ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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質問とかはなるべく答えますが、感想欄自体は通知来たらチラ見だけしてすぐ閉じてます、すみませんが暫くお待ち下さい。自分でも想定以上に頭が冷えず困惑しているところです。元の状態に戻ったらまた本格的に感想の確認とかはさせて頂きます


第176話 強い人

 ロケット団が去った後、町には警察官が入り乱れ混乱の様相を呈していた。警官隊が周囲を警戒して展開する中、スミレはゲンガーをポケモンセンターに預けると、ショウガが入院している病院に来ていた。

「……にしても、ミコトだったんだ。無事で何よりだよ」

そうスミレが声をかけたのは、ミコト。幸いにもポケモンを奪われかけ自身も怪我する、以上のことは何も無かった。しかしこの一件で、ミコトは大きく心に傷を負ったようだった。

「私はいいんです……。少し怪我をしただけですから。それよりも、あのお坊はんはどうなさってるんです?あのお方が私を庇って、ポケモンはん達を取り戻してくれたんです」

怯えた表情を浮かべるミコトに、スミレは安心させるよう穏やかな声を掛ける。

「そんなに怖がらなくて大丈夫……。撃たれたのは足だし、脇腹も骨にヒビが入った程度だから。ちょっと血が流れ過ぎただけだし、問題ないってさ」

「そう、ですか……」

呟きながら俯くミコトに、スミレは小さくため息を吐いた。

「気に病むより、『ありがとう』って伝えてあげなよ。アイツにとっては、この上ない勲章になるからさ」

「…………はい」

未だ晴れない表情に対応を決めあぐねたスミレは立ち上がると、ミコトに背を向けた。

「この病院は全体に警察が配備されてるから安心して。……私も念の為、警察から許可を貰って6体以上のポケモン連れてるし」

そう言ってリュックから取り出したのは、ホーホーとネイティ、イワークが入ったボール。そしてスミレはそれ以外に、腰に5つのボールを付けている。

「それは?」

「ジョウトで捕まえたポケモンだよ。ホーホー、ネイティ、イワークが入ってる。でも、コイツらじゃあ不足だね。ロケット団を相手取るにはまだ足りないし、貴女も安心して眠れないでしょ。……だから、ちゃんと強い護衛を付けておく」

そう言ってスミレはボールをリュックに仕舞うと、腰に付けたボールのうち1つを取り出す。

「ディン」

ボールから光が伸び、出てきたのはフーディンだ。

「コイツは、もしもの時は【テレポート】で貴女を連れて逃げ出せる。そして何より、私のベストメンバーの一角でロケット団の幹部級とも戦闘が成立する強者だ、下っ端如きなら一掃できるよ。…………フーディン、お願いね」

「……ディン!」

怖がる子供を前に、自らのトレーナーにそこまで言われて臆病風に吹かれるほど今のフーディンは弱くない。力強い瞳で頷いた。

「流石。じゃあ、私は後始末の手伝いとショウガの様子を見に行かなきゃ」

「……あの」

「?」

「ありがとうございます。気を遣ってくださいまして」

「気にしないで」

ミコトの礼にスミレはなんでもないことのように返すと、ミコトが入る病室を出た。

 

◾️◾️◾️◾️

 ショウガの手術は簡単に終わったようで、ショウガを載せた担架が病室へと運ばれてゆく。

「やあ、スミレ。今回もまた巻き込まれたようだね」

それを見ていたスミレに声を掛けたのは、国際警察のハンサム。見た目こそ変わっていないが、スミレの目から見れば随分と短期間で変わっていることが分かった。

「……お久しぶりです。随分、強くなりましたね」

ハンサムの腰には6つのボールが取り付けられ、リーグのトレーナーのような気配を感じる。

「ハハハッ、まぁね。事態がどんどん進んでいく中で、私ももっと強くならなければ。上司や後輩に散々転がされながら鍛えて、それなりに強くはなったんだ。……それは兎も角、無事で良かった」

「キクコさんが来てくれて助かりました。ランスもまた、強くなってた。あのままでは、負けていたのは私です」

「そうか。……井戸の方も、ヤドンが数体持ち去られた。それは戦力として使うのだろうが、それとは別にヤドンの尻尾が大量に奪われた」

「高級食材。ブラックマーケットへの横流しですか?」

「ああ。売買による資金の確保が目的だろう。サカキの暴露と警察の裏付けによって多くの政治家やリーグ関係者が逮捕されたが、その裏で動いていたロケット団は奴らの息が掛かった裏ルートを支配下に納め、部下の人間や密猟などで得たポケモン、金などの財産を強奪し、今のロケット団は非常に余裕がある状況だ。そしてその資金が潤沢にある状況で、しかもヒワダタウンのジムリーダー、ツクシはレベルの低いポケモンを使う、言ってはなんだが脅威度の低いジム。幹部とその部下を派遣すれば十分に成功すると踏んでの大胆な作戦だった」

スミレの推測にハンサムは苦い表情を浮かべ頷く。

「…………舐められてるんじゃないですか?」

「そうだな。だから、ワタルは今カントーに戻っている」

「?……何を」

「カントーリーグ、ジョウトリーグの上位常連達に連絡を取り、リーグ負担でカントーやジョウト内に分散させて警備や取り締まりをさせるのがワタルの考えだ。昨今はロケット団を避けて行動していたポケモンハンターがジョウトに集まって活動し、ロケット団もまたジョウトへの本格的な侵攻を開始。遂にはジョウトの地元ヤクザも不穏な動きを始めている」

ハンサムの状況説明にスミレは思わず指で額を押さえ天を仰いだ。あまりにも治安が終わっている。

「他地方に援軍は?」

「ワタル曰く、もう打診したとのことだ。だが、ホウエンとシンオウが警察から精鋭を送ってくれるのと、アローラが資金援助をしてくれる以外は断られたよ」

「そうですか……。してくれるとはいえ、アローラ地方もあまり資金が潤沢とは言い難いですし」

「…………だが、これは地方政府の公式見解だ。ポケモンリーグ同士はポケモンを通じて絆を結び、その結束は非常に硬い。彼らも思うところがあるらしく地方政府との交渉を試してくれるのだそうだ。……ああ、そういえば。個人的な用事 " でジョウトを訪れたいと言ってくれるジムリーダーやチャンピオンが何人も出ていたな。関係のないことだが」

スミレが苦い表情を浮かべるが、ハンサムは対照的にニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「へぇ。……入国の目的は観光ですかね?」

「ああ、お気に入りのポケモンを連れて来てくれるのだそうだ」

ハンサムの言葉の裏側に、スミレも小さく笑みを浮かべた。

「それは良いですね、ちょうどお祭りが始まりそうですから。…………ああ、そうだ。祭りでもやるならシゲル、サトシ、ヒマワリの3人に連絡をお願いします。私も参加する気はありますが、1人で……いや、2人で最後までやれる気はしませんから」

「分かった、すぐに私から連絡しよう。……時間を取らせて悪かったね、そろそろ行くよ」

「お気をつけて。ちゃんと寝てくださいね」

「お互いにね、また元気で会おう。……睡眠時間に関しては、黙秘させてもらうが努力する」

スミレとハンサムは再会を誓って握手をすると、体を返して反対方向へと向かう。スミレはショウガが運ばれた病室へ、ハンサムは仕事の為病院の外へ。それぞれが、それぞれやるべきことをやる為に。

◾️◾️◾️◾️

 パチリ、と目を開ければ視線の先には白い天井が見えた。体を動かそうとすると、僅かな動き辛さに眉を顰める。

「動かないで」

涼やかな声が聞こえて首を動かすと、見知った少女の顔が映る。

「…………スミレ?」

「そ。記憶には問題ないようで何より。……ここは病院、貴方はロケット団との戦闘で負傷して運ばれたの」

少女……スミレの説明にまだ回り切らぬ頭を回転させて記憶を探る。

「そうだ、あの少女は!?ぐぅッ……!」

そして、思い出した。ロケット団との激しい戦いを、そしてその背後に倒れていた1人の少女の姿を。起きあがろうと勢いよく体を起こすが、鋭い痛みが全身を襲いベッドに倒れ込む。

「ミコトなら大丈夫だよ、そこまで怪我も重くないしすぐ退院できる」

そんなショウガにスミレは、あえてぼかした言い方をする。実際問題、心には大きく傷を負っており旅を続けるか辞めるかの瀬戸際ではあると考えているが、それをわざわざ詳細に伝えるのも憚られた。

「そうか……」

ショウガは晴れない表情を浮かべるが、それは犯罪に巻き込まれたことによる心の傷を考えたのだろう。スミレは知らないが、ショウガは事件の際に直接ミコトと会っている。その為、彼女の絶望を見たのだろう。

「今はそれで良いの、その先を考えるなら後にしなよ」

しかしその思考を中断させるようにスミレが言うと、ショウガは苦々しい表情ながらも頷いた。

「それで、私の怪我は完治までどのくらい掛かりそうだ?」

「5日もあれば退院だって。貴方本当に人間?」

スミレが呆れた様子で尋ねるが、初めてそれを聞いた時は流石に耳を疑った。ポケモンと素手で戦って怪我した挙句足を銃で撃たれて5日、というのは流石に早すぎる。

「人間だ、鍛えはしたが。しかし、5日か。貴殿の旅にとってはいらん足手纏いだな。…………よし、私を置いていけ」

「却下、異論反論も受け付けない」

ショウガは自分が足手纏いだとここで離脱する決断をするが、瞬間的に却下される。

「だが、すぐに次へと進むべきだろう」

「どうせ次の出発には時間が掛かるよ。だって、ヒワダジムもまだ挑んでないし」

「そんなの1日あれば終わるのではないか?」

「終わらないかもしれない。ポケモンのレベルは相応に低いだけであの人結構バトル上手いから」

そう言ったスミレだが、ショウガにはこの場所に留まる言い訳にしか聞こえない。ショウガとしては自分のことで立ち止まって欲しくないという感情があるのだ。

「しかしだな……」

「五月蠅い。……どの道、ここで私が貴方を置いていくという選択肢はないんだし、諦めてさっさと寝なよ」

 

「何故だ?何故置いていかない。……君は人が嫌いなのだろう?」

ショウガの言葉を遮ったスミレに対して、ショウガは直球の疑問をぶつける。スミレの表情が曇り、ショウガはしまったと言わんばかりの表情を浮かべる。

「……」

「すまない、口が滑った。……答えなくて構わない」

「別に。…………私はカントーでロケット団と戦って、負けて生死を彷徨った。その時は誰も助けに入ってくれる人なんていなくて、1人で戦って1人で負けて、ミコトと違って全身血塗れで。ロケット団の3人組が病院に運んでくれなきゃ死んでた」

「…………!」

スミレが吐き出した言葉に、ショウガは絶句し目を見開く。

「だからさ、ちょっと嬉しかったんだよ。……貴方が、かつての私と同じように追い詰められた子供を、命懸けで助けてくれる人だって知れたから」

「スミレ……」

「人間は悍ましくて醜い生き物だ。だけど、そうやって手を伸ばすことができる人の存在を、フィクションという言葉で片付けたくはない。偽善者なんて言葉に落とし込んで、知らないフリをしたくない。……だから。前に言ったこと、訂正しなきゃいけないね」

「……何をだ?」

ショウガは、そう聞くのがやっとだった。視線の先に座る少女は今までのショウガにとっては計り知れない闇を抱えながらも自分の遥か先を行く、強い少女だった。しかし今のスミレは弱々しく儚げで、触れるだけで消えてしまいそうに錯覚する。

 

「…………貴方は強いよ、弱くなんてない」

「……!」

 

「ロケット団を倒したのも、ミコトを守ったのも、貴方とオドシシが頑張ったから。……だから、助けてくれてありがとう」

「……スミレ」

ショウガは、ただスミレの名を呟くしかできなかった。両者の間に、沈黙が流れる。

「…………ごめん、そろそろ行かなきゃ。邪魔したね」

そう言ってそそくさと立ち上がるスミレの背中に、ショウガは布団の上に載せた拳を握りしめると声を張り上げた。

「これからだ!!」

「……?」

「これから私は……私とオドシシは、もっと強くなるぞ!君の隣で戦えるように、君に心から頼りにしてもらえるように!!…………だから、少しの間だけ待っていてくれ!傷を癒やして、必ずすぐに戻るから!!」

スミレに向かって、ショウガは改めて誓いを立てる。

「…………そ。頑張って」

そう言って背を向けると病室を出ていくスミレに、ショウガは驚いた表情のまま固まった。背を向ける直前に見えた表情が、嬉しそうに笑っていたように見えたから。

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