ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第154話 サトシvsヒロシ

 ヒロシのバタフリーとサトシのゼニガメのバトルは既に、バタフリーが大きなダメージを負っていた。

「……あれがサトシの怖いところ。1回流れを掌握されると、あれを崩すのは相当難しい」

控室で試合を眺めるスミレは、ひとりごとを呟く。

(……あのゼニガメ、多分うちのバタフリーと撃ち合いが成立しそう。それに、あからさまにバタフリー対策してる。やっぱり、私とのバトルを想定してるんだね)

今でなくとも、ここでなくとも、何処かでぶつかるとスミレの勘は告げていた。

「それで?……ヒロシさんは、ここからどうする?」

スミレは真剣な表情で、控室のモニターを見つめていた。

◾️◾️◾️◾️

 ゼニガメとバタフリーの一撃が空中で激突、激しい爆発が起きた。

「【かぜおこし】!」

「避けろ!!」

烈風が地面に向かって打ち下ろされ、ゼニガメは甲羅に籠り回転しながら逃げ回る。

「【サイケこうせん】!」

【サイケこうせん】が甲羅に命中、ゼニガメの体が空中に投げ飛ばされる。

「反撃だ、【ハイドロポンプ】!!」

しかし空中で【ハイドロポンプ】を放ち反撃、しかしそれをバタフリーは軽やかに飛び回って回避した。

「パピー、【しびれごな】」

「迎え撃て!!」

バタフリーは【しびれごな】を放ち麻痺させようとするも、【ハイドロポンプ】で弾き飛ばす。

「頑張れ、【むしくい】!」

「引きつけろ!!」

バタフリーが高速で飛行し、ゼニガメに迫る。サトシはそれを迎え撃つことを選択し、ゼニガメに待機を命じた。

「構うな、ここで日和れば負けるだけだ!!」

「今だ、躱わせ!」

突っ込んだバタフリーの攻撃を、ゼニガメは首だけを甲羅に仕舞うことで躱す。

「しまっ……!」

「決めろゼニガメ、【ロケットずつき】!!!!」

白い輝きを纏った流星が再び空を駆け上った。バタフリーの腹に再び【ロケットずつき】が減り込み、バタフリーの意識が明滅する。バタフリーは翅に頼ることなく空中へと高く弾き飛ばされると、そのまま力無く墜落してゆく。バタフリーの敗因は単純だ。サトシの身近な人物が扱う同種が、好き放題に暴れすぎたこと。そしてこのバタフリーには、その同種以上の強さが無かったことである。

「バタフリー、戦闘不能!ゼニガメの勝ち!!」

審判の宣告が下り、歓声が轟いた。

『バタフリー対ゼニガメのバトルは、ゼニガメの勝利です!!エリカさん、このバトルを見てどうですか?』

『そうですね。……このバトルは単純に、地力の差が出たと思います。バトルを見るにサトシ選手は、バタフリーに対するピンポイントな対策を行っていました。【ハイドロポンプ】で【しびれごな】を打ち消したのがそれですね。しかし、攻撃技として猛威を振るったのは【ロケットずつき】です。あの技は直線的なので、やりようによってはカウンターができる技なのですが、バタフリーはゼニガメの速度に追いつけなかったし、トレーナーであるヒロシ選手も機動を予測して技を置く、というカウンターの常套手段を使用できなかったのが痛いです。まぁ、サトシ選手が使うタイミングが良かったのもひとつの原因なので、あまり責められることでもないかと思いますけどね。……一方のサトシ選手、あの3連撃は中々に良いと思いましたね。空中の敵を撃ち落とすという限定的ではありますが、高い火力と速度を両立した中々良い戦術だと思います。……ふふっ』

『どうかなさいました?』

不意に笑みを溢したエリカに、実況担当者は困惑の声を漏らす。

『……失礼、確実に何処ぞのバタフリー使いを意識しているなぁと思いまして。話を戻しますと、この戦術のデメリットは、【ハイドロポンプ】を撃ち続けなければならない関係で、エネルギー消費が激しすぎることですね。それに、空中での高速回転は、ポケモンという強力な体を持ってしても疲れます。……つまり今のゼニガメは、攻撃を受けていない割にかなり消耗している筈です』

『成程』

「……ゼニガメ、大丈夫か?」

「ゼェ……ゼェ……ゼニィ!」

サトシが眉を下げると、ゼニガメは息を切らせながらも笑い、サムズアップする。

「地力の差かぁ……。はっきり言われるの厳しいなぁ」

そう悔しげに言いながらも、ヒロシの目はまだ闘志に燃えていた。

 

「ゼニガメ、次も行くぞ!」

「レオン、仇を討ってくれ!!」

サトシはゼニガメを継続、ヒロシはレオンと呼ばれたピカチュウを選出し、ヒロシの肩からピカチュウが飛び降りる。

「ゼニガメ、【ハイドロポンプ】!」

「出し惜しみなしだ、【かみなり】!!」

ゼニガメの放つ【ハイドロポンプ】を迎え撃ったのは、極大の雷撃だ。でんきタイプはみずタイプに強く、そして多少は消耗しているゼニガメと万全のピカチュウでは火力に差が生まれる。【かみなり】の電撃が【ハイドロポンプ】を打ち破ると、ゼニガメの全身が激しい雷撃によって包み込まれ、ゼニガメは表情を歪めながらも攻撃を耐え忍ぶ。

「反撃だ、【ロケットずつき】!」

「避けろ!!」

ピカチュウが慌てて体を捻るが、突っ込んできたゼニガメが脇を掠めた。強い衝撃に小さな体では踏ん張りも効かずに吹き飛ばされるが、ゼニガメは勢いそのままに壁へと突っ込んでゆく。

「……今だ、甲羅に入って【みずでっぽう】!!」

激しくぶつかるかと思われたがしかし。ゼニガメは【みずでっぽう】を壁に当てて勢いを僅かに殺すと頭を甲羅に収め、壁に激突した。

「倒せてないッ……!レオン、【10まんボルト】!!」

「ゼニガメ、【からにこもる】!」

壁への激突で舞い上がった土煙の中でゼニガメは再び立ち上がるが、その瞬間をヒロシは突いた。電撃がゼニガメを襲い、ゼニガメは慌てて殻に籠る。

「今だ、【でんこうせっか】!」

しかし殻に籠り守りに入れば、ゼニガメの動きは止まる。ピカチュウが加速して突進し、ゼニガメの甲羅は激しく転がった。

「ゼニガメ、逃げ回れ!」

「いいや、これで決める!【かみなり】!!」

ゼニガメは甲羅に籠ったまま転がって逃げるが、【かみなり】がゼニガメを捉えた。激しい雷撃がゼニガメを包み、ゼニガメは耐えきれずに倒れ込む。

「ゼニガメ、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!!」

『ここでヒロシ選手、取り返した!!』

『ゼニガメを態々続投する意味はないかと思うのですが。消耗したみずタイプなど、でんきタイプにとってはただの獲物でしかありませんからね。……ここからサトシ選手はどう取り返すかが注目です』

 

「ごめんな、ゼニガメ。……リザードン、キミに決めた!!」

サトシはゼニガメをボールに戻すと、次のボールを投げた。

「グオォォォォォォォォォォ!!!!」

土煙を上げながら降り立ったリザードンが咆哮し、ヒロシはそのプレッシャーに引き攣った笑みを浮かべる。

「レオン、戻って。頼むよ、ジッポ」

ヒロシの指示でピカチュウはヒロシの元へ戻り、続いて投げられたボールからはヒトカゲが飛び出した。

「リザードン、吹っ飛ばせ!」

「しゃがめ!!」

ヒロシの指示で慌ててしゃがんだヒトカゲの頭上を、風を切り裂く音と共に薙ぎ払われたリザードンの尻尾が通過する。

「【かえんほうしゃ】!」

「避けろ!!」

ヒトカゲが慌てて飛び退くと、元いた場所を凄まじい火力の火炎が焼いた。

「風を起こせ!」

「【メタルクロー】」

リザードンが翼をはためかせて風を起こし、ヒトカゲは【メタルクロー】を発動して突撃する。風に打たれながらも、ヒトカゲは足を止めない。

「【きりさく】!」

リザードンの爪が輝き、その剛腕が振るわれた。

「当てろ!!」

しかし小さな体でそれを躱したヒトカゲの爪がリザードンに命中し、リザードンは眉を顰める。

「飛べ!!」

「【はじけるほのお】!」

ヒトカゲは【はじけるほのお】を放つが、リザードンは自慢の翼で空へと飛び立った。

「【かえんほうしゃ】!!」

リザードンは空中から【かえんほうしゃ】を放ち、逃げ回るヒトカゲを追い詰める。

「くっ……このままじゃあ」

「やるぞリザードン、突っ込め!【きりさく】!!」

「【メタルクロー】で受け止めろ!!」

ヒトカゲは両腕をクロスさせて【メタルクロー】を重ね、リザードンの【きりさく】を真正面から受け止める。金属音が響きヒトカゲを衝撃が襲い、受け止めることに成功した小さな体は僅かに宙へ浮く。

「掴めリザードン!」

「【かえんほうしゃ】!!」

ヒトカゲが【かえんほうしゃ】を放ち牽制するが、火炎を切り裂いて現れたリザードンの腕が、ヒトカゲの腕をしっかりと捕まえた。

「そのまま飛び上がれ!」

サトシは、空を指差した。リザードンはヒトカゲを掴んだまま、回転しながら空高くへと舞い上がる。

「ヒトカゲ!!」

ヒロシは叫ぶが、しかし叫ぶことしかできない。

「決めろリザードン、【ちきゅうなげ】!!!!」

ある程度まで舞い上がったリザードンは空中で静止すると、体を回転させながら急降下。そして勢いそのままに、ヒトカゲを地面に叩きつけた。

「ヒトカゲ、戦闘不能!リザードンの勝ち!!」

『ヒトカゲ対リザードンはリザードンの勝利に終わりましたが、エリカさんはどう見ますか?』

『速度や小回り特化がスピードで負ければ、残るのはパワー勝負です。リザードンに比べてヒトカゲが種族としての能力で劣っている以上は、リザードンを上回る一芸がなければならなかった。それが無く、安易に真っ向勝負を選んだ時点で、ヒトカゲの敗北は予定調和でしたね』

 

「手厳しいなぁ……。勉強になるけどね」

「はははっ、流石はアイツの師匠だよ」

ヒロシは思わず苦笑いし、サトシはスミレと似たものを感じて笑みを溢す。

「さてと、サトシ」

「……なんだ?」

「僕はまだ諦めてないよ。……レオン、行こう」

「ピッカァ!!」

ヒロシの呼び掛けにピカチュウが強気に応え、バトルフィールドに降り立った。

「へへっ……、そうこなくっちゃ!!リザードン、まだ頼むぜ!!」

「グォォォウ!」

対するサトシは笑みを爆発させ、リザードンは小さく炎を吐いて獰猛な笑みを浮かべる。

「レオン、【かみなり】!!」

「リザードン、【かえんほうしゃ】!!」

雷撃と火炎が激突し、激しい衝撃波と爆発が撒き散らされる。

「【でんこうせっか】で走り回れ!」

「尻尾で薙ぎ払え、ピカチュウを近づけるな!!」

ピカチュウが【でんこうせっか】で駆け回り、リザードンは尻尾を薙ぎ払うことでその動きを牽制する。

「【10まんボルト】ォ!」

「躱して【かえんほうしゃ】!!」

電撃を飛び上がることで躱したリザードンの反撃で、ピカチュウは地面を転がる。

「……くっ、【かみなり】!」

【かみなり】がリザードンを襲い、リザードンは苦痛に表情を歪めた。

「反撃だ、【かえんほうしゃ】!!」

しかし再びの【かえんほうしゃ】によってピカチュウは吹き飛ばされ、【かみなり】は中断される。

「負けるなレオン、【10まんボルト】!」

「【かえんほうしゃ】で迎え撃って、そのまま接近だ!」

【10まんボルト】に対してリザードンは【かえんほうしゃ】で迎撃、攻撃を防ぎながら自慢の翼をはためかせ、ピカチュウへと肉薄した。

「不味い、避けろレオン!」

「これで決めるぞ、【きりさく】、そして【つばさでうつ】!!!!」

ピカチュウへと肉薄したリザードンは爪と翼にエネルギーを溜めて輝かせると、まずは爪でピカチュウを弾き飛ばし、続いてすれ違いざまにピカチュウを跳ね飛ばした。ピカチュウの体が、まるで大型のトラックに跳ね飛ばされたかのような勢いで宙を舞う。

「レオン、【10まんボルト】だ!!」

ヒロシが祈るように指示を飛ばすが、ピカチュウはそれに応えないまま地面に落ちた。

 

「ピカチュウ、戦闘不能!リザードンの勝ち!!よって勝者、サトシ選手!!!!」

駆け寄った審判の反対でピカチュウの戦闘不能が伝えられ、サトシの勝利が決まった。そしてその瞬間、観客の歓声が爆発する。

『決まったー!!サトシ選手のリザードンがヒロシ選手のピカチュウを下し、2回戦進出を決めたー!!!!』

『速度型対決でしたが、それ以外の要素で上回ったのが大きかったですわね。とはいえヒロシ選手の戦術がまるっきり間違っていた訳でもなく、ここまで登ってこれた以上はある程度の強さは保証されている訳ですし、対速度型の研究をすればもっと強くなれると思います。サトシ選手は、ゼニガメの続投のような無茶をしない冷静さがもっと必要ですね。それと、エネルギー消費もより強くなればその分軽減されていますから、今後も継続した育成をしていけばより良いでしょう。……総評すれば、どちらも課題はありますが、非常に将来性を期待できるバトルだったと思います』

興奮気味な実況に対して、エリカはあくまでも冷静に評価を述べる。エリカから見た2人は、総評した通りに将来を期待できる強いトレーナーであった。だから、多少厳しくても、適切なアドバイスを述べれば彼らは伸びると期待した。

「……だってさ。僕もまだまだみたいだ」

「オレもだよ。……でも、楽しかったぜ」

ズボンで汗を拭いてから、2人は強く手と手を取り合った。互いの健闘を讃えるように。そして、いつかの再戦を誓うかのように。

 

 

 




原作改変です。リザードンが力になってくれたので……
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