ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
ミコトのポッポが素早く飛び回り、オニスズメを打ち落とす。ミコトの修行はレベル上げだが、ポッポをピジョンに進化させる為には大幅な強化が必要だ。というわけで近場にいたオニスズメの群れと戦っていた。1対1を連続で行う、というのはトレーナーの集中力とを中々に使うものだ。リツキのラランテスが対戦する1体以外を引きつけつつ軽くダメージを刻んでいるため1対1は崩れないし簡単に撃破できるが、それでも相当に大変だ。
「うんうん、良い感じだよー。そろそろレベル上がりそう?」
「わ、分かんないです……」
「だろうねー、でも上がったなっていうのは動きが明らかに良くなるから観察しておいてね!」
リツキは苦労しながらもバトルを続けるミコトにアドバイスや声援を送りながらも、自身のポケモン3体とミコトのポケモン2体に指示を飛ばしながらで30を超えるオニスズメやオニドリルを相手に優勢に進めている。トレーナーになったばかりのミコトからすれば、あまりにも異次元だ。
「す、凄いです……。うちは5体目でこれだけ疲れとりますのに……」
思わず感嘆の声を漏らすミコトに、リツキは照れ臭そうに笑う。
「あはは、そんな目を向けられると照れちゃうなぁ。まぁでも全体攻撃はこういうのに向いてるし。あとは相手の群れもそんなに強くないのを選んでるからねー。ほいっ、ベイリーフは【はっぱカッター】で牽制、ヤドンは【ねんりき】を膜のように張ってね。それから、ちょっとでも止まったらジャローダは【ソーラービーム】で薙ぎ払って」
太陽の力を宿したレーザービームが放たれ、空を舞うオニドリルを周辺のオニスズメごと薙ぎ払った。爆炎が空に舞い、怒涛の経験値がミコトのポケモンまで押し寄せる。
「うちも頑張らへんと……!ポッポはん、【でんこうせっか】!!」
ミコトのポッポが急加速し、オニスズメに激突する。既に消耗しきったオニスズメは耐えきれずに墜落、目を回した。
「よし、次!!」
「……はいっ!」
リツキの声に必死に応え、ミコトとポッポは次の相手に目を向けた。
◾️◾️◾️◾️
「そういやアンタ、手持ちはあとどのくらい増やすつもりなんだい?」
訓練の最中にそう聞かれ、ショウガは頬を掻いた。オドシシは急な崖を登り降りする訓練を、ヘラクロスは巨大な岩石を技なしで押して動かす訓練をしている最中であった。
「いや、それが。私としてはあまり増やしても扱えないのではないかと思いまして。限界でパーティーを埋めるくらいでしょう」
そう返すと、ツキミは声を上げて笑う。
「はっはっは!そりゃそうだ。中身の分かんないタマゴもあるし、あとは2体の質も悪くない。トレーナーの練度とポケモンの経験値が問題なだけで、個体の才能的には中々な強者だ」
「ほう、そうなのですか?」
「ああそうさ。だが、手持ちをタマゴの奴を含めて6体にするのは必要だね。この先を考えると予備戦力がないと心許ない。……とはいえこの周辺で探すのはオススメしないよ」
「それまたどうして」
「兎に角層が薄い。探してニョロゾ。あるいは夜まで粘ってズバットくらいだね」
「スピアーやギャラドスも居ますが……」
「どっちもダメだ、強いだけのじゃじゃ馬だからね。特にギャラドスなんてなかなか懐かないわ急に暴れてトレーナー周りに被害は出すわ、碌なもんじゃない。良さなんて見た目とどこでも住める環境適応能力と強さだけ。スミレだって未だ扱いに困ってるのにアンタじゃ持て余すだけだよ。ギャラドスを捕まえるくらいなら海に行ってマンタインを捕まえた方が100倍マシだ。同じタイプだしギャラドスよりは弱いが扱い易さが天と地ほど違う」
「な、成程……」
苛立った様子のツキミにショウガは引き攣った笑みを浮かべた。
「苛立ちもするさ。強さに惹かれてコイキングを無責任に進化させる馬鹿はそこら中にいるんだ。ウチのジムだって何度後始末に向かわされたか。飼いきれなくなったからとあのクソ凶暴なのを街中の池に放り出した大馬鹿もいたよ、あの時は苦労したもんさ」
「進化前のコイキングは弱いですからね。知識のない人間が無警戒に飼育してしまうのでしょう」
「だろうね。……兎も角、今のアンタに使えるかって言ったら無理だ。さっきも言った通り、スミレだってギャラドスは持て余してる。懐いたとしても、ちょっとした刺激で暴れ出すこともあるし、スミレのギャラドスは暴れた実績があるしね。だから、この先でどんなポケモンを捕まえたいかを考えつつも、それが本当に扱えるポケモンかは考えなくちゃならないよ」
ツキミの忠告に、ショウガは重々しく頷いた。
「正論ですね。では相談したいのですが」
「ああ、なんだい?」
「私が持つべきポケモンはなんだと思いますか?」
ショウガの質問に、ツキミは眉を顰めて唸る。
「あー、そうだな。あくまでアタシがお前と同じ手持ちだったらの話だが。遠距離に対応できる奴は欲しいな。移動は重要だけど、オドシシは移動要員としての能力も期待して今鍛えてるから。あとはタイプ被り、というか弱点被りはなるべくない方がいい。例えば……でんきタイプ。あれは良いぞ」
「ほう」
「遠距離対応で強力な技もあり、電気がそもそも不定形だからこそ技の応用が効く。そして何より訓練と才能次第じゃ日常生活用の電気を賄ってくれるようになる。例えばレアコイルやエレブー辺りか。最近はカントーリーグの影響でピカチュウブームが起きているが、あれはダメだ。せめてライチュウに進化させる、あるいはサトシや妥協してヒロシの個体みたいな特異点的な強さを誇るピカチュウを探すかしかない。カイリューも倒せるピカチュウなんて再現性は現実的じゃない。素直にライチュウにするか他を当たった方が良い。あとみずタイプ。最初のポケモンに選ばれるタイプなだけあって使いやすい。勧めるとしたら……スターミー、オクタン、マンタイン。あとは順当にカメックスやオーダイル。近接戦がお好みなら、マリルリという手はあるがアレはカワイイ見た目の割に近接特化の破壊神だ。弱みを潰したいなら近接特化すぎてお勧めしない。ヘラクロスが苦手とするほのおタイプに対応できるのは強みだね。…………ふむ。そうだね、ポケモン達の鍛錬を見つつアンタは座学と行こうじゃないか。光るものはあるがちょいとトレーナーやってくには知識と視野が足りてないね」
「……よろしくお願いします」
早口で喋るツキミに目を白黒させつつも、ショウガは頷いた。
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疲労が全身にのし掛かり、ミコトの頬を汗が伝う。連戦というものは集中力を非常に消費するもので、ミコトもそれに従うポッポも必死の形相で喰らい付いてはいるものの少しずつ動きに粗が出始めた。
「そこっ、【はなふぶき】!」
とはいえリツキはまだまだ元気なようで、もう数えられる程になったオニドリルとオニスズメの群れを翻弄している。
「はぁ……はぁ……。すんまへん。うちが不甲斐ないばかりに」
ミコトの息も絶え絶えな声がポッポの耳に届く。
「ポーッ!」
ポッポは眉を下げて鳴き声を上げるが、ミコトは弱々しく笑った。
「長いこと戦っとるのに、全然進化までレベルを上げられてへん。1人で倒せたらええんやけど、うちが弱いばっかりにリツキはんのお零れ貰うとるだけやから」
1対1での戦闘に比べて、リツキがギリギリまで削った相手にトドメを刺す作業では経験値が少ない。とはいえ1対1で倒せるような相手から貰える経験値よりは豊富なのだが、レベルが上がれば次のレベルアップまでに必要な経験値は増え、しかし体力と集中力が削られて倒せるギリギリの強敵とは戦えなくなる。リツキの指示で何度も休憩を取り、集中力を高める糖分も適宜摂取してこれである。
「まぁそんなものだよ。普通ならこんな強行しないといけない状況にならないだけだし」
そう言って励ますリツキに、ミコトはふと疑問が湧いた。
「……うち、バトルの才能はあると思いますか?」
「ないよ。まぁスミレちゃんに比べたら圧倒的にってだけで一般人くらいはあるんじゃない?」
即答だった。ミコトも思わず苦笑いを浮かべる。
「あはは……。大丈夫なんやろか」
「まぁでも、競技勢を目指さないなら別に問題ないよ。レベルさえ上がればどうとでもなる。そもそも、私がやってるレベル上げは試合で勝つためのじゃなくて護身用だし」
「なら、リツキはんは?」
「才能?ないよ。鍛えて誤魔化してるだけで、まぁミコトちゃんと良い勝負ってところかな?」
リツキのあっさりとした言葉に、ミコトは眉をひそめた。
「なら何故……」
「ジムトレーナーやってるか、でしょ?」
「すんまへん。ご無礼なのは分かっとります」
そう言って恐縮するミコトにリツキはあはは、と明るい笑い声を上げる。
「まぁ不思議だよね。リーグなんかのポケモンバトルなんて、努力した天才の巣窟だもん。私みたいな凡人が15歳の子供に頭下げてまでしがみついてるなんてやっぱ惨めに見える?」
「そ、そんなことは……」
リツキの笑い混じりの言葉にミコトは焦った表情を浮かべた。
「あはは、ごめんごめん。冗談だよ。……ま、捨てれなかっただけだよ。高い壁にぶつかって、自信という自信を砕かれて。それでバトルの道を諦められたら良かったとは私でも思うよ。でも、無理だったんだよね。合理的じゃないって自分にどれだけ言い聞かせても離れられない場所がバトルコートであり、ポケモンバトルだったったんだよ。馬鹿みたいでしょ?」
そう言ってリツキは満面の笑みを浮かべた。『諦められたら良かった』などとは微塵も思っていないような笑顔だった。
「馬鹿やない、とうちは思います。カッコいいやないですか、諦めないのって」
「そっかぁ。……じゃ、ミコトちゃんは捨てられないものってある?勿論手持ちポケモンはそうだろうし、お茶を濁すなら仲間とかあるけどそれ以外でさ」
「ポケモン、以外?」
考えたことはなかった。いや、考えられなかった。親に絶縁され、世界に放り出された今だからこそ難しい質問であった。ベイリーフ、ポッポ、ヤドン。一緒に歩いてきたポケモンは捨てられないものだ。そして着いて行くと決めた2人の仲間も当然そう。だがそれ以外、となれば話は別。呆れ返る程に何も浮かんでこない。
「……そりゃそうだね。ううん、良いの。この質問は答えられない前提で出したんだから答えられなくてある意味正解なんだよね」
「え?」
ミコトは、思わず聞き返す。
「私は戦いから逃げられなかった。どれだけ叩きのめされても、あの熱く燃え上がる感情を忘れられなかった。だから、才能って高すぎる壁に抗い続けてるんだ。……周りの天才達がそれを笑わず付き合ってくれたから、出来てることなんだけどね。ポケモンは大事だし、仲間は大事。それはそうなんだけど、それだけに寄りかかったトレーナーは脆いんだ。モチベーションがないからね」
「モチベーション……。ならうちは」
ミコトが悩みながらも答えを捻り出そうとすると、それをリツキは手で制した。
「捻り出そうとしちゃダメ。答えを急いだら、その場しのぎの思いつきにずっと縛られ続けちゃうから」
「でも……」
言い返そうとするミコトに背を向け、リツキはポッポに視線を送った。
「ポッポ。君の翼はまだ動く?」
「ポーッ!!」
返ってきたのは、力強い肯定。それを聞いたリツキは、満足げに頷いた。
「君の主人は道に迷ってる。……隣を歩くのがベイリーフなら。後ろを着いて行くのがヤドンなら。誰よりも速く先へ行って、道標を見つけてあげるのが君の役目だ」
リツキの言葉に、ポッポの疲労が滲んだ目に力が宿る。全身を力強く震わせ、翼をはためかせると飛び出した。
「ポッポはん!?」
ミコトが驚きを露わにするが、その声すらも置き去りにポッポは空を駆ける。
「……ミコトちゃん」
「?」
「覚悟を決める、ってことはこういうことなんだよ」
リツキの言葉に応えるように、ポッポの全身が光に包まれる。しかしそれでも、進むポッポは止まりはしない。
光が晴れる。
姿を変えたかつてのポッポは、それでも速度を緩めない。
「あれは……ピジョン」
ミコトの小さいはずの呟きが、風に乗ってピジョンの耳に届く。ピジョンは嬉しそうに表情を緩めると、しかし速度は緩めぬままにオニドリルへと突っ込んだ。
◾️◾️◾️◾️
夕暮れ。ポケモンセンターで合流した6名の元へ、仕事を終えたエリカは合流した。
「各自報告。順はユキナ、ツキミ、リツキ」
エリカの指示に、まずユキナが前に出る。
「ええと、まずは何回かバトルしてみて。あとはなるべく進化させたかったのでレベル上げをしました。以上です」
「進化は?」
「無理でした。ごめんなさい」
視線を下げるユキナに、エリカは微笑む。
「いいえ、十分です。あとは放っておいてもスミレさんは進化させられるでしょうから。……次」
エリカが視線を移すと、
「はい、アタシは力の押し合いで負けないようにオドシシとヘラクロスの足腰を中心に筋力を鍛えました。そしてその後、知識不足を感じたのでポケモンを鍛えさせつつ座学に切り替えてアタシの持つ知識を与えました。以上です」
「鍛錬内容に文句はありませんが、座学の参考文献は?」
「すみません、そこまでは用意できなかったです。完全に知識と記憶と経験頼りです」
「次は参考文献を用意して臨むべきです。本がないならその題名を教えて自主的に読ませるなどしましょう。貴女の育成技術に信用は置いておりますが、それはそれとして情報はきちんと根拠を明確にして伝えるべきです」
「はい!失礼いたしました!!」
「良いでしょう。……最後」
そして最後に、リツキが前に出た。
「私達はオニドリルの群れを相手にレベル上げを行いました。結果としましては3体とも20レベル近くまで上がれ、ポッポに至ってはピジョンへと進化しました」
リツキの報告に、エリカは満足げに頷いた。
「進化は良い報告ですね。……ですが森で群れを襲撃するというのは野生ポケモンの生活圏を脅かす行為です。危険を感じて群れがその森を訪れなくなれば、その場所の生態系に悪影響を及ぼすので効率を考えれば良いですが、急ぎのテコ入れとはいえ多用は良くありません」
「分かりました。申し訳ありません」
リツキはあっ、というような表情を浮かべると頭を下げた。
「さて。3人に関しては直接見ていないのでなんとも言い難いですが。私から見れば3人ともそれなりに成長、あるいはその糸口は掴めたと思います。……とはいえスミレさんに今回、渡すものがあります」
そう言って懐から取り出したのは、一枚の封筒。スミレは、エリカの表情がとても苦しそうに見えて、戸惑いを隠せない。
「ありがとうございます。……エリカさん、これって」
それを受け取ったスミレは、宛名を見て微妙な顔をした。
「そこに何が居るかは言いません。ただこれは、私が貴女に課せる最大の試練です。……こればかりは、放り投げても逃げ出しても良いです。私は何も言いません。手紙の中身を読んでこれを相手に渡すか決めてくれて構いません。そして仮にこれを受けたとして、私を恨んでも。憎んでくれても構いません。こればかりは、私に強制する権利はない」
そう言って背を向け歩き出すエリカは、夕陽を浴びていることもありとても寂しそうだった。
「…………分かりました」
スミレは一言呟くと、そんなエリカに背を向けた。何も言わなかった。何も、言えなかった。
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夜。ショウガは、ポケモンセンターにある宿泊施設の1室の扉を叩く。
「ショウガだ、来たぞ」
「……どうぞ」
扉の奥からの声と共に、内側から扉が開かれる。顔を出したのはミコトだ。スミレの『人と相部屋だと眠れないから』という希望で宿泊するときの部屋は3人とも別部屋なのだが、ミコトは既に来ていたらしい。黄緑色のパジャマを着ており、風呂上がりか頬は僅かに紅潮している。かくいうショウガは浴衣姿。スミレがそれを初めて見た時は、『僧侶イメージを損なわない服だね』と言っていた。そして最後にスミレ。薄紫色に花の紋様が描かれたパジャマで、敢えて脱いでいるのかベッドには常人用の防護スーツが置かれている。肌着も同然なのに何故置いているのか、ショウガは眉をひそめた。
「さて、集まったが。本当に聞かせてくれるのか?」
ショウガがベッドに座り尋ねると、スミレは小さく頷いた。
「うん。ちゃんと話すよ。私がどうしてこうなったのかを、そしてどうやってここまで歩いてきたのかを」
そう言ってスミレは背中を向けるとパジャマの裾を捲った。背中の部分が視界に入り、ショウガは慌てて目を逸らそうとする。子供とはいえ女性が体を見せるのは良く無いし、そして必要なことなのだろうが視線を逸らす動作を怠ってジロジロと見るのはショウガ的にやってはならないことだった。
「……うそ」
だが、ミコトの悲痛な声で視線を戻す。すると目に入ったのは、禍々しい色。それは多くの切り傷や所々が痣のように変色しているが、確かに人間の肌であった。
「これは、毒か?」
ショウガは、自分の声の震えを自覚しながらも尋ねた。スミレは手を離し服を元に戻すと、頷いた。
「そ。スピアーを嗾けられてね。まぁ本来、スピアーの毒に何度も刺されたらアナフィラキシーショックで死ぬし私も死に掛けたんだけどそれを治せる医者が居たらしくて、それで助かった。他にも色々あった。人間による暴行だったり、物が無くなったり壊されたり、陰口叩かれたり。個人的に根に持ってるのは、体操着に変な薬塗られたことかな。お陰でかぶれが酷かったよ。そして極め付けはこれ」
そう言ってスミレは前髪をかきあげた。露わになった顔の右側には、視界にチラチラと映りながらも中々に触れられなかったもの。
「火傷……酷い」
ミコトが呟く。火傷の痕は見事に残っていた。肌は本来の白さからははっきりと逸脱し、ひきつった肌が歪さをより表している。
「人の命令で動いたポケモンが焼いたんだよ。……これでも軽傷な方だ、焼けた髪は現代の技術を使えば伸ばせるし、視力だって瞼越しとはいえ焼かれたけどまだ見える」
そう言った所で、ショウガが険しい表情で口を開く。
「……治らないのか?」
「無理、ポケモン医療は無敵じゃない。特に私のような常人がポケモンの血を取り入れすぎると、拒絶反応が起きて却って悪影響だし。背中、というか前にもあるから身体中か。身体中の傷もまた無理。右目の視力も今後少しずつ下がっていっていつかは見えなくなるだろうし、そうなれば酷使される左目もまた同じように弱って見えなくなる。……もうどうしようもない」
「どうして、そうなったんですか……?」
震える声で尋ねるミコトに、スミレは小さく息を吐く。
「これから話すよ。……私の孤独も、恨みも憎しみも、その果てに得た救いも全て」