ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第155話 スミレvsユウキ

 サトシの勝利に、スミレは小さく笑みを溢した。あからさまに対策をしてきているゼニガメに、恐らくはフシギバナと同レベルで強いリザードン。ヒロシ戦はヒロシの経験不足と天敵レベルの相性に助けられた部分があったとはいえ彼もまた、トレーナーとして日々成長している。

「……次は私。必ず勝つよ」

既に選んだ3つのボールの中身達が、ボールを揺らして応えた。

 

 第3試合、リングvsエンブ。まず1体目としてリングはルージュラ、エンブはウインディを呼び出す。明らかにエンブのウインディが有利な対面だが、ルージュラは【トリックルーム】を発動し行動速度をまるっきりひっくり返した。そしてそのまま小技で削りながら逃げ回り、最後は【みらいよち】で押しつぶす形でウインディを撃破。エンブは2体目としてサイドンを選択、【トリックルーム】が裏目に出た形になるが【みらいよち】を設置しつつ応戦。そのまま戦闘不能になる。続くリングの2体目はスリーパー。サイドンの速度が上がっていることを逆手に取って攻撃を誘い、突撃してきたところを躱して【さいみんじゅつ】で眠らせた。そして【ゆめくい】連打とルージュラの置き土産である【みらいよち】でサイドンの体力を削り、更には【トリックルーム】消失によって、起きても何も出来ないよう、サイドンを攻撃の嵐で体力を削り切った。そしてエンブの3体目はリザードン。【さいみんじゅつ】を警戒して飛びながら遠距離攻撃を仕掛けるリザードンに対してスリーパーは終始遠距離攻撃による削りを優先、リザードンの火力によって戦闘不能。リングの3体目はバリヤード。《魔術師》の異名を持つこのバリヤードは、【ひかりのかべ】や【リフレクター】を使用してリザードンの攻撃を受け流し、更にはポケモン複数での戦闘時に、味方との位置を入れ替えるという【サイドチェンジ】を本来の味方とではなく相手との位置入れ替えに使用(そんなこと可能なのかと実況席もスミレも驚いた)、リザードンを散々に翻弄しながら【サイコキネシス】で体力を削り切り、《魔術師》の異名に恥じない、トリッキーすぎる勝利を掴み取った。

 第4試合、ジンvsカズオ。こちらは両者上位常連という、実力者同士のバトルだった。ジンの1体目はネイティオ、カズオの1体目はドンファン。あくまで遠距離攻撃主体かつ【みらいよち】発動の為に回避を主体とした戦術を選ぶジンに、カズオのドンファンは遠距離攻撃で相手の動きを止めて近距離での大技を叩き込むという戦術だ。戦術が見事に刺さってネイティオを撃破したドンファンだが、蓄積したダメージから続くオーダイルにあっさりと倒される。そして繰り出されたカズオの2体目は、カメックスだ。みずの御三家対決を制したのは、オーダイル。【ハイドロカノン】の反動で、完全に動けなくなった訳ではないものの動きが鈍るタイミングがあり、そこを突かれてダメージを負ったのである。追い込まれたカズオの3体目は、バンギラス。オーダイルも善戦するが力負けしたことで敗北し戦闘不能。そしてジンが最後に呼び出したのは、化石ポケモンであるプテラだった。高機動高火力のプテラと高耐久高火力のバンギラスの戦いは熾烈を極め、しかし最後には機動力が高かったことでダメージが少なかったプテラが僅かに上回りバンギラスは戦闘不能、ジンが勝利した。

 

 そして、5試合目。

『さあ、第5試合目!対戦カードはスミレ選手対ユウキ選手となっております!!解説にはカジキさんに来て頂いております、よろしくお願いします!』

『おう、よろしくな!!』

どうやら実況解説は交代制らしく、別の実況と解説にはカジキが座っていた。

『カジキさん、この試合はどう見ますか?』

『そうだなぁ……。スミレ選手は、相手の分析と対策でここまで上がってきた。ユウキ選手はそう簡単に対策が刺さってくれるトレーナーでもないから、そこでどう有利に展開してゆくかだな。対するユウキ選手は、相手の情報は予選リーグのものが手に入って居るだろうしスミレ選手の厄介さをどれだけ理解し、対応できるかは大きく勝敗に関わってくると思うぜ。……そして何より、ユウキ選手には異名持ちが居る。そいつ頼み、なんてことはないが、それでも明確なエースの存在は心強い。対するスミレ選手は、これまでの試合を振り返るに絶対的なエースの存在は不透明。敢えて言うならバタフリーかニドキングだが、ここまで上がってきた実力者なら、疑ってる筈だぜ?それだけじゃない、まだ別に居るんじゃないかってな』

『な、成程……。それは期待ですね』

その声を聞き流しながら見据える反対の場所には、15.6程の少女が立っている。オレンジ色の髪をポニーテールに纏め、青いチャイナドレスを纏った活発そうな印象を感じさせる少女だ。

「スミレさん、でしたね。……私はユウキ、よろしくお願い致します」

しかし印象に反して、ユウキは真面目な表情で挨拶をする。

「……スミレです。こちらこそ、よろしくお願いします」

スミレも挨拶を返し、フィールドにはまるで電流が走るようなプレッシャーが満ちる。

「これより、スミレ選手とユウキ選手のバトルを始めさせて頂きます!使用ポケモンは3体、制限時間は無制限!それでは両者、1体目を!」

「行くよ、ゲンガー!」

「お願いします、カモネギ」

両者がボールを投擲し、スミレはゲンガーを。対するユウキはカモネギを繰り出した。

「【サイコキネシス】」

ゲンガーの目が輝き、【サイコキネシス】のエネルギーがカモネギに向かって迫る。

「【つばめがえし】で斬ってください!」

しかし、カモネギが翼に持った葱を2度、素早く振るうとエネルギーは切り裂かれて爆発、カモネギは切れ目から脱出する。

「【シャドーボール】!」

ゲンガーは【シャドーボール】を放つ。ノーマルタイプのカモネギには当然無効、しかしカモネギの体をすり抜けた【シャドーボール】は地面に着弾、土煙を起こす。

「【アクロバット】!!」

しかし、土煙を切り裂いて飛び出したカモネギは、素早く跳ね回りながらゲンガーを狙う。

「捉えて、ゲンガー!」

スミレの指示で【サイコキネシス】を発動するが、カモネギは軽やかに飛び回り捕まらない。

「【エアスラッシュ】!」

「躱して!」

カモネギの葱が唸り空気の斬撃が飛ぶが、ゲンガーは空中を身軽に飛んで躱す。

「【つばめがえし】!」

「両手で【シャドーパンチ】、受け止めて!」

振り下ろされた葱をゲンガーの両拳が挟み込み受け止める。

「成程、【シャドーパンチ】は余程の条件下でない限りは必ず命中します。貴女は技を当てる対象を、技を発動してひこうタイプのエネルギーを纏ったカモネギの葱にすることでゴースト技を当てつつカモネギの攻撃を防いだ……凄まじい技量、敵ながら感服致します」

「こちらこそ何ですかその機動力……。私のストライクに教えて欲しいくらいです」

真剣な表情を崩さずにスミレを褒めるユウキに対して、スミレもまた無表情。だがスミレの頬に伝う冷や汗が、2人の経験差を伝えていた。

「それは構いませんよ。……その話はバトルの後で致しましょうか」

「ですね……。離れて、ゲンガー!」

両者は弾かれるように距離を取る。カモネギは葱をゲンガーに向け、ゲンガーは不敵な笑みを浮かべた。

「参りましょう、【アクロバット】!」

「【シャドーボール】、散弾!!」

再びフィールドを跳ね回るカモネギに対して、ゲンガーは【シャドーボール】を小さな弾として分散し、地面に向けて放った。小さな爆発が幾つも起こり、地面が砕け、礫が飛び散る。

「大規模な目眩し……!?【エアスラッシュ】、連発で吹き散らしなさい!!」

「いいえ、違いますよ。【サイコキネシス】!」

カモネギが放った飛ぶ斬撃が連続で土煙を吹き飛ばすが、土煙が晴れた先に見たのは、【サイコキネシス】によって無数の礫が集まり、無数の岩石になっている姿だった。

「……これは!?」

ユウキは、驚愕に大きく目を見開く。

「偽典、【げんしのちから】ッ!」

岩石が操られるままカモネギに襲いかかった。【サイコキネシス】によって不規則な動きをする岩石はカモネギの葱をすり抜け、カモネギを打ち据える。

「……くっ、【アクロバット】!」

岩石がカモネギの顎を打ち上げ、別の岩が胴体を打ち吹き飛ばす。しかしすぐに体勢を立て直したカモネギは、飛んできた岩を踏みつけ高く飛び上がった。

「追い込んで!」

岩石が変幻自在な軌道で飛び上がり、上空のカモネギに向けて迫る。

「…………集中!」

ユウキの言葉に、スミレは警戒心を高めた。映像資料で何度も見た技が放たれる合図だった。

「来るッ……!」

「【いあいぎり】3連!!!!」

3条の閃光が走り、それぞれが岩石を真っ二つに斬り裂いた。これこそが、ゲンガー選出最大の理由。このカモネギは、【いあいぎり】の斬撃を3回までなら瞬間で連続使用できるのである。だからこそ、ゴースト技を無効化されるゲンガーを態々起用したのだ。これですらまだ異名持ちでないというのだから、上位勢は恐ろしい。

「……ッ、【どくどく】!!」

ここで、4つ目の技を解放した。【どくどく】はどくタイプ、カモネギにも効果はある。そして何より、状態異常の付与は素早い敵を捉えるには重要だ。

「【エアスラッシュ】!」

空気の斬撃が走りゲンガーは跳ね飛ばされるも、放った【どくどく】はカモネギに命中している。

「ゲゲゲゲッ!」

ゲンガーは空中で回転して静止すると、悪戯が成功したかのような笑い声を上げた。【どくどく】の命中は余程嬉しかったらしい。

「やりますね……!ゴーストタイプからここまでダメージを受けたのは初めてですよ。【エアスラッシュ】」

空気の斬撃が走った。

「私も、ここまで強いカモネギは初めて見ました。……【どくどく】で防いで」

斬撃を猛毒によって膜を貼ることで防ぐが、防ぎ切れずに僅かにダメージを受ける。

「【アクロバット】」

「【サイコキネシス】!」

【サイコキネシス】をカモネギは避けるが、その動きは確かに鈍っている。【どくどく】の影響だ。実際、カモネギは体を動かすたびに苦痛を堪える表情を浮かべている。

「連続で【エアスラッシュ】!!」

「【シャドーパンチ】!」

斬撃が連続で飛び、ゲンガーは【シャドーパンチ】で迎え撃つ。攻撃を的確に捌くゲンガー。

「全集中!!……もっと速く!」

しかしその言葉と共に苛烈さを増した空気の斬撃、その一撃が状態異常、ひるみを引き出した。そしてその隙を逃さず放たれた5回もの【エアスラッシュ】の連撃が、ゲンガーを滅多打ちにした。しかしカモネギの表情が苦痛に歪み、吹き飛ばされたゲンガーを追撃出来ない。

(効いてる……!)

(やはり、【どくどく】を避けられなかったのが失態ですね……!)

スミレはカモネギの消耗を確信し、ユウキは己の失態に眉を顰める。

「【サイコキネシス】!」

そして遂に、カモネギを【サイコキネシス】が捉えた。それまで跳び回っていたカモネギの体が空中で急停止し、金縛りにあったかのように固定される。

「……しまった!」

ユウキが、表情を歪めて叫んだ。

「吹き飛ばして、ゲンガー!!!!」

スミレの合図でゲンガーは目をより一層輝かせると、凄まじい勢いでカモネギを振り回す。カモネギは猛毒による消耗と振り回されたことで目を回している。

「カモネギ、気をしっかり持ってください!!」

カモネギにそう呼びかけるが、カモネギは反応する余裕もない。

「……今!」

スミレの合図と共に、カモネギは地面に向かって射出された。凄まじい速さで地面に突っ込み、激しい土煙が上がる。

「くぅっ……カモネギ!!」

「突っ込んで、サイコブラスト!!」

「!?」

聞いたことがない技名に、ユウキは目を見開いた。しかし、その正体をすぐに知ることとなった。全身に【サイコキネシス】を纏ったゲンガーがカモネギ目掛けて急降下、拳をカモネギに減り込ませ、残った体力を削り切ったのである。

「クェッ……!」

最後の足掻きと言わんばかりに振るわれた葱に吹き飛ばされたゲンガーは、地面を転がるもなんとか立ち上がる。

「カモネギ、戦闘不能!ゲンガーの勝ち!!」

『カモネギがここで戦闘不能、スミレ選手が先制だー!!』

『どちらもミスらしいミスはしてねぇが、【どくどく】を防げなかったのが痛かったな。だが、あれはタイミングも大技直後だったこともあったから仕方ねぇ気がするぜ。俺がユウキ選手の立場でも多分食らってるだろうから、あんまり責められねぇな!選出についても、奥の手である【いあいぎり】が使えない場合の戦闘は初めから想定されてた戦いぶりだったから、そこまで悪いとは俺は思わん』

 

「すみません、カモネギ。貴方の奮闘は無駄にしません」

「ゲンガー、まだお願いね」

ユウキはカモネギを労わりながらボールに戻し、スミレはゲンガーに戦闘継続を指示する。

「それでは、逆転の一手と参りましょう。……行きなさい、サワムラー」

「……!ゲンガー」

飛び出したサワムラーに、スミレは目を見開く。サワムラーこそが彼女の切り札にして異名持ちのポケモンだ。その異名は《紅脚》。

「サワムラー、距離を詰めて下さい」

ユウキの言葉で、サワムラーは走り出す。

「トップスピードで決める……!サイコブラスト」

【サイコキネシス】を纏ったゲンガーが、本来以上のスピードでサワムラーに肉薄する。

「跳んで躱して下さい」

「追って!」

サワムラーはゲンガーの突撃を上空へ飛び跳ねることで回避するが、ゲンガーは地面に掌を着くと強く押し出し、空中へとサワムラーを追って飛び上がった。

「……サワムラー」

「来るッ……!」

スミレは、嫌な予感に声を漏らした。

「【しんくうは】」

瞬間、空中のサワムラーが軌道を変えた。当然、サワムラーに翼はない。本来は、【とびはねる】でも使用しない限りは空中へはジャンプが限界なのだ。しかし、このサワムラーにそんな常識は通じない。やったことは、至極単純。【しんくうは】を足からジェットのように噴射して、空中を移動したのだ。

(……できてたまるかそんな変態飛行!?)

だがそれは、スミレが脳内で突っ込みを入れるくらいにはおかしい技術だ。【しんくうは】は本来掌から空気の波を撃ち出す攻撃技であるのだから、足でやろうとすればエネルギー操作の難易度は当然上がるし暴発して自滅する可能性は格段に上がる。そして更に、空中での姿勢制御や落ちないようにする技の発射タイミングの調整などの技術が無ければ、到底できない芸当なのだ。しかしそれだけ磨かれた技術は、こうして有効に作用する。ゲンガーの振るった拳は空を切り、【しんくうは】で空中を移動したサワムラーはゲンガーの真正面で足を構える。

「【ブレイズキック】」

《紅脚》の代名詞たる【ブレイズキック】がゲンガーの無防備な腹に減り込み、吹き飛ばされたゲンガーは地面に叩きつけられ、たった一撃で沈黙する。

「ゲンガー、戦闘不能!サワムラーの勝ち!!」

審判の宣告に、スミレは大きく溜め息を吐いた。




【裏設定】
決勝トーナメント、オリキャラ設定①
原作登場キャラ(ヒロシ、サユリ)
・クラモチ(42):職業は登山家。ポケモン世界において、世界中の険しい山(現実の山+野生ポケモン出現あり)を常人の身で幾つも踏破してきた、登山界では結構有名かつちゃんと凄い人。

・リング(36):サーカス勤務。笑い方は邪悪かつバトルの場でもピエロなので怖がられがちだが、妻子持ちでしかもそこそこ有名な愛妻家。奥さんはめちゃくちゃ美人らしい。ミュウツーの一件でもピエロ姿で参戦、下っ端を3名ほど撃破している。

・エンブ(25):スクールで教師をしている。熱血教師で暑苦しさこそあるが、子供からはかなり慕われている。

・ジン(45):ポケモンレンジャーや学芸員(考古学)などの資格を持った、浮浪者っぽいのにちゃんとしている人。自分の格好に基本無頓着なだけで、実は風呂にも入っていて清潔だし、洋服もこまめに洗っている。ミュウツーの一件にも参戦できるくらいには、人格と実力は信頼されている。

・カズオ(19):ポケモントレーナー以外の職には付いていない。実家暮らしだが、トレーナーの稼ぎがあるため親の小言は回避できているらしい。大食いの大会に稀に出没するらしい。

・ユウキ(15):小さな格闘道場の娘。友情・努力・勝利を地道に5年重ねて強くなった正統派。足りない才能を努力で補いまくった結果、若くしてカントーリーグ上位に名を連ねることになった。実家は入門希望者が増えてウハウハらしい。サワムラーはなんか懐かれてゲットした。
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