ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第200話 スミレvsタイゾウ

 フィールドに出ると、周囲の歓声が自身へのプレッシャーとしてのし掛かる。スミレは詰まりそうな息を必死に吐き出すと、フィールド中央でタイゾウと握手を交わした。

「怖いか?」

「はい……まぁ」

「大丈夫だ、スズキさんに認められたってこたぁ、それだけ強いってこと。次に聞くのは、ブーイングじゃなくて歓声だぜ。……さ、勝っても負けても一度きり。気張ってこうぜ!!」

そう言って肩を叩くと所定の位置へと歩き出すタイゾウに、スミレは小さく頷き背を向けた。

『さあ、始まりましたスズキリーグ!改めまして実況のグルーと』

『解説のエリカでお送り致します』

『さて、1戦目のカードはタイゾウ選手とスミレ選手、エリカさんはどのような試合になるとお考えですか?』

グルーに尋ねられたエリカは、少し困った笑みを浮かべる。

『……そうですね。この試合、タイゾウ選手に厳しい試合になるかと思います』

『ほう』

『タイゾウさんの戦術は耐久力で耐え、パワーで押し切る。思いっきりのよいバトルが特徴的で、並の攻撃は押し返し並の搦手は叩き潰す強さがあります。……しかし』

『しかし?』

『スミレさんの戦術は、対策とペース崩しです。状態異常や奇策を使い相手のペースを崩すことで自分のペースに持ち込みます。そして何より、対戦相手を徹底的に分析し策を立てる頭脳と、その策を机上の空論で終わらせないだけの能力を持つ彼女のポケモン達。確かに経験こそ浅く、客観的に見れば大会全体でも最弱候補です。しかし、格上を狩れるだけの実力があるからこそ、ここに立っているという事実があります。スミレさんの策がどのようなものか、そしてどう刺さるかがバトルの鍵になるでしょう』

 

「これより、タイゾウ選手対スミレ選手のバトルを始めます!使用ポケモンは3体、時間無制限!……それでは、バトル開始!!」

審判の声に合わせて、2人は同時にボールを投げる。

「頼むぜ、ハガネール!!!!」

「……お願い、ギャラドス」

タイゾウが繰り出したのはハガネール、対するスミレはギャラドスだ。

『タイゾウ選手がハガネール、スミレ選手はギャラドスです。……エリカさん、このチョイスの意図はなんでしょう?』

『タイゾウ選手は、傾向的にハガネールを一番に出すことが多いですね。彼の場合、選出方法はポケモンのやる気など、戦術とは関係のない部分にあります。対するスミレ選手は、ハガネールを出してくると予測してのギャラドスです。みずタイプの技はハガネールに効果抜群、しかもギャラドスは種族としてかなりパワーがあるので、ハガネールにも対抗できるでしょう』

「ハガネール、【アイアンテール】!!」

「ハァァ、ガァァァ!!!!」

「……ギャラドス、【アクアテール】」

「ギャァアアアアアアッス!!!!」

ハガネールとギャラドスが凄まじい咆哮と共に輝く尻尾をぶつけ合い、衝撃波が放たれる。

「【かみくだく】」

「【アイアンヘッド】!!」

ギャラドスがハガネールの首筋に噛み付くと、ハガネールはそれを振り払って【アイアンヘッド】、額に重い頭突きを受けたギャラドスは頭から地面に倒れ込む。

「だったら、【ハイドロポンプ】!」

しかし反撃のハイドロポンプが追撃を加えようとしたハガネールを真っ向から弾き、ハガネールもまた地面に倒れる。

『まさにパワーとパワーがぶつかり合う激戦!これは目が離せない!!』

『純粋なパワーはギャラドスが負けていますね。本来ならそんなことはあり得ないしスミレさんの育成もかなり良いのですが、その点は真っ向勝負の名手であるタイゾウさん。流石の育成力ですね。……しかしギャラドスもまた強い。強力な遠距離攻撃の【ハイドロポンプ】と直接攻撃である【アクアテール】に【かみくだく】を合わせていますね。これは、【ハイドロポンプ】という強力な打点を避けるとギャラドスの土俵である近接戦に持ち込まれ、しかも尻尾と牙の攻撃は野生のギャラドスが縄張り争いを行うときに積極的に使う攻撃。……かなり細かく計算された技構成、頭脳派に恥じない実力ですね』

『なるほど、単純な殴り合いに見えても、どちらも実力者だからこそ成立するハイレベルなものなんですねぇ〜』

「ギャラドス、【たきのぼり】!」

「ハガネール、受け止めて【かみなりのキバ】だ!!」

水を纏って突進したギャラドスであるが、ハガネールはそれを全身で受け止めると【かみなりのキバ】をギャラドスの首筋に突き立てた。電撃が全身に走り、ギャラドスは大きなダメージを受ける。効果は抜群だ。

『決まったぁ、【かみなりのキバ】だー!!』

『相手に合わせて技構成を変える、それは誰でもやっていることですね。しかし、効果抜群の攻撃を避けずに受け止め、反撃に転じる。流石のスミレさんもこの度胸については想定外でしょう』

「【たきのぼり】で体当たり、【かみくだく】で噛みついて」

「【かみなりのキバ】!もう一発!!!!」

ギャラドスが【たきのぼり】で頭突きをぶつけると、のけぞったハガネールに【かみくだく】で噛みついた。しかしハガネールもすぐに【かみなりのキバ】で噛みつき反撃。両者は互いに噛みついた状態で膠着する。

「……【ハイドロポンプ】」

しかし、ギャラドスはその噛みついた状態で【ハイドロポンプ】を放った。至近距離からの高火力効果抜群の攻撃に、ハガネールの体は背後へと大きく押し出される。

「ハガネール、頑張れ!!」

「……これで終わらせる、【アクアテール】!」

水流を纏った尻尾を額に叩きつけられ、ハガネールは目を回して崩れ落ちた。

「ハガネール、戦闘不能!ギャラドスの勝ち!!」

『1体目はギャラドスの勝利です!』

『上手く弱点を突けたからこその勝利ですね。相手の手持ちこそ読み切っていましたが、かなり削られました。次の相手に、どこまでやれるか』

「さすがだぜ。……だが、負けるつもりはねぇ!!いくぜバンギラス!!!!」

「ギャァオオオオッス!!!!」

バンギラスが咆哮すると、フィールドには砂嵐が巻き起こる。

「ギャラドス、【ハイドロポンプ】」

「【ストーンエッジ】!!」

激しい水流と岩石の礫が入れ違いに命中し、その結果。

「ギャラドス、戦闘不能!バンギラスの勝ち!!」

『ギャラドス、ここでダウンです!』

『普通のギャラドスなら【かみなりのキバ】を2度も受ければ落ちますが、よく頑張りましたね。落ちることを予見し、遠距離からでも当てられる【ハイドロポンプ】のチョイスは良いと思います』

 

「……ごめん、ありがとう」

スミレはギャラドスをボールに戻すと、次に出すボールを手に取った。

「さて、次はどいつだ?」

「バンギラスの相手となれば、この子です。……行って、ラプラス」

次に出すのはメインパーティーの1体であるラプラスだ。

『次のポケモンはラプラスです!』

『相手がタイプをある程度縛っているので、スミレさんもタイプ被りの手を使ったのでしょう』

「バンギラス、【いわなだれ】!!」

「ラプラス、【なみのり】」

岩石がラプラスの上空に現れるが、岩石や砂嵐すらを押し流す大波がバンギラスを飲み込んだ。

『【なみのり】だー!!』

『広範囲での制圧力、そして上空から襲ってくる技への対抗。動きの鈍いラプラスだからこその作戦ですね。……そして、できた隙をスミレさんは逃さない』

「ラプラス、【こごえるかぜ】」

白く冷たい風が吹き荒れ、バンギラスを襲う。バンギラスは両腕で顔を覆って攻撃に耐えるも、水によって冷やされた体に【こごえるかぜ】はかなり効く。バンギラスは苦しげに体を震わせた。

「バンギラス、【はかいこうせん】!!!!」

しかし、反撃で放たれた【はかいこうせん】がラプラスに命中、ラプラスは表情を歪めてのけぞる。たった一撃で、防御自慢のラプラスが大きく削られた。

『【はかいこうせん】が命中、これは痛い!!』

『タイゾウ選手のポケモンは戦術が大雑把なのでスミレさんからしたら乗りこなしやすい相手ではありますが、しかし大雑把な分一撃が重い。スミレさんのメインパーティーで耐久型として活躍するラプラスですが、その体力が一撃で3分の1ほど減少しているでしょう。……しかし』

「【なみのり】」

激しい波が再び発生、バンギラスはその場に踏ん張って攻撃を耐えるが、体に刻まれたダメージは決して小さくはない。

『倒れる前に、倒して仕舞えばそれで良い。……タイゾウさんのスタイルでしたね』

「くぅ……!ピンチもピンチだが、やっぱバトルは楽しいぜ!!バンギラス、【ストーンエッジ】!!!!」

岩石の礫が飛び、ラプラスを打ちのめす。だが、すぐに放った反撃の【みずのはどう】もまたバンギラスに命中し爆発する。

『さあ、互いの攻撃が当たりました。このバトル、どう見ますか?』

『純粋な火力でいえばバンギラスが圧倒的に上です。ラプラスはスミレさんのポケモンではトップの防御なのに、もう体力が半分も残っていない。……しかし厳しいのは、スミレさんのスタイルはタイゾウさんにとって天敵レベルなことです。効果抜群の攻撃を打つことで足りない火力を補っています。効果抜群技の連続攻撃に沈められる前に、どれだけ相手を削れるかの勝負になりますね』

「バンギラス、【10まんボルト】!!」

「ラプラス、【こごえるかぜ】壁を作って」

バンギラスが電撃を放つと、ラプラスは氷で壁を生み出しそれを防ぐ。電撃は氷の壁を叩き壊すが、その奥のラプラスには届かない。

「ラァァ!!」

そして壁が壊されると、ラプラスによる無指示の反撃である【みずのはどう】が炸裂。しかしバンギラスは、効果抜群の技を追加で受けてもまだ立っている。

「うそッ……!?まだ耐える?」

スミレが思わず表情を引き攣らせると、タイゾウは頷いた。

「そう!俺たちは決して諦めない!諦めなくたって負けるときは負けるが、効果抜群食らった程度で負けないように鍛え上げたのさ!硬いポケモンと硬い意志を砕くなら、もっと強いの持ってこい!!バンギラス、【はかいこうせん】!!!!」

「……ッ!だったら、ラプラス!【なみのり】!」

橙色の閃光が大波を貫き、ラプラスを射抜く。押し寄せた大波がバンギラスを飲み込み荒れ狂った。そして波が引いた後にあるのは。

「バンギラス、ラプラス、共に戦闘不能!!」

「くぅぅ……、ここまでか。ありがとうバンギラス」

「ラプラス、ご苦労様……。あとは任せて」

『さあ、これで互いの手持ち数は互角!残るは1体のみとなりました!!』

『ここまで来ると、次のポケモンは予想しやすいですね。……特にスミレさんは』

『そうなんですか?』

『ええ。タイプ相性、そして相手の防御力や攻撃力。それらを考慮すると、あのポケモンを使わざるを得ません』

『それはつまり』

「いくぜドンファン!!!!」

「……後はお願い。フシギバナ」

『スミレさんにとっての最強かつ最高の相棒。……フシギバナを、出す以外の手がないということです』

エリカの言葉と同じタイミングで、タイゾウはドンファンを、そしてスミレはフシギバナを繰り出した。

「ヘェ、流石はエリカさんだ。でもま、出してくるよな」

「……そうですね。少なくとも貴方相手では、相性などの問題からフシギバナを使わないという手がありませんでした」

スミレは悔しそうに話すがそれもそのはず、スミレの手持ちにはタイゾウのドンファンに対抗できる戦闘力があると同時に有利が取れる戦力が、フシギバナくらいしか居なかったのである。

「そうか。……だったら、来いよ」

そう笑って、タイゾウは手招きをした。

「?」

スミレは呆気にとられて、首を傾げる。

「もう、そうする以外無かったんだろ?だったら、作戦なんて捨ててかかってこいよ」

「……そうですね。ええ、そうさせて貰います」

スミレはそう呟くと自嘲気味に笑う。そして、両者は同時に口を開いた。

「ドンファン!!」

「フシギバナ」

「「【じしん】!!」」

激しい振動が地面を揺らし、そして両者の間で激突した。

「行くぜドンファン、【ころがる】!!」

「【つるのムチ】、側面から叩いて」

ドンファンは体を丸めて転がるとフシギバナに向けて一直線に迫るが、フシギバナは【つるのムチ】を発動。2本の蔓を絡め編み上げると、太くしたムチで側面からドンファンを叩く。するとドンファンの【ころがる】は強制的に解除され、ドンファンは地面を滑る。

「だったら、【じだんだ】!!」

直前に技を失敗していると威力の上がる【じだんだ】を発動、激しい振動がフシギバナを襲い、フシギバナの表情に翳りが浮かぶ。

「……【ギガドレイン】」

しかしフシギバナには回復手段がある。フシギバナは【ギガドレイン】を発動、緑のエネルギーがドンファンを包み込むと、ドンファンから体力を吸い取り傷を癒した。

「やるなぁ、でもこれはどうだ!【ストーンエッジ】!!!!」

鋭い岩の礫がフシギバナを襲い、その急所を打つ。【ストーンエッジ】は急所を狙うに適した技であった。

「くっ……、【つるのムチ】」

「【ころがる】で躱せ!!」

蔓が唸りドンファンを狙うも、ドンファンは全身で転がることで攻撃を躱し、フシギバナの額に回転しながらの突進をぶつける。フシギバナは表情を歪めると一歩だけだが後退りをした。

「【ギガドレイン】」

「躱せ!!」

フシギバナは【ギガドレイン】を放つが、それを何度も食らうドンファンではない。あっさりと躱すと、追撃の一撃を叩き込む。

「くっ……!(パワー、スピード、どっちもあちらが上……。ここから挽回する手は、ひとつしかない!)」

スミレは苦しげに声を漏らすが、冷や汗を流しながらも大きく深呼吸をし、目を閉じた。

「だったらいくぜドンファン、もう一丁!!」

「…………【はなびらのまい】」

それを見たタイゾウが【ころがる】の継続を指示、ドンファンは勢いよく転がりながらフシギバナに突っ込む。その瞬間のことだ。ドンファンの眼前を、華やかな色が覆い尽くした。爆発的に生み出された花弁の嵐が、ドンファンを呑み込み押し流す。

『【はなびらのまい】!!』

『スミレさんの切り札ですね。……ここで勝負を決めるつもりでしょうか』

「叩き込め」

「【ストーンエッジ】!!」

ドンファンは【ストーンエッジ】を飛ばして花弁を幾つも撃墜する。このバトルにおけるタイゾウの最大の失敗は、ドンファンに【はかいこうせん】のような対空の強力な技を複数持たせなかったことだ。【じしん】や【じだんだ】は地面を伝う攻撃、宙を舞う花弁を相殺できないのだ。

「……ぶつけて」

スミレの指示で、花弁達がまるで小魚の群れのように動き始めた。そしてヤスリで物を削るように、ドンファンの全身をあちらこちらから攻撃、体力を削り取ってゆく。

『あれは……!!エリカさんの千刃花!?』

『の、発展途上版ですね。【はなふぶき】による千刃花は出来ますが、【はなびらのまい】では練習中です』

「だったら、こうするだけだ!【じしん】!!!!」

「ファオオオオオオン!!!!」

「……フシギバナ!?」

ドンファンが花弁に打ちのめされながらも大地に足を叩きつけると、地面を伝ったエネルギーがフシギバナを襲った。フシギバナはダメージを受けながらも必死な形相で攻撃を耐えるが、その代わりに花弁の支配力が僅かに緩み、ドンファンへの攻撃もまた緩んだ。

「今だドンファン、全力でぶつかれ!!【ころがる】!!!!」

「…………ッ!!」

花弁がまるで道を開くように吹き飛び、その道を勢いよく突き進むドンファン。その姿に、スミレは怯えたような表情を浮かべた。

『…‥決まりですね』

それを見てエリカは、口を開く。

『はい?』

 

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「……フシギバナッ」

ここで決めると気合を入れて叫ぶタイゾウと、怯えを浮かべた表情でフシギバナの名前を呼ぶスミレ。

 

『さあ、決着です』

エリカが微笑みを浮かべて言うと同時に、スミレの浮かべていた怯えが一瞬にして消えた。それを見たタイゾウは、自身が釣られたことを察し満面の笑みを浮かべる。

「あちゃあ……、こいつは」

「……貫け。旋花烈槍」

スミレが呟いた瞬間、全ての花弁がフシギバナの眼前に展開された。それも、まるで回転する槍のような形で。

『これはッッ……!一点集中攻撃!?』

『ええ、細かい制御が消耗で乱れるのなら、全てを単純な動きに集約して突破力を高めれば良い。おそらくスミレさんは、『切り札を突破されて焦っている』、というような表情を浮かべていたのでしょう。状況を考えれば、ここで進まないと何処から逆転されるか分からない相手。釣りという選択肢を考えたとしても、ここでの突撃は選ばざるを得なかったのです』

両者の攻撃が激突し爆発、辺りには濃い土煙が漂いフィールドの様子が外から確認できない状況だ。

『さあ、両者最後の一撃がぶつかりましたが!一体どうなったのでしょうかァァ!?!?』

グルーの絶叫が響く中、土煙が少しずつ晴れてゆく。そしてその先に、バトルの結末が映っていた。

 

「ドンファン、戦闘不能!フシギバナの勝ち!!よって勝者、スミレ選手!!!!」

「……はぁ、はぁ、はぁ」

轟く歓声に向けて拳をゆっくり振り上げながら、スミレはただ息を切らしていた。




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