ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
(17:17現在→二次20位、総合28位)
イワークとニドキングは【アイアンテール】と【かわらわり】で激突、しかしすぐに飛び退く。
「イワーク、【ストーンエッジ】!」
「ニドキング、【じしん】」
イワークが飛ばす岩の礫をスミレは無視。ニドキングの耐久を信じて攻撃を指示する。イワークの放った【ストーンエッジ】がニドキングを打ち、ニドキングは表情を歪めながらも踏み止まる。対するニドキングは【じしん】、激しい振動に襲われたイワークはこちらも苦痛に全身をくねらせながらも耐え忍んだ。
「イワーク、【ずつき】!」
イワークの【ずつき】に、ニドキングは思わず仰け反る。
「ニドキング、【かわらわり】!」
ニドキングの【かわらわり】が、イワークを地面に叩きつける。
「【アイアンテール】!」
【アイアンテール】で弾き飛ばされ、ニドキングは氷柱を幾つも巻き込みながらも地面を転がった。
「【じしん】!」
反撃の【じしん】に体勢を崩したイワークは、背中から氷柱に突っ込んだ。ノーガードでの殴り合いに、既に上がっていた会場のテンションが天井知らずとでも言うように盛り上がる。
「【いわなだれ】」
頭上からの岩石に、ニドキングは思わずたたらを踏んだ。
「……ニドキングッ!」
「追撃だ、【ずつき】!」
「がんばれニドキング、【どくづき】!!」
しかし持ち直したニドキングが、毒を纏った拳で突っ込んできたイワークの顔面を横へと弾く。すると勢い余ったイワークは、氷柱を幾つも巻き込みながら地面を転がり、しかしコートの端で倒れる。
「立てるかイワーク!」
「イワァァ……」
しかし、イワークは再び立ち上がる。
「大丈夫?ニドキング」
「グゥ……!」
スミレが傷つき膝をついたニドキングに心配そうな声を掛けるが、ニドキングは笑って再び立ち上がる。
「凄い強さだ……!それに相当懐いている。余程良いトレーナーらしいな君は」
「……コイツは普段、野生の群れでボスやってますから。私は関係ありませんよ」
「だとしてもだ!群れのボスを預かるような個体が人間に心酔し、群れを置いてここに来た!!そしてこうして、いちトレーナーのポケモンとして、バトルに臨んでいる!それはとても凄いことだ、凄いトレーナーの証だ!!どうか誇ってくれ、私は君と戦える今を心から誇りに思う!!」
興奮気味に叫ぶユウジに、スミレは動きを止めた。
「…………そ、そんな褒めなくても」
スミレは、少しばかり褒められることに弱かった。
「褒めるさ、だって君は凄いのだから!凄いトレーナーを褒め、まだ未熟なトレーナーには適切なアドバイスをして成長を促し、そして時には壁となる。それは先輩トレーナーとして当たり前のことなのだから!」
「……調子狂うなぁ。まぁでも、どちらにせよ脳筋と脳筋の体力勝負。押し勝てば良いだけの話です」
照れる気持ちを誤魔化すように、口元をもにょもにょと動かしながらも鼻から酸素を大量に取り込んだ。新鮮な酸素が、昂る脳に冷静さを持たせる。
「勝つのはこっちだ、やるぞイワーク!!」
「イワァァァァァァァ!!!!」
「予選リーグ最終決戦、そしてここからが最終局面。……相手は難攻不落の岩石龍、相手にとって、不足なし!行くよニドキング!」
「グォォォォォォォォ!!!!」
人間、ポケモン。4者が吠え、最終局面が始まる。
「イワーク、【ストーンエッジ】」
「ニドキング、【ベノムショック】」
両者の技が空中で激突、激しい爆発を起こす。
「グォォォォ!!」
爆煙を切り裂き先に飛び出したのはニドキング。
「【かわらわり】」
跳び上がりながら脳天に振り下ろされた手刀に、イワークは顎から地面に叩きつけられる。
「【ずつき】!」
しかし反撃の【ずつき】を空中のニドキングは躱せずに跳ね飛ばされ、背中を地面に強く打ちつけた。
「立ち上がってニドキング!」
スミレの呼び掛けに応えるように、ニドキングは冷や汗を流しながら立ち上がる。
「追撃だ、【アイアンテール】!」
「【じしん】で迎え撃って!!」
イワークが尻尾を振るい、ニドキングは【じしん】を纏った拳で迎え撃つ。尻尾が勢いよく弾き飛ばされ、その結果イワーク全身の体勢が崩れた。
「不味い、イワーク!」
「もう1発、【じしん】!!」
そこに入るのは、追撃の【じしん】だ。放たれた振動がイワークの全身を揺らし、大きなダメージを与える。
「負けるなイワーク、【ずつき】!」
しかし再び立ち上がり突進したイワークは、ニドキングを巻き込み頭からコートの壁へと突っ込んだ。イワークと壁との板挟みに、ニドキングは思わず白目を剥く。
「頑張れ、【かわらわり】!!」
しかし、必死な表情で意識を保ったニドキングが頭に【かわらわり】を叩きつけ、イワークもまた白目を剥いて地面に叩きつけられた。
「イワーク、距離を取って最大のエネルギーを込めるんだ」
しかし、これでもまだ倒れない。イワークは朦朧とする意識を目覚めさせるように首を勢いよく振った。
「ふぅっ……!ニドキング、次で終わらせよう。……【じしん】準備」
スミレは大きく息を吐くと、ニドキングにそう告げる。ニドキングは失いかけた意識に再び火を灯すように両頬を掌で叩くと、ありったけのエネルギーを込める。
「【アイアンテール】で飛び込め、【ずつき】!!」
【アイアンテール】によって増した力で地面を蹴って、凄まじい速度でイワークが射出される。衝撃波が吹き荒れ、スミレはゴクリと喉を鳴らす。
「……待ったら負ける、どうせ間に合わないッッ!撃って、ニドキング!!」
ニドキングは、その右拳をフックで放つ。拳には【じしん】のエネルギーを纏わせ、放つ先は、何もない虚空。だがしかし。拳を振るったその先に、イワークの頭が丁度合わさった。ユウジに誤算があったとすれば、イワークが強すぎたこと。イワークらしからぬ、高速射出ができてしまうだけの強いポケモンだったこと。そしてスミレが罠を諦めラッキーパンチに期待し、それが成功してしまう程に直線的な攻撃であったということ。
「グォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
ニドキングが咆哮を轟かせ、足は強く地面を踏み締め。拳に捉えられたイワークを、勢いそのままにコートの地面に叩きつけた。吹き荒れる暴風は辺りの氷を砕き、吹き飛ばし。そしてイワークを巻き込みながら殴りつけたコートの地面は大きくひび割れていた。
「勝負、あり……!」
スミレは、呟いた。ひび割れたコートの真ん中で倒れるイワークの意識は既に無く、ニドキングは戦闘不能寸前ながらも立っている。
「イワーク、戦闘不能!ニドキングの勝ち!!よって勝者、スミレ選手!!!!」
「か、勝った……。決勝リーグ、行けた…………」
そう思うと同時に、疲労感が全身を突き抜けた。激しい頭痛と一歩も動けないと錯覚するほどの疲労に、スミレは思わず座り込む。
『決まったァァ!!魂が燃えるような激戦を制したのは、初参戦にして、初の決勝リーグ出場、スミレ選手だァァァ!!!!』
激しい歓声中、スミレはふわふわとした感覚で座り込んだまま意識を飛ばし掛ける。
「グゥ……」
しかし、ニドキングが倒れたことでハッと意識を呼び戻し、ボールに戻した。
「ありがとう…………。凄いバトルだった……」
そう、労いの言葉を添えながら。
「凄いバトルだった。……負けたのは正直悔しいけど、楽しかった。ありがとう、スミレ」
「こちらこそ、凄いバトルでした……。すみません。今日は、もう立てそうにないです」
寄ってきてそう声を掛けたユウジは、額に汗を掻きながらも普通に歩いている。笑顔を浮かべながらも、それまでよりも少し声のトーンが低い。きっと悔しくて、それでも気を遣わせないように普段通りを装っているのだろうとスミレは思う。そして自分はきっと泣かないだろう、泣けないだろうとも思った。
疲労で動けない体に、ふわふわと浮遊するような意識。ナツメの解説は今後の参考になりそうだったので、疲れていない時にでも映像で見ようと内心考える。
「あまり試合慣れしてないと、そうなってしまうんだ。連戦による精神的、身体的な疲れはどうしても蓄積するからね。謝ることでも、恥じることでもないのさ。……こういう時はポケモンに抱き上げて貰うなりした方が良いよ。流石に、私がやると色々問題になりかねない」
「……ありがとう、ございます」
そう言いながら自身の腰を弄り、カイリューを呼び出す。カイリューは静かに降り立つと、スミレを優しく抱き上げた。
「いつか、またやろう。……君には、是非ともリベンジしたい」
「はい。その時は、よろしくお願いします」
「ああ。予選リーグ優勝、おめでとう」
『これにて、リーグ8の決勝は終了となります!!ナツメさん、ありがとうございました!!』
『ええ。中々楽しめたわ。お疲れ様』
リーグ8、終了。優勝者、スミレ。
◾️◾️◾️◾️
「よっ」
疲労からスタジアムの医務室で横になっていたスミレの元に、いの1番にやってきたのはサトシ、タケシ、カスミの3人組であった。
「体、大丈夫か?」
「……あれだったら帰るけど」
タケシとカスミの気遣いに、弱々しく笑みを浮かべる。
「疲れてるだけです…………。それより、サトシは?シゲルは?」
「オレは勝ったよ、決勝はサクラコって人とバトルしてな。フシギダネが前2体を倒してくれたんだけど、マダツボミにフシギダネとピカチュウがやられちゃって。ベトベトンでマダツボミを倒して、オレが決勝トーナメントに進んだぜ」
サトシの結果に、納得したように頷く。マダツボミは武術を使う近接ファイターなので、ベトベトンで圧殺するのは最良の戦術と言えるだろう。
「ベトベトン持ってたんだ。……流石。それで、シゲルは?」
「…………それは」
スミレの問いかけに、サトシ達は表情を暗くした。
「やっぱり負けたのか。……相手は、ホウセンさんだもんね」
「ああ。知ってるのか?」
「色々お世話になってね。私も1回バトルして負けたから、あの人の強さは少し知ってるつもり」
「スミレも負けたのか……。あの人、実況に優勝候補って言われてたしな」
「だろうね。それで、シゲルはどこまで食らいついた?」
本題はそれだ。正直、今の自分でも勝てるかは怪しい。だから、シゲルの結果を尋ねた。優勝候補を相手に、自身と同格のどれだけ足掻けたのかを。
「3体目。シゲルの手持ちは、1体目ナッシー、2体目ニドキング、3体目カメックス。ホウセンの手持ちは1体目ウインディ、2体目ゴローニャ、そして3体目がオコリザルだったな」
「へぇ、3体目を引き摺り出したんだ」
スミレは、
「ああ。オレも見てたけど、凄かったんだぜ。ナッシーがウインディに負けたけどすぐにニドキングで取り返して、そのニドキングはゴローニャに負けたのをカメックスがまた倒して。最後のオコリザルには攻撃何度受けても立ち上がって。アイツ、マサラタウンに居た頃じゃあ考えられないような剣幕でさ。カメックスも何度転がされても食らいついてさ。解説の人も凄いって褒めてた。……でも、届かなかった。結局、アイツはそのホウセンってトレーナーに負けて、もう会場を出ちゃったんだ」
サトシの悔しげな言葉に、スミレは思わず悲しげに眉を下ろした。
「……もう、帰ったの?」
「ああ。博士が言ってたんだけどさ。アイツ、オレ達に会わせる顔がないってよ」
サトシの言葉に、スミレは納得したと頷いた。サトシが決勝リーグに駒を進め、自分もと息巻いていたに違いない。スミレもまた突破するだろうと思っていたに違いない。それなのに、たった1人負けて予選落ち。プライドの高いシゲルにとっては、耐え難い屈辱だったのだろう。
「そっか」
スミレは、ただそれだけを口に出して目を閉じた。サトシ達はそれ以上、何も言わなかった。