ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第170話 アンノーン捕獲作戦

 スミレ、ショウガ、シゲルの3人はアルフの遺跡内部に本格的に踏み込んだ。遺跡は4つの小部屋とひとつの大きな部屋で構成されているが、3人が向かったのは大きな部屋に当たる地下遺跡と呼ばれる場所であった。

「そういえば。ショウガさんはポケモンの成り立ちについて、学術的な方向で知っているかい?」

「うむ。確か、古生物がまるで消滅したかのように絶滅し、突如としてポケモンが現れたらしいな」

「そうだね。……確か、その発見がされた頃には貴方は生まれている筈だ」

「その通り。私も今年で35、丁度少年時代の発見だったな」

「その当時はボクらは生まれてないが、大層な騒ぎになったらしいね。……スミレは、その辺りはどのくらい知ってる?」

シゲルに尋ねられ、スミレは眉を顰めて首を横に振った。

「古生物の消滅とポケモン誕生についての基本的なことなら知ってるけど、シゲルほど詳しくないかも。できれば詳しく説明してくれない?」

そう尋ねられたシゲルは気を良くしたのか純粋な笑顔を浮かべ、足取りもあからさまに軽くなる。

「そうかそうか、良いだろう。今から20年ほど前に行われた発掘調査によって、それまで存在していた動物達の化石がポケモンの化石が出土し始める時代に入ると影も形もなく消え失せていることが分かったんだ。とある地層からはポケモンしか発見できなくなり、生存競争に敗れて絶滅したと思われていた古生物が、遺体も残さず消え去っていたんだ。そしてその古生物が生存していた時代に、人類は生きていた。まるで現代のような文明を築き、しかしポケモン誕生を境に人間社会は崩壊。文明的な暮らし全てを失った人間は、まるで人類の発展を初めからやり直すように原始的生活を行い初めたんだよ。ここまでは知ってるかい?」

シゲルの確認に、スミレは頷く。

「うん。オーキド博士の研究室で読んだ。……現状の説だと、ポケモンによって文明が破壊されたというのが主流だけど。この世界を創作物と仮定すれば話は違ってくるんじゃない?例えば、ポケモンの世界として成立させるために世界そのものを塗り替えた、みたいなね」

「ああ、それはボクも考えてる。……ポケモンを信仰したと思われる遺跡はかつて存在した、" 技という超常の力を持たない原生生物 " と比較したポケモンという新生物への畏れの感情を表しているとされる。だがそれは、ポケモンによる文明の破壊からポケモン発生後の歴史が地続きであった場合の話。もしもスミレの言ったことが事実だとすれば、この世界の歴史はポケモン発生前後で分断されていることになる。……様々な説はあるんだ。研究はまだ続いていて、時間の異常に対抗する研究は秘密裏に始まっている。その中でボクは、この世界がポケモンの存在を根底に成立した、ポケモンを存在させるための世界だと思っているんだ。…………まだまだ都市伝説レベルの説得力だけどね。だがこのような古代の施設には壁画など当時の様子を表す資料が残されている場合は多い。中にはユニークなものもあってね、生息するアンノーンを調べたら一定の文字列を示していた、という事例も過去にはあった。つまりボクらがこの遺跡の情報を少しでも持ち帰ることができれば、ポケモン信仰の根源……ポケモンと人間の関係性の始まりと展開、そしてそもそもポケモンという存在の成り立ちを知るひとつの資料となり得るんだ。そうして調査をすることによりポケモンと人間を探っていけば、いつかはこの世界の根幹に辿り着けるような気がしているんだよ。この世界をこの世界たらしめる真実がね」

シゲルはそう自身の考察を話し、ショウガは深い相槌を打つ。

「成程。だが未だに発見例はないが、どうやって探す?発掘調査などはせぬだろうな?」

「する訳がない、そんなことをしたら研究が続けられなくなってしまう。だが、隅々まで歩くことはできる。ボクがゲットしてアンノーンの分布を調べ、そうしながら遺跡中を歩き回って新たな道を探すんだ」

「……この世界の根幹、ねぇ。シンオウ神話とかが怪しそうだけど。神話の検証とかしないの?」

スミレの疑問に、シゲルは苦笑を浮かべる。

「いつかはね。でも、シロナさんがそっち方面の研究で最前線走ってるし研究者は多くてね。……だからボクは少し分野をずらして追おうかなと思ってさ。世界とかそんなスケールじゃ無くてまずは人とポケモン、個人と個体みたいな小さいスケールからかな。視点が多ければより分かる範囲は広げられるからね」

シゲルの説明に、スミレは納得したように頷いた。

「そっか。……で、現状だとどう?先行研究とか探ってるんでしょ?」

「ああ、でも世界の根幹に関してはサッパリだ。世界の根幹を探った研究者は多いが、そもそも時間の異変が起きるずっと前なんだ、誰もこの世界が創作物だなんてぶっ飛んだ結論に至る研究者なんていやしない。あっても、オカルト雑誌による与太話が精々だったよ。現在は密かにそっち方面での研究が進められているらしいが、歴史資料はまずその信憑性を探らないといけないしね。まだまだ進捗としては微々たるものだよ」

シゲルはそう言ってため息を吐き、ショウガは苦笑いを浮かべる。

「確かに、私もそれを突きつけられるまではそのような発想すら無かったからな。新視点といえば聞こえは良いが、これまで当たり前に存在していた世界の根本を揺るがす話だ。荒唐無稽な説を大真面目に検証するとなれば苦労は計り知れんな」

ショウガの言葉に、スミレは黙って頷いた。

「そうだね、とんでもなく厄介だ。……おっと、敵か」

シゲルはそう呟くとボールを投げた。ボールから飛び出すのは、ドーブルだ。

「……へぇ、捕まえたの?」

スミレが尋ねると、シゲルはニヤリと笑みを浮かべる。

「何も、戦力増強をしたのは君だけの話じゃない。……ボクの場合は図鑑埋めも兼ねてるがね」

「成程ね」

精鋭を集めることに集中した結果、研究に役立つより多くの生体を送っていないスミレとしては後半の言葉には思うところがある。サファリゾーンで手持ち数をそれぞれ嵩増ししているとはいえ4人の中では、スミレが最も捕まえたポケモンの数が少ないのであるが、それはどうでもいい話。

「…………!」

そんなスミレ達の目の前に立ちはだかるのはアンノーン。10体程の個体が一行を狙っていた。

「ゆけっ、オドシシ!」

「……お願い。ネイティ、ホーホー」

ショウガはオドシシを呼び出し、スミレはネイティとホーホーを出す。

「良し……!ならボクも追加だ、イーブイ!ショウガさんは1体、ボクらは2体ずつやるぞ!!」

それを見たシゲルはオオタチとイーブイを追加で呼び出すと、指示を飛ばす。

「了解」

「うむ、行くぞオドシシ!」

スミレは静かに、ショウガは勇ましくそれに応えそれぞれの敵を見据えた。

 

◾️◾️◾️◾️

「オドシシ、【めいそう】」

ショウガがまず選んだのは【めいそう】、オドシシは精神統一を行うことで能力を上げるが、このオドシシが使用する【めいそう】は現代の【めいそう】とは性能が違う。全身に力を漲らせたオドシシが、澄んだ瞳でアンノーンを見据える。

「……」

アンノーンは全身を輝かせて【めざめるパワー】を放つ。【めざめるパワー】は自身の能力値によって技のタイプが変化するというもの。油断していたら効果抜群の攻撃を受けて沈むこともあり得るのだ。

「【ねんりき】、相殺せよ!」

オドシシの瞳が輝き、サイコパワーの圧力が【めざめるパワー】を爆散させる。

「……!」

爆発から逃れるように飛ぶアンノーンだが、オドシシはその間に更に一度【めいそう】を積んでいた。

「行け、【バリアーラッシュ】!!」

突撃したオドシシが、アンノーンを軽々と吹き飛ばし壁に叩きつけた。

 

アンノーンの【めざめるパワー】が地面で炸裂、爆発を起こす。

「オオタチ、【たいあたり】、イーブイは【かみつく】」

「タッチ!」

「ブイッ!」

しかしそれを躱していたオオタチは丸い体に似合わぬ俊敏な動きでアンノーンに迫ると、【たいあたり】をぶつける。それに続くイーブイがアンノーンに噛み付くと首を振り回して地面に叩きつけた。

「ドーブル、【ねっぷう】」

シゲルはそう指示を飛ばし、ドーブルは尻尾の筆を振るう。すると飛び散った絵の具が激しい熱風に変化し、周囲のアンノーンを纏めて吹き飛ばした。

「……【スケッチ】の効果か」

ショウガがそれを見て呟くと、シゲルはニヤリと笑って頷いた。【スケッチ】とは、ドーブルが唯一使える技である。違うポケモンが直前に使用した技を覚え、【スケッチ】そのものを忘れるというもの。シゲルはそれを使い、カメックスの弱点であるくさタイプに有効なほのおタイプの技、そして対野生で役立つ全体攻撃の【ねっぷう】を覚えさせたのである。

「その通り。ま、何処ぞのフシギバナ対策でね」

そう言いながらシゲルはボールを投げ、ショウガが倒したアンノーンも含めて捕まえてゆく。そして2人は、チラリとスミレに視線を送った。

 

「ネイティ、【アシストパワー】、ホーホーは【エコーボイス】」

「……」

「ホー!」

対するスミレが取った作戦は、連携による各個撃破であった。ネイティの【アシストパワー】がアンノーンを弾き、【エコーボイス】が追撃で入ることで仕留め横からシゲルが投げるボールに収めるという作戦だ。この作戦の肝は、【エコーボイス】は連発によって威力を増すということ。

「ネイティは牽制の【つつく】、ホーホーは【エコーボイス】」

【エコーボイス】の火力が上がれば、一撃で仕留められるようになる。するとネイティはホーホーが敵一体倒すまでの時間稼ぎに徹することが出来るのである。

「……」

ネイティが虚無の表情で突進し、嘴でアンノーンを突き後退させる。そしてその間にホーホーが一体を仕留め、次の獲物を見定める。

「……いや、問題ない。止めて」

しかしスミレが指示を出しネイティとホーホーが攻撃を止めた瞬間、ドーブルの放った【ねっぷう】がアンノーンを蹂躙するように暴れ狂った。そして墜落してゆくアンノーン目掛け、スミレはシゲルから借りたモンスターボールを投げる。

「5体だ!一旦5体捕まえて研究所に送る!!それ以外は見逃すんだ!」

「……了解!」

シゲルの指示に、スミレは頷いた。シゲルの判断は恐らく、乱獲を行わない為。オーキド研究所に送ってカントー地方を挙げた研究に役立てられるものの、あくまでも個人による捕獲と資料提供だ。学術的研究や動物園など教育施設の建設に伴う大量捕獲は、ポケモンリーグ立ち会いの元で行われる。そうでない以上はあまり捕まえすぎてはいけないのである。因みに数体捕まえて何が分かるか、というとポケモンの年齢からそのアンノーンがいつの時代に住み着いたのかが分かる上に、遺伝子情報からは何処からやってきたなどが分かる。つまりは、本格的な調査の前段階に当たる訳である。

 アンノーン達が捕まり、合計5つのモンスターボールが地面に転がる。

「悪いね、2人共。こっちの都合で振り回して。……これで作業は終了、見て回った限り何か特別な物は目視じゃあ見つからなかったしあとはコイツらを回復させておじいさまの研究所に送るだけだから」

そう言ってボールを拾おうと歩き出すが、突然ボールが網に包まれ、何者かによってその全てが回収されてしまった。

「……なんだ!?」

ショウガが咄嗟にスミレとシゲルを庇うように立ち下手人を睨む。

『ニャーッはっはっはーい!!』

しかし、その睨みに対して返されたのは高笑い。

 

「なんだ!?かんだと聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

「世界の破壊を防ぐため」

「世界の平和を守るため」

「愛と真実の悪を貫く」

「ラブリーチャーミーな敵役」

「ムサシ!」

「コジロウ!」

「銀河を駆けるロケット団の2人には」

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」

「なーんてニャ!!」

 

そんな口上と共に姿を現したのは、ムサシにコジロウ、ニャースの3人組。

「ロケット団……!?貴様達、なんのつもりだ!!」

ロケット団の名前にショウガは怒りの声を上げるが、その後ろでスミレとシゲルは目を見合わせた。

「……サトシ、ここに居ないけど」

「ああ、確かピカチュウ狙いだったか?……ボクとしてはミュウツーの一件もそうだし、スミレは会ってないけどルギアの一件でも共闘したからちゃんと敵してるのほぼ見ていない気がするな」

「私も久しぶりかも。……というか、ルギアの一件ってあの時か」

「いや、本当にあの時は助かった。ボクはカスミと一緒にコレクターと戦ってたから分からなかったけど、彼らが居なければ世界は滅んでたよ」

「へぇ」

そんな呑気な会話をするスミレとシゲルに、驚いたのはショウガだ。

「……どういうことだ?奴らと繋がりでもあるのか??」

スミレはその怒りの滲んだ問いに、気まずそうに頷く。

「うん、まぁね。所謂腐れ縁ってやつ」

 

「まぁ、そんな感じよ。……というか、ジャリガキもハナガールも久しぶりじゃない。元気してた?」

ムサシがポケモンを奪ったとは思えないテンションでスミレに話し掛ける。

「ボクは元気だよ、君らも元気そうで何よりだ。サトシから聞いたが出世したらしいじゃないか」

「……あー、カラシの屋敷襲撃してな。財産やらポケモン奪って逃げたら、その間に奴の傘下をボスが取り込んでたんだ。それで、ロケット団の資金や戦力が大幅に増えてボーナスって感じ。あと、お前ら4人に関しては幹部以上の権限を貰ったぜ。地の果てまで追いかけていいってさ」

「ニャー達もゴハンに困らなくなって助かったのニャ」

コジロウとニャースが嬉しそうに答え、混乱の真っ只中にいるショウガを放って話は進む。

「……それで、そのアンノーンは研究所に送るんだけど。世界の謎を明かすヒントになるかもしれないし放してくれない?」

「あー、そりゃ獲っちゃ不味いか?なぁどうするムサシ」

スミレの頼みにミュウツーの一件を通して事情を知っているコジロウは頭を掻き、ムサシに視線を送る。

「なーに言ってんのよ、ポケモンを戦力として送ればサカキ様からの報酬も上乗せでしょ」

「でもそいつ、【めざめるパワー】しか技使えないよ。私ならリストラかな」

「じゃあいいわ、戦ってもアンタのフシギバナとカメックスに勝てる気しないし。……何よりあのピカチュウじゃないしね」

一度はコジロウの質問をバッサリ切るが、スミレの意見でアッサリと掌を返す。そもそも、ピカチュウでないのだからそこまで本気ではない、それにバトルガチ勢のスミレが使えないと評するもののために、2人を相手取りたくはないのであった。

「良いんだ……助かるけど。それで、今日はなんの用事だい?」

ニャースからアンノーンのボールを受け取りながら尋ねると、ニャースは難しい表情を浮かべる。

「警告と、サカキ様の意思を伝えにきたのニャ」

「警告、それに意思……?ポケモンハンターのこと?」

スミレが眉を顰めるが、話は続く。

「知ってるなら話は早いニャ。この地方に、とんでもなく強いポケモンハンターが沢山いるからくれぐれも気をつけるニャ。無闇に喧嘩を売ると危ないのニャ」

「ポケモンハンター……確かに、噂は聞くな」

ポケモンハンターという単語を聞いたショウガはやっとのことで反応する。

「私も1人は潰したね。……それで、サカキはなんて?」

「ああ。まずサカキ様は、ジョウトへの本格的な侵攻を決意した。といってもリーグを乗っ取るとかじゃなくて、ポケモンハンターを駆逐したいらしい。そして、やむを得ない事情でどっちかと組むならリーグと組めってさ。リーグの方がまだ信用できるというのが、サカキ様の考えらしい」

コジロウの答えに、スミレは大きく溜め息を吐く。

「成程、あの野郎は私達のことを随分と高く買ってるらしい。……良いんじゃない?ワタルさんにはこっちから伝えておくよ。物凄い嫌そうな顔するだろうけど」

「……貴殿、チャンピオンワタルやサカキと繋がりがあるのか?」

「まあね。ワタルさんは私の名付け親、サカキは一度ロケット団ボスとしての奴と戦りあったことがある。混み合った事情とかあるけど安心して、ちゃんと私達はロケット団の敵だよ」

ショウガに尋ねられ、スミレは説明する。ショウガはまだ、複雑な状況が呑み込み切れていないらしい。

「……んで、コイツ誰?」

「私の旅仲間。手は出さないでね」

ムサシは胡散臭い物を見る目でショウガを指差し、スミレは簡潔に説明する。

「へぇ、アンタも成長したのね。……なんか普通に嬉しいのよね、敵なのに」

「分かる」

「だニャ」

驚いた様子のムサシの感想にコジロウとニャースは頷き、スミレは照れた様子でふいと顔を逸らした。

「…………ばかみたい」

その呟きを聞いたシゲルは、クスリと小さく吹き出した。

「ふっ……、まぁいいや。取り敢えず帰ろう、ボクに出来ることは済んだ。それに、スミレとショウガも旅があるからあんまり拘束するのも悪いしね。……ああそれと」

「?」

シゲルのふと見せた悩ましげな表情に、スミレは首を傾げる。

 

「オチ、どうする?」

この数分後、『なんだかとっても良い感じー』と叫びながら空の彼方へ飛んでゆく光が、遺跡の外で目撃されたのであった。

 




書いてみたい二次創作とか沢山あるんですよね……

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