ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
まぁ、自分の作品だし自分でルール作って良いかも?メッセージはメッセージが必要な場合のみ、みたいな
ジム戦での勝利から時は進み、スズキが主催する大会の日がやって来た。コガネシティにあるドームには大勢の観客が集まり、周辺では出店が軒を連ねる、一種の大きな祭りとなっていた。
「凄まじい熱気だな。……こういった大会の類は見物したことはないが、ここまで人が集まるのか」
個人用の控室の窓から会場となるフィールドを覗くのはショウガ、対するスミレはボールを選びベルトに取り付けている。
「リーグ並みだね、私もこんなに集まるのは予想外。まぁ、開催者が開催者だし、私達が知らない間に結構宣伝とかも回ってたみたいだし」
「そうか。……しかしスミレよ、勝つ見込みはあるのか?」
「正直、あんまりない。対策がどこまで刺さるかによるけど、基本的に真っ向勝負では向こうに地力も経験も分がある。でも、私の負けという予定調和をどこまで崩せるのかで見ている観客にとっての大会の楽しさは確実に変わる。……まぁ、観客がどうであれ。私は全力を持ってこの大会を勝ちに行くよ」
今回、ジョウト組は当然不参加だ。この場で出すにはあまりにも弱いのである。そのため今回は、ショウガに預けてボール越しに先輩達のバトルを観戦して貰う。そして、ニドキングもまた不参加だ。これは群れが住む森でちょっとした縄張り争いがあっているのでその関係である。リーグからの報告だとただ単純にポケモンの群れ同士の問題で、人間は一切介入していない問題だというので安心だ。なので、今回挑むメンバーはカントーのメインパーティー6体とサファリゾーン組、その中から対戦に応じてメンバーを変える。
「スミレ選手、ご準備をお願いします」
「……はい」
そう言いにきたスタッフに向かって頷くと、スミレは大きく深呼吸をして歩き出した。
「スミレ」
「?」
「頑張れ、応援しているぞ」
「ありがとう。……いってくる」
ショウガに向かって引き攣った笑みを浮かべると、スタッフに着いて歩き始めた。
◾️◾️◾️◾️
『それでは、第1回スズキリーグ開会式を始めさせて頂きます!今回開会式かつAリーグ実況を務めさせて頂きますグルーです!!そして』
『開会式、及びAリーグ解説を務めさせて頂きます、カントーはタマムシジムのエリカです』
実況の声と、解説に呼ばれたらしいエリカの声が聞こえる。
『まず、ルールをご説明しましょう!総勢8名のトレーナーが4人ずつのリーグに分かれて3対3の総当たり戦を行います。そしてその中で勝ち数や残った手持ちの数を基準に順位を付け、最後は2つのリーグで同じ順位同士がフルバトルを行う、という風に行います!!そしてこちらはAリーグ、もうひとつのBリーグは別会場で行わせて頂きます!』
『Aリーグ、Bリーグ共にカントーリーグ優勝者のスズキ氏が厳選した強者ばかりですからね。……どちらのリーグも、つまらないバトルにはならないでしょう』
エリカの言葉に、会場は期待で湧き上がる。一方のスミレは、それがエリカからの期待にも聞こえて大きく深呼吸。そして、トレーナー達が集まる部屋の扉を開けた。
今回は、カントーリーグのような選手紹介は行わない。精々会場のモニターに画像を出して実況と解説が話す程度だ。なので主催者のスズキは、個人の控室とは別で全員が集まるように専用の部屋を設けているのである。スミレが扉を開けておずおずと入ると、数多の視線が突き刺さる。といっても嫌な視線はひとつもないので、スミレには緊張以外が湧いてこないのがありがたい話なのであるが。
「やあ、スミレさん。来てくれてありがとう」
「……こちらこそお呼び頂きありがとうございます」
そう言って手を差し出したのは主催者のスズキ。スミレはスズキと握手を交わし挨拶をする。
「おっ、来たなスミレ。リーグが別なのが残念だが、決勝でやれるといいな!」
「特訓はしてますので、あわよくば勝たせて貰いますよ」
続いて声を掛けてきたのはホウセン。大きな体を屈めるとスミレの小さな頭を雑に撫で回す。
「スミレさん、お久しぶりです。……貴女との再戦、願っております」
「はい。あれから対策は色々と練ってきたので、是非とも」
次に声を掛けたのはユウキ。力強く輝く視線を向けられ、スミレもまた力強く頷く。カントー勢4人は2人ずつで分かれ、スズキとスミレ、ホウセンとユウキが一緒のリーグだ。
「あらあらうふふ……」
そう言って穏やかな笑みを浮かべるのは黒いドレスに魔女のように鍔の広い帽子を被った30代前半くらいにも見える女性。彼女の名前はリコリス、エンジュシティで雑貨屋を経営しながらもトレーナーをやっており、魔女というコンセプトで組んだパーティーでジョウトリーグベスト8まで行った実力者だ。
「ワハハーッ!10歳の若さでその強さは見事なモンだ、戦うのが楽しみだぜぇ!!!!」
そう大声で笑うのは、タイゾウ。普段は工事現場で親方をやっており、兼業でトレーナーをやっている男だ。そのバトルスタイルはじめんタイプやいわタイプ、はがねタイプを使った豪快なもので、男性のファンから厚い支持を受けている。
「…………」
トレーナー達を黙って見渡すのはキョウイチロウ、現役の刑事だ。凄腕のトレーナーから刑事になったという珍しくない経歴ながらも、未だにリーグトレーナーと刑事を兼務している珍しい人物で、冷静な性格と冴え渡る頭脳を活かし数々の事件を解決してきた名刑事である。
「ひょほほほほ、しかしまぁなんとも癖が強いトレーナーばかり集めましたなぁ」
そう笑って辺りを見渡すのはドクダミ。医者と兼業でトレーナーをやっている60歳にもなる老人だ。枯れ木のような体に不適な笑みを浮かべる姿は怪しくて仕方がないのだが、その割に実力も子供の患者からの人気も高い名医である。
しかし、ドクダミの言うことは参加者の誰もが否定できないことであった。大企業経営のジェントルマン、ステレオタイプのヤンキー、チャイナ衣装の武道家、妙に強い10歳児、魔女のような格好をした雑貨屋店主、声の大きい土木作業員、現役刑事、見るからに怪しい医者。見事なまでに個性しかない集団である。しかもタチが悪いのが、大会未参加者にもピエロやら妙に強い10歳児プラス3人だとか居るので、実力者が増えれば増える程個性の塊が集まってくるのである。
「まぁ……そうですなぁ。しかし、ここにお呼び出来る基準を満たした強いトレーナーは、誰も彼もが一癖も二癖もありましたね」
そう言って苦笑いを浮かべるスズキに、各々が知っている知人トレーナーの顔を思い浮かべて納得したように頷いた。スミレもまた同様である。直近にとてつもなく強いピエロに叩きのめされた経験もあってか、スミレの表情は少し悔しげではあったのだが。
「そういえば、そろそろですか?」
ユウキが尋ねると、スズキとドクダミ、そしてスミレが頷いた。こうして集まっているのは顔合わせもあるのだが、開会式で少しだけ出番があるからである。のんびりとした様子で立ち上がった選手達は、様々な表情を浮かべている。スズキやドクダミ、リコリスのように穏やかな笑みを浮かべている者。スミレやユウキ、キョウイチロウのように精神を落ち着かせている者。ホウセンとタイゾウのように気合を入れる者。だが彼らに共通しているのは、それぞれの表情の奥に見え隠れする闘志であった。ここで勝ったら賞金こそあるが、しかしカントーリーグのような公式大会ではない。しかも犯罪者の牽制という目的を持つ以上参加選手は皆仲間だ。しかし、それでもライバルとなる周りのトレーナーに負けたくないのがポケモントレーナーの性というもの、幾つになっても変わらない本質であった。
「さあ、参りましょうか……!我々の宣誓へ」
そう言ってスズキが歩き出すと、参加者達はそれに続いて歩き出した。
『それでは最後に、選手宣誓!全選手、入場です!!!!』
実況の叫びに、観客席が一気に湧き立ち、ショウガは観客席で拳を握った。ショウガは現在、スミレの誘いに乗ったギバラとミコトの2人と並び、観客席で開会式を眺めていた。因みにシゲルやヒマワリと出会い、その関係でサトシ一行とも知り合ったので彼らも隣に並んでいる。開会式が終われば、彼らはスミレの試合がない間を見計らって大会未参加のリーグ上位トレーナーが行うバトル講習会に参加するらしい。因みにショウガも、スミレの試合がないタイミングで行こうと考えている。
全選手入場、と言われて約20秒、しかし一向に出てこない選手達に観客席がざわつき始めた頃。凄まじい突風が会場に吹き荒れた。
「……ッ」
「この風は!」
「成程ね」
その風にヒマワリ、サトシ、シゲルが反応する。ギバラは顎を撫でながら笑みを浮かべ、タケシは感心したように頷きカスミは歓声を上げ、反応の遅れたショウガとミコトは6人が見上げた空を見上げた。
「あっ……!」
ミコトが、驚いた表情を浮かべる。上空に風が集まり、その集まった元に居た影が、凄まじい風を吹き荒らしながらも着地した。ドラゴンタイプのポケモン、カイリューだ。その背中にはスズキが乗っており、スズキはカイリューから降りると両手を広げて一礼をする。そしてその開いた両手を叩いた瞬間、トレーナーとその相棒ポケモンが瞬間移動をするように現れ、フィールドに並んで立っていた。ホウセンとオコリザル、ユウキとサワムラー、スミレとフシギバナ。リコリスとムウマにタイゾウとドンファン、キョウイチロウとヘルガー、そしてドクダミとマタドガス。それなりにバトルを嗜んでいれば見るだけで分かるほどの強さに鍛えられたポケモン達が、それを従える強力なトレーナーに連れられて立っていた。因みにこの演出は、立ち位置の座標をあらかじめ覚えさせたリングのバリヤードが【サイドチェンジ】を使い、フィールド内にわざと置いていた石ころと置き換えたというものである。
「くぅ……オレも立ちたかったなぁ」
サトシが悔しげに言うと、シゲルが肩をすくめた。
「まぁ、弱体化をどうにかしつつ次を待つんだね。そればっかりはどうにもならないだろう」
「そうだねー。でも、4人全員で同じ舞台に立つのはやりたいね」
「出来てジョウトリーグだね。……スミレだけに先を行かれる訳にはいかないし」
「……だな」
「うん!」
ヒマワリが願望を口にするとシゲルがそう言い、ヒマワリとサトシも頷いた。それを横目に見たミコトは、ギバラにキラキラとした視線を向けた。
「……なんでぇ」
「お父様……。うちもなっておりましたがトレーナーさんというのはこうも輝いて見えるのですね」
「ふん、ああいう奴からも折れる奴と折れねぇ奴は出てくるもんだぜ。何度立ち上がったって、最後に折れたら全部が終わりだ」
悪い笑みを浮かべるギバラに、ミコトは困ったように笑った。
「でもお父様、お父様も嬉しそうですよ」
「ふん……。どの時代も、どうしようもねぇ馬鹿が時代を創り、世界を変える。そんな馬鹿は厳しい現実に晒されるが、俺はそういうのは嫌いじゃねぇのさ」
そう呟くと懐からタバコを取り出すギバラ。しかしその手を、ミコトはにこやかに押さえつけた。
「お父様、場内は禁煙です」
「むむむ……」
ぐしゃり、と箱を握りつぶされたギバラは、ゲンナリとした表情で懐へと戻した。
そんなことをやっていると場内の歓声が収まり、会場の中心ではスズキが一歩前に出る。
『皆様、本日はご足労頂きありがとうございます!私はスズキグループ会長をしておりますスズキ、と申します。今回この大会を開くに当たって、ひとつ宣誓をさせて頂きましょう。……今、ジョウトは未曾有の危機に晒されております。ポケモンハンター達の潜伏、ロケット団や黒髭など有力な反社会的勢力の侵攻。しかし、我らもやられてばかりではおられまい。……私は各地方のチャンピオンと協議した上で勧誘と署名を行い、それら犯罪者に対抗する組織を立ち上げた。その名は『アベンジャー同盟』!その総勢はなんと1万名、全てが我らの意志に同調し、人格や経歴共に信頼に足ると判断された者達だ!そしてこの1万名もの戦士達が、この地方を守る為に力を蓄え牙を研いでいる!』
因みに、この同盟には保留というものがある。これは経歴や本人の意思などに問題がある場合で、例えば人に合わせて参加しようとした場合などもその扱いにはなるのだが、スミレの知り合いだとヒマワリのみが保留状態だ。まぁ、ヒマワリの場合はミュウツーの一件が響いての経歴によるストップなのだが、人格や実力は申し分なくストップ自体形式的なものなのですぐに正式加入することだろう。
『そして私はこの度、『同盟』への参加を表明したトレーナーから私を含め8名を呼び寄せ大会を開いた……世界に同盟に所属する仲間達の力を誇示し味方の士気を上げると共にそんなトレーナー達に守られているのだと皆様にご安心して頂く。そして何処かに潜む薄汚い犯罪者共に、『震えて眠れ』と伝える為に!!…………本日別会場では同盟参加の実力者達によるバトル講習会も行われますので、同盟に興味のある方やバトルの腕を磨きたい方はそちらにお越しください。と、いうことで私の話は終わらせて頂きましょう。さあ、ここからは勇者達のバトルをお楽しみください!!スズキリーグ、開幕です!!!!』
そう言って一礼するとその瞬間にバリヤードが手を叩き、選手達はその場から消え失せた。そして誰も居ないフィールドに向けて、割れんばかりの喝采が轟く。それを耳に届けながらも、グルーとエリカは口を開いた。
『さあ、スズキ氏のお言葉を頂いたところで開会式は終了となります。Aリーグ、及びBリーグの開始時間は30分後となりますので、今のうちにお手洗い等お済ませください!……それにしても、同盟なんて初めて知りましたよ私』
『ええ、秘密裏に……。それこそ各地方のチャンピオンが参加者候補全員に直接会って交渉しております。信頼できる人間を選んでおりますので、外にこの話が漏れることはありません。私とそのジムトレーナー達も無論参加しておりますが、内通者は炙り出して捕らえたので現状のタマムシジムでは全員参加となっておりますね』
『ほうほう、私も興味がありますなー!』
『ふふふ。貴方、バトルが理論は出来ても実践がダメだと聞きましたよ。だから実況者になったと。『実況と信頼は出来ても、戦いが苦手なんじゃあ仕方ない』ワタルさんがそう言ってましたよ。……からっきしの腕じゃあ、同盟の参加は難しいですねぇ』
『なんだぁ、ガックシ』
エリカに笑いながら言葉で刺され、グルーはガックリと肩を落とす。それを聞きながらスミレは、1戦目の準備をしていた。
Aリーグの組み合わせは
第1試合 スミレvsタイゾウ
第2試合 スズキvsリコリス
第3試合 タイゾウvsスズキ
第4試合 スミレvsリコリス
第5試合 タイゾウvsリコリス
第6試合 スミレvsスズキ
スミレは1戦目から試合があり、相手はタイゾウ。真っ向勝負を得意とし、使うタイプもある程度決まっているので比較的やりやすい相手ではある。
「……対策はした。後は、これがどこまで行けるか」
スミレは誰も居ない廊下でそう呟くと、試合のあるフィールドへと歩き出した。
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