ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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2024/6/13 一部修正しました


第147話 パワーの戦い

 1回戦を終えれば2回戦が始まる。といっても、次の試合からはサトシとシゲルの試合は中継で確認することにする。それは先程のタナカ戦での苦戦が原因だった。データで対策をしっかりして、最初は刺さって、しかし巻き返された。データでは読み切れない本当の強さに、あと1体まで追い詰められたのだ。

『対策は完璧でした。データより強くて負けました』

なんて結果を、エリカやタマムシジムのジムトレーナー達に報告する訳にもいかないのである。

 中継を見ると、サトシの試合は既に始まっていた。サトシの1体目はゼニガメ、対する相手はアイカという少女で、使用ポケモンはアーボック。サトシはロケット団のムサシと何度も戦っている為かアーボックの間合いや基本戦術を知り尽くしており、攻撃の全てを身軽に躱しつつ【みずでっぽう】による反撃で細かく体力を削ると、【ハイドロポンプ】で吹き飛ばし、追撃の【ロケットずつき】でアッサリと沈める。しかし2体目として出されたフシギバナの範囲攻撃に押し潰される形で敗れ、サトシもまた2体目に。続いて呼び出したのはピジョン。とりポケモンとしての得意を活かした空中機動でフシギバナを翻弄し、【ハードプラント】を放って動けなくなったところを集中攻撃して倒しきった。アイカの3体目はバタフリー。サトシはピジョンを引き下げるとリザードンを投入、スミレの目からして確実な過剰戦力によって危なげなく勝ち進んだ。

 一方のシゲル。こちらは先程と違い、ニノという少年だ。スミレのデータによると、トレーナー2年目で初出場らしい。こちらの試合は、ニノが最初に出したスピアーに対してシゲルはオニドリルを選択、真っ向からの激しい空中戦を制したシゲルのオニドリルがまずは一勝を挙げる。ニノは続いてマタドガスを投入、シゲルのオニドリルはスピアー戦によって消耗した状況であったもののマタドガスを追い詰め、最後は相打ちで戦闘不能。ニノが出した最後のポケモンはウインディ。対するシゲルの2体目はダグトリオ。高速で走り回りながら攻撃を加えるウインディだったが、地中に逃げつつじめん技を連打してくるダグトリオの前ではまるで無力、こちらもあっさりと敗れて3回戦に駒を進めた。

 それを受けてのスミレによる2回戦が、これから始まる。フィールドは岩。ゴツゴツとした岩に全体が覆われている構成だが、対応はそう難しい話でないので問題ない。

『それでは、これより2回戦最終試合を開始します!対戦カードはテツマル選手対スミレ選手です。ナツメさん、このカードはいかがですか?』

『……そうね、テツマル選手は超攻撃型のスタイル。半端な搦手や対策は真正面から打ち砕く。それに対してスミレ選手は理論型。相手を分析、対策することで相手を翻弄して倒すタイプ。先程の試合では対策こそ光ったものの、戦術は真っ向勝負。搦手に拘るタイプではなく真っ向勝負が出来るのであれば、対策の対策は難しくなる。……まぁ、テツマル選手はそういうのは苦手かと思うんだけど』

『あ、あはは……』

歓声と実況解説を聞きながらスミレが入場すれば、同時に道着を来た空手家スタイルの男性が立っている。

「君がスミレだなっ!!俺はテツマル、よろしく頼む!!!!」

「(声デカッ……)は、はい。よろしくお願いします」

スミレはテツマルの発する音量に目を丸くしつつも、挨拶を済ませてコートの外へと移動する。

 

「これより、テツマル選手対スミレ選手のバトルを始めます!使用ポケモンは3体、それでは1体目を!!」

審判の言葉で、両者はモンスターボールを投げた。

「行ってこい!ケンタロス!!」

「お願いね、ケンタロス」

『おおっと!?これは両者ケンタロスだー!!』

『パワーにはパワー、スミレ選手の選択は恐らく真っ向勝負ね』

両者のケンタロスが、鼻息荒く睨み合う。

「行くぞケンタロス、【とっしん】!!」

「【しねんのずつき】で迎え撃って」

足音を轟かせながら駆けるケンタロスが、頭をスミレのケンタロスに向けて突っ込む。対するスミレのケンタロスは額にエネルギーを集中しこれを迎え撃つ。そのまま角を絡ませて力比べの体勢に入るが、技の火力は【とっしん】が上回り、スミレのケンタロスは引き摺られて後退する。

「押し切れ、ケンタロス!!」

「【ふるいたてる】」

押し切ろうと力を込めて前進するテツマルのケンタロスに対して、スミレはケンタロスに【ふるいたてる】を指示、発動中に途切れた集中の隙を突かれて地面を転がるが、すぐに立ち上がって鼻を鳴らす。

「次だケンタロス、【ギガインパクト】ォ!」

「こっちも、【ギガインパクト】」

両者の【ギガインパクト】が激突した。凄まじい衝撃波が吹き荒れるが、僅かな間の後に吹き飛ばされたのは、テツマルのケンタロスただ1体のみ。

『【ギガインパクト】対【ギガインパクト】、勝利したのはスミレ選手の【ギガインパクト】!』

『先程はわざと技を受けて、その代わりに【ふるいたてる】で力を増強させる時間を作ったわね。ダメージは受けるけど、現状では悪くない手だわ』

「くっ……、強い!でも俺たちも負けない!!」

「思ったより勢い殺された。馬鹿力にも程がある……」

「行くぞ、【ワイルドボルト】!!」

テツマルのケンタロスから放たれた電撃がスミレのケンタロスを包み込む。高火力の技によって大ダメージを受けたスミレのケンタロスは膝をつくが、【ワイルドボルト】は反動を受けるためテツマルのケンタロスもまた傷だらけになる。

「やり返す……、【インファイト】!!」

対するスミレが指示したのは【インファイト】、ケンタロスも含まれるノーマルタイプにとって、効果抜群かつ元の火力が高い天敵ともいえる大技だ。

「なら、ここで決めるぜ!ケンタロス、【きしかいせい】!!」

体力が少ないほど大きなダメージを与える【きしかいせい】、両者のケンタロスはコートの中央で真っ向から衝突、激しい衝撃波が放たれた。

 

そしてその結果は

「両者戦闘不能、よってこの勝負、引き分け!」

そう、引き分け。【ふるいたてる】の攻撃上昇に【インファイト】の火力を乗せて撃ったスミレのケンタロスに対して、テツマルのケンタロスは【ワイルドボルト】の反動でギリギリまで威力を上げての【きしかいせい】、【きしかいせい】もまた格闘技であるため総合力は互角であった。そして何より、どちらもあと一撃で落ちる程に満身創痍。だからこそ、このバトルは引き分けに終わったのである。

「ナイスガッツだぜ、ケンタロス」

「……良い仕事。後は任せて」

テツマルとスミレは各々労いの言葉をかけながらケンタロスをボールに戻すと、次のボールを手に取った。

「さあ、行こうぜキングラー」

「続いて、パラセクト」

『テツマル選手はキングラー、スミレ選手はパラセクトを選出!』

『スミレ選手の本領発揮と言ったところかしらね』

 

「キングラー、【ハイドロポンプ】!」

「パラセクト、【まもる】からの【きのこのほうし】」

キングラーから放たれた激しい水流をバリアを貼って防御すると、反撃に背中のキノコを揺すって胞子を飛ばす。それを受けたキングラーは、パラセクトへの警戒で鋭い視線を送っていた目からバトルの場とは思えないようなトロリとした柔らかい目に変わる。

『見事な対応、キングラーの先制攻撃に綺麗なカウンター!!』

『やはり、搦手で来たわね。【きのこのほうし】によって与えられる状態異常は眠り、眠らせてから倒そうってところね。テツマル選手のような真っ向勝負一点張りの相手なんて、スミレ選手のような理論型トレーナーにとっては格好の的。ましてやここはカントー、ガラルやカロスならブーイングものだけど、この地方のバトルは紳士の競技でなく戦士の争い。有効で、使ったところで面倒なことにはなりにくい。ならば使わない手はない……のだけれど』

「やるなぁ……!ならキングラー、自分に【バブルこうせん】!!」

テツマルの指示でキングラーは自分自身に【バブルこうせん】を放ち、その衝撃で目を覚ます。

『この場にいるのは、下町でパワーしかないポケモンを連れて粋がっている三下とは違う。搦手を逃げだとか卑怯だとか罵るだけで何も出来ない雑魚じゃない。パワータイプを貫いてここまで上がってきたということは、格好の的にされながらもそれを突破してきた証。……さあ、スミレ選手はどう出るのか。見ものね』

「〜ああもう、観客を牽制してくれるの有難いんだけど、結局は搦手対応されたからって情けないバトルはするなってことでしょ!?分かってるよッ……、パラセクト、【エナジーボール】連打!」

「そうでなきゃ楽しくない!!【バブルこうせん】で一掃しろ!」

【エナジーボール】と【バブルこうせん】がバトルコートの至る所で激突し、爆発を起こす。

「【シザークロス】!」

「【クラブハンマー】で迎え撃て!!」

爆煙を煙幕代わりに接近し、十字架を切るように振り下ろされるパラセクトの鋏と真っ直ぐに突き出されるキングラーの鋏がぶつかる。

「【エナジーボール】」

「【ハイドロポンプ】!」

一歩後退して【エナジーボール】を放つも、【ハイドロポンプ】によって消し飛ばされる。

「【まもる】」

「【バブルこうせん】!」

パラセクトがバリアを貼ると、爆煙を切り裂き飛んでくる【バブルこうせん】が弾かれる。

「【シザークロス】!」

「【ハイドロポンプ】!!」

そして接近して【シザークロス】を撃たせようとしたスミレだが、テツマルがキングラーに命じたのは【ハイドロポンプ】。遠距離からの水流に押し流され、パラセクトは吹き飛ばされてダメージを受けた。

「まだッ……!」

「これで決めるッ、キングラー!【クラブハンマー】!!」

「…………ここ」

スミレが呟いた瞬間、パラセクトの体を守護するバリアがキングラーの一撃を受け止め、反撃として【きのこのほうし】を撒き散らした。

「キングラー、自分に【バブルこうせん】!」

「その隙があれば十分ッ……、【シザークロス】!」

パラセクトの鋏が十字を描いて、その一撃は眠気で動きを止めたキングラーにクリーンヒットした。眠気に侵されて動けず、技を諸に受けたキングラーは目を回して倒れる。

 

「キングラー、戦闘不能!パラセクトの勝ち!!」

宣告が下り、スミレは深呼吸をする。一歩有利で相手は最後の1体。しかし、パラセクトにもそう余裕がある訳でもない。

(……大丈夫、最後に控えてるのはあの子。そう簡単にやられない)

そう自分に言い聞かせて、テツマルが繰り出す最後のポケモンへと注目する。

「追い込まれて崖っぷち。……でもこんな困難、いつも俺達は乗り越えてきた!相手は凄腕、ならそれを超えてこそ俺達はもっと強くなれる。……そうだろ、エビワラー!」

「エビワラー……成程」

「さあ、行くぞスミレ!エビワラー、【ほのおのパンチ】!」

「パラセクト、【まもる】。それから【きのこのほうし】」

エビワラーが先手を打ち【バレットパンチ】を放つと、対するパラセクトは【まもる】を使用し防御、【きのこのほうし】を撒き散らす。

「【しんくうは】の連続撃ちで吹き飛ばせ!」

対するエビワラーは両の拳で【しんくうは】を発動、連続のラッシュによって放たれた衝撃波が胞子を吹き散らす。

「くっ……、【まもる】!からの【エナジーボール】」

「突っ込め、ダブル【ほのおのパンチ】!!」

火炎を纏った第一の拳はパラセクトが貼ったバリアに阻まれる。そしてパラセクトが放った【エナジーボール】を受けて僅かに後退、しかしすぐに反撃の【ほのおのパンチ】を命中させ、効果抜群の技を受けたパラセクトは倒れる。

「パラセクト、戦闘不能!エビワラーの勝ち!!」

「お疲れ様」

スミレはパラセクトへ一言労いの言葉をかけるとボールに仕舞い込み、最後のボールを取り出した。

「へへっ、追いついたぜ」

テツマルがそう言って笑いかけ、スミレは追い詰められた場面であるにも拘らず、涼しげに微笑んだ。

「そうですね……。でも、ここからです。……火力には火力、やれるでしょ。カイリュー」

「バウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!」

ボールから飛び出したカイリューが、天に向かって高らかに吠えた。

『スミレ選手、最後のポケモンはなんとカイリュー!?』

『へぇ、カイリューを育て切るなんてやるじゃない』

実況の驚愕やナツメの感心と共に、会場のボルテージが上がる。

「行くぞエビワラー、【ほのおのパンチ】!!」

「迎え撃ってカイリュー、【れいとうパンチ】」

両者の拳が激突し衝撃波が放たれる。そして一歩退がったのは、カイリュー。【れいとうパンチ】では、【ほのおのパンチ】に対して相性が悪いのである。

「ギア上げていくぞ、【ビルドアップ】!!」

「やれることを全力で。【りゅうのまい】」

エビワラーの筋肉が盛り上がり、対するカイリューを青黒い雷雲のようなオーラが纏う。

「【しんくうは】!」

衝撃波が、カイリューの腹に減り込み後退させる。

「【ドラゴンテール】」

尻尾で殴り飛ばされ、地面を転がる。

「【ほのおのパンチ】!!」

顎をかち上げられて意識が朦朧し、その巨体をふらつかせる。

「【れいとうパンチ】」

エビワラーの顔面、そのど真ん中へ叩き込まれた凍える拳に、エビワラーは大きく吹き飛ばされる。そして両者の拳が同時に放たれて両者共に仰向けになって倒れる。

「……こりゃ、今のまんまだとキリが無さそうだ。なあ、提案があるんだけどよ」

「想像は付きますが、なんでしょう?」

「このまんまだと埒が開かねぇ、んな訳で、最大火力で勝負しようや。なあエビワラー、お前もやりたいだろ?」

テツマルに尋ねられたエビワラーは、強気に笑って【ビルドアップ】を発動する。

「カイリュー、貴方は?…………そう、分かった。……やりましょうか」

カイリューに視線を向けたスミレだが、カイリューから向けられる視線に頷いた。そして、『やりましょうか』と返す結論を出したのである。それを聞いたカイリューは荒々しく笑って、【りゅうのまい】を発動。能力を底上げする。

「行くぜエビワラー!【インファイト】!!!!」

「お願いね、カイリュー。【げきりん】」

エビワラーとカイリューが、全身のエネルギーを爆発させて突っ込んだ。エビワラーが拳の連撃を繰り出し、カイリューが怒りのままに暴れ狂う。両者傷だらけになりながらの殴り合いに、衝撃波で誰もが介入できない。

「決めろ!」

「決めて!」

否、介入してこそのトレーナーだと言わんばかりに2人のトレーナーが叫んだ。そして両者の拳が交差して、クロスカウンター。

 

一瞬の間が空いて、ゆっくりと崩れ落ちたのはエビワラー。

「エビワラー、戦闘不能!カイリューの勝ち!よって勝者、スミレ選手!!」

『決まりました!激しいパワー対決を制したのはスミレ選手!!』

『両者真っ向からの殴り合いがメインだったのだけれど、スミレ選手は搦手という手札のひとつを見せたのは良い手だったわね。最後が結果的にカイリューによる真っ向勝負だったけれど、それまで見せて来なかった状態異常をメインに据えたパラセクトという駒を見せることで、相手に搦手メインのポケモンも使えることをアピールした』

『ほうほう、つまりそれは相手を迷わせるということですか?』

『ええ、そう。手札の多さを見せつけることで、相手の疑心暗鬼を誘うことができる。……でも効果があるのは、対戦相手のテツマル選手だけじゃないわ。今後、スミレ選手とバトルする可能性があるトレーナー全員に、目的が分かっていてもならざるを得ない疑心暗鬼を植え付けた。……彼女、中々に策士ね』

(……本来は搦手メインってこと、流石に気付かれるよね。まぁ前提に立てたのが今回の作戦なんだけど)

「スミレ、良いバトルだったぜ、ありがとう!」

「こちらこそ、良い経験になりました」

両者は笑顔で握手を交わして、スミレの2回戦は終わりを告げた。

 




裏設定: 各地方におけるポケモンバトル
・カントー: ロケット団など対人での戦闘を繰り返した為、搦手には寛容なスタイルの超実戦型。武士
・ジョウト: カントーの影響大

・ホウエン:カントー、シンオウの影響大

・シンオウ:ヒスイ地方などの影響。ポケモンとの生存競争の中で培われた超実践型。サバイバー

・イッシュ: アメリカの成り立ちと酷似。移民による原住民虐殺などの歴史を辿っているため、ポケモンバトルも実戦型。

・カロス:騎士の決闘を起源とするため、正々堂々が好まれる。ただし革命などでポケモンの力が使われた影響もあり、やや実戦に傾いている。

・アローラ:祭りの儀式を起源とし、その為日常的な行為として定着しなかったことでリーグがなかった。正々堂々、かつ派手な試合が好まれる。

・ガラル:元々は貴族の娯楽のため、正々堂々とした試合が好まれる。近年はローズ委員長の元でエンタメ要素が強まり、正々堂々かつ派手な試合を好む。ただ、エンタメとして成立している分、実践型でやっている地方のリーグなどで野次を飛ばすガラル人は多い。

・パルデア:かつては軍事国家だったため実践型。しかし地方の方針としてバトルに消極的でPWCSの成績も悪く、一部の戦闘狂は海外に出たりしている。
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