ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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一部矛盾があったので加筆修正致しました。3/12


第201話 試合の狭間

 第1試合のタイゾウとスミレの試合は、スミレが勝利した。両者はポケモンをボールに収めると、フィールドの中央で歩み寄る。

「やぁー、参った参った!見事に作戦に引っ掛かっちまったぜ!!大したもんだぜ、完全に騙されちまったよ!」

心底愉快そうに笑うタイゾウに、スミレは複雑そうな笑みを浮かべた。

「少し、汚い気もしますけどね」

「はっはっは、汚いもクソもあったもんかよ!勝ちは勝ちだ、いやむしろあそこまで見事に罠に嵌めたんだ、なんの汚れもねぇアンタの勝ちだぜ!!」

「…………ありがとうございます」

力強くスミレの背を叩くタイゾウに、スミレは照れた様子で俯き呟いた。

「最初から対策されっぱなしではあったが。どうだ?俺は強かったか?」

「それはもう。……効果抜群技を畳み掛けてたのに、なんであんなに倒れないんですか?正直、あのバンギラスと戦ってる時なんて本気で焦りましたもん。なんですあれ、特撮怪獣じゃあるまいし」

タイゾウから尋ねられると、スミレはゲンナリとした表情を浮かべた。単純な戦闘力ではドンファンが一番強かったのだが、それはそれとしてバンギラスが一番厄介な相手ではあった。【なみのり】と【みずのはどう】を何発も叩き込み、水に濡れた体に【こごえるかぜ】まで叩き込んでいるというのに何度も立ち上がってくるのだ。対峙するスミレからすれば、特撮映画の怪獣みたいなものである。

「はっはっは、怪獣って言われんのは悪くねぇ気分だ!!……おっと、そろそろ行かねぇと次の試合が待ってる。楽しかったぜ、スミレ」

「こちらこそ、良い試合でした。タイゾウさん」

2人は硬く握手を交わすと、並んで歩きフィールドを後にした。

◾️◾️◾️◾️

「お疲れ様だ、スミレ」

ポケモンを回復担当に預けて会場を一度出ると、ショウガが1人で待っていた。その後ろには、ホーホー、ネイティ、イワークが並んでいる。

「あー、うん。勝ったよ、なんとかね」

そう言って芝生に座り込むと、ショウガは苦笑いを浮かべる。

「はははは、どうやらこちらが見ている以上に消耗したらしいな」

「……うん。強かったよアレ。なんで崩れないのって場面が何度もあるし、妙に火力の高い攻撃が飛んでくるしでどう突破するか延々と考えながらやってた」

「どうする?この後の試合は」

「ああ、スズキさんとリコリスさんの?……見たい、けど観客席は無理かな」

そう言うとショウガは笑った。

「では、選手の控室にモニターがある。そこからはどうだ?」

「そうだね。そうする。……それで、そこ3体はどうしたの?」

スミレが視線を向けると、ホーホーとイワークはキラキラとした目をスミレに向けていた。ネイティは、相変わらずの無表情だが。

「ああ、どうやら先輩達の戦いでやる気に火が付いたらしいのでな。……許可を貰えるなら、そこのバトルスペースで少しばかりオドシシやヘラクロス相手に特訓をさせてみようかと思うのだが」

「いや、駄目。……その代わり貴方は、試合見なくて良いから講習会に行って来なよ。バトル経験、必要でしょ」

スミレに言われたショウガは少し考える素振りを見せるが、やがて頷いた。

「…………分かった。ギバラ殿やミコトに話は通すが、講習会へ行ってくるとしよう」

「うん。私より強い人も居るから、そういう人に揉んで貰いなよ。ああ、それとジョウト組はそっちに連れて行ってあげて」

「いいのか?」

「他に預けられる人居ないでしょ。……それとも何?反社とその娘にポケモン預けろってこと?ミコトにはそれなりに情はあるけど、そこまで信用した訳じゃないからね?」

「いや……。分かっている。だがそういえば彼らも講習会か。では仕方ないな」

そう言ってポケモン達をボールに戻すと、ショウガはスミレに背を向けた。

「いってらっしゃい」

「ああ、行ってくる。……試合までに戻らんかもしれんが、すまんな」

「いいから。頑張っておいで」

そう言葉を交わし去ってゆくショウガを見送ると、スミレもまた控室へと歩き出した。

◾️◾️◾️◾️

 第2試合、スズキ対リコリス。スズキは様々なタイプを使用する万能型に対し、リコリスもまた万能型に近いがパーティー構成はコンセプトを持って作られており、系統はやや近いものがある。とはいえ戦術はスズキが質量攻撃を得意とする攻撃型で、リコリスはスミレのように搦手を多用するスタイルだ。

 バトルが始まると、1体目を繰り出す。出したポケモンはスズキがリザードン、リコリスがブラッキー。種族の強さとしてはリザードンが圧倒的に有利であったのだが、高い特殊防御と【つきのひかり】による回復、身軽さを活かした立ち回りに【バークアウト】による攻撃及び能力低下、【イカサマ】、【シャドーボール】による攻撃でリザードンを翻弄し撃破する。しかしスズキもやられてばかりでは居ないので、続くニドキングで【じしん】など物理攻撃を連打しブラッキーを撃破。しかしそれを受けたリコリスはここで相棒のムウマを出陣させ、【おにび】で火傷状態にしつつ状態異常の相手に使うと威力が倍増する【たたりめ】をメインウェポンに採用。更に【パワージェム】や【あくのはどう】の通常技での攻撃でニドキングを倒し切る。が、ここでちょっとした事件が起こった。最後のポケモンとしてスズキはカイリューを呼び出したのだが、対するリコリスがムウマを戻して呼び出したのはラプラス。しかも、初手で【ほろびのうた】を使ったのである。これには試合を見ていたスミレも驚いたし『これやって大丈夫なのか』と心配もした。しかし案外、会場に集った観客の多くはカントーやジョウトのトレーナーやその身内。目と目が合えばポケモン勝負を日常的にやっている修羅の民なので、彼らからすれば最後の1体に追い込まれる方が悪いし耳を塞げなかったカイリューが悪いので、スミレの心配とは裏腹にリコリスの一手には好意的であった。なんなら、スズキや解説席も愉快そうに笑っていた。楽しそうでなによりである。

 それは兎も角、最後の1体で【ほろびのうた】を食らったカイリューだが、ここからが強かった。強靭な耐久力と【れいとうビーム】、【ふぶき】の効果抜群技、【なみのり】の盤面制圧攻撃。これらを受けながらも【ドラゴンダイブ】を使用した近接戦闘や【りゅうせいぐん】による大火力技を使用しラプラスを撃破。続くムウマに【おにび】で火傷を負わされ、遠距離からの攻撃を連打されるもそれを力ずくで突破してムウマを後一歩まで追い詰めた。しかしムウマの変幻自在の立ち回りを突破しきれず戦闘不能。カントーリーグ優勝者が、初戦でまさかの敗北という結果に終わる。ここまでの試合ではスミレによる格上狩り、スズキの敗北という予想外の結果に、Aリーグの観客は大盛り上がりであった。

 因みにBリーグでは1試合目にホウセンとキョウイチロウがぶつかりホウセンの勝利、続いてユウキとドクダミが戦い、こちらはドクダミが勝利している。

◾️◾️◾️◾️

 会場から少し離れた広場。そこでは、リーグ上位経験者によるバトル講習会が行われていた。

「ピカチュウ、【10まんボルト】!!」

「ピィィィ、カァァ、チュウウウ!!!!」

サトシの指示でピカチュウが【10まんボルト】を放つが、弱体化した電撃はジンのプテラにあっさりと躱される。

「もっと集中、電撃を圧縮しろ。弱体化したのは経験であって、電撃そのものではない筈だ!精神の揺らぎに惑わされず、思うがままに放て!!」

「……ッ、はい!行くぞピカチュウ!!もう一回だ!!!!」

ジンの指導にサトシは悔しげな表情を浮かべながらも頷き、ピカチュウに指示を飛ばす。そしてピカチュウは、先程よりもさらに大きな電撃を放った。

 また、別の場所ではカズオのカビゴンとシゲルのカメックスが掴み合っていた。力負けしているカメックスは冷や汗を流しながら倒されないよう踏ん張っている。

「うぅぅん、カメックス氏は掴まれたら弱いですなぁ。カビゴン、【メガトンパンチ】」

カビゴンは片手を離すと【メガトンパンチ】を放ち、攻撃を顎に受けたカメックスは目を回し、仰向けに倒れ込んだ。

「くっ……、重い攻撃!でも、ここからどうすれば」

「うぅん、そもそもあんまり掴まれた時の技も多くないですし、近づけないのが常識では?」

「……そう、なりますね。技構成ちょっと見て欲しいんですけど」

「ほいほい」

シゲルはカメックスをボールに戻すと、カズオに図鑑を渡して技構成の相談を始めた。

 リザードンが空から落ちてくる。撃墜されたリザードンの姿に、ヒマワリは小さく悲鳴を上げた。

「グルルルル……」

「カゲちゃん!!」

唸りながらも立ち上がったリザードンにヒマワリは喜びの声を上げるが、対戦相手の金髪おかっぱの青年は大きなため息を吐いた。

「アカン。仲間が堕とされましたーいうたって、そんな動揺しとったら付け込まれてまうで。あんさん強いんやから、こんぐらいじゃ負けんって気張らんと」

「……すみません、ヒラオさん」

呆れた様子の青年に、ヒマワリは肩を落とす。ヒラオと呼ばれた青年はそんなヒマワリに頭を掻く。

「別に怒っとらんねん。落ち込んどったら、また足踏みが増えるだけや。……ほな、もう一丁やりまっせ。付き合うたれや、ヨルノズク」

「ホー」

ヒラオの指示にヨルノズクが鳴いて応え、ヒマワリは自身の顔を叩いて前を向く。

「……もう一回、お願いします!」

「グオオオオオオオッ!!」

「ええ顔や。スイッチ入ったな。……やり、ヨルノズク!」

そして無音の影が、リザードンの眼前に躍り出た。

 

「す、凄い……」

講習会にやって来たショウガは、その光景に感嘆の声を漏らした。見知った顔もあるが、多くの知らない顔が自身よりも上手な立ち回りのバトルを行なっている。もちろん初心者もたくさんいるが、ショウガの目には自分よりも強いトレーナー達の姿が鮮烈に映ったのである。そしてそれは、ショウガの向上心に火をつけることとなった。

「失礼、講習会への参加を希望したいのですが」

すぐさま受付に手持ち(オドシシとヘラクロス)を登録し、フィールドで最も空いていて、かつ自分と同程度のトレーナーとバトルしている講師の元へと向かった。講師をやっているトレーナー達は年齢は様々で、10代前半と見られる少女からもう70は超えているような男性まで沢山立っている。ショウガが向かった先の講師は、なんとも冴えないサラリーマンのような草臥れたスーツにビール腹と思わしき体型、バーコードのように禿げた頭のどこにでも居そうな中年男性だ。

「さて、そこの袈裟を着た君。……私を選んでくれてありがとうねぇ。私はタナカと言います。よろしくね」

「はい!私はショウガと申します、よろしくお願い致します!!」

周囲を興味深く眺めつつ待っていると声を掛けられ、ショウガは堂々と名乗りを上げる。それを聞いたタナカは汗をハンカチで拭いながらも頷いた。

「や、最近の若い子は元気だ。私なんてもう体にガタが来てしまって……なんて言ってる暇もないね。さ、バトルをしながら講習をするよ。1体目のポケモンを出してみて」

「はい!……頼むぞ、ヘラクロス!!」

「ヘラッッ!!」

タナカに促されて呼び出したのは、ヘラクロス。捕まえたばかりなので、上手く扱えるようになりたいからこその選出だ。

「ヘラクロス、いいねー。その個体、いつ捕まえたの?」

「それがほんの数日前で……」

「うんうん。つまりは歴戦の個体、と。そういう個体は自分に合ったスタイルを確立していたりするからね。たとえ非合理的でも、変に変えると反発を招く。まぁ要するに、変に弄らずその子のそのままでの扱いに慣れましょってことだね。……という訳で。おいで、ノコッチ」

タナカは訳知り顔で頷くとボールを投げ、ノコッチを呼び出した。

「……ノコッチ」

「そ。僕のポケモンさ。さ、何処からでも掛かっておいで」

「では、遠慮なく……。ヘラクロス、【メガホーン】!!」

「ノコッチ、【ドラゴンダイブ】」

ヘラクロスがツノにエネルギーを集め、ノコッチは全身にエネルギーを纏い激突、衝撃波が放たれた。

「勝たせて貰いますよ!私がなりたい、自分の為に!!」

「ははは、元気でよろしい。……じゃあ、僕も張り切っていくとしようかな」




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