を回す。

「シードラ、戦闘不能!キングラーの勝ち!!」

その宣告に、観客が湧いた。

『凄い、凄いぞキングラー!!コーム選手のシードラをねじ伏せた!』

『近距離攻撃と遠距離攻撃、どちらも小技と大技を揃えていてバランスの良い技構成だ。そしてサトシ選手自身も、かなりフィールド戦が上手いな』

『これでコーム選手のポケモンはあと1体、対するサトシ選手はあと3体!さあ続いてのポケモンは!?』

「あと1戦、出来るか?キングラー」

「コキコキッ!!」

サトシの問いにキングラーは浮島に登り直すと笑って応え、コームは最後となるボールを投げた。

「行け、ゴルバット!!」

『最後のポケモンはゴルバットか。水中戦こそできないが、キングラーに空中戦はできない。キングラーが対空の遠距離技をどう活用するか、ゴルバットがどう立ち回るかで勝敗が変わってくるな』

「……頼むぞゴルバット」

「バァット!」

「キングラー、【みずでっぽう】!!」

「くっ……、避けろゴルバット!」

キングラーが放った【みずでっぽう】を、ゴルバットは空中で身を翻して躱わす。

「【はかいこうせん】!!」

「躱して【エアスラッシュ】!」

「キングラー、【みずでっぽう】!広げて撃つんだ!!」

続く【みずでっぽう】を避けようとするが、避けた先まで広がる【みずでっぽう】を、ゴルバットは避けきれずに食らう。

『おおっとー!ここで【みずでっぽう】が命中ー!!』

『【みずでっぽう】をわざと分散させて放てば、威力は落ちるが効果範囲は広げられる。リーグじゃあ足止めなんかでよく使われる技術だ』

「今だキングラー、【クラブハンマー】で飛び上がれ!」

サトシが叫び、キングラーは浮島に【クラブハンマー】を叩きつけた。衝撃波が水面を伝い小さく波が起きる。【クラブハンマー】を浮島に叩きつけたキングラーは、その反動で飛び上がった。

『と、飛んだー!?』

『【クラブハンマー】を浮島に叩きつけた反動で飛翔、やはりサトシ選手はフィールドの活用が上手い。しかしゴルバットは【みずでっぽう】の拡散攻撃で動きが止まり、しかもキングラーの間合いの内に、図らずとも入ってしまっている。そしてキングラーの位置はゴルバットの頭上。ここならば、最大の一撃を叩き込める』

「オレは勝ぁつ!!【クラブハンマー】!!!!」

そして頭上から叩きつけられた【クラブハンマー】がゴルバットを撃墜。

「ゴルバット、戦闘不能!キングラーの勝ち!!よって勝者、サトシ選手!!」

審判がそう判定を下し、サトシは初めてのリーグ戦を、脅威の3タテで勝利した。

 

 

 




キングラー伝説の3タテ戦。一応コームも原作より強いんですが、サトシとクラブはより強くなってます。なので結果は変わらず、といった感じですね
原作と違って、実況解説が入ってます。ロケット団対策でもあり、トレーナー育成の為のアドバイス要員だったりします
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