ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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166話 ジムバトル!ハヤトvsスミレ

 ジムの奥へと進んだその先に、バトルコートが見えた。先程までより幅が広く、天井は相変わらず高い、そんなフィールドだった。そしてスミレの視線の先には、スミレが来るのを今か今かと待ち構えるジムリーダー、ハヤトが立っていた。そして脇には、今までとは異なり審判が立っている。

「待っていたぞ、チャレンジャー」

「……お待たせしました、やりましょうか」

「ああ。順番はどうする?」

ハヤトに尋ねられ、スミレは少し考える素振りを見せた。

「最初に弱い方でお願いします。流石に、最後の1体っていうプレッシャーはまだ早いので」

経験を積ませるのも有りな話ではあるが、しかしホーホーにのし掛かる重圧を考えると流石のスミレも躊躇われる。

「そうか。では1個目レベルが第1試合、8個目レベルが2、3試合目だ。……審判」

「はいっ!」

ハヤトの指示で審判がコートの横に立ち、声を張り上げる。

「これよりっ、ジムリーダーハヤトと、チャレンジャースミレのバトルを行います!!使用ポケモンは各試合1体、計3試合の変則マッチで行います!……それでは、第1試合のポケモンを!!」

「いくぞ、ポッポ!」

「ポーッ!!」

「……行くよ、ホーホー」

「ホーッ!」

ハヤトが繰り出したのはポッポ、対するスミレはホーホーだ。

「ポッポ、【たいあたり】!」

「【エコーボイス】で迎え撃って」

「躱せ!」

ポッポが空から強襲するがホーホーは【エコーボイス】で対抗、ポッポは空中で身を翻して攻撃を中断すると、尾羽に攻撃を掠らせながらも逃げ切った。

「【エコーボイス】」

「飛び回って躱せ!……【たいあたり】」

スミレは再び【エコーボイス】を指示。地上のホーホーは飛び立ち【エコーボイス】を放つ。【エコーボイス】は、技を連続して使うとその度に威力が上がる技である。因みに最近の研究では、【エコーボイス】を放つのが同一個体でなくても、連続して放てば問題ないらしい。とはいえ、連続して放てば威力が上がる技を連続使用するのはスミレ的には通用するかどうかという試験の意味でも必要であったし、しかしハヤトにとってその攻撃はあまりに読みやすかった。ポッポは空中であっさりと攻撃を躱すとホーホーの懐に飛び込み、そのまま【たいあたり】。ホーホーは空中で体勢を崩すとそのまま墜落した。

「……起きて、まだやれるでしょ」

スミレの言葉は冷たい。ホーホーが立ち上がると、スミレは小さく息を吸った。

「あまりポケモンに冷たくするものじゃない!【どろかけ】!」

「……戦いの場で甘ったれるような腑抜けは不要なので。【エコーボイス】」

ポッポは泥を投げつけるが、【エコーボイス】で飛散し防がれる。

「程々に甘くせんと何処かで限界が来るぞ、【たいあたり】!」

「……現実も見た上での甘さは許容しますよ。【ねんりき】」

ここでスミレが、技を切り替えた。【たいあたり】の使用を読んでいたかのようなタイミングでの使用で、ポッポの全身が絡め取られた。

「くっ、読まれたか!?」

「ジムリーダーのパーティー構成なんて公開されてるでしょう。私は、しっかり対策をして挑む派なので」

「……なるほど、やはり君は戦術家だ。かなり厄介らしい」

「そう言う貴方は、読みやすい」

ハヤトはジムリーダーとしては新人な上に、その理由が父親の事故死による急遽の引き継ぎということであるため、ジムリーダーとしての経験はまだまだ浅い。だから、比較的読みやすい。手加減しようと気を使い過ぎて、攻撃が比較的直線的なのである。

「そうか……、それは済まない!【どろかけ】!!」

「【エコーボイス】」

音波がポッポを打ち、ポッポが表情を歪める。

「くっ、【どろかけ】!」

「避けなくて良い、【エコーボイス】」

再び放たれた、しかし先程の一撃以上に威力のある【エコーボイス】が【どろかけ】を跳ね飛ばし、更にポッポを弾き飛ばす。

「ぐっ……!」

ハヤトは呻くが、追撃の手は緩めない。

「【エコーボイス】」

更に火力を増した音波がポッポを吹き飛ばし、遂に壁に激突させる。

「ポッポ、戦闘不能!ホーホーの勝ち!!」

「負けたか……済まない」

審判の宣告に、ハヤトは眉を顰めながらポッポをボールに戻すと、2つ目のボールを手に取った。

「これで勝てなきゃどうしようと思った。……でも悪くないバトルだったよ、お疲れ様」

スミレもホーホーをボールに戻し、次のボールを構える。

 

「頼むぞ、マンタイン!」

「ガルーラ、仕事お願い」

ハヤトの選出はみず、ひこうタイプを持つマンタイン。対するスミレはガルーラを選んだ。

「マンタイン、【たきのぼり】!」

「ガルーラ、【ねこだまし】」

マンタインが水流を纏って突進するが、ガルーラがその眼前で両手を打ち合わせて衝撃を放つ。その攻撃により、マンタインの動きが止まった。

「マンタイン!?」

「【かみくだく】」

動きの止まったマンタインにガルーラは思い切り噛みついた。マンタインは苦痛に表情を歪ませ声を漏らす。

「くっ、逃げろマンタイン!」

「【れいとうビーム】で吹き飛ばして」

ガルーラの牙を力づくで振り払うマンタインだが、ガルーラはすぐに追撃の【れいとうビーム】を放ち吹き飛ばす。

「……【たきのぼり】」

しかしすぐに立ち直ったマンタインの突進により、ガルーラは跳ね飛ばされる。

「ガルーラ、立って」

「【いわなだれ】!」

ガルーラはスミレの言葉で立ち上がるが、空中から降り注いだ岩石群に思わず背中を丸めて防御姿勢を取る。

「……ちっ」

「追撃だ、マンタイン!【なみのり】!!」

マンタインがヒレを振るうと、大波が現れガルーラに襲い掛かった。

「弾き飛ばして、【とっておき】」

【とっておき】、それは他3種の技を使った後でないと放てない技。しかし制限の代わりに、その火力は絶大だ。【とっておき】が【なみのり】の大波を吹き飛ばし、水飛沫が辺りに舞い踊る。

「マンタイン、【エアスラッシュ】」

「ガルーラ、【れいとうビーム】……?」

風の刃がガルーラを打つ。その攻撃を体で受け止めたガルーラだが、反撃しようとした瞬間、体が動けなかった。

(これは……ひるみ!?)

スミレが、ガルーラの異変からその可能性を感じ取った。

「ひるみだな。……【いわなだれ】」

ガルーラの様子を見たハヤトが追撃を指示、【いわなだれ】をガルーラは無防備に受け表情を歪める。

「動いて、ガルーラ」

スミレが少し不機嫌な様子で言うと、ガルーラは傷ついた体でも頷く。どうやら、相当に消耗しているらしい。

「いくぞマンタイン、【エアスラッシュ】、連続で!」

しかしそんなガルーラに容赦のない攻撃が降り注いだ。ガルーラは両腕で袋に入った我が子を抱きしめ背中を見せる。するとガルーラの大きな背中に【エアスラッシュ】は連続で着弾、ガルーラは苦痛に叫びを上げる。

「馬鹿!敵に態々背中を見せる奴があるか!?」

「……それが実戦経験の少なさだ。経験が足りないから、ガルーラは攻撃を乱れ撃ちされると何処に当たるか予測が出来ない。子供に当たるか当たらないか、当たる軌道だったとしてどう防ぐかを考え付かない。だからこそ、親子愛の強いガルーラは子供を護ろうとするだろう。それが、致命的な隙であると、トレーナーの足を引っ張る行為だと理解することもなく」

取り乱して怒鳴るスミレに、ハヤトは冷静に言葉を投げる。

「ガルーラ、子供は大丈夫だから!」

「【いわなだれ】」

子供を守るよう必死に蹲るガルーラには、スミレの声も岩石が降り注ぐ光景も見える訳もなく。岩石の雨に打たれて膝をついた。

「……そっか」

「マンタイン、【なみのり】!」

スミレの何かを悟ったような声と共に、ハヤトの指示が響いて。【なみのり】に呑まれたガルーラは、波が何処かへ消え失せた後に目を回して倒れていた。

「ガルーラ、戦闘不能!マンタインの勝ち!!」

「お疲れ様、マンタイン」

「……お前、弱いね。次からは出番なんてないと思いなよ」

ハヤトはマンタインを労いながらボールに戻すが、スミレはガルーラに厳しい言葉を掛けた。ガルーラは、悲しげな目をしながらボールに戻される。

「スミレ。スタイルに口を出されるのは不快かもしれないが、もう少しポケモンを労っても良いと思うぞ」

しかし、それを見ていたハヤトが口を出した。スミレは、不快そうに眉を顰める。

「お断りします。……ポケモンだからと甘ったれる道理はありません。負けたら殺されるような戦いで、同じような負け方をされたら困りますから」

冷たく吐き捨てるスミレに、ハヤトは眉を顰める。

「お前の意図は分かってるつもりだ。……だが、もう少し素直に言葉を吐いても良いと思うぞ。伝わらなければ、ガルーラはただ傷つくだけだろう」

「…………それを指図されて従う道理はありませんよ。伝わらなければ、それまでというだけです」

「そうか。それは失礼をした」

ハヤトは、複雑そうな表情で言いたかった言葉を呑み込む。

「さっさと、次をやりましょう。時間の無駄は嫌いです。……フシギバナ」

スミレは、その空気を振り払うようにボールを投げた。

「……俺はジムリーダー、チャレンジャーの全力に応えるだけだ。行くぞ、ピジョット」

対するハヤトが繰り出したのは、ピジョットだった。ピジョットは空中から、フシギバナは地上から互いを睨みつけている。

「フシギバナ、【つるのムチ】」

フシギバナの背中から、素早く蔓が伸ばされる。

「ピジョット、【つばめがえし】で弾け」

しかしピジョットが鋭い爪を振るうと、蔓は切断され地に堕ちた。

「【ギガドレイン】」

しかし斬られた蔓の断面からオーラが迸るとピジョットを包み込み、ピジョットは苦痛に表情を歪める。

「……ピジョット、逃げろ!」

「【つるのムチ】」

しかし、断面から新しく生えた蔓によってピジョットは拘束され投げ飛ばされる。

「次はこっちだ、【でんこうせっか】!」

「【つるのムチ】」

吹き飛んだピジョットだがすぐに空中で立て直すと高速で飛行、フシギバナに激突すると伸ばされた蔓を軽々と躱して舞い上がる。

(何故かフシギバナに拘ってたけど、合理的じゃ無かった……!確かに対策はしたけど、対策したのは根本的にフシギバナが対空戦術が苦手だから……。むしろ、あの6体ならフシギバナが1番採用したら駄目な択だったッ、フシギバナを、根拠もなく頼り過ぎたんだ私は……!)

スミレは、自身の失策を悟り歯を食いしばる。バタフリーなら空中戦は出来るし的確な狙撃で撃ち落とすことが可能。ラプラスは広範囲に効果抜群な氷技を放て、ゲンガーは【でんこうせっか】を無効化することで攻撃手段をひとつ奪える。フーディンは機動力が高いのでピジョットの動きに着いて来れるし、カイリューならば飛行能力とパワーで押し切れば良い。タイプ相性が悪く、空中なので【じしん】は通用せず、対空戦術は鍛えたと言っても本業でないフシギバナは、たとえスミレのポケモン最強であったとしても、戦術上では最悪と言っても良い選択だったのである。

「反省会はまだ早い、勝ち筋がない訳でもないだろう。【つばめがえし】」

「……【つるのムチ】!」

ピジョットの爪が閃き、フシギバナは蔓を伸ばしてこれを弾く。しかし弾かれたピジョットはすぐに体勢を立て直す。

「【でんこうせっか】!」

瞬間的な加速でフシギバナの懐に入ったピジョットはフシギバナの額に体当たりし、すぐに翼をはためかせて離脱する。

「くぅ……!【はなびらのまい】!」

しかしここで、スミレは切り札を切る。花弁の嵐が吹き荒れ、ある程度コントロールされた嵐がピジョットを押し流す。

「そうか。……ピジョット、最後まで頼むぞ。【そらをとぶ】」

ピジョットは、花弁を振り払うように空高く舞い上がった。

「狙え……!」

スミレの指示でフシギバナはピジョットを狙うも、ただでさえコントロールが難しい【はなびらのまい】なのだ。空高く舞うピジョットを捉えることは出来ない。

「切り替え、【ゴッドバード】」

しかもあろうことか、最高度まで飛び上がった所で【そらをとぶ】を解除、【ゴッドバード】のエネルギーをその身に宿す。

「くっ……!花弁で壁を作って!削り落とす!!」

スミレの叫びでフシギバナは追撃を中止、花弁を操り壁を作り出した。

「行け、ピジョット」

ハヤトの合図と共に、黄金の輝きを纏ったピジョットは流星となって急降下した。

(進路は正面……なら!)

「正面固めて、2割を鶴翼に展開!」

ピジョットの進路上に花弁の壁を持ってくると、更に左右に幾らかの花弁を広げて配置する。そして、ピジョットが【はなびらのまい】に突っ込んだ。高火力な花弁がまるでヤスリのようにピジョットの纏うエネルギーを削り始める。【はなびらのまい】によって放たれる花弁の枚数は、正確な数は不明であるが億にも登るとされている。その8割程が1体のポケモンに殺到したとなればその火力は凄まじく、ピジョットは削れてゆくエネルギーと自身の体力に表情を歪めた。

「貫け……!」

だが、ハヤトの言葉と共に更に加速したピジョットが、遂に壁をぶち抜いた。弾き飛ばされた花弁が、次々に消滅してゆく。【ゴッドバード】のエネルギーは削りに削られ、しかし未だ強力なパワーを秘めている。

「……ッ包んで、フシギバナ!」

しかしそんなピジョットに、左右にバラけていた花弁が左の空中に集結し襲い掛かった。真っ直ぐ突き進むピジョットは側面から奇襲への反応が遅れる。花弁が激突してピジョットのエネルギーが削られ、しかも不意打ちによってピジョットの軌道がズレた。そして突貫。膨大なエネルギーを纏ったまま地面に激突させられたピジョットは、地面に落ちたまま目を回していた。

「ピジョット、戦闘不能!フシギバナの勝ち!!よって勝者、チャレンジャースミレ!!」

審判の宣告が下ると、スミレは大きなため息を吐いた。

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