ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第164話 男の証言

 ラプラスを狩っていたハンター。その言葉に、男は冷や汗を掻きながらも下卑た笑い声を浮かべる。

「ギャハハハハッ……、テメェは馬鹿だなぁ!ラプラス狩りなんて、ハンターならほとんどがやってるぜ!?見つかってる奴も見つけられなかった間抜けもいるがな……。それで?そいつを見つけてどうするんだ?癇癪起こして殺すのか!?」

「殺しはしないよ」

スミレの即答に、男はあからさまに安堵の表情を浮かべる。

「へ、へぇ……。じゃあどうするんだ?」

「叩き潰す。ポケモンと言う存在がトラウマになるくらいには徹底的に破壊する」

しかしスミレの言葉に、男は息を呑んだ。スミレの目に映るのは怒りではない。煮えたぎる程に熱い憎悪。スミレが理性によって向かい合い制御した憎悪を、スミレは的確なタイミングで解放したのである。

「できるかよ……!テメェには2体しかいねぇじゃねぇか」

「強がりは無駄だよ」

男の強がりを、スミレはすぐに叩き潰す。

 

 

「カントーから、フシギバナと肩を並べる現段階での最強5体を連れてくる。そして私が出していないもう1体を預けてフシギバナと組ませることで6体フルパーティーを形成し、私が使える全人脈を利用してお前達を叩きのめす。……安心しなよ、死なせてはやらない。ただ私のラプラスから親を奪ったクソ共に、相応の地獄をくれてやるだけだから」

「ヒィッ……!」

無表情で瞳孔を開き、身動きの取れない自身に詰め寄るスミレに対して、男は遂に怯えが浮かんだ。

「答えろ。……誰がやった?それとも誰か、裏で暗躍している奴がいるのか?答えろ、でなきゃそうだな。……お前の股間を踏み潰す」

「う、噂で聞いたことがある……。凄腕のハンターが、ジョウトに集まってるって。でも俺は、そいつらに会ったことはねぇ。だが、最近、取引してた相手がロケット団に潰されて怒り狂ってるって聞いてるぜ」

男が吐いた情報に、スミレは眉を顰める。

「凄腕?」

 

「それは是非とも聞きたいな」

そう言って現れたのは、青い髪の青年だ。冷たい目で、フシギバナに縛られている男を睨みつけている。

「…………貴方は」

「知っているとは思うが俺はキキョウジムのジムリーダー、ハヤト。遅くなってすまない。それと、ありがとう」

申し訳なさそうな表情を浮かべるハヤトに、スミレは表情を僅かに緩める。

「いえ、十分です。……それよりお前、早く答えろ」

スミレの表情が、再び死んだ。

「ひぃっ……!ああ、ジョウトの空で " 黒髭 " の船を見たって噂がある。それだけじゃあねぇ。剥製公ハンニバルを見たとか、奴隷王ロンバスの商船をジョウトの海で見たって言ってる奴もいる。更にはロケット団のビシャスもこっちに目を付けたらしいぜ。ロケット団が、遂にジョウトへ目を向けたんだ。更にはジョウトを拠点にするヤクザが外からの敵に騒いでる。……このジョウトはもうポケモンハンター達の戦場だ。誰が勝つか、誰がより稼ぐかの大戦争だ。テメェらみてぇなガキにゃあ踏み入れられねぇ世界になってんだ。……だから俺は手っ取り早く稼いだらトンズラしようとしてたんだよ」

「クソッタレめ、面倒な野郎が出てきやがった……!」

驚愕に目を見開くスミレに対して、ハヤトは苛立った様子で石ころを蹴った。ポケモンを密猟して剥製にし、自らのコレクションとするハンニバル。ポケモンや人間を捕らえて奴隷として売り捌くロンバス。ロケット団に幹部待遇で入団し、幅広い人脈を持つポケモンハンターのビシャス。そして、恐らく先述した大物でも最強なのが" 黒髭 " 。本名はエドワードで、ポケモンのみならず人間への掠奪によって生きる現代の大海賊。恐ろしいのは、エドワードの船は水陸両用、かつ空も飛べるという破格の性能を持つ巨大な海賊船。そしてロケット団すらも迂闊に手を出せないという保有戦力。誰も彼もが国際指名手配を受けた大犯罪者なのである。

「Jは来てないの?」

「奴が来てたら、あのボーマンダを何処かで見る筈だぜ。奴はシンオウだ」

スミレが脳裏に浮かんだ1人の大物ハンターについて尋ねるが、男は首を横に振った。

「なるほど、これ以上はここで尋ねる訳にもいかんな」

「ゲヘヘッ、ここまで話したんだ。そろそろ解放してくれよ!」

苦々しい表情で呟くハヤトにそう言って笑う男だが、ハヤトは無言で指を動かす。すると音もなく現れた影によって男は顎を蹴られて気絶する。

「良い蹴りだ、ヨルノズク」

影の正体は、ハヤトのヨルノズク。そもそも洞窟の外でボールから呼び出し、ハンドサインによって奇襲を掛けられるよう警戒していたのである。

「……気絶、したんですか?」

終わったことを悟り殺気を収めるスミレに、ハヤトは困ったような表情で頷く。

「ああ。思った以上に重要な情報が出てきたからな。現場での聴取だけでは限界がある」

「確かにそうですね。後はお任せします」

スミレはそう言ってハヤトに後を託した。

「……ありがとう。コイツはポケモンハンターとしての密猟行為や暴行で指名手配されていた。あのジュンサーは偶々作業中だったから見逃されたが、奴がその気なら危なかった」

ハヤトはそう言って頭を下げる。暴行、という言葉で男の言動を思い出してスミレはその意味を察したが、それ以上は聞かない。わざわざ気を使ってぼかしてくれたのだから、わざわざ追及する必要はないのである。

「ああ、そうだ。あのハガネール、そこそこ強いです。……ただ、トレーナーが間抜けだったので総合的に見れば大したことのない雑魚ですので、トレーナー不在の状況ではちょっと気をつけてください」

「了解。まぁ君が強かったのが第一だけどね。……とはいえ、無茶はあまりしちゃダメだ。もしも君が弱ければ、君も被害者になっていたかもしれない」

ハヤトの注意に、スミレは頷いた。さすがに、" 暴行 " を加えられるのはスミレとしても勘弁して貰いたいところである。そんなことをしようものなら、フシギバナが殺す気で向かってくるだけなのだが。

「そうですね。気をつけます」

スミレが素直に頷き、ハヤトはホッと溜め息を吐く。

「にしても、最近はジョウトも物騒でね。カントーに居た連中の内、ロケット団に従わなかった連中がこぞってジョウトに移住してきやがる。おまけに最近は、そのロケット団がジョウトでもチラホラと見え隠れし始めた。ここも直に安全ではなくなる」

「……確かジョウトって、カントーと違ってジムは8つだけですよね?」

「ああ、そうさ。おかげで人数不足だ。偶に向こうから人を借りれるし、基本的にはカントーよりずっと平和とはいえこうも増えれば大変どころの話じゃあない」

スミレの質問にハヤトが答え、スミレは眉を顰めた。

「増やせないんですか?」

「出来なくはないと思うがな。カントーの実力者を勧誘しようにも、向こうは世界的マフィアとの最前線。こちらよりも人材配置の優先度は当然高い。……そうだ、君なんかどうだ?リーグに出場してるし、向いてる向いてないは兎も角できると思うが」

「無理ですよ。私には手加減の才能がないので」

そう言ったスミレの脳内には、エリカを手伝って参加したイベントが浮かんでいた。というのも、子供がポケモンバトルを体験すると言うイベントでエリカやジムトレーナー達は丁度よく接戦に持ち込んでから負けてやっているにも関わらず、スミレは手加減が下手過ぎたのか純粋に空気を読んでいないのか、レンタルしたポケモンで子供達が使うレンタルポケモン相手に全戦全勝、しかもボッコボコにしたのである。これにはエリカも苦笑い。『ジムリーダーには向いてないから、ジムへの就職は一旦候補から外した方がいい』というお言葉を貰う程であった。

「そうか。……まぁいい。君はジムチャレンジャーで合っているな?」

「はい。といっても、1体はまだ捕まえたばかりなので通常のジム戦でお願いします」

ハヤトの確認にスミレが返せば、ハヤトは考える素振りを見せた。

「ううむ……。だがこちらは2体、あと1体は育てて欲しいが。いや、ならこうしよう」

「?」

「1体目と2体目で、バトルを分けるんだ。1体目は君の1体。そして2体目は君が使っていたカントー時代のポケモンと、俺が出す8個目用の手持ち。しかしそれだと1勝1敗で勝負が付かないから、3戦目を2戦目と同じ条件で行う。それでどうだ?」

その提案に、スミレは納得した様子で頷く。

「そうして頂けると有難いです。……必要ならポケモン捕まえて育てますけど、本当に大丈夫ですか?」

「ジムバトルは基本的にジムリーダーの裁量で色々調整して良いから、結構自由度は高いんだよ。例えば、挑むこと自体にハードルを設けたりとかな。ちなみに俺の場合、バッジ数ごとに変えられる手持ちを育てているから、こうして1対1を3回やるって方法でバトルすることだって可能なんだ」

「なるほど……。手間をお掛けしますが、よろしくお願いします」

丁度良い機会だった。サファリゾーン組は実戦が足りて居ない為、何処かでジム戦を経験させておきたかったのだ。ジョウト内で開かれる小規模大会に出場するつもりではあるが、それはそれである。

「ああ。ジムトレーナーは2人だが、そいつらにも対8個用で準備させておく。対策は怠らないようにな。……それじゃあ、警察が来るまで待機だな」

「はい」

2人は、男を監視しながら警察を待った。その間にスミレは、ホーホーを中心にひこうタイプの育成について、色々とアドバイスを貰ったのであった。

 

◾️◾️◾️◾️

 翌日。スミレは、6つのボールを腰に取り付けてキキョウジムへと訪れていた。うちひとつはホーホー、ひとつはフシギバナ。そして残りは、実戦経験が少ないサファリゾーン組からの選抜だ。

「……ジョウト初のジム戦、頑張ろう」

スミレの掛けた言葉にボールが揺れ、スミレは一歩ジムの中に入って行った。

「こんにちは、お待ちしておりました。ジム戦ですね?」

「はい。……これ、免許です」

入ってきたスミレの顔を見て納得した様子で頷く案内人に、スミレは身分証明として免許証を機械に読み取らせた。

「ありがとうございます、無事に確認しました。チャレンジャー、スミレ。今回はカスタムルールでの参加ですね。このまま進んでいきますと、ジムトレーナーとのバトルが出来ますので」

「はい。ありがとうございます」

スミレは会釈をすると、早足でジムの奥へと入ってゆく。キキョウジムは横よりも縦に大きな建物で、曲がりくねった道が特徴的なジムであった。ハヤトの使用ポケモンがひこうタイプだからこその措置なのだろう。そしてひとつ曲がり角で曲がれば、そこには横幅が少々手狭なバトルコートがあり、年のそう変わらない少年が、スミレを待ち構えるように立っていた。

「来たな、チャレンジャー」

「ジムトレーナー、ですね?」

スミレが一応の確認として鋭い目つきで睨めば、少年は笑ったまま頷く。

「ああ。とりつかいのショウタだ。まずは俺が相手をするぜ」

ショウタは、腰からボールを取り外した。使用ポケモンは1体、つまりこちらが出せるのもたった1体だ。

「では、始めましょうか」

「ああ。審判はハヤトさんのところにしか居ないけどよ、チャレンジャーなら戦闘不能の区別くらいわかるだろ?」

「無論です」

挑発的な笑みに、スミレは涼しげな表情のまま頷いた。

 

「よっしゃ、キキョウジムの切り込み隊長たる俺が、チャレンジャーを迎え撃つ!行ってこい、オニドリル!!」

「ドォーッ!!」

ショウタがボールを投げると、ボールからはオニドリルが飛び出す。

「任せるよ、ナッシー」

「ナッシィィ!!」

対してスミレが呼び出したのはなんとくさ、エスパータイプのナッシー。カントーリーグでは出番が無かった上に、初めての公式戦がひこうジムだ。

「ひこうジムでくさタイプ……。しかも1対1か。何かあると見てよさそうだな。オニドリル、【つばさでうつ】」

「なんと想像してくれても構いませんよ。……ナッシー、【にほんばれ】」

翼を輝かせるオニドリル。しかしナッシーはそれに対して【にほんばれ】を放つ。小さな擬似太陽によってジム内が一層照らされ、代わりにナッシーは攻撃をまともに受けて地面を転がる。

「ということは、切り札は【ソーラービーム】か!?だとしても、勝つだけだ!【ドリルくちばし】!!」

「【まもる】」

嘴に纏ったエネルギーを回転させつつ、オニドリルは素早く突っ込んだ。しかし、ナッシーの纏ったバリアはその攻撃を確実に防ぐ。

「離脱だ!」

「させない、【ギガドレイン】」

離脱しようと翼をはためかせたオニドリルだったが、それよりも早く放たれた【ギガドレイン】が体力を削りナッシーを回復させた。そして、攻撃によって動きを止めたオニドリルに、追撃しない道理はない。

「……逃げろっ!?」

「ぶち抜け、【ソーラービーム】!」

ナッシーが放つ極太の光線が、オニドリルを呑み込んで吹き飛ばした。




裏設定
・剥製公ハンニバル……ハンニバル・レクター
・奴隷王ロンバス……コロンブス
・黒髭エドワード……エドワード・ティーチ

明らかにヤバい大物ハンター共……コイツら+ロケット団がジョウトに集まってくるのやばすぎる。ラプラスの親殺しへの落とし前という本筋に絡むのか、絡まないのか
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