ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第186話 白鯨迎撃戦

 純白のホエルオーが地面に降り立つと、地響きと砂埃が周囲を襲う。それを腕で覆い隠しながら、トレーナー達は戦闘準備を始めた。

「……行くぞ、プテラ、トリデプス」

「お願い、スターミー!!」

「行ってこい、イワーク!!」

「頼むぞピジョット!マンタイン!」

「行けぇ、カメックス!」

「ピカチュウ、キミに決めた!!!!」

ジンがプテラとトリデプス、カスミがスターミー、タケシがイワーク、ハヤトがピジョットとマンタイン、シゲルがカメックス、サトシがピカチュウを繰り出す。

「……サトシ君。君のピカチュウは立ち回りの関係で弱体化しているが、とはいえ存在そのものが弱体化した訳じゃない。相手は攻撃を耐えるが避けられない鈍足、思いっきりやれば弱体化は関係ない筈だ」

「はい!」

ジンのアドバイスに、サトシは力強く頷いた。

「やれるものなら、やってみなぁ!!ホエルオー、【しおふき】!!」

「プテラ、【はかいこうせん】。トリデプス、【ワイドガード】」

「スターミー、【ハイドロポンプ】!」

「イワーク、【がんせきふうじ】!!」

「ピジョット、【エアスラッシュ】!マンタインは【いわなだれ】!」

「カメックス、【ハイドロカノン】!!」

「ピカチュウ、ゼンリョクで【かみなり】だ!」

空から降り注ぐ海水の雨を、それぞれの攻撃が迎え撃つ。しかしそれでは処理しきれない破壊の雨を、トリデプスの【ワイドガード】が阻んだ。しかし【ワイドガード】はアッサリと貫かれ、破壊力は大幅に削られたものの、躱したプテラ以外は少しではあるがダメージを受ける。アッサリと破壊された【ワイドガード】に一同は戦慄を隠せない。

「(……あれだけの技で減衰させてなお【ワイドガード】が破壊された。もしも受けていたら壊滅もあり得たぞ)【しおふき】は体力を削れば威力は下がる!攻撃を続けろ!!プテラ、【はかいこうせん】!トリデプスはもう一度【ワイドガード】だ!」

「スターミー、動きながら【バブルこうせん】!一撃食らうとヤバいから、いつでも逃げられるようにね!!」

「イワーク、【もろはのずつき】!出来るだけ削るぞ!!」

「ピジョット、【おいかぜ】!マンタインは【たきのぼり】!!」

「カメックス……。悔しいが、今は反動が抜けるのを待つよ。抜け次第、エネルギーをまた溜めよう」

「ピカチュウ、もう一回【かみなり】だ!」

トリデプスが防御を固め、ピジョットは味方の素早さを引き上げ、カメックスは【ハイドロカノン】の反動で動けないため待機。プテラとピカチュウが遠距離から自身の最大火力をぶつけ、その合間を縫ってスターミーが細かく攻撃をぶつける。真っ向から突っ込んだマンタインとイワークの一撃が、ホエルオーに叩き込まれる。

「良い攻撃だ。だが、それでホエルオーを倒せると思ったら大間違いだぜ!!ホエルオー、【なみのり】だ!!」

 

「ブォォォォォォォォォ!!!!」

ホエルオーが咆哮を上げると、大津波が襲いかかる。その波は接近していたイワークとマンタインに直撃し、押し流す。

「ほう……?これを受けてまだ耐えるのか。そりゃあ良い、カントー最弱なんてもう遠い過去らしいな」

そう楽しげに呟く黒髭の視線の先には、満身創痍ながらも体を起こすイワークの姿があった。

「くっ……、せめて状態異常にしてあげる!スターミー、【サイケこうせん】!!すぐに離脱!」

「迎え撃て、【ゆきなだれ】」

「避けて!」

カスミのスターミーが接近して【サイケこうせん】を放つ。ホエルオーが反撃の【ゆきなだれ】を放つも、身軽な動きでそれを躱した。

「オイオイ、やはり事前の情報なんてアテにならねぇじゃねぇか……!他の連中と比べりゃ強くはねぇが、自分の弱さを分かってる奴の動きをしてやがる。今の攻撃も、瞬間的に避けられねぇからこそ事前に動き始めたって訳か。これが出来るトレーナーを出涸らしなんざ、テメェに渾名を付けた輩の目は随分と節穴らしいなァ」

「それは……どうもッ!!」

「カメックス、【こうそくスピン】!」

カスミと入れ替わるようにシゲルのカメックスがホエルオーに突っ込む。【こうそくスピン】による体当たりが胴体に減り込んだが、ホエルオーはそれを気にも止めない。

「テメェは弱かねぇが……想像の範疇を出ねぇのが惜しい話だぜ!【じしん】!!!!」

激しい振動が周囲を揺らし、カメックスとスターミーは吹き飛ばされる。

「ピジョット、【ゴッドバード】、マンタイン、【いわなだれ】!」

続くのはハヤト。ピジョットが激しい光を纏って突進し、岩石の雨がホエルオーの頭に降り注ぐ。

「ひるみ狙いと最大火力の突撃か。……悪かねぇ手だが、俺様にゃあ届かねぇぜ。【なみのり】」

大津波が2体を呑み込み押し流し、マンタインが戦闘不能になる。

「イワーク、【もろはのずつき】」

しかし波が消えるタイミングでタケシのイワークが【もろはのずつき】をホエルオーの顔面に叩き込んだ。

「相性も悪りぃってのに、大した耐久だ。狙いも悪くねぇ。だが、だから勝てる訳じゃねぇんだよ。【じしん】」

至近距離での【じしん】を受け、イワークは戦闘不能となり崩れ落ちる。だがその巨体の隙間を塗って、影がホエルオーの頭上に躍り出た。

それは飛行するプテラと、その背中に乗ったピカチュウだった。

「プテラ、【ストーンエッジ】!!」

「ピカチュウ、【10まんボルト】!」

岩の礫と激しい電撃がホエルオーを襲い、ホエルオーは少し目を細める。

「ちょっとは効いたな。……だが」

「ブォォォォォォォォ!!!!」

その瞬間、プテラとピカチュウを激しい超音波が襲った。

「これは……【ハイパーボイス】か!?」

「違ぇな。コイツはホエルオーが意思疎通に使う、ただの超音波だぜ」

「なん……だと……?」

シゲルの疑問に黒髭が答えると、シゲルは愕然とした様子で呟く。

「ジン。テメェはこの中じゃあ一番強い、それも圧倒的にな。それは認めてやる。……だがそんなテメェよりも俺様の方がもっと強い。多対1のハンデがあっても、テメェが勝ちきれねぇのはそれだけの話だ」

「ぐっ……!退け、プテラ!」

「サトシ。テメェのピカチュウははっきり言って異常だ。ライチュウでそこそこ強い奴はそれなりに見るが、そこまで強いピカチュウとは戦ったことがねぇ。そもそも、そこらのトレーナーはある程度で諦めるのさ、ピカチュウじゃあこれ以上は強くなれねぇとな。そこをここまで鍛え上げた、それは褒めてやる。……だが、それはピカチュウという弱い種の中で異常に強いというだけの話だ。こうして強えポケモンも弱えポケモンも混ざり合った戦場では、ピカチュウという種族はそれだけで弱点、多くの強者が諦めた種族の壁だ。……弱くなった立ち回りをプテラに乗ることでカバーするのは良い案だが、ピカチュウで勝ちたいならまだまだ地力の強さが足りてねぇ。堕とせホエルオー、【ゆきなだれ】」

「躱せプテラ。回避はプテラに任せて、攻撃を続けるんだ」

「はい!ピカチュウ、【10まんボルト】!!」

「ピィィ、カァァ、チュゥゥゥゥ!!!!」

凄まじい質量の雪の塊が降り注ぐ中を、プテラは飛び回り回避する。そして回避に専念するプテラの背中から放たれたピカチュウの電撃が、雪を無視して突き進むと、ホエルオーにダメージを与える。

「行け、ブーバー!【ゆきなだれ】に向かって【オーバーヒート】!!カメックスは本体に【ハイドロカノン】だ!!」

「ピジョット、本体に【エアスラッシュ】!お前も行け、エアームド。【ラスターカノン】!!」

「頼んだぞ、サイドン!【ゆきなだれ】を相殺するんだ、【がんせきふうじ】!」

「お願いコダック、【サイコキネシス】!スターミーは【サイケこうせん】!!ホエルオーを少しでも妨害するわよ!」

シゲルのブーバーが放った【かえんほうしゃ】とタケシのサイドンが放つ【がんせきふうじ】がぶつかる。特に【かえんほうしゃ】は雪の冷気を急速に温め、雪を溶かす。その合間を縫って飛翔するピジョットの【エアスラッシュ】と、ハヤトが追加で呼び出した【エアームド】の【ラスターカノン】がホエルオー本体を急襲、近距離からの攻撃でダメージを刻む。続くカスミは遠距離からコダックの【サイコキネシス】とスターミーの【サイケこうせん】によって援護。ホエルオーにとっては微々たるダメージでも、不快感は与えられるし強力な味方の攻撃が決まりやすくなるのは大きな利点だ。

「ほう……流石に少し厄介だな。纏めてやらせて貰うぜ。【なみのり】!!」

しかし、大津波が全てを破壊した。プテラとピカチュウは躱すことに成功したが、ピジョットとエアームドは小さくないダメージを受け、サイドンは効果抜群の攻撃をまともに受けたことで満身創痍。シゲルのブーバーなど、効果抜群の技を受けたとはいえたった一撃で戦闘不能だ。

「……仕方ない、総動員で行くぞ。ラムパルド、マグカルゴ、オムスター」

「ニドキング、レアコイル!」

「ゼニガメ、フシギダネ、キミに決めた!!」

「追加で行くぞ。ドードリオ、バタフリー、ヨルノズク」

「頼んだぞゴローニャ、ダグトリオ!!」

ジン、シゲル、サトシ、ハヤト、タケシの順で新たにポケモンを繰り出す。上空に待機している船には大勢力が乗っているが、目の前の災害を倒さないことには全滅するしかない。

「トリデプスは【ワイドガード】、あまり効果はないかもしれんが、相手が悪いだけだ。気にせずやり続けろ。ラムパルド、【もろはのずつき】相手は全力でやっても壊れない壁だ。お前の全力全開を見せてやれ。マグカルゴ、【いわなだれ】、確実にぶつけろ。ひるみを引けたら最高だ。オムスターは【ねっとう】。火傷を狙え。……プテラ、【はかいこうせん】」

「ニドキング、【どくばり】!レアコイルは【10まんボルト】!!」

「ピカチュウ、【10まんボルト】、ゼニガメ、【ハイドロポンプ】!フシギダネは【ソーラービーム】だ!!」

「ドードリオ、【トライアタック】。バタフリーは【しびれごな】、ヨルノズクは【さいみんじゅつ】」

「サイドン、【はかいこうせん】!ゴローニャ、【がんせきふうじ】!ダグトリオは【あなをほる】!」

 

「ほう、総力戦のつもりか。……やってやろうじゃあねぇか。ならまず、邪魔なのを消し飛ばすぞ。【しおふき】、そんで【じしん】だ」

再び、破壊の雨が降り注ぐ。トリデプスの【ワイドガード】ももはや、このクラスの相手では殆ど役に立たない。特にハヤトのポケモン達は被害が甚大で、【しびれごな】や【さいみんじゅつ】が破壊されて決まらない。そしてそこにダメ押しの【じしん】である。この攻撃で満身創痍だったサイドンと地面に潜っていたダグトリオ、レベルの低いコダックが戦闘不能となった。しかし残るポケモンの技の技が次々に決まる。特にジンのポケモンは強力で、大きなダメージを刻みつけた。後先を考えない連続攻撃を受けたホエルオーは、流石に苦しげな表情を浮かべる。

「ガハハ……そろそろ潮時だな」

それを見た黒髭は作戦失敗を悟ると、しかし楽しそうに笑う。

 

「……今だ、全力の一斉攻撃を叩き込め!!!!」

「ゼニガメは【ハイドロポンプ】、フシギダネは【ソーラービーム】!!ピカチュウ、ゼンリョクで行くぞ!!【かみなり】!!!!」

「ニドキングは【ギガインパクト】、レアコイル、【かみなり】!!……カメックス、エネルギーチャージ120%!【ハイドロカノン】!!!!」

「ドードリオ、【トライアタック】、バタフリー、【むしのさざめき】、エアームド、【はがねのつばさ】、ヨルノズク、【じんつうりき】、ピジョット、【ゴッドバード】!!」

「サイドン、【いわなだれ】、ゴローニャ……済まん。【だいばくはつ】!!」

「スターミー、【ハイドロポンプ】!!」

「ラムパルド、【もろはのずつき】、攻撃に転じろトリデプス、【ラスターカノン】、オムスターは【ハイドロポンプ】、マグカルゴは【いわなだれ】。プテラは【はかいこうせん】!」

ジンの宣言で、全員が声を振り絞る。其々のポケモンが公式戦ルールの規定を超える火力をぶつけ、ホエルオーの体力を削りにかかった。そして。

 

「ブォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

ホエルオーの激しい咆哮が轟く。

「……くっ、まだ!」

「いいや、ここまでだ」

サトシが悔しげに呟くが、そこに黒髭が待ったを掛けた。

「ここまで?まさか、尻尾を巻いて逃げるつもりか?」

ジンはそう言って黒髭を睨みつけるが、黒髭はニヤリと笑う。

「そうとも。今日ばかりは俺様の負けだ、認めて退いてやってもいい。ホエルオーのあれはもう苦し紛れ、次攻撃を受ければ戦闘不能だ。だからここは素直に負けを認めて退却し、この遺跡にも手は出さねぇ。だからこの戦いもここで終わりにしようぜ。……それともアレか?俺様の残り5体を、ここから新たに相手取るつもりか?テメェのプテラ以外じゃあ、例え万全であろうがバトルを成立させられもしねぇぞ」

黒髭の指摘に、ジンは黙り込む。ホエルオー1体にここまで苦しめられたのだ。これ以上の戦いをしても、負ける未来以外になかった。

「……だが、退くという発言を信用できると?」

「信用して貰わなきゃ困るぜ。……俺様は、俺様の海賊旗に誓う。後はテメェが信じるか信じないかの話だ」

「…………分かった、信じよう」

ジンは悔しげに呟く。黒髭という海賊が、エドワードという男が、己の掲げる海賊旗に誓うと言ったのならばそれは真実だ。一度たりとも海賊旗への誓いを違えたことのない男であるからこそ、黒髭という海賊は世界に名を轟かす大海賊なのだから。

「何を悔しそうにしてやがる。むしろ誇れよ。テメェらは、俺様という敵から大切な遺跡を守り抜いたんだからよ。俺様よりもずっと弱い奴しか居ねぇのに、精々俺様とバトルがギリギリ成立するのがジンしか居ねぇってのに、よくもまぁ俺様の切り札を倒したもんだ。それ以上を今の時点で求めるのは、贅沢ってもんだろ」

「……それでもその贅沢を求めるのが、俺達ポケモントレーナーだ」

「違いない」

苦々しい表情のジンに対して、黒髭の表情は愉快そのものだ。

「いずれここの誰かか、あるいは別の誰かが、強くなってお前を倒す。……ありきたりな捨て台詞だが、精々首を洗って待っていろ」

「ガハハ……。楽しみにしているぜ。俺様としては、ここの連中はどいつもこいつも見どころがあった。コイツらの中から、俺様を超えるトレーナーが出てくることを願うがな」

そう言って、黒髭は視線をサトシに向ける。サトシはその視線に気づくと、立ち上がって黒髭を睨み返した。

「……オレに、何かあるのか?」

「そうだなァ。……おい、ピカチュウ使いのトレーナー。俺様はテメェを知ってるが、テメェの口から聞いてねぇ。テメェは、一体ナニモンだ?」

その問いかけにサトシは、毅然とした様子で立ち向かう。

「オレはサトシ。……マサラタウンのサトシ。いつか必ず、ポケモンマスターになる男だ!!!!」

「そうか。マサラタウンのサトシ、覚えておくぞ。そして俺様、黒髭エドワードの名を、その記憶に残しておくがいい!」

 

サトシの宣言にそう返して、黒髭はサトシ達に背を向けた。ホエルオーをボールに戻し、トロピウスを呼び出すと背中に跨る。

「オレは、必ずお前も超えるぞ」

「ならば海賊として、テメェが越えるべき高みとして、いつまででも待っていてやる。…………だから、いつか追いついて来るがいいぜ、未来のポケモンマスター」

飛び上がりながら、黒髭はそう言い残す。サトシ達は悠々と飛び去ってゆく海賊船を、ただ見ていることしか出来なかった。




因みに、ミュウツーと戦ってた方のサカキのサイドンはこのホエルオーとほぼ互角の戦闘力。スミレ戦のサイドンをノーマルブロリーとすると、サカキの切り札としてのサイドンは伝説の超サイヤ人のブロリー。
原作が長く続いてしまったばかりに、サトシ達が挑む壁はあまりに高く遠い


白鯨戦の戦闘力
黒髭(ホエルオーのみ)>ジン(総力)>>ハヤト≧タケシ≧サトシ(ジンのサポートで弱体化一時解除)≧シゲル>カスミ
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