ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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2025/8/8 18:28 加筆修正致しました。ご指摘ありがとうございます


第208話 順位決定戦:決着

 スミレは、平然とストライクをボールに戻すと、すぐに次のボールを手に取った。

『スミレ選手、落ち着いてますね』

『……そうですね』

実況のグルーは、それだけ言って意味深な笑みを浮かべるエリカに、不思議そうな表情を浮かべる。そしてその反応は、ユウキも同じようなものだった。

「一体何を……?」

「行って、ゲンガー」

漏れ出た疑問を遮って、スミレはゲンガーを呼び出す。かつても戦った強敵の登場に、ユウキは鋭い視線を向ける。

「ジャラランガ、【スケイルノイズ】!」

「影に潜って」

ジャラランガは激しい音波で攻撃するが、ゲンガーは影に潜って攻撃を躱す。

「……成程」

「【シャドーボール】……起爆」

スミレが呟いた瞬間、【シャドーボール】がジャラランガの眼前で爆発した。ジャラランガは思わず目を閉じ、隙が生まれる。そしてその足を、ゲンガーが掴んだ。

「【サイコキネシス】」

そして、至近距離からの【サイコキネシス】。ジャラランガは苦しげな声を漏らした。

『な、なんと!!【シャドーボール】がジャラランガの眼前で起爆、ゲンガーがジャラランガを影から飛び出し捕まえ、至近距離から攻撃した!!』

『【シャドーボール】は目眩しの煙幕になり、起爆の瞬間に【シャドーボール】が映す影は僅かに広がる。その瞬間、ゲンガーは自身の影を伸ばしてその影と繋げ、移動したのです。ジャラランガはかくとうタイプとドラゴンタイプの複合、効果抜群ですね』

「…………流石です」

「こっちの台詞ですよ。ビクともしない」

一撃目はゲンガー有利、しかしジャラランガは効果抜群技を受けて尚ビクともしていない。

「ジャラランガ、【ドラゴンクロー】」

「ゲンガー、避けて【どくどく】」

ジャラランガはツメを輝かせて突進するが、ゲンガーは上に飛び上がって躱す。そして【どくどく】を放つと、ジャラランガにもうどくの状態異常を与える。

『ジャラランガ、【どくどく】を受けた!!』

『ゴースト技が使えないので【たたりめ】を受ける心配はありませんが、【どくどく】によって受ける状態異常は猛毒。継続するたびにダメージが増えてゆくので十分に悪い状況です』

「……流石。ですが、簡単に負けてやりませんよ!【スケイルノイズ】、続けて【ドラゴンクロー】!!」

ジャラランガは鱗を震わせ音波を飛ばし、ゲンガーは苦しげな表情を浮かべる。そして攻撃を続けながらも、ジャラランガは突進する。そして技を打ち切ると【ドラゴンクロー】を発動した。

「【サイコキネシス】!」

ゲンガーは【サイコキネシス】を放ち、ジャラランガの動きを止める。

「突破して!!!!」

だが、それではジャラランガは止まらない。苦しげな表情を浮かべ唸りながらも、【サイコキネシス】の拘束を突破した。そして勢いそのまま、【ドラゴンクロー】でゲンガーを弾き飛ばす。

「チッ……、【シャドーボール】散弾、煙幕。戦術5を実行」

「ゲゲゲゲゲゲ!!!!」

ゲンガーは小型の【シャドーボール】を連続で放ち、フィールドには土煙が満ちる。

「くっ……!何が」

「ジャァァァ……」

ユウキは激しい土煙が満ちるフィールドに視線を巡らせるが、ジャラランガの呻き声にハッとした表情を浮かべる。

「……土煙、つまりフィールド全体が砂の影に覆われているということ!【スケイルノイズ】で吹き飛ばして!!」

「ジャァラァァァァ!!!!」

ジャラランガが咆哮し、放たれた音波が土煙ごとゲンガーを吹き飛ばす。

『ゲンガー、吹き飛ばされた!!』

『推測ですが目眩しをして、【サイコキネシス】で締め上げていたようですね。どう攻撃をされていたか分り辛いので音波で弾き飛ばしましたが、エネルギーを余分に消費していました』

(【スケイルノイズ】は高火力だけどエネルギー消費は多いし自分の防御力も下げる諸刃の剣……。そろそろ使えなくなる筈だけど、それまでにゲンガーの体力も尽きそう。どうにか……いや)

ジャラランガは態度にこそ出ていないが、毒のダメージは確実に受けている。だからこそ、ゴリ押しを決めることが出来たら有利を取れる。

「ここで決める……!ゲンガー、【サイコキネシス】4番!」

ゲンガーは【サイコキネシス】を発動するとジャラランガの足元が爆発、再び目眩しが決まる。そしてその隙にスミレがボールを掲げると、その中にゲンガーは撤退した。

「……しまった!」

ユウキは、スミレの作戦に気付き表情が険しくなる。相手の狙いは短期決戦、だがそれを成し遂げるのはゲンガーではない。

「行って、フーディン。【サイコキネシス】」

「頑張って下さい、【スケイルノイズ】!!!!」

ゲンガーよりもより強い【サイコキネシス】を放てる、フーディンだ。

フーディンの【サイコキネシス】がジャラランガを打ち、苦し紛れだが強力な【スケイルノイズ】がフーディンに命中する。両者に大きなダメージを与えるが、ジャラランガは遂に力尽きて倒れ伏す。

「ジャラランガ、戦闘不能!フーディンの勝ち!!」

ジャラランガが戦闘不能となり、スミレは大きく深呼吸する。強力なポケモンを最小限レベルの消耗で突破できたのはかなり好条件だ。

「戻って、フーディン。お願いゲンガー」

消耗具合を見ると次の相手にゲンガーはやられるが、それでも技のひとつでも叩き込む機会があるのだ。そこで最低限でも消耗させてからフーディンに替えて後は勝つだけ。

「……ふぅッ」

だが、目の前に立つユウキは全く諦めた様子はない。そして、スミレは彼女がここから逆転できるトレーナーであることを知っている。

(……後2体、何が来る?)

スミレが注視する中、ユウキはボールを投げた。

「お願いします……エレブー!」

「ブゥゥゥゥ!!!!」

飛び出したのはエレブー、でんきタイプのポケモンだ。これは恐らく、かくとうタイプが苦手とするひこうタイプに対する対策のひとつなのだろう。

「……ゲンガー、【シャドーボール】連打」

「エレブー!【10まんボルト】!!」

ゲンガーが小玉の【シャドーボール】を連続で放つが、エレブーはそれを【10まんボルト】で迎撃、爆炎が上がる。

「今」

スミレのその呟きが届き、ゲンガーは次の技を放つ。それは毒々しいオーラとなってエレブーを包み込み、猛毒を与えた。【どくどく】だ。

「くっ……!【かみなりパンチ】!!」

雷撃を纏った拳を叩きつけられ、ゲンガーは撃墜される。これで体力はゼロ、戦闘不能だ。

「ゲンガー、戦闘不能!エレブーの勝ち!!」

結果を受けたスミレは平然とした表情でゲンガーをボールに戻し、反対にユウキは困ったような表情を浮かべる。

『ゲンガーの置き土産が決まりました!!』

『【シャドーボール】の散弾を全て撃ち落とせる相手だからこその二段構えでしたね。しかし撃ち落とさないと攻撃を喰らった直後にどの道【どくどく】を受けていたので、迎撃した方がまだマシという判断でしょう。これに関してはスミレさんのやり方が上手いだけ、ユウキさんの判断はむしろ良いですね』

「……ですよね」

「正攻法でやれば私の方が弱いので、すみません」

「いえ、バトルとはそういうものですから。……むしろ、ここまで練って頂けて光栄ですよ」

どう考えてもピンチ、という状況でもユウキは笑っている。

「…………怖くないんですか?格下に負けることが」

スミレが尋ねると、ユウキは首を横に振った。

「貴女を格下、と思ったことはありませんが。……たとえ客観的に見て私の方が強いと思っても勝つ時は勝つし負ける時は負けるのがポケモンバトル。人を格下と見下す暇があるなら、私は更に己を高めるのみです。とはいえ相手が誰であろうと負けるのは嫌ですが、相手が想像の上を行くならば更にその上を行こうと燃えるのが武道家というものですよ。さあ、次を出して下さい」

真剣な目を向けるユウキに、スミレは小さく嘆息した。今の自分に、そういう考えはできない。そこまで真っ直ぐな目は向けられない。けれど、真っ直ぐでないからこそ掴める勝ち筋はあるのがポケモンバトル。そして勝ち筋は、既に見えていた。

「勝ちにいくよ、フーディン」

「……ディン」

飛び出したのはフーディン。今回のバトルではかなりの活躍をしている。

「エレブー、【10まんボルト】」

「フーディン、【テレポート】」

エレブーは体から電撃を発し、フーディンは【テレポート】を発動するとエレブーの背後に回り込む。しかし【10まんボルト】の電撃は、背後に飛んだフーディンを焼いた。スミレの目が驚愕に見開かれる。

『【テレポート】の動きを予測した!?』

『……生で見せすぎましたね』

「フーディン、細かく【テレポート】して【サイコカッター】!」

「全方位に【10まんボルト】」

フーディンはそれを受けて【テレポート】を連続使用、【サイコカッター】を真上から放つがエレブーは【10まんボルト】を全方位に放ち、

【サイコカッター】を爆発させる。

「【サイコキネシス】」

「受けて【かみなり】」

フーディンの【サイコキネシス】がエレブーを抑え込む。しかしエレブーは苦しみに表情を歪めながらも強引に【かみなり】を発動、攻撃のため動きを止めていたフーディンを雷の槍が掠り、フーディンは表情を歪めエレブーは攻撃のダメージと猛毒のダメージに膝をつく。

「もう一発、【サイコキネシス】、反撃には【テレポート】で回避」

「【10まんボルト】!!」

エレブーを再び【サイコキネシス】で弾き飛ばす。エレブーは【10まんボルト】で反撃するが、フーディンは【テレポート】を細かに使って攻撃を躱した。

「【シャドーボール】!」

「【かみなりパンチ】そのまま走って!」

すぐに立ち上がったフーディンは【シャドーボール】を放ち牽制、エレブーはそれを【かみなりパンチ】で弾き飛ばして防御しながら走り出す。

「【サイコキネシス】」

「【かみなり】!」

そして、同時に技を発動。フーディンのサイコパワーがエレブーを吹き飛ばすのと、エレブーの放った激しい雷撃がフーディンを焼くのは同時であった。エレブーはフィールドの壁に叩きつけられ、フーディンはその場に力無く倒れ伏す。

「エレブー、フーディン、共に戦闘不能!!」

結果は引き分け。毒のダメージが無ければエレブーの体力は僅かに残っていただろう。

「フーディンを落とせたのは大きいですよ。ありがとうございます。…………では、皆の意志を繋いで。勝ちに行きましょう、サワムラー!!!!」

「……あの時のリベンジ。今度はちゃんと、貴方と勝つ。行こう、フシギバナ!」

「ラッ!!」

「バナァァァァ!!!!」

呼び出したのはユウキが相棒のサワムラー、対するスミレも相棒のフシギバナ。かつてのカントーリーグと同じ対面だ。

『さあ、面白くなって参りました!ここで両者は残り1体、互いの大将が万全な状態で向かい合います!!』

『カントーリーグの対面ですね。あの時はユウキ選手が勝利しましたが、今回も同じ結果とは限りませんよ』

「サワムラー、【しんくうは】」

「防いで」

サワムラーが先制、足を振るって【しんくうは】を放つがフシギバナは蔓を伸ばすとそれを払い除け防ぐ。

「飛んでください」

「【つるのムチ】、パターン2」

フシギバナはサワムラーを捉えんと蔓を伸ばす。対するサワムラーは【しんくうは】で地上から飛び上がり、空中を舞った。

『ユウキ選手のサワムラー、【しんくうは】を足から放って空を飛びました!!』

『技の発動タイミングや空中での姿勢制御など、細かいスキルが必要なので見た目以上に難易度の高い技術です。……前回はこれに翻弄されて負けましたが、さあどうするか』

「捕まえて」

「【ブレイズキック】、焼き切って下さい!」

蔓を延ばしたフシギバナ。対するサワムラーは【ブレイズキック】で払い除けようとするが、蔓は炎に焼かれて尚もサワムラーの足に絡みついた。

『なっ!?』

『……成程、蔓の水分量を調節しましたね』

「ほんと、流石は師匠。よくもまぁ一瞬で気づくもんですよ」

エリカの呟きに、スミレは呆れたような視線を解説席に向けた。原理としては、蔓に体内の水分を集中させることで炎で燃やされ焼き切れることを遅らせたのである。竹を煮炊きの器に使用できるのと同じような理屈だ。フシギバナは生き物なので、その分水を摂らせないと連発すれば脱水症状を起こしかねないのだがその辺りは既に大量の水を摂取させているので無問題だ。

「くっ……、【ブレイズキック】で少しずつ焼いて、脱出お願いします!」

「叩きつけて【じしん】」

足を燃やすサワムラーだが、フシギバナはサワムラーを捕まえた蔓をしならせ地面に叩きつける。そして足を強く踏み締め【じしん】を発動、激しい振動がサワムラーを襲った。

『激しいコンボがサワムラーを襲う!!』

『ほうほう、相手の得意な短期決戦に無理矢理持ち込んで逆に乱しましたね。……この勝負、案外すぐに着きますよ』

「【しんくうは】で飛んで【ブレイズキック】!」

「【つるのムチ】。パターン3で」

「【しんくうは】で避けて下さい!」

空を翔るサワムラーにフシギバナは蔓を伸ばすが、サワムラーはそれを空中で方向転換することで躱す。伸ばした蔓の水分量は通常、しかも蔓自体が切れやすくなっているので態と捕まろうものなら空中で自切し追撃をしていたのだが、それは読まれていたのだろう。

「【はなびらのまい】」

しかし、スミレからすれば2度目は躱されることなど想定済みだ。確かにサワムラーの【ブレイズキック】は効果抜群でかつ機動力で勝っている。しかし戦術を分析すれば、フシギバナが有利なことは自明の理であった。それはつまり。

(不完全とはいえ制御可能な、立体的範囲殲滅攻撃!)

花弁一枚一枚の操作は未だ不安定、しかし【はなふぶき】の千刃花である程度の経験を積んでいる。【はなびらのまい】は強力かつデメリットありとはいえ継続して効果を発動する技、しかも点や面を切り替えての攻撃が可能。ゲンガーとフーディンでジャラランガを倒した時点で、たとえその後のポケモンに2体が負けても別に良かったのだ。2体なら限界まで削れるであろうし、弱ったところをフシギバナで倒してさえ仕舞えば、最後の相手は点での強者。どれだけ点の攻撃に長けていようとも、その点以外の面全てを覆い尽くし、質量攻撃で押し潰してしまえば全てが解決するという訳である。

「…………成程。ですが、諦めるはトレーナーの恥です!【ブレイズキック】、回転!!」

それを受けたサワムラーは両足で【ブレイズキック】を発動。空中で回転しながら蹴りを放ち、花弁の嵐を焼き焦がす。

「しかし、それでは密度が足りない」

掌からの【しんくうは】で高度を維持、空中で回転しながら蹴って花弁を燃やす。それはスミレとしてはやや想定外の策だった。無茶苦茶な策でしかもそれである程度やり過ごせている現状に頬が引き攣りそうになるが、しかし問題はないと無表情を貫く。どれだけ速く激しくとも、花弁と蹴りでは一撃の量と密度がまるで異なる。サワムラーを呑み込んだ花弁の嵐は空へと昇ると急降下、地面に墜落し大爆発を起こした。

 

「サワムラー、戦闘不能!フシギバナの勝ち!!よって勝者、スミレ選手!!!!」




リベンジ成功
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