ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第206話 順位決定戦

 Aリーグ、Bリーグの試合が全て終了した。まずAリーグの一位はリコリス、全勝だ。続く2位は2勝でスズキ、3位は1勝のスミレ。4位にはタイゾウである。ということで、スミレが続いてバトルするのは、Bリーグの第3位だ。そして順位を確認し、スミレは目を細めた。第一位はホウセン、続く2位はドクダミ。3位はユウキで、4位はキョウイチロウ。つまりだ。この後の試合は、ユウキとカントーリーグ以来の再戦という訳である。しかもあの時とは違う、6対6のフルバトルで。

「……対策なんてしてない訳がない」

あの大会で負けてから、スミレはかくとうタイプへの対策をしっかりとやってきた。こういう時に便利なのが仲間というもので、かくとうポケモンを持っているシゲルやヒマワリにはたくさん世話になったものである。モニターに目を向ければ、キョウイチロウとタイゾウのバトルが行われている。今はキョウイチロウのムクホークと、タイゾウのアーマーガアの空中戦が行われており、激しい攻防が繰り広げられて観客席も大盛り上がりだ。大会というのは祭りなので、本来スミレとスズキのバトルみたいなことは盛り下がるのであまりよろしくない。そこは、先程エリカから注意を受けた。その辺のメンタルコントロールは、スミレにとっても課題である。

「……スミレ」

パーティーを組んでいると、いつの間に来ていたのかショウガが近づいてきていた。

「ショウガ。……ごめんね、癇癪起こして。もう大丈夫だから」

「ああ。改めて言うが、私も要らん事を言って君の傷口を抉ってしまった。済まない」

ショウガの苦しげな表情に、スミレは小さく笑みを作る。

「……気にしないで。でも、あんまり言わないでよ。他人のブーバーに顔を焼かれたとか、スピアーけしかけられて身体中刺されて死にかけたとか、シンプルに人やその手持ちポケモンの集団から暴行を受けたとか。今でも夢に見るくらいには痛い傷跡なんだから」

服の袖を捲り、腕にもついた痛々しい傷跡を見せながら話すスミレに、ショウガは過去について少しでも話してくれたという感激など覚えていられなかった。小さな体一杯についた傷は、まさに癒えない呪い。

「それが君の持つ呪いか」

「うん。……丁度良い機会だからね。この大会が終わったら、貴方には話すよ。私が味わった、全ての地獄を」

「いい、のか?本当に?」

「良いんだよ。いつか話さないとって思ってたし。……まぁでも、今は試合に集中させて欲しいな。私にとって、このバトルは負けられないバトルなの。……あの人は、私がカントーリーグで負けた相手だから」

そう言ったスミレに、ショウガは苦しげな表情のままに頷いた。

「成程、リベンジマッチか。……それは邪魔する訳にもいくまい。頑張ってくれ」

「うん。ありがとう」

そう言ったスミレは、先程とはまるで異なり穏やかだった。しかし控え室を辞するショウガの内心は、想像よりもずっと重い呪いに不用意に触れてしまったという、後悔だった。

◾️◾️◾️◾️

 第一試合は、結局タイゾウの勝利で終わった。キョウイチロウはバランスの良いパーティーで挑んだのに対してタイゾウは耐久とパワー型。しかしその割にはメタグロスのように素早いポケモンもいるので、その点で差がついたと言っても良い。

 そして第2試合、5位決定戦はスミレとユウキのバトル。2人はフィールドに出ると向かい合った。カントーリーグの再戦、スミレにとっては特に落としたくないバトルであるが、今回は形式が違う。リーグ式のフルバトルで、使えるポケモンは6体。どちらかが3体戦闘不能になった時点で、休憩を挟むというものだ。

「それでは、スミレ選手対ユウキ選手のバトルを始めます!使用ポケモンは6体、時間無制限!!それでは、バトル開始!!!!」

審判の声に、スミレとユウキは大きくボールを投げる。

「……お願いします、カモネギ」

「行って、バタフリー」

ユウキの1体目はカモネギ、対するスミレは安定のバタフリーだ。

『さあ、始まりました5位決定戦、スミレ選手対ユウキ選手!初手はユウキ選手がカモネギ、スミレ選手はバタフリーです!』

『互いに準エース格を出しましたね。先陣は後に続く流れを作るので、一勝を取れるかは重要ですからね。カモネギは【いあいぎり】の三連撃を得意とする剣豪、対するバタフリーは【サイケこうせん】や【はかいこうせん】による急所狙撃を得意とするスナイパーです。射程ではバタフリーが有利、ですがカモネギも空にいる程度で何とかなる程度の強さではありません』

「カモネギ、【エアスラッシュ】」

「躱していつもの」

カモネギが葱を振るい風の刃を放つ。しかしバタフリーはそれを巧みな飛行で躱すと、【しびれごな】を撒き散らした。

「……!吹き飛ばしてください!!」

「風の制御を取れると思わないで下さい!【かぜおこし】」

ユウキの指示でカモネギは凄まじい速度で葱を振るい【しびれごな】を吹き飛ばすが相手はスミレのバタフリー。【かぜおこし】を操り粉を風に乗せると、その勢いのままカモネギにぶつけた。麻痺を受けたカモネギが、不快そうに顔を歪める。

「【エアスラッシュ】、五連」

だがそれでも、カモネギは強敵だ。【エアスラッシュ】を五発連続して放つと、バタフリーは一発を避けきれずにダメージを負い、もう一発が僅かに鈍った所に着弾、バタフリーは吹き飛ばされるが空中で体勢を立て直す。

『バタフリー、巧みな風の操作でカモネギを麻痺状態に!!しかしカモネギ、まるでへっちゃらとでも言うように【エアスラッシュ】五連撃、バタフリーはダメージを負った!!』

『バタフリーは飛行能力も一級。そこらのポケモンなら一撃当てるにも苦労するでしょうが、ユウキさんのカモネギならば麻痺を受けた状態でも可能です』

「狙撃・右肩」

スミレが呟いた瞬間、橙色の閃光が空を迸った。カモネギの右肩が撃ち抜かれ、カモネギは顔を歪めながらも【エアスラッシュ】を放つ。しかしバタフリー反動に身を任せて後ろに吹っ飛んだことで、その反撃は届かない。

『出たァァ!!バタフリーによる【はかいこうせん】の狙撃だァァ!!』

『スミレさんのバタフリーは一般個体に比べて物理、特殊両方における攻撃力が低いという特徴があります。一般運用するなら、間違いなく弱い個体と言えるでしょう。……しかしその代わりに得た才能が、この脅威の視力と正確性。そして、その低い威力をエネルギーを収束させることで威力を高めるエネルギー操作能力。これを複雑な軌道と一線級の速度で飛びながら出来るからこそ、バタフリーはエース格しかいないスミレさんのベストメンバーの中で、準エースかつ先鋒の立場を張れるのです』

「【サイケこうせん】」

「カモネギ、【いあいぎり】」

バタフリーの急所狙撃。それは額に向かって飛ぶが、その軌道を読んだカモネギの【いあいぎり】で切り払われる。

「【かぜおこし】、竜巻」

「【いあいぎり】、三連!」

バタフリーは【かぜおこし】を操作すると擬似的な竜巻を生み出しカモネギにぶつける。しかしカモネギは【いあいぎり】を三連で放つことで風を切り裂き正面突破、バタフリーに肉薄するとその体を弾き飛ばす。しかしバタフリーは体勢をすぐに立て直すと、むしろカモネギに接近した。

「近づいて……スパーク」

瞬間、バタフリーの眼前で凄まじい光が放たれた。攻撃を受けたのはカモネギは、突然の光に目が眩み、動きが止まる。

『な、なんだあの光はァァ!?カモネギ、思わず目が眩む!!!!』

『成程。【サイケこうせん】のエネルギー分配を操作したんですね。技としての威力を完全に消し、その分浮いたエネルギーを光に割いてより強い光を放つようにした。それを眼前で放つことで、擬似的な閃光弾にしたんですよ。エネルギー操作を得意とするバタフリーだからこその技術です。……しかし』

「バタフリー、全力で後ろに飛んで。【かぜおこし】で牽制」

烈風が吹き荒れ、カモネギの体は跳ね飛ばされる。バタフリーは勢いそのまま後ろに飛び、距離を取った。

「成程。バタフリーには瞼がないから、例え目に入る光を調節できる機能があったとしても、例えその場で視線を逸らしても、自身もほんの僅かに目が眩んでしまうから完璧な狙撃が出来なくなる。そういうデメリットがあるんですね」

ユウキの推理に、スミレは動揺もせず頷く。ここまで分かりやすいのだ、今更バレたところで想定内である。

「……でも、すぐに復帰できるのが強みです。【はかいこうせん】」

再び放たれた【はかいこうせん】。次に命中したのは、膝。ただでさえ麻痺を受けているというのに、更に機動力を削る作戦だろう。実際、麻痺でスピードが落ちた状態でもバタフリーとほぼ互角にやり合っているのだから、更に削っておくのは重要だろう。

「とはいえこちらも負けてはいられません!【エアスラッシュ】!」

しかし、【いあいぎり】の動作により高速で放たれた【エアスラッシュ】がバタフリーに命中する。スミレは、その命中精度に息を呑んだ。

「……それで当てますか」

「私達だって、カントーリーグから鍛えています。【いあいぎり】では、あの時カモネギを倒したゲンガーには届かない。……ならば、最速をもうひとつ作れば良いのです」

「…………そう簡単に出来てたまるか、常識的にッ!」

澄まし顔で話すユウキに、スミレは思わずそう呟いた。バトル業界は、こういった努力で常識を吹き飛ばしてくる変態がそれなりにいるのでタチが悪いのである。

「この技では一発限りです。……しかし相手はバタフリー、でしたらこの連撃は通じますよね!」

「来るッ……!【サイケこうせん】!」

「【いあいぎり】、五連!!」

瞬間、地面が爆ぜた。カモネギの姿がぶれ、凄まじい速度でバタフリー目掛けて突っ込んだ。

「……でも、問題ない。【はかいこうせん】」

しかし、である。忘れてはならないのはカモネギが麻痺を受けていること、そして膝に狙撃を受けて負担が掛かっていること。つまり、たとえそれがスミレの目で追えなくとも本領のスピードからは程遠い。【はかいこうせん】がカモネギの頭を撃ち抜き、そのついでに反動を利用し後退する。

「いいえ、まだです」

その言葉に、スミレの稼働して熱くなっていた頭が冷える。退却していたバタフリーの眼前には、【いあいぎり】が発動された状態の葱が迫っている。視線を向ければ、カモネギは既に倒れている。それはつまり、倒れる寸前に投げたということ。

「……くっ、これは!」

「【いあいぎり】」

そしてそのまま、回避の間に合わないバタフリーを斬り捨てた。バタフリーは目を回して墜落し、それを見届けたカモネギは満足そうな笑みを浮かべて目を回す。

 

「バタフリー、カモネギ、共に戦闘不能!!!!」

結果は引き分け。スミレは苦い表情を浮かべ、ユウキは真剣な表情でその結果を受け止めた。

『激しいバトルの結果は両者戦闘不能!』

『純粋なレベルや戦闘力ではカモネギに分がありましたが、上手く立ち回ったように思います。ですが、カモネギの意地に最後はしてやられましたね。私もあれは驚きました』

「……凄い」

「貴女こそ。やはり初手でカモネギをぶつけて正解でした。かくとうポケモンだったら、相性差をつけられて負けていましたからね」

ポツリ、と出たスミレの呟きに、ユウキは嬉しそうに笑って返答する。

「でしょうね。でも、そうなれなかった。……読まれていたのは、反省点。だったら、次に繋げて勝てばいい」

「レベルも高く、読んでいたというアドバンテージがあって尚勝てなかった。それは私の未熟な証。けれど、それを悔やむのは今じゃない」

スミレとユウキは、脳内の隅に反省を追いやると、次のボールを投げた。

「行って……、ナッシー」

「お願いします!カイリキー!!」

スミレはかくとうタイプに相性の良いナッシー、対するユウキはカイリキーを呼び出す。相性はスミレ有利、今度の読み勝負はスミレの勝ちと言えるだろう。

「ナッシー、【サイコキネシス】!」

「カイリキー、【ほのおのパンチ】」

サイコパワーの圧力と燃える鉄拳がぶつかり、2体目同士のバトルは幕を開けた。




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