ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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基本的に色々と考えて書いてます。特にメインキャラに関しては


第174話 ショウガとオドシシ

 ユウタと別れたスミレとショウガは、つながりのどうくつを急いで抜け出した。というのも、ポケモンがそれなりに消耗している以上はあまり無茶して戦うのも良くはない。

「……ショウガ」

「どうした?」

ヒワダタウンまで間近の33道路を歩きながら、スミレはショウガに視線を向ける。

「悩んでる、でしょ?」

「まあな。……だが、これは私が解決すべきことだ。貴殿の手を煩わせはしない」

スミレが気を遣うように声を掛けるが、ショウガの返答は固い。深々と被った編笠に表情は隠れ、何を思っているのかスミレには窺い知れない。

「……そっか。ま、どの道私は人の心が分からないから聞かれても答えられないだろうけど」

スミレはそう言って、何も出来ない自分に言い訳をする。

(なんで私は、助けようとしてるんだろう……。力になろうと思ってるんだろう…………)

そしてふと、自分の言動や行動に疑問を持った。人嫌いのスミレにとっては、ショウガもまたスミレが嫌う人に過ぎない筈なのに。幼馴染のような特別な人でもないというのに。

「…………そうか、すまん」

ショウガは、小さく呟いた。気まずい空気が2人を支配し、まるでその空気から逃げ出すように足取りは速くなる。そして2人はその気まずい空気を引きずりながら、ヒワダタウンに入ってゆくのであった。

◾️◾️◾️◾️

 ポケモンセンターで回復やらイワークの手続きやらを済ませた後。スミレは、1人町を歩いていた。ショウガは、スミレと一度別れて近場のヤドンの井戸という場所でオドシシを育てるとのことだった。スミレの目には何処かショウガが焦っているようにも見えたが、強くなろうとしているトレーナーを態々止める道理もなく。スミレはこうして、ジム戦の為にヒワダタウン内部を歩いているのだ。因みに育成だが、ホーホーとネイティは問題なし。イワークは若干不足気味ではあるものの、レベル差の大きかったヒノアラシを倒したことやヒワダタウンに入る前に遭遇した野良トレーナーとのバトルで大きく強くなっている。

「…………ッ!?」

しかし、ジム戦対策の思考全てを吹き飛ばす人物をスミレは見た。エメラルドグリーンの髪、冷徹な瞳の男が、堂々と町を歩いている。ロケット団の幹部、ランス。スミレにとって因縁深い男だ。

(……あの野郎、何してる!?)

スミレは、一瞬の思考の末に追跡を諦めポケモンセンターに歩みを進める。あの男、全力でやり合えば負けるのはスミレだ。

「へぇ……」

「…………!!」

しかし、ランスの視線がスミレの視線とかち合った。スミレは冷や汗を掻きながらも表情を崩さずランスを睨みつけ、ランスは嫌そうに眉を顰める。ランスはそのまま真っ直ぐ、スミレに向かって歩いてくる。周囲を歩く人は僅かだが、その異様な空気を察したのか遠巻きに眺め始める。

「貴女がジョウトに居ることは知っていましたが、こんな所で遭遇するとはね。いやはや、ワタシも全くもって運がない」

「……何を企んでる?貴方ほどの奴が出てくるってことは、相応に大きい何かが行われてるってことでしょ?」

「ええ、その通り。……ですが、貴女はそれを止められますか?貴女がワタルに通報する間に、この町中の人間を殺し尽くしても良いんですよ」

「人質か、姑息な真似をするね」

スミレは煽るが、その内心は冷や冷やとしていた。ムサシ・コジロウ・ニャース以外のロケット団ならそれも普通に想定できるからだ。

「でしょう?ですが、最も悪手は任務の失敗です。任務成功を目指すなら、時に誇りを捨てることも肝要でしょう」

「…………成程。それで、貴方達の任務は何?」

「さて、なんでしょう……?力で聞いてみてはいかがですか?」

そう言ったランスはボールを構え、スミレもまたボールを構え腰を落とし鋭く息を吸う。

「逃げろ!!コイツはロケット団の幹部だ!!!!すぐにリーグへ連絡しろ!!」

そして放たれたスミレの叫びに群衆の空気は一瞬止まり、爆発した。パニックを起こした群衆が逃げてゆく中、ランスは愉快そうに笑いながら逃げ惑う群衆を眺めている。

「おお、愚か愚か……。こんなに小さな子供が戦おうとしている時に、群衆の大人たちは我先にと逃げ出した!これはまた素晴らしいショーだと思いませんか!?」

邪悪に笑うランスを、スミレは鋭く睨みつける。

「…………相変わらずのクソ野郎だよ、貴方は」

「それは良かった。……さあ行きましょう、クロバット!!」

「お願い、ゲンガー……!」

「バァァァット!!」

「ゲェェン!!」

ランスが呼び出したのはクロバット、対するスミレはゲンガー。ゲンガーを選出した理由としてフシギバナでは、相性が悪過ぎるのだ。

「クロバット……!へぇ、随分と懐かれてるね。ポケモンは道具じゃなかったの?」

「ふふふ……、変わらず道具ですよ。ですが我らロケット団は目的のためなら手段を選ばぬ組織。ポケモンと心通わせるだけで強くなれて、強くなることでサカキ様のお役に立てるならばそれは選ぶ以外の道などないでしょう?」

ゴルバットからクロバットへの進化方法が懐かせることだからと煽るスミレに、ランスは余裕の笑みを浮かべる。両者のレベルは、明らかにクロバットが上。しかしスミレは苦しげな表情を隠して、大きく深呼吸をする。

「ゲンガー……【シャドーボール】」

「クロバット、【クロスポイズン】!」

両者の攻撃が空中で激突、爆発を起こした。

 

◾️◾️◾️◾️

 ヤドンの井戸には、人が溢れていた。それもRの文字が描かれた黒服を纏っている。そして彼らの足元には、荒い息を吐き、全身に擦り傷を負って倒れる少女が1人。

「このガキ、抵抗する割に大したことねぇな。バッジ1つでよくやるぜ」

男が少女……ミコトを見下ろし、ため息を吐く。ミコトはユウタよりも一足先に進んでおり、ヒワダタウンでのジム戦を控えてポケモンを鍛えていたのだ。先程まで行われたバトルは、ロケット団の圧勝。10人ほど居る団員の1人も倒せなかった悔しさにミコトは歯を食いしばる。

「ふぅ……ふぅッ……!私のポケモンはん、お返しください……!」

「無理だろ、今はカスでもいずれ強くなったらどうするんだ。……なぁオイ、このガキどうする?」

ミコトに睨まれた男はただ肩をすくめ、他の団員を振り返る。

「殺しなよ、このガキ顔良くてムカつくのよね」

多くの団員はその光景に興味がない、というよりも他の作業をしているため何も返さない。だが、1人の女が嫌悪感に表情を歪ませ、吐き捨てるように言った。

「そうするか」

男はなんでもないように返すと、腰から小さなナイフを取り出す。ギラリと怪しく輝く刃に映された

 

「何をしている」

しかし、そこに水を差すような声が届く。男が顔を上げると、視線の先には暗がりに立つ僧の姿があった。

「なんだテメェ……ロケット団の俺たちに何の用だ」

「我が名はショウガ、旅の僧である。貴様ら、一体ここで何をしている?」

「それを俺らが答えると思うか?」

額に青筋を浮かべて尋ねるショウガに、男は笑って返す。

 

「……このひとたち、ヤドンのしっぽを…………おにげください」

しかし、ミコトのか細い声が届きショウガが視線を動かすと、そこには多くのヤドンが、尻尾を失った状態で歩いていた。

 

「ヤドンの尻尾は高値で取引される食材と聞く……。よもや貴様ら、ヤドンの尻尾を乱獲し、高値で売り捌こうとでもいうのか!?」

「だったらどうする?」

「止める……!そしてその少女も、解放してもらうぞ!!」

悩みなど今は関係ないと、ショウガは勢いよく編笠を投げ捨てた。怒りに震える体は熱を帯び、激情に従い一歩前へと踏み出す。

「テメェのポケモンはたった1匹……それで俺達に勝てるとでもいうか!!ゴーリキー、やっちまえ!!」

「リッキィィィィ!!」

男が呼び出したのは、ゴーリキー。ゴーリキーは勢いよくショウガへと駆け出すが、ショウガは腰のボールに手さえも掛けない。

「エイヤァァァァ!!」

ショウガは掛け声と共に袈裟を翻し、回し蹴りを放つ。それをゴーリキーは腕でガードするが、その表情は真剣なものになる。

「……おいおいマジか。俺のゴーリキーが警戒しやがった!コイツ、超人だ!」

「ただの超人でもここまでは出来るまい。私は仏門に入った後の修行で、人間の身でポケモンと戦う訓練を行ってきた。生身の人間は勿論、ポケモン相手でも簡単に負けてやると思うなよ?」

「バケモンがよォ……!ゴーリキー、【きあいパンチ】!」

ゴーリキーは拳にエネルギーを溜めるとショウガの顔面目掛けて打ちはなつ。しかしショウガはそれをしゃがんで躱すと足に回し蹴りをぶつけ、すぐに立ち上がるとよろめいたゴーリキーの鳩尾に正拳突きを叩き込み、ゴーリキーは表情を歪めて後退する。

「今だ!」

その合図でボールから飛び出したオドシシが男を【たいあたり】で跳ね飛ばし、ミコトを背中に載せるとショウガの背後まで走り去る。

「済まない、少しの辛抱だ」

ショウガとしてはオドシシを走らせて地上に向かわせたい所だが、ショウガの戦いで他のロケット団員達が警戒を始めてしまった。

 

「……グググッ!おのれぇ、【ばかぢから】!」

頭に血が登った男の指示でゴーリキーは全身に強烈なエネルギーを纏うと、ショウガに殴りかかった。流石にその攻撃にカウンターを合わせるのは無理だと判断、回避に徹する。振り翳される拳が袈裟を破り、布の破片が宙に舞う。回避を続けるショウガであるが、僅かに腹を掠った一撃に表情を歪めると、大きく跳躍し距離を取るも膝をつく。

「…………むぅ、流石に人間とポケモンでは差が大きいな」

ショウガは呟くと、痛みの引かない脇腹を撫でる。ロケット団からは互角に戦っているように見えても、ショウガとしてはかなり一杯一杯なのだ。

(オドシシで戦っても勝てん……。それに、技を見せれば素性を悪に明かすことになりかねんな。ならばいつものように、私が全霊を持って守るのみ)

いつだって、そうしてきた。寺に入る前も、入ってからも、ショウガは常にオドシシを守る側でいた。寺の方針としてポケモンを磨くよりも人間を磨くことに重きが置かれていたし、オドシシは希少なため守らなければとずっとやってきていた。今回だって同じこと。

「おいおい、コイツ厄介だぞ。ランス様はどうした?幹部の力ならあっという間に片付けてしまえるだろう?」

男の言葉に他の下っ端が連絡を取るが、その下っ端の男は血相を変えて叫んだ。

「不味いっすよ先輩、ランス様が街中でスミレとぶつかったらしいです!!」

「スミレ!?これまた厄介なのが……!いや、でもコイツで良かった!コイツのポケモンはどうやら、そう大したことはないらしい!!」

ランスが戦闘中という報告に男は表情を引き攣らせるが、すぐに余裕を取り戻す。先程からポケモンではなくトレーナーが戦っている事実が、ポケモンの弱さを象徴しているからだ

「(幹部とスミレがぶつかった、つまり戦闘中……。なのに、私は下っ端すらも倒せない…………)だが、今はそんなことなどどうでも良いのだ。背後に倒れる少女、そして我が相棒……2つの命を守る、それ以上も以下もない。御仏に祈るだけでは変わらぬ現実、それを変えるのは、ただひたすらに人の力と行動……!!ならば私がやるべきことは、立ち上がりて戦い続けるということ!人、そしてポケモンへと救いの手を差し伸べるため敵を選ばず戦うことこそが、御仏の望む道であると信じて!!」

「クッセェ台詞、ありがとなぁ!!!!」

自分に言い聞かせるように叫び立ち上がると、男が叫び返す。そしてゴーリキーが疾走すると、その剛腕が唸った。ショウガはゴーリキーの右フックをしゃがんで躱し、立ち上がりざまのアッパーを顎に決める。そしてよろめき無防備な胴体に押し出すような蹴りを放つ。一歩後退するゴーリキーだが、すぐに突っ込むと逃げられないようショウガの肩をがっしりと掴んだ。

「……!?」

そしてそれに合わせるように下っ端の女が、拳銃を放つ。ショウガの足から鮮血が舞い、ショウガの足から踏みとどまる力を奪い去る。崩れたショウガにゴーリキーは笑みを浮かべると、首を後ろに逸らした。頭突きの用意だ。

(撃たれた!?そしてこれは……無念)

もはやこれまでか、とショウガは表情を歪める。そのまま逸らされた首が戻され、しかし瞬間でショウガの肩からゴーリキーの手が離れた。そのまま何かのエネルギーに吹き飛ばされるように横へと吹き飛ばされ、洞窟の壁へと突っ込みクレーターを作ることで停止するゴーリキー。

 

「お前……」

ショウガは、驚いた様子で目の前に立つポケモン……オドシシに視線を向ける。背後でいつの間にか【めいそう】を限界まで積んだか、限界まで能力を底上げしたオドシシが、【バリアーラッシュ】で突っ込みゴーリキーを弾き飛ばしたのだ。

「ブルルッ!」

「そうだ……その通りだな。それが私の弱さの根源だ」

勇ましく鼻を鳴らすオドシシにショウガは、弱々しく笑みを浮かべる。ショウガは結局の話旅に出るまでずっと、オドシシを箱入りの状態にしてしまっていた。それはオドシシを守ろうとする意識からではあるが、その弱さが原因でオドシシのレベルは低くバトルでは上手く行かずに惨敗、ギャラドスの一件やアルフの遺跡の一件では子供を守るべき立場にある大人が、逆に守られる状態になってしまった。つまるところショウガとオドシシは、本当の意味で対等なパートナーになり切れていなかったのだ。

「ブルッ!!」

ショウガの頬に自らの頬を摺り寄せるオドシシにショウガは目尻に涙を浮かべる。

「……そうか。お前は、私を守ってくれるのか」

その言葉に頷いたオドシシは、立ち上がったゴーリキーを力強く睨みつける。互いに守って、守られる。それがポケモンとトレーナーのあり方のひとつで、そう考えるとこの瞬間。ショウガとオドシシは、本当の意味で相棒となったと言えるだろう。

 

「さあ、行くぞオドシシ!!このバトルを勝利し、少女共々地上へと帰還する!!!!」

「ドッシィ!!!!」

オドシシは全身にエネルギーを漲らせ、ショウガはボロボロの姿という対照的な姿で、しかし同じように力強い表情を浮かべて並び立った。




11:45 タイトル変更
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