ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
『しかし、ショウガよ。……お主はリーグ参加すべきでない。分かっておるな?』
スミレとショウガが共に旅をすることになってすぐ、オーキドが忠告した。
「はい。このオドシシは流石に目立ちすぎる。ジムに挑み、リーグに挑めば必ずや敵に見つかるでしょう」
「……私と一緒に居たら、むしろ危ない?」
その言葉でスミレが微妙な表情を浮かべるが、ショウガは首を横に振る。
「いいや、そうなったならば覚悟を決めて戦うとも。それはそれとして、警戒して損はないというだけだ」
『その通りじゃ。野生ポケモンとのバトルや野良バトルがメインになるじゃろうな。あまり情報を周りに流し過ぎぬよう注意してくれ』
「はい」
「私も気をつけます」
『では、ワシはそろそろ仕事に戻ろう。……ああ、そうじゃそうじゃ』
「……?」
オーキドの何かを思い出した、という声にスミレは首を傾げる。
『そろそろサトシもそちらに着くと思うが、4人仲良くするんじゃぞ』
「大丈夫ですよ。……もう、友達ですから」
そう言って笑うスミレに、オーキドは目尻に涙を浮かべて頷いた。
『そうか……そうか。では、ワシは仕事に戻るとするかの。何かあれば、すぐに連絡してくれい』
「ありがとうございました」
「また何かあれば連絡します」
『ではな』
礼を伝えるショウガと、連絡を約束するスミレの目の前で、オーキドとの通話が切れた。
◾️◾️◾️◾️
旅仲間が出来、方針も決まったことでスミレとショウガはキキョウシティを出た。目指す先は次のヒワダジムだが、別に焦って向かうことでもない。そもそも、現状ジム戦がまともにできる戦力はホーホーのみ。フシギバナでは過剰戦力でジム戦がジム戦として機能しない恐れがあるのだ。戦力の増強は急務であった。
「……ふむ、ならばアルフの遺跡はどうだ?あそこならば多くのポケモンが生息している。ポケモンを鍛えるにも新戦力を得るにも良い場所だと思うが」
そこでショウガに相談すると、返ってきた言葉はこれだ。
「成程、遺跡……。確かに遺跡とかは私の戦術的に合ったポケモンは多いかも」
遺跡という場所はポケモンにとって神秘的な場所なのか、エスパーポケモンが多く生息していたりもする。エスパーポケモンの場合ホーホーやその進化形ヨルノズクと若干役割が被る可能性はあるが、そこの差別化はトレーナーの力量が試される部分。行くだけ行くのもスミレ的には有りだった。
「……じゃあ、目的地はアルフの遺跡で。案内頼める?」
「承知した」
スミレの頼みに、ショウガは頷いた。
アルフの遺跡。キキョウシティを出てすぐの32番道路から行ける場所だ。
「……これがアルフの遺跡、成程。石造りの建造物だね」
スミレが考え込むように顎に手を当て、ショウガは頷く。
「うむ。1500年前に建造されたというが、何のためかは分かっておらぬ。……だがしかし、見事に残っているといえよう」
「1500?……ヒスイよりも更に昔か。人とポケモンの共存が本格的に行われていなかった頃の話だね。でも、ポケモンが既に存在していた時代の建造物。ポケモンという超常の存在に関わる何かな気はするけど」
「私も同意だ。現在の研究ではポケモンへの信仰を示した神殿という、シロナが提唱した説が有力となっている」
「へぇ、詳しいんだね」
「……僧としての修行の時に学んでな。このような場で役に立つとは思わなんだが」
感嘆するスミレに、ショウガは編笠を深く被って呟く。
「ま、それは置いておくとして中に入ろう」
「うむ」
そう言って頷きあうと、スミレとショウガは中に入った。と同時に、衝撃波が2人を襲った。
「きゃあ!」
「何事だ!!」
腕で顔を保護しながらよろめくスミレと咄嗟にスミレを庇うように立つショウガ。ショウガの目の前では、茶髪の少年とそのポケモンらしきカメックスが、大量のポケモンに襲撃されている姿を見た。
「くっ……!ダメだ、ここはポケモンが多すぎる!!ここは良いから脱出……スミレ!?」
少年はショウガに気がついて怒鳴るが、しかしその後ろにいるスミレに目を見開いた。
「シゲル……!行って、ホーホー!フシギバナ!!」
スミレは目を開きその少年がシゲルであることを確認すると、一瞬の間もおかずにボールを投げた。フシギバナとホーホーがボールから飛び出し、ポケモン達を睨みつける。そして更にスミレの影が不自然に伸びるとゲンガーが飛び出した。
「ええい、通りがかった船だ!オドシシ!!」
ショウガもオドシシを呼び出し、ポケモン達を睨みつける。
「シゲル!何なのこのポケモン達?……ネイティにドーブル、ウパーもいるしあれは……確かアンノーン!?この数はどういうこと!?」
「この世界の根本に関わる何かがあるかもと探索していたら突然アンノーンに襲われてね!迎え撃ってたらどんどん近づいてきたんだ!!これでも大分減らしたぞ!!」
驚きながら叫ぶスミレに、シゲルはうんざりした様子で叫ぶ。
「しかしこの数、捌ききれるか!?」
「……やるしかない!悪いが2人とも、力を貸してくれ!!」
「承知!」
ショウガの疑問にシゲルが叫び、ショウガは返事を返しスミレは無言で頷いた。
「フシギバナ、【はなびらのまい】、ゲンガー、【シャドーボール】散弾で。ホーホーは【エコーボイス】」
「バナァァァ!!」
「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!」
「ホーッ!」
スミレの指示で花弁が群れの弱いポケモン達を蹂躙する。そして追い打ちをかけるように、【シャドーボール】が弾幕となってポケモン達に襲いかかった。そして追撃にホーホーの【エコーボイス】が放たれる。
「……ッ、そこ、【つつく】!」
そしてスミレの指示でホーホーは、弾幕をすり抜けた1体のネイティに襲い掛かった。
「オドシシ、【めいそう】。限界まで能力を上げろ」
その間にショウガのオドシシは【めいそう】を積み、能力の底上げを図る。
「イーブイ、【めざめるパワー】!オオタチ、【たいあたり】、カメックス、【こうそくスピン】!」
シゲルはイーブイが【めざめるパワー】でウパーを吹き飛ばし、オオタチの【たいあたり】でドーブルを気絶させ、カメックスの【こうそくスピン】がまるで暴走列車の如く突き進むと進路上のポケモン達が次々に跳ね飛ばされてゆく。
「(……やはり、私はこの中で最弱。だが、今できることを全力で!)オドシシ、【バリアーラッシュ】!!」
能力を限界まで高めたオドシシが突っ込み、防御が硬い筈のヌオーの巨体を、いともかんたんに弾き飛ばす。
「へぇ、やるね……!そして今の技は気になるが、後にしよう。カメックス、エネルギーチャージ!!」
シゲルはニヤリと笑みを浮かべるとカメックスに指示を飛ばし、カメックスの背中に付いた2つの砲台にエネルギーが収束される。
「【つつく】」
ネイティの【アシストパワー】を躱したホーホーの嘴がネイティを弾き飛ばす。
「……ティ」
しかし立ち上がったネイティは再び【アシストパワー】を使用、今度はホーホーが弾き飛ばされる。
「ホーホー、【エコーボイス】」
しかし飛び上がったホーホーは【エコーボイス】を発動、ネイティは思わず膝をつく。
(しれっとフシギバナとゲンガーの弾幕すり抜けたし、将来は有望。多少役割が被っても、逃す手はない)
それを見たスミレは、モンスターボールを投げた。ネイティがボールに吸い込まれボールは地面に落下し、転がり、カチリと音を立てた。ネイティ、ゲットだ。
「……よし。ホーホー、戻って。ゲンガーは牽制、フシギバナは最後の最後に全力をぶつけて」
スミレはホーホーをボールに戻してフシギバナにはキーの実を食べさせつつ指示を出し、ゲンガーは弾幕を張って相手を牽制。対するフシギバナは、大きな一撃を放つべくエネルギーをチャージする。
「大技か……ならば未熟なれど我らも続くのみ、力業で行くぞ!!」
それを見たショウガが指示を出し、オドシシは全身にエネルギーを滾らせる。
「エネルギーチャージ120%、【ハイドロカノン】!!!!」
「【はなびらのまい】」
「【バリアーラッシュ】!」
水のレーザー砲が、花弁の乱舞が、神秘の一撃が放たれる。カメックスとフシギバナの攻撃が群れのポケモンをまるで紙切れのように吹き飛ばし、蹴散らす。そしてそこを駆け抜けたオドシシの突進が、最後尾に立っていたネイティオを吹き飛ばした。司令塔だったのか、ネイティオを倒されたポケモン達はまるで蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行く。それを見たシゲルは、安堵の息を吐いた。
「成程ね。どういうことかと思ったが、あのネイティオが司令塔だったとは。それが倒せたから戦線は瓦解したと。ありがとう、助かったよスミレ。……貴方もありがとうございます。スミレとはどういう関係で?」
シゲルの言葉にショウガはスミレをチラリと見る。
「旅仲間。ちゃんと私から誘った人だし、博士も交えて色々話し合ったからオドシシについての詮索も無しでおねがい」
「……へぇ、成程。おじいさまがね」
シゲルは納得した様子でショウガに視線を向ける。
「ああ、スミレ殿には世話になっている。私はショウガ。銀海寺所属の旅の僧だ」
「ははぁ、あの " 明王 " の弟子か。それにあそこの所属で旅に出られるってことは人格など様々な試練を通った証でもある。確かにそれは、信頼できるかもね。……申しおくれた。ボクの名前はシゲル、オーキド博士の孫でコイツの幼馴染だ」
「成程、シゲル殿か。よろしく頼む。……それで、ここには何をしに来たのだ?」
シゲルの内容とは裏腹に警戒の色が見える言葉へ、ショウガは真っ直ぐに返答する。
「ああ。この世界の成り立ちを知る上で、古代遺跡の類は全て調べるべきだと思ったんだ。それに、謎に包まれたポケモンであるアンノーンもね。その関係で、ボクはここに来た。スミレは?」
「私は戦力増強。……ホーホーしか手持ち居なかったから、増やすのと強くしたかった」
シゲルの問いにスミレはそう応え、シゲルは笑みを浮かべる。
「成程、群れの撃破で結構レベルは上がったんじゃ無いのかい?」
「そうだね。そろそろ進化も近いかも。……それにネイティも捕まえたし、戦力増強は出来た。だから、手伝えることがあれば手伝うよ。……ショウガもそれで良い?」
「無論だ」
スミレに尋ねられたショウガは即答し、スミレは頷くとシゲルと視線を合わせる。
「……なら、ちょっと協力して欲しい。ボクは研究の為にもアンノーンを数体捕まえようとしていてね。とはいえさっきのように襲われても困る。そこで、君達にはアンノーン以外の排除をお願いしたい」
「分かった、良いよ」
「承知した」
シゲルの頼みにスミレとショウガは即答し、3人揃って遺跡の奥を目指して歩き始めた。
「……そういえば、こっちでヒマワリに会った?」
スミレの思い出したような問いに、シゲルは頷いた。
「ああ、会った会った。バトルもしたけど相当強くなってたよ。あの時みたいな思い詰めた様子もなく元気そうだったよ」
「ヒマワリ、という方も幼馴染なので?」
「うん。私、シゲル、ヒマワリ、そして今日にはジョウト地方に到着するサトシ。この4人が幼馴染で、友達で、ライバルになるかな」
ショウガの疑問にスミレは遠くを見つめながら話し、シゲルはクスリと笑みを漏らす。
「ふっ、君の口から友達という言葉が出てくるとは……。カントーの頃の君がそんなことを言えば、真っ先に偽物を疑っていたよ」
「否定はしない」
「しかし言い換えれば、そこから友情が芽生えたということ。素晴らしきことであろうな。……何があってそうなったかは詮索はせぬが、いつかは話して貰えるよう精進せねばな」
肩をすくめたスミレに対し、ショウガは暖かい視線を送る。
「ふっ、ショウガさん。コイツは根本的に人間嫌いの捻くれ者だ。中々に厄介だけど、面倒は見れるのかい?」
「……さあな。だがしかし、共に旅をすると決めたその時には既に、彼女に降り掛かるあらゆる苦難を共に背負う覚悟程度は出来ている。そしてそれは、言葉だけでなく行動で示してゆくつもりだ。信頼しろとは言わんが、私を見て判断してくれ」
シゲルは言外で、『碌でもないことを企んでいるならすぐに消えろ』と言っていた。だがショウガは、ただそれを受け止め真っ直ぐな誓いを立てる。
「…………成程、ボクの負けらしい。悪かったね」
「いいや、当然の警戒だ。謝罪するような間違ったことではない」
「分かってる。形式的な話だ」
「ふっ、それはそうだな」
そう言って和解する2人を背後から見つめ、スミレは安堵の溜め息を吐く。
「ありがと、シゲル」
シゲルはスミレに背を向け、肩をすくめた。
ネイティ捕獲……。ヨルノズクかネイティオどっちかだけにしようと思ってたんですが、どっちも好きだったから結局入れました。あとどっちもスミレが持ってて違和感が無かったので