ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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こんにちは、黒雲涼夜です。第二話もよろしくお願いします。


第2話 旅立ちの日 中編

「博士〜‼︎ポケモンちょーだい‼︎」

フシギダネを貰い、さぁ旅に出るぞというところで、研究所の中に声が響いた。現れたのは、肩まである栗色の髪に、天に向かって伸びるアホ毛を持つ活発な雰囲気の少女ヒマワリだ。スミレは少し自分のテンションが一気に冷めるのを感じた。

「ん?あーー‼︎スミちゃん‼︎ポケモンもう貰った⁉︎」

スミちゃんとはスミレの渾名である。相変わらず大して仲良くない相手によくもこうグイグイ行けるものだ、とスミレは呆れと感心の入り混じった気持ちを抱く。そして朝っぱらから大変うるさい。テンションが上がるのは分かるが少しは落ち着きというものを持って欲しいものだ。

「うん。フシギダネを貰った」

「いーなー‼︎ヒマも早くポケモンほしー‼︎」

若干の不機嫌気味なスミレの様子を察した博士が、ヒマワリとスミレの間に割って入った。

「ほれ、ヒマワリ。ポケモンはそこにおるぞ?」

「え⁉︎あ、わーい‼︎」

ゼニガメとヒトカゲを視界に映したヒマワリが子供のようにはしゃぐ。

 

「うーん、決めた‼︎ヒマはヒトカゲにする‼︎」

 

スミレも人の事は言えないが大概早い。事前に決めていたのだろうか。

「事前に決めてたの?」

「いや?なんとなーく、この子かなって」

適当だった。だがスミレも運命なんてものに従っていたので今回ばかりは何も言えない。

 

「さて、2人にはポケモン図鑑をやろう」

そう言って博士が取り出したのはかざすことでポケモンの情報を見ることができる機械、ポケモン図鑑だ。このポケモン図鑑こそ4人のトレーナーを旅に出す本来の目的である。ポケモン達と出会うたびに記録が溜まり、それは博士の研究に利用される。野生のポケモンならではの姿は、フィールドワークでしか見られないものだが、博士ももうある程度歳をとっているので、あまり無茶もできない。とは言え、巷で彼は "スーパーマサラ人" などと呼ばれているほど、今も体力のある人物なのだが。

 

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

 ポケモン図鑑を貰った2人は、町の人達が見守る中、研究所の庭で向かい合っていた。ポケモン同士を戦わせる、ポケモンバトルだ。発端はやはりヒマワリ。初めてのバトル相手にスミレを指名し、スミレもそれを受けた。

 この世界のポケモンバトルについて、軽く説明しておくとしよう。この世界では、バトルスタイルは両者の合意によって決められ、技は基本的に4つまでしか覚えられないが、伝説や幻のポケモン、また一部個体はその制限に当てはまらないので、それらのポケモンも一律4つ制限。賞金は自動的に貰えるシステムだ。10歳になり、トレーナー資格が、もしくは10歳未満でも特別な許可を得て準トレーナー資格がトレーナーカードとして貰えるのだが、その時に" 短パンこぞう" や、" エリートトレーナー" などの称号が付与される。トレーナーとして成果を挙げれば、それ相応に称号も進化してゆくのだが、基本的に称号に合わせて敗北時の罰金が変動し、野良であってもバトルの際は専用の端末やポケモン図鑑、ポケモンセンターの窓口などで両者のトレーナーカードを読み込み、ポケモン協会へとバトル開始を宣言する。そしてバトルを行い、勝った方の口座(トレーナー資格取得時に強制的に作ることとなっている)に賞金が自動で振り込まれるシステムだ。ちなみに、緊急事態を除いて手続き無しでバトルを行い、その場で負けた相手から賞金をせしめると法律違反となり、バレた場合最良だと厳重注意、悪くて逮捕、最悪の場合はポケモンGメンと呼ばれる警察組織が出てきて、生身の体に【はかいこうせん】やら【ギガインパクト】やら、やたらと殺意の高い技をブッ放される可能性があるため注意が必要である。

 

 さて、話を戻すと2人は今まさに、バトルを始めようとしていた。

スミレの図鑑を使って両者のトレーナー情報を協会に送り、宣言が完了。2人は距離をとって向かい合う。初めてのバトルは緊張するのか、スミレの表情は硬い。一方でヒマワリは能天気だ。いつだったか、スクールでホウエン地方のポケモンについて授業があった時に、ヒマワリがクラスメイトからルンパッパというポケモンに似ていると言われ、半笑いでキレていたのをスミレは思い出す。授業中ずっと寝ていたサトシが起きた時、カオスと化していた教室の雰囲気に戸惑っていたのが印象的だった。

(全く・・・馬鹿みたい)

スミレの気持ちは、少しだけ平常へと戻る。そして腰につけたモンスターボールを取り、小さくなっていたボールのボタンを押して元の大きさに戻し、ヒマワリを見据える。ヒマワリもそれに続き、ボールを構えた。

 

「いっけーーー‼︎カゲちゃん‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

「…フシギダネ」

「ダネッ‼︎」

 

「バトル 開始‼︎」

両者が揃い、今、バトルが始まった。

 

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

「フシギダネ【たいあたり】で突っ込め」

「ダネッ!」

まず指示を出したのはスミレ。フシギダネは勢いよくヒトカゲに向かって走り出す。

 

「カゲちゃん【ひっかく】で迎え撃って!」

「カゲッ‼︎」

続いてヒマワリも指示を出し、ヒトカゲは爪を輝かせてフシギダネ目掛けて走り出す。

 

「フシギダネ、突っ込みながら【なきごえ】」

しかしフシギダネの【なきごえ】によって怯んで動きが少し鈍り、

 

「カゲェ⁉︎」

「カゲちゃん⁉︎」

 

その体に、思い切りフシギダネの【たいあたり】が炸裂する。ヒトカゲは吹き飛ばされ、ヒマワリは大きく狼狽える。その隙を見逃すのは、スミレの流儀ではない。

 

「もう一度、フシギダネ【たいあたり】!」

「ダネェ‼︎」

 

フシギダネの追撃の【たいあたり】は、ちょうど起き上がったヒトカゲにクリーンヒット。再び地面を転がる。

 

「ど、どうしよう・・・カゲちゃん・・・」

もう一撃を決めて止め、と言うところでヒマワリの声が耳に届く。軽くパニックになっているようだ。それを見るスミレの表情に影が差し、唇を強く噛み締めた。だがそれはほんの数秒、すぐに無表情に変わる。ギャラリーもモモカ以外は気づいていなかった。

 

「フシギダネ、ごめん」

「ダネッフシー」

フシギダネにそれだけ伝えると、フシギダネは大丈夫、と言っているような表情で返す。

きっと相棒には伝わっていたのだろう。自分がこれから何をするかを。そしてその上で、確実な勝機を見逃してまでこの敵に塩を送るこんな非合理なことにつきあってくれる。全く、最高の相棒だ。博士の助言に従ったのは、決して間違いではなかったらしい。

 

「ヒマワリ」

「えっ⁉︎」

不意に声をかけられたヒマワリはビクリと反応する。

「今攻撃すればあなたに確実に勝てる。でもこの一撃分、見逃してあげる。だからいつまでもそんな情けない顔しないで、ヒトカゲを立たせなさい」

「な、なんで・・・?」

ヒマワリは予想外の言葉に少し言葉を震わせながら、そう返す。

「その顔が嫌いだから。まるで・・・」

能面のような表情でそこまで続けたスミレは、ハッと正気に戻ると、仏頂面になり、続きの言葉を発する。

「ごめん・・・今のは完全に八つ当たりだった。・・・でも、あなたのヒトカゲはまだ戦闘不能になってない。だからまだ戦える。違うの?」

「カゲッ‼︎」

ヒトカゲの声が響いた。

今度はヒマワリがハッとする番だった。ヒトカゲはまだ、諦めていなかったのだ。

「カ・・・カゲェ、カゲェェェェ‼︎」

 

ヒトカゲが立ちあがる。尻尾の炎をより強く燃やし、傷だらけの体で未だ無傷のフシギダネを睨みつける。

 

フシギダネは目つきを鋭くし、警戒を強める。

 

「フシギダネ【たいあたり】」

再びフシギダネが走り出す。ヒトカゲはもう立つのがやっと、あと一撃入れて仕舞えば、それで終わる。

 

「カゲちゃん、尻尾でジャンプ‼︎」

 

「・・・!?」

フシギダネの【たいあたり】を尻尾で地面を叩き、飛び上がることでかわし、フシギダネとスミレは反応が遅れる。

「カゲちゃん【ひっかく】‼︎」

「カゲェ‼︎」

ヒトカゲの【ひっかく】が、フシギダネの額の部分に炸裂し、フシギダネはダメージを受ける。

 

「まだまだ行くよカゲちゃん!」

「カゲェ‼︎」「もう一度【ひっかく】‼︎」

 

勢いに乗って突っ込んでくるヒトカゲ。一方でスミレとフシギダネは冷静だった。

「フシギダネ。右にステップして回避、そのままヒトカゲの横から【たいあたり】」

 

「ダネッ‼︎」

鋭く返答したフシギダネは真っ直ぐ突っ込んでくるヒトカゲを右に一歩ズレることでかわし、通りすがるヒトカゲの側面に、【たいあたり】を当てた。

 

「ヒトカゲ、戦闘不能。フシギダネの勝ち。よって勝者、スミレ‼︎」

 

審判をしていた博士のコールに、ギャラリーが湧き立つ。

 

「ありがとう・・・カゲちゃん・・・」

「お疲れ、フシギダネ」

 

両者ポケモンを戻す。

ヒマワリは目尻に浮かんだ悔し涙を勢いよく拭って、笑った。

 

「凄いよスミちゃん。・・・ヒマ、負けちゃった。だからもっと強くなる。スミちゃんに負けないくらい、強くなるもん‼︎」

 

「・・・そう」

スミレはそんなヒマワリの姿に眩しさを覚え、ふいっと目を逸らした。

 

 

「だからさ、スミちゃんの旅に、着いて行っていい⁉︎」

 

「・・・・は?」




2話目、ありがとうございました。
ポケモンの戦闘を書くのは初めてだったので、緊張しました。あとちょっと長くなってしまいました。
次回でやっと旅立ちます。本当に、本当に旅立ちます。
ちなみに、バトルの描写自体は長いですが話の中ではまだあまり時間が経っていません。サトシは多分まだ夢の中です。

今回も読んで頂きありがとうございました。感想、お気に入り登録等よろしくお願いします。

3月1日21:46 にらみつける→なきごえ に変更しました(フシギダネがにらみつけるを覚えなかったため)

3月2日18:20 ヒマワリの髪色、髪型を変更しました
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