ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
忙しくしてる間になんか急激に増えて嬉しい限りです、ありがとうございます。それから、星10、誤字報告等もありがとうございます!
スミレとショウガはキキョウシティのポケモンセンターに戻ると、ジョーイにポケモンを預けて個室を借りた。というのも、ショウガのオドシシの正体がスミレの想像通りならば、相当な大問題だからである。スミレはポケモンセンターから借りた機械を使って、オーキドへとビデオ通話で連絡を取る。
『もしもし。……ん?おお、スミレじゃないか!旅は順調かの?』
オーキドはスミレの顔を見て嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「はい、キキョウジムでバッジ1つ目取り終えました。……ただちょっと問題がありまして連絡したんですが、時間は大丈夫ですか?」
『うむ、問題ないぞ。……それで、そちらの男性が関係者かの?』
「ええ。我が名はショウガと申します。かのオーキド博士とお会い出来て光栄にございます」
ショウガが丁寧に礼をすると、スミレはショウガを押しのけるように口を開く。
「それが大変なんです。……この人、オドシシをパートナーにしているんですが妙な技を使っていて。【バリアーラッシュ】っていう」
『なんじゃと!?それは本当かね!?』
スミレが説明を初めてすぐに、遮るようにオーキドが叫んだ。
「知ってるんですか!?」
直ぐにスミレが尋ねると、オーキドは頷く。
『うむ。……その前にショウガ君、聞かせてくれ』
「何なりと」
『……お主、なぜその技名を知っている?誰か、知っている者が近くにおるのではないかの?』
オーキドの疑問にショウガは頷く。
「ええ。私が所属している寺の和尚が、シンオウ出身のお方でして。その方から教わりました」
『成程、ではお主はどういう経緯でそのオドシシと出会ったのかね?』
「はい、話せば長くなります。……少しお時間を頂ければ、ある程度は短くできますが」
オーキドはショウガの答えに悩ましい表情を浮かべる。
『ううむ……、なら先に結論を問おうかの。その個体は、アヤシシの血を引いたヒスイ地方のオドシシじゃな?』
オーキドの確信を持った問いかけに、ショウガは頷いた。
「流石はオーキド博士……。その通り、このオドシシはアヤシシの血を引いた子供です」
「……やっぱりそっか。【めいそう】で物理能力を向上させ、【バリアーラッシュ】なんて意味不明な技を使ってたら流石に分かりますよ」
スミレがため息を吐き、オーキドはホッと安堵の息を吐く。
『それに気付きワシに連絡をしてくれて助かったわい。……それで、どのような経緯でそのポケモンを手に入れたのじゃ?』
オーキドが額の汗を拭いながら尋ねると、ショウガは過去を思い返しながら口を開いた。
◾️◾️◾️◾️
9歳の頃、ショウガはポケモントレーナーになることを夢見ていた。というのも、ポケモンバトルの発展によりメディアを通じて多くが流れており、しかもその時代はアデクやサナダといった怪物達が全盛期の強さでひしめきあっていた時代だ。少年の心は今のトレーナー達と同じくらいにはポケモンに惹かれていた。超人だったショウガはその身体能力に任せ、無鉄砲にも程があるのだが家の周りの森をたった1人でよく駆け回っていたのである。そんなある日のことである。
「……迷っちゃったな」
ショウガは、不安そうに呟く。辺りは薄暗い森の中で、草木が鬱蒼としげる周辺を野生ポケモン達が焦ったように駆けてゆく。
「どうしよう。……このままじゃあ夜までに帰れない」
辺りを見回すが、そこは四方八方草木に包まれた世界。碌に考えずに歩いてきたから帰り道など当然分かるはずもなく、ショウガは大きくため息を吐いて近くの地面に座り込む。すると、歩き回った疲れが一気にショウガの全身を包み込んだ。
「…………ふぅ」
大きく息を吐きながら周囲を見るが、辺りは不気味な程に静まり返っている。ポケモンが住む森にしては、鳴き声も聞こえない。その光景にショウガは、嫌な予感を感じる。というのも、ショウガは祖母からとある教えを受けていたからだ。
『よいかショウガよ。……森が不気味な静まり方をした時は、森からはよう逃げださにゃならん。森が賑わいを失うということは、それだけポケモン達が近くから逃げ出すということ。即ち、ポケモン達が逃げ出す程に強力な何かがそこにいるということなのじゃ』
かつては話半分に聞いていた祖母の言葉に、ショウガは慌てて立ち上がる。背筋を凍りつくような感覚が迸り、半ばパニックになりながら駆け出した。ただでさえ分からない帰り道を消し去るかのように、ショウガは焦りと共に一心不乱になって走る。自身の荒い息が耳に届き、激しく波打つ胸の鼓動はまるで全身を沸騰したかのように熱くした。
「はぁ……はぁ……はぁ………!こ、ここは……?」
森を駆けるショウガは草木を掻き分け、そして広い場所へと飛び出し困惑の声を漏らした。そこにあるのは、日常的に森を駆け回っていたショウガでも知らないような美しい湖だった。小学生なら腰まで浸かる程の水位だが、そこはあり得ないほどに透き通っており水底まで見ることができる。
「き、綺麗……」
ショウガがそう漏らすのも無理はない。自然の湖ならあって然るべき、落ち葉などゴミのひとつも無かったのである。それはまるで、誰かに日常的に管理されているようなもの。ショウガは思わず膝を付き掌で湖の水をすくって飲むと、その水はまるで『おいしいみず』のような、雑味の少ない味がした。
『……結界を抜けて来たか、人の子よ。流石は定めに導かれる1人と言ったところか』
呆然とするショウガの耳に深みのある男の声が聞こえた。ショウガが慌てた様子で顔を見上げると、そこには四足歩行のポケモンが、当たり前のように水面に立っている。水色と白が入り混じった体毛の全身、端正な顔には青緑のツノが生え、紫色の立髪が美しくたなびく。そして白く二股に別れた尻尾は、まるで羽衣のように胴体の隣で揺らめいていた。ショウガは思わず唾を飲み込み、喉を鳴らした。
「ぽ、ポケモン……?」
『その通りだ、人の子よ。我が名は今は名乗らぬ、遠い未来で知ることになるだろうが、それまでは詮索せぬのがお前の身のためだ』
「……しゃ、喋ってる。ポケモンが、喋ってる」
『不思議なことでもあるまい。我らには至らずとも、それなりに力を付ければ人語も語れよう。…………いや、今はそのようなことは些事。ショウガよ、私はお前を帰すことができる』
「ほんとっ!?」
ポケモンの言葉に、ショウガは表情を明るくさせる。そのポケモンは頷くと、ショウガに向かって歩き出した。
『その通りだ。だがお前を帰す前に、分岐点を選ばなければならぬ。……お前は、ポケモンと共に歩むことを望むか?』
「うんっ!」
ポケモンからそう問われ、ショウガは迷わず頷いた。
『たとえそのポケモンと歩む道が苦労の多い道であってもか?』
「うん、大丈夫だよ!僕なら大丈夫だから、僕にポケモンをくれるんじゃないの?」
ポケモンからの念押しにも、ショウガは即答する。そのポケモンの言葉の意味を本当に分かっているのか、分かっていないのか、それは今のショウガ自身にも分からない。だがそのポケモンはショウガの言葉に満足したように頷くと目を輝かせ、ショウガの体は重力を無視して浮かび上がる。
「わわっ!?何するの!?」
『案ずるな、悪いようにはしない』
そう言ってそのポケモンはショウガを背中に乗せ、森の奥へと歩いて行った。
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「……そしてその先で出会ったのが、死に掛けの巨大なアヤシシと落ちていたポケモンのタマゴでした。私はそのタマゴをアヤシシから預かり受けて『大切に育てる』と誓いを立てて、不思議なポケモンの背中に乗って自宅まで帰ったのです。そしてそのタマゴから育てたのがこのオドシシで、あのポケモンは詳しく教えてはくれませんでしたが人に渡してはならない特別なポケモンと聞いていたため人目を避けて育てて参りました。しかし仏門に入り和尚よりオドシシの出自を知って鍛えることが必要だと思い立ち、今に至るのです。……とまあ、このような経緯で私はこのオドシシと共に生きることとなったのです」
ショウガはそう言って話を締めくくった。それを聞いたオーキドとスミレは、苦々しい表情を浮かべる。
『成程……。まず初めに、お主にオドシシのタマゴを託したのは間違いなくスイクンじゃろうな』
「ですね」
オーキドはショウガが出会った不思議なポケモンについてそう結論を出し、スミレもまた同意の頷きを返す。
「ほう、スイクン……。聞いたことがあります。あらゆる不浄から自然を守護せし聖獣だとか。そのような尊き存在が何故この私に?」
『分からぬ、じゃがそのスイクンがお主を認めたのじゃろう。そして話から察するに、儂らとの出会いによって正体が知られることを予期していたのかもしれぬな』
「……となると、伝説のポケモンはこの世界について何か知っているかもしれないですね」
『うむ』
2人で納得し合うスミレとオーキドに、ショウガは首を傾げる。
「この世界……?この世界が何だというのです?」
その問いにスミレは頷き、説明をする。時間の異常、この世界が創作物であるということを。その説明にショウガは愕然とした表情を浮かべ、自らの拳を強く握り締めた。
「……と言った感じです」
スミレが説明を終えるが、ショウガは顔面を蒼白にして口元を震わせる。
「そんな……、御仏の力に縋っている私が滑稽ではないか……。何もかも作り物だと?この世全ての悲劇が誰かの願望によって生み出され、この世全てに存在する善も悪も全て、誰かの掌の上の茶番劇だとでもいうのか……?」
「信じられないなら、信じなくても結構です。ほぼ、と言った感じですけど、あくまで仮説は仮説ですから」
「いいや、信じよう。……しかしそうなれば私は、どのような役を与えられているというのだ?このような力無き旅の僧に一体何ができるというのだ?」
表情を歪ませるショウガにスミレは、小さくため息を吐くと呟いた。
「……多分、こういうことだろうけど。私の旅、着いて来ます?カントーの頃なら兎も角、今は人連れしても良いですよ」
「ありがたいお誘いだが、辞めておけ。女人のひとり旅というだけでも危険であろうに、よもや男を誘うとは」
スミレの提案に、ショウガ自身が首を横に振る。
「私は人間が嫌いなので人間の目線は良く見てるんですよ。……というか、元々それなりに見られる顔だったので、そういう視線を向けてないことは分かっています。私はカントーリーグでベスト16、当時からの相棒であるフシギバナも連れてます。そのオドシシを連れた貴方を護衛するくらいは出来ます。それとも、10歳児に護られるのは恥ですか?」
「…………その通りだ、子供に護られる大人など、情けないものだろう。しかし成程。オドシシを鍛えるため、そして護る為には貴殿の力を借りる必要があるのは事実。ならば私が選ぶべき手段は、貴殿に世話になることだけだ」
ショウガはそう言って、頷く。
『良いのか?……ワシとしては、不安なのじゃが』
「大丈夫です、正直、あの頃の私を超えるために必要な手段だと思ってたので、丁度いい機会です。ただ、ショウガさんの方が安心出来ないみたいですし、私のゲンガーを送ってください。私の影に潜ませます」
「ゲンガーが付くか、ならば余計な心配は無用だな。……一応私は、格闘を嗜んでいる。私が入った寺では、かくとうポケモンと組手をさせられたこともあるからな。人間相手ならばそれなりに自信がある故、そこは頼りになるだろう」
『ほう、かくとうポケモンと組手……そしてヒスイに詳しいとなれば、銀海寺の13代目海原和尚か、お主の師匠は』
「ええ、その通りです。私が仏門に入ったのも、和尚の説法を聞いたことがキッカケでした」
納得するオーキドと頷くショウガに、スミレは首を傾げた。
「カイゲン和尚……?だれですか?それに銀海寺?……確かジョウトには海神信仰はあった筈ですけど、宗教が違いますよね。神仏習合ですか?」
『うむ、ワタルが就任する2代前のカントーチャンピオンでな。老いを理由に後進に後を譲ったが、引退の直前まで理不尽といえる強さを誇っていたの。破戒僧の類ではあったが、それなりに善人でもあった。そして和尚最大の特徴は、人やポケモンを見る目にある。老若男女問わず将来性のあるトレーナーを見抜き、実力と人格を育て上げる腕を備えており、それはまたポケモンにも当てはまり、現代におけるポケモン育成の究極とも言える。……そうじゃな、サナダはあの寺で修行したと聞いてるし、ワシも一時期世話になったことがある。……話は逸れたが、あの和尚が旅に出したトレーナーというのは、信用しても良いかもしれん。ワシも修行を受けたことはあるが、思い出したくないくらいには多くの学びがあった。うむ、もう2度としたくはないがな……』
オーキドは顔を真っ青にして震え、ショウガも真面目な表情ではあるが目があからさまに死んでいる。
「……銀海寺については、スミレ殿のおっしゃる通り。神仏習合の寺でな。色々と差異はあるが根本的には海神ルギアを信仰している」
ショウガはそう言って話を逸らし、スミレは2人が悉くトラウマになっている様子に少しだけ体を震わせる。あまり、近づかない方が良さそうな寺である。
「成程。……ですが博士がそう言うなら、ある程度信じる根拠にはなりそうですね」
『うむ、欲望の制御に関しては凄まじいからの……。そういう気もなくなるじゃろうて』
「はははは、そのお陰で素晴らしき縁に恵まれました」
スミレが考え込む側でオーキドはショウガに同情するような声を掛け、ショウガは苦笑する。
「(具体的な内容は聞かないでおこう……作品の対象年齢が上がりそうだし)、まぁ兎に角、私に変なこともしないと誓えるなら私に着いて来てください。オドシシの為、力が必要なのでしょう?」
「ええ、誓います。そしてあり得ないことではありますが、もしも万が一があれば、大衆の面前で罪を告白した上で腹を切ります。これでどうですか?」
スミレとショウガは、そう言って見つめ合う。互いの真っ直ぐな視線が空中でぶつかりあった。
「分かりました。……いいや、分かった。ショウガさん、これから宜しく」
「ああ、世話になる」
スミレは自分を変える第一歩として、そしてショウガはオドシシの為。こうして2人は、共に旅をする仲間となった。
もうちょい上手く書きたかった