ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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大学の試験前なので投稿滞っても許してください
あと、ジョウト編で出てきたユウキについてなんですけどカントーリーグでのスミレストッパーやったユウキさんとイントネーションは違うんですけど字面では名前被ってて後に再登場させるとややこしいので、名前を変更することにしました。新しい名前はユウタにします

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第165話 キキョウジムの戦い!スミレvsジムトレーナー

 ナッシーは、悔しがっていた。スミレが挫折を味わい、新たな成長の一歩を踏み出したカントーリーグ。そのバトルにおいて、自分が使われなかったのだ。使われなかったのは、自身ともう一体のヤドラン、そしてガルーラの3体だ。ナッシーは、自身が戦闘があまり得意ではないとスミレに鍛えられて分かっている。ギャラドスなんかは相当に悔しい思いをしていたが、ナッシーからすれば出られるだけマシな話。バトルを好む好まないでいえば好まないのだが、それでも余り物の立場に甘んじているのは嫌だった。

「良いよ、ナッシー」

だから、背後から掛けられる冷たくも暖かい声に、ナッシーは胸を張った。

「ナッシー!!」

「やるな……。でも、俺達もまだやれる!そうだろ、オニドリル!!」

「ドォー!!」

飛び上がったオニドリルが吠え、ナッシーと睨み合う。

「ナッシー、【ギガドレイン】」

「飛んで躱せ!」

ナッシーの瞳が輝いて、しかしオニドリルは天高く飛び上がって攻撃を躱す。

「【ソーラービーム】、弱攻撃!」

しかしそれを予測していたのか、通常よりもずっと細く威力も低い【ソーラービーム】が、オニドリルの翼を撃った。

(今のは、早撃ちの為に威力を下げたのか!?……すると、次に来るのは)

「【ギガドレイン】、そして【ソーラービーム】」

ナッシーの全身が輝く。放たれたオーラがオニドリルの全身からエネルギーを吸収する。更に吸収したエネルギーで弱めの【ソーラービーム】。速射型の【ソーラービーム】でオニドリルは大きく吹き飛ばされジムの壁に叩きつけられる。

「くぅ……相性が良いのはタイプ相性だけか!」

ショウタが、一方的な試合展開に悔しげに表情を歪める。実際、自分の土俵で戦えれば、オニドリルにも勝ち目は大きい。しかしオニドリルが抱える問題は、自らが近接物理型で、ナッシーは回復持ちの移動砲台であるということ。【ソーラービーム】のエネルギーチャージを【にほんばれ】で補い、【ギガドレイン】で長期戦を可能とする。更に、【まもる】の採用によって攻撃の防御を行い、他の技による反撃に繋げることもできる。カウンター型移動砲台と呼ぶべき戦術が、このナッシーの場合は完成されているのである。その場合どうなるのかといえば、オニドリルはタイプ相性だけは良いものの、戦術的な相性はまさに最悪。カモがネギ背負ってやってくるようなものである。

「さあ、決めて……!【ソーラービーム】」

(でも……!)

「ナァァッシィィ!!」

(それでも……!)

ナッシーの全身が光で満ち溢れ、極太の光線が解き放たれる。

「負けるかぁぁ!飛べ、オニドリル!!!!」

ショウタはジムトレーナー。強いとはいえ、チャレンジャーに合わせたバトルが必要だ。しかし、今だけはそれも忘れてしまっていた。ただこの相手には全力で勝ちたいと。ジムトレーナーとして、殆ど何もできないまま負けてなるものか、と。その気持ちが伝わったのか、オニドリルは真っ直ぐに【ソーラービーム】へと突っ込むと、そのすぐ側を通り過ぎる。そして向かうのは、ナッシーの懐だ。

「……ッ!?」

スミレが息を呑む音が聞こえる。

「【ドリルくちばし】!」

オニドリルの嘴がナッシーの腹に減り込んでその全身を後退させた。大きなダメージを受けたナッシーは、思わず顔を歪めて膝をつく。

「まさか……!」

「【つばさでうつ】!!」

スミレが驚きで声を漏らすが、オニドリルは翼にエネルギーを纏って高く飛翔する。

「ドォー!!!!」

そして、急降下。勢いよく突っ込んでくるオニドリルのスピードに、ナッシーでは撃墜することが出来ない。

「【まもる】」

だが、ショウタは興奮のあまり思考の隅に置き去りにしてしまっていた。オニドリルの急降下という直線的な戦術を無に返す、そんな技の存在を。渾身の突撃をバリアによって防がれたことで、オニドリルは無防備な姿をナッシーに晒す。

「し、しまった……!」

 

「今日の天気は快晴。光の槍にご用心」

スミレの声が、やけにショウタの耳で響く。

「オニドリル!」

「……これで詰みです。【ソーラービーム】」

スミレは興味なさげに呟いた。ナッシーは無防備なオニドリルの胴体に向かって、再び極太の【ソーラービーム】を解き放つ。それは丁度、【にほんばれ】の擬似太陽が燃え尽きるのとほぼ同時。それは、オニドリルが戦闘不能となることを天が暗喩するものなのかは分からない。だがしかし、【ソーラービーム】によって天井まで吹き飛ばされたオニドリルは、天井にぶつかるとそのまま落下、地面に叩きつけられ目を回す。

「…………くっ、負けた」

ショウタは悔しげに声を漏らす。だがその言葉に、スミレは無表情のまま鼻を鳴らした。

「4つしかない技構成。そのひとつでも頭から抜け落ちたその時点で、貴方は私に負けていた。……さ。ご苦労だったね、ナッシー」

もうここに用はない、とばかりのテンションでナッシーをボールに戻すと、ショウタの脇をすり抜け歩き出す。ショウタは悔しげな顔で、膝をつく。それをスミレは、顧みることをしなかった。

 

◾️◾️◾️◾️

 再び歩き始めたスミレだが、曲がり角を曲がれば再びそこにはバトルコートがあって、似たような格好で少しだけ穏やかそうな少年が立ち塞がっていた。腰に付いたボールの数は2つ。

「突破したって報告は聞いてるよ、チャレンジャー」

「……そうですか」

「さ、次のバトルを始めよう。僕はジムトレーナーのツバサだ、よろしくね」

ツバサと名乗った少年がボールを構え、スミレもまたボールを腰のホルダーから取り外した。

「……ヤドラン」

「ヤァン」

「頼むよ、ヨルノズク」

「ホーッ!」

スミレの選出はヤドラン、対するツバサはヨルノズクだ。

「ヨルノズク、【つばめがえし】!」

「ヤドラン、【ねっとう】」

「……!躱せ!!」

「無理かもだけど……【あくび】」

ヨルノズクがヤドランに迫るが、ヤドランの放つ【ねっとう】を躱すために攻撃を中断、回避にかかる。そこにヤドランの【あくび】が命中するが、効果があった様子はない。

「…………ふみん、でしたっけ」

「よく知ってるね」

ふみん。それは現在学会にて議論されている、ポケモンの特性のひとつ。それは眠り状態にならないというもので、ヨルノズクでは眠りの効かない個体が多数確認されている。ものは試しだったが、効かないとなればヤドランの戦術上はここで下げることが最適解である。

「戻って、ヤドラン。……お願い、カイリュー」

「バウゥゥゥン!!!!」

スミレが頼ったのはカイリュー。カイリューは戦力でこそメインメンバーの一角だが、カイリューになってからのジム戦経験を持ち合わせていないのだ。

「カイリュー……!なら、【さいみんじゅつ】」

「吹き散らせ、【ぼうふう】」

吹き荒れた暴風がヨルノズクのサイコパワーを吹き飛ばす。ヨルノズクは翼を器用に動かし、暴風の中でも体勢を崩さない。しかし瞬間、ヨルノズクの視界一杯にカイリューの剛腕が映し出された。

「避けろ!」

「堕ちろ、【ほのおのパンチ】」

勢いよく振るわれたカイリューの剛腕が燃え盛る火炎を纏い、ヨルノズクの顔面にぶち当てた。衝撃で脳が揺れ、ヨルノズクの体勢が崩れる。

「頑張れヨルノズク、【つばめがえし】」

しかしツバサの言葉で目を覚ましたヨルノズクが【つばめがえし】でカイリューを弾き後退させる。

「……まだ粘るか」

「まだやれるぞ、【さいみんじゅつ】!!」

サイコパワーが放たれ、それは今度こそカイリューに命中した。カイリューは激しい眠気に意識を朦朧とさせ、高度を下げる。

「カイリュー、聞こえるでしょ」

「ヨルノズク、【エアスラッシュ】!」

ヨルノズクがこれ幸いと空気の刃を連続で放ち、カイリューの全身を攻撃が打ちのめす。朦朧とする意識の中で、カイリューの耳にはぼんやりとスミレの声が聞こえた。

「聞こえるなら、ここで決めるよ。イチかバチか」

「これで決めるぞ、【ゴッドバード】!!」

ヨルノズクが全身に金色のエネルギーを纏い始めた。【ゴッドバード】は、溜めが必要なほどエネルギーを消費する代わりに凄まじい破壊力を生む技である。

「……猛れカイリュー、【げきりん】」

「バァァァウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!」

眠気を弾き飛ばすように、カイリューが吠えた。僅かな意識の中で、【げきりん】を発動させたのだ。全身を包み込む龍のエネルギーに、そしてドラゴンの本能としての戦闘衝動に突き動かされるままに、カイリューは飛び上がる。目指す先には、エネルギーを溜め切ったヨルノズク。

「くっ……!行け、ヨルノズク!!」

黄金の輝きを纏ったヨルノズクを、カイリューは真っ向から迎え撃った。そして両者は空中高くで激突して大爆発を起こす。両者はそのまま落下すると、地面に叩きつけられた。

「……あちゃ」

スミレは、ただそう呟いた。ヨルノズクは目を回し、対するカイリューは眠っていたのだ。そう、残る意識でヨルノズクを撃破したカイリューだったが、ゴッドバードを受け止めたことで大幅に消耗。体力を消耗したことで眠気に負け、結果として眠りに落ちたのだ。

「すまない、勝たせてやれなくて。でもありがとう」

「…………避けるよう指示が間に合わなかった私も悪い。お疲れ様」

ツバサとスミレはポケモンを労いつつもボールに戻す。そして両者は次に投げるモンスターボールを構えた。

「行くぞ、ピジョット!」

「ジョーッ!!」

「ヤドラン、仕上げお願い」

「ラァン」

ツバサの2体目はピジョット、スミレは再びヤドラン。

「ピジョット、【でんこうせっか】!」

「…………今、【あくび】」

高速で飛来したピジョットが体当たりを仕掛けると、ヤドランは棒立ちだ。しかし激突する直前にヤドランが【あくび】を発動した。ヨルノズクには不発であったが、遅効性で眠気を誘発する技である。

「くっ……!なら、【ブレイブバード】!」

「【まもる】」

ピジョットが短期決戦を仕掛けるが、ヤドランはバリアを貼ることで攻撃を防ぐ。

「もう一度、【でんこうせっか】!今度は掠らせろ!!」

「【ねっとう】」

再び【でんこうせっか】を発動したピジョットは、すれ違い様にヤドランを攻撃する。ヤドランは反撃の【ねっとう】を放つが、素早い動きを捉えられずに空を切った。

「全力で行くぞ!」

「引き付けて」

ツバサが叫び、スミレは冷静に告げる。

「【でんこうせっか】!!」

「【まもる】」

再び高速で飛来したピジョットが攻撃を加え、しかし貼られたバリアによって阻まれる。

「……何!?」

「【まもる】の連続使用は失敗確率が大幅に上昇する。……なら、例え外すことが確定している技でも撃てば制限はリセットできる」

「迂闊だ……!【でんこうせっか】で逃げろ!!」

「【ねんりき】」

逃げ出したピジョットに対して、ヤドランは【ねんりき】を発動するが躱される。【ねっとう】による攻撃と状態異常付与、【あくび】による状態異常付与、【まもる】による防御、そして【ねんりき】による攻撃とフィールド活用手段の確保。防御力を軸としたみずポケモンはラプラスもいるが、あちらは攻撃型なのに対してこちらは防御型。ぼーっとしているヤドランではあるが、その戦術は実に陰湿なのであった。

「これで【まもる】の成功率はリセットされたか……どうする」

「そのままで良いんですか?……【あくび】、食らってましたよね?」

スミレが尋ねる。ハッとした表情でツバサが見上げると、ピジョットの体勢が崩れ始めていた。

「まさか……もう!?」

「【ブレイブバード】の無駄打ちが響きましたね。……【ねんりき】」

ヤドランの瞳が光り輝き、ピジョットの体が上空から勢いよく地面に叩きつけられる。

「ピジョット!!」

「【ねっとう】」

地に堕ちたピジョットは起きあがろうとするが、追撃の【ねっとう】で吹き飛ばされフィールドを転がった。

「頑張れ、【ブレイブバード】!」

瞬間、地面が爆発した。急激に加速したピジョットが、ヤドランに迫る。

「【ねっとう】」

真っ直ぐに突っ込んでくるピジョットを、【ねっとう】が迎え撃つ。エネルギーを削られながらも【ねっとう】を切り裂き進むピジョット。

「【まもる】は、エネルギーを使う!今からじゃあ間に合わない!!」

ツバサは叫ぶが、スミレは冷静に呟く。

「【ねんりき】」

【ねんりき】がピジョットに纏わりつき、しかし【ブレイブバード】を相殺しきれず霧散する。

「行けぇ、ピジョット!!!!」

そしてピジョットがヤドランに突っ込み…………ヤドランの体に減り込むようにして、その動きを止めた。ヤドランは苦しげな表情をしているが、吹き飛ばされずにとどまっていた。

「ヤドランは元が高耐久。おまけにこのヤドランは、育成が得意な友達に手伝ってもらって相撲を参考に鍛え上げてる。……あの子は私と違って人当たりが良くてね。手を貸してくれるっていう相撲部屋を紹介してくれたし、良い筋肉の付け方も教えてくれた。そうやって鍛え上げたこのヤドランの強靭な足腰なら、威力を削りに削った【ブレイブバード】を受け止めるくらいはできる」

「逃げろ、ピジョット!!」

「中途半端な直線型ほど、御しやすいものもない。……【ねんりき】」

サイコパワーが、遂にピジョットを捉えた。ピジョットの体が空中で停止し、ピジョットは苦しげな表情で身を捩る。

「ラァン」

ヤドランは相変わらず間の抜けた表情で、サイコパワーを爆発させた。衝撃が放たれピジョットは吹き飛ばされると、壁に叩きつけられる。

「追撃、【ねっとう】」

壁に減り込んだピジョットに【ねっとう】が噴射された。

「ピジョット!?」

水蒸気が辺りを包み込み、ツバサは顔を覆う。

「……お疲れ様、ヤドラン」

スミレは、ヤドランをボールに戻した。結果など、目に見えていたからだ。

「やっぱり負けてるか」

ツバサは苦笑いを浮かべた。ピジョットはスミレの判断通り、目を回していた。

「では、私は次に行きますから」

スミレは次に進むべく一歩を踏み出す。

「……次は遂にジムリーダー、ハヤトさんだ。ハヤトさんは強いよ、頑張って」

しかしツバサの言葉に、スミレは頷く。

「強いのは見れば分かりますよ。……でも、私は勝ちます」

スミレはそう言って、先へと歩き始めた。

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