ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第163話 ポケモンハンター

 日を跨いで。30番道路を抜けた先にあるのは31番道路、そこでスミレは2人のトレーナーを相手取っていた。それは31番道路でポケモンを鍛えていた少年と、その父親。少年はなんと7歳の若さでトレーナー仮免許を得たというので、将来性は凄まじい。10歳未満の子供がポケモン所持を特別に許可されるトレーナー仮免許だが、講習や試験があるため取得難度は凄まじく高い。偶に幼稚園児くらいの年齢で取得する怪物が居たりもするが、話を聞くに6歳での取得。十分に怪物だ。斯くいうマサラの4人組の場合は、スミレは最有力だったが虐め事件の影響で受けられずそのまま10歳に。シゲルは受けて合格ラインに届いてこそいたものの後から試験官の忖度が発覚した(どちらにせよ受かっていたが、点数が盛られていたらしい)ため、シゲル自らが合格通知を破り捨てて辞退、そのまま10歳を迎えている。因みにサトシとヒマワリは、単純に座学の部分で躓き受けてすらいない。

「行くよコイル、【でんきショック】!」

その少年……ライキというらしいが、ライキの指示でコイルから電撃が迸り、ホーホーへと向かう。

「ホーホー、避けながら接近して【つつく】」

しかしそれを軽々と躱したホーホーがコイルに接近すると、嘴にエネルギーを溜めてから、コイルの体に勢いよく叩きつけた。たまらず吹き飛ばされたコイルは地面を滑るように転がる。

「コイル!?」

「止め、【たいあたり】」

ライキの呼びかけで再び浮き上がるコイルだったが、その時点で追撃を開始していたホーホーの【たいあたり】が炸裂、コイルは吹き飛ばされて墜落し、そのまま目を回した。

「あちゃあ、負けちゃったぁ」

「……いや。多分だけど、スクール時代の私とならもっと良い勝負してたかも。その年で仮免許取るだけのことはある」

シュン、とした様子で肩を落とすが、スミレの励ましで顔を上げた。

「よしっ、じゃあいつかリベンジするよスミレさん!……それじゃ、次パパね」

ライキがそう言って背後を振り返ると、ビデオカメラを片手にバトルの様子を撮影していた父親が、カメラを仕舞いながらもニコニコとした表情で歩いてきた。

「良いバトルだったぞライキ、父さんお前が強くなって誇らしいよ。それにしても、いやぁ、まさかカントーリーグベスト16のトレーナーとバトルできるとは!」

「とはいえ相棒しか今は出せませんよ」

「それでも、いいやそれが良いんだ。相棒となれば、あのサワムラーとやり合ったフシギバナが出てくるんだろう?」

「ええ」

「トレーナーとしてそれなりに経験があれば分かる。あのフシギバナは強い。そしてこれからもっと強くなる。そんなポケモンと戦えるなんて、トレーナーとしてワクワクしない筈がない!……私はライキの父、デンリ。一手、お手合わせしてもらおう!」

「そうですか。……なら、私の全力でお相手します。行くよ、フシギバナ」

「バナァ!!!!」

スミレがボールを投げれば、フシギバナが張り切って飛び出した。

「さあ、行けっ!エレブー!!」

「ブゥー!!!!」

両者は草原で睨み合い、そのプレッシャーで弱い野生ポケモン達は距離を置くため走り出す。

「フシギバナ、【つるのムチ】」

「飛んで躱せ!」

フシギバナが伸ばした蔓をエレブーは飛び跳ねることで躱した。

「追って」

「……何っ!?」

スミレの指示に驚愕するのも束の間、空中で軌道を変えた蔓が空中で身動きのできないエレブーに迫り、その足へと巻き付いた。

「…………私をリーグで見たなら、何故負けたかは知ってるはずですよ」

そう言われて、デンリはハッとした表情を浮かべる。

「そうか……!フシギバナは、【しんくうは】による空中機動に【ブレイズキック】を合わせた高速の空中戦に負けたんだ!!」

「私が、一度コテンパンにやられた戦術を研究しない訳がないじゃないですか。フシギバナには、キッチリ対空戦術を身につけさせていますよ。……フシギバナ、叩きつけて」

「くっ、【10まんボルト】!!」

エレブーが【10まんボルト】を放ちフシギバナは表情を歪めるが、そのまま蔓を振り下ろした。足を掴まれているエレブーは蔓の動きに引っ張られ、なすすべなく地面に叩きつけられる。

「追撃の【じしん】」

そして放たれた【じしん】が容赦なくエレブーを襲った。効果抜群の攻撃で大きなダメージを負い、地面を転がる。

「頑張れエレブー、【10まんボルト】!」

「防いで」

しかしそれでも立ち上がったエレブーは【10まんボルト】で反撃を放つが、フシギバナはそれを【じしん】によって出来た地面のひび割れの一部を【つるのムチ】で持ち上げ防御する。

「バッジ7個とリーグ決勝トーナメント出場者でこれだけ差があるとは……凄いな。もう少しで負けそうだ」

「私も修行してますから。……とはいえ負けそう、と言う割には諦めてませんね」

デンリが額の冷や汗を拭いながら声を掛け、スミレが穏やかな様子で返す。

「そりゃあそうさ!負けることがわかっていても、逃げたくないし逃げる訳がない!ここで勝っても負けても、逃げ出さない限り私はもっと強くなれる!!そして何より、パパは息子にカッコいい姿を見せるものだからな!!!!」

「……カッコいい父親なんて見たことありませんがね。まぁ、そういう覚悟は嫌いじゃありません」

「突っ込め、エレブー!!【ワイルドボルト】!!」

エレブーが全身に激しい電撃を纏わせる。自らの身をも焼く電撃にエレブーは顔を顰めるが、すぐに戦意を全身に激らせると真っ直ぐに突っ込んだ。

「…………フシギバナ」

まるで風鈴の音のように、沸る熱を解きほぐすような涼しげな声が響いた。

「行けぇぇぇぇ!!!!」

「頑張れ、パパ!エレブー!!」

叫ぶデンリとエールを送るライキにスミレは静かに目を閉じた。そして。

「【はなびらのまい】」

花弁の嵐が、呆気なくエレブーを呑み込んだ。身に纏った電撃は悉く花弁によって相殺され、それでも尚多く残る花の刃によってエレブーの全身は蹂躙され尽くした。花弁が過ぎると、エレブーはボロボロの体で倒れ込む。つまり、スミレの圧勝であった。

 

◾️◾️◾️◾️

「いやぁ……、凄いな全く。私も少しばかり自信があったが、真っ向から打ち砕かれたよ」

「私としては、あの負け方をしても笑える方が凄いですよ」

場所は移って、次の町であるキキョウシティのポケモンセンター。楽しげに笑うデンリに、スミレは不思議そうな声を漏らす。

「そりゃあ、楽しいのさ」

「?」

「カントーリーグで君が負けた時、凄い悔しそうに見えた。それは合ってるかい?」

「ええ」

「その悔しさはバトルに真剣になった証だけど、バトルの最中はどうだった?……心臓がドキドキする感覚はあったかい?」

「ぼくはよくあるよ!ね、パパ」

「そうだね。……君はどうだい?」

ライキに笑い掛けながらも、デンリはスミレに視線を向ける。

「…………まぁ、確かに心臓が五月蝿かったですね。妙に体が熱を持って、思考が浮ついてたと思います」

「その感情を楽しいというんじゃないか?……無理に知れとは言わないけどね。でも、バトルは楽しんだ方が負けが続いても長続きするのさ。嫌なだけなことを我慢し続けたって、きっとすぐに限界が来ちゃうから」

「……参考にします」

スミレは、ただそれだけを返した。その答えにデンリは笑顔を浮かべ、しかしすぐにポケモンセンターの穏やかな空気を切り裂く声に、眉を顰めた。

 

「早く治療を!急患だ!!」

駆け込んできたのは救急隊員だった。ゴーリキーが運ぶ担架の上には、ガーディの姿が見える。付き添いで、制服をボロボロにしたジュンサーが走ってくる。異常事態にデンリはライキを側に引き寄せ、スミレは腰に持ったフシギバナのボールに手を添えた。救急隊員はゴーリキーを伴ってセンターの奥へと走ってゆき、ジュンサーは受付の前で立ち止まると、祈るように俯く。

「……一体何があったんですか!?」

デンリが思わず声を掛ければ、ジュンサーはハッとした様子で顔を上げ辺りを見回す。

「緊急事態です!31番道路、くらやみのほらあな内部でポケモンハンターと遭遇しました!敵は強力で私は敗北、応援を呼んで命からがら逃げてきたのです」

「なんだって!?」

ポケモンセンターが、俄かに騒がしくなる。

 

 

「……あの、ジュンサーさん」

しかしその中でも一層通る、冷たい声がジュンサーの耳を打つ。

「……ッ、貴女はスミレ選手!?」

「私は国際警察、ハンサムより協力者としての権限を持っています。……今は殆どをカントーに残して、一級の戦力が相棒しかいませんが力になります」

そう言ったのはスミレ。協力者としての証明となるカードを提示して声を掛ける。因みに力になる、と言っても善意のボランティアではなくスミレに利益があってのことではあるが、ジュンサーとしては渡りに船だ。ポケモンリーグ、それも世界最大規模の大会で決勝トーナメントに進むトレーナーがいて、しかも国際警察が身分を保障してくれる。

「助かるわ。……相手は1人、使っていたポケモンはハガネール。腰のボールから見てその一体だけよ。私のガーディは、そいつに手も足も出ずに蹂躙されたわ」

「でしょうね。小回りがより利く以外はウインディの下位互換。対ポケモンの戦闘が予測されるなら、もっとマシなポケモンを連れてこればいいでしょうに。……考えなしの蛮勇で突撃して無駄にガーディを傷つけた挙句、ポケモンハンターも刺激した。……そんな体たらくでよくもまぁ警察の試験に受かったものです」

スミレの文句にジュンサーはメンタルが弱っていたのか、言い返す元気もなく項垂れる。

「スミレちゃん、私も……」

「デンリさんはポケモンセンターを守ってください。ここに居る方々がどの程度かは知りませんが、少なくとも貴方は戦力として比較的マシです。ここを守れる人がいなかったら、もしもセンターに襲撃を食らった時になす術もなく蹂躙されるだけ。なのでここを……というより、ライキ君を守って下さい。増援なら、せめてこの町のジムリーダーを呼んで下さいね」

デンリはスミレの物言いに眉を顰めるがそれどころではないと同行を申し出るが、スミレは首を横に振った。

「信じるぞ……?」

「ご勝手に」

スミレはそう言って背を向けた。ポケモンハンターと聞いてから、明らかに機嫌が悪かった。

 

◾️◾️◾️◾️

 男は、ハンターだった。その始まりはなんてこともない、借金だ。碌に就職もせず親の脛を齧りながら続けたギャンブル。結果として実家の金を使い果たし、更には借金を背負ってしまったのである。そんな時に、ギャンブル仲間から紹介されたのがポケモンハンター。ポケモンを捕まえて金持ちなどに売り払う仕事はよく儲かり、男はいつしか快感に酔っていた。今日だっていつも通りな仕事の筈だった。強いハガネールを操って間抜けな警察を倒し、今回の獲物であるイシツブテや捕まえればラッキー程度のヒメグマを狙う。ヒメグマこそ未だ1体だが、この洞窟では既に大量のイシツブテを捕まえている。ポケモン達は強力な睡眠薬で眠らせているため、洞窟の中は酷く静かだ。

「……随分と良い収穫だね」

冷たい声が洞窟内に反響し、入り口を見れば美しくも小さな少女が、冷たい目をして立っていた。

「ガキか……。チッ、顔は良いが随分と貧相な体じゃねぇか。さっきの女の方が楽しめたぜ」

「安心しなよ。貴方が味わうのは快楽じゃなくて絶望だから」

強気な少女に、男は舌舐めずりをした。この女をズタボロにすれば、どんなに楽しいだろうかと。

 

 

「潰せ、フシギバナ」

視線から感じる不快感にスミレは眉を顰めると、フシギバナを呼び出した。フシギバナは目に怒りを滾らせて目の前のハガネールを睨みつける。

「へぇ、フシギバナか。最終進化たぁ悪くねぇな」

「……こちらとしては、もう貴方の底は知れた。消化試合だね」

下卑た笑みを浮かべる男に、スミレは無表情のまま冷たく言い放つ。すると男は顔をあからさまに歪めた。

「テメェ、死んでから後悔してもオセェぞ!!ハガネール、【アイアンヘッド】!!」

「ネェェイル!!!!」

ハガネールはその額を輝かせて突進し、フシギバナへと迫る。

「【はなびらのまい】」

瞬間。花弁の嵐が吹き荒れ、頭から突っ込んでいた筈のハガネールは大きく仰け反っていた。

「……なんだ!?この火力はッッ!」

「分からない時点でお前の負けだ、道を開けろ三下ァ!!」

「バナァァァァ!!!!!!」

スミレが額に青筋を浮かばせて叫ぶと同時に【はなびらのまい】が全方位からハガネールに殺到する。目の前のハガネールは実際強力だ。だからこそ【はなびらのまい】を利用した短期決戦に持ち込んでいるが、とはいえ目の前の男は大層頭が悪い。頭脳派のスミレにとっては、ライキ以下であった。

「クソっ、【あなをほる】」

「追え」

ハガネールは地面に穴を掘って潜り込むが、花弁の嵐はその後を追って穴倉へと入り込む。

「テメェ……技を操ってんのか!?」

「千刃花のように一枚一枚を操ったりっていう正確さはまだまだないけどね。……まぁ、貴方のハガネール程度ならお釣りが来る」

「クソぉ……ッ!化け物がぁ」

スミレはそう言って男に背を向ける。それと同時に地面を割って飛び出したハガネールは、花弁に押し流されながら天井へと叩きつけられると、そのまま地面に落とされ目を回す。その光景を、男は呆然とした様子で見つめていた。

「……捕えろ、フシギバナ」

スミレがラムの実を投げながら指示を飛ばせば、それを食べて混乱を解いたフシギバナが蔓で男を拘束する。

「ぐぅッッ……!テメェ、サツに突き出そうってか!?」

「それもある。……でももうひとつ、ポケモンハンターを捕らえたらずっと聞きたかったことがある。だからこそ、私はここに来た」

そう言葉を紡ぐスミレの表情はまるで能面のようで、その絶対零度の視線に男は思わず息を呑む。

 

「カントーのハンターが、ロケット団に追われてジョウト中心の活動にシフトしていると聞いてね」

そう言ってスミレは、小さく息を吸う。

 

 

「…………私が聞きたいのはたった一つ。カントーでラプラス狩りをしていたハンターを教えろ。私はそいつに用がある」




新たに書きたい二次創作結構ある……でもハリポタ二次進めたいし、これも進めたいし、別サイトで書いてるオリジナルも進めたいし……
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