ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
リングマの事件が起こった後も、スミレ達は変わらず旅をしていた。滞在していた町は事件の影響でトウゴウと彼が直接選んだ精鋭の警官隊で付近を捜索しつつ事件の後始末を行うらしい。因みに、彼の相棒であるカメックスとフシギバナでバトルさせて貰ったのだが、『戦艦』の異名がつくだけあって攻防一体で隙のない個体であった。フシギバナが遠距離の撃ち合いでボッコボコに叩きのめされ、『バタフリーレベルの狙撃をより高威力でされるのキツすぎる……』とスミレは大きなショックを受けていたのだが、それはそれである。
「……しかし、脅威が近いとなれば鍛錬は必須。とはいえあまりレベルも上がらんものだ」
そう溢すショウガであるが、彼の場合は色々と鍛える機会があったことで経験に対してレベルだけ高いのである。それでは、野生ポケモンと戦った所でレベル的な恩恵はそんなにない。
「戦闘経験、という意味では有意義ではあるからね。そのレベルに経験がちゃんと乗れば、それなりに使えると思うし頑張りな」
「分かってる、言ってみただけだ」
スミレの言葉に、ショウガは笑って頷いた。
「でも、うちとしてはまずレベルですからなぁ……。このままやと自衛のひとつもできまへん」
困ったような苦笑いを浮かべるミコト。ミコトは新人トレーナーにしては強い、程度のレベルでしかなく才能も一般人を逸脱したものではない。
「下っ端って言ってもピンキリみたいなところはあるし。レベルの低いズバットとかドガースを連れてる奴もいれば、サトシが倒したガブリアス使いみたいに強い手持ちを持っている奴もいるから。前者ならミコトも倒せると思うから焦らなくていいでしょ」
「そうは言いましても……。まぁ経験値は積み重ねですからねぇ」
焦っている様子のミコトに釘を刺すも、肝心のミコトは不安が拭えない様子。
(これ……ミスった?)
(ううむ、だがここから成長に繋がるかもしれぬし……)
トウゴウとの会話の内容は、同行者だからとミコトにも共有していた。その結果のこれなので、スミレは己の判断が誤っていたかと目線でショウガに尋ねる。結果は首を傾げるだけ、スミレは得られぬ答えにため息を吐いた。
「……まぁ、丁度いいレベルの野良トレーナーとか居たら戦って貰おうか。対処できないレベルなら私のイワークやホーホーで戦うし、あまりに初心者狩りみたいなのが来たらショウガに戦わせるか私のフシギバナで叩き潰すし」
「分かりました!頑張ります!!」
ふんすっ、と気合を入れるミコトにスミレはまたひとつため息をこぼした。
◾️◾️◾️◾️
「ちょーっと待ったそこの一行!!」
3人が色々と話しながら草原を歩いていると、そんな声が響いた。
「……誰?」
「「「とうっ!!!!」」」
「正義のヒーロー、スーパーレッド!!」
「同じくブルー」
「同じくイエロー!!」
「「「3人揃って」」」
「「「スーパーレンジャー!!!!」」」
名乗りと同時に背後で爆発が起こった。おお、と拍手をするショウガに困惑を隠せないミコト、冷めた目を向けるスミレと反応は三者三様だ。立っているのは、妙に凝ったヒーロースーツの3人組。声や衣装からして、レッドは熱血系の男性、ブルーは冷静沈着な男性、イエローは元気溌剌な女性だろう。スタイルは良いので、スーツアクターなどの類かもしれないとスミレは内心で納得と『何やってんのこの人達』という困惑に襲われていた。
「さて、スーパーレンジャーたる我々が挑むのは3対3のバトルだ!!」
「トレーナー3人が1体ずつポケモンを使用し、バトルさせる。交代は禁止、戦闘不能になったら脱落だ」
「でもま、ヒーローは優しくなくっちゃね!だから知らないルールに困惑しないように相談タイムをあげる!!3分間、スタァト〜!!」
流されるままにバトルをすることになっていて、その上でルールまで勝手に決められている。少なくとも相手を倒すまではこのノリに付き合うのかとスミレはゲンナリした。ミコトはずっと困っている。どう反応するのが良いのか分からないらしい。一方ショウガは少し楽しそうである。所詮は男の子か、とスミレは思った。
と、ここで問題が発生した。
「……で、どうする?私はホーホーかイワークの2択なんだけど」
「せやったらうちはベイリーフはんですね」
「私はヘラクロスだな。……だが大丈夫か?相手のレベル次第だが大変なことになるぞ」
スミレの見立てではミコトも付いて来れるレベルなので良いが、これではショウガの使うポケモンが強すぎるのだ。
「うーん。あの、うちのヤドンはんをお貸しすることってありですか?」
「公式戦なら借りる側と貸す側による事前申請が無ければダメだけど、野良バトルなら有りだよ」
「なら、うちのヤドンはんかピジョンはんを使うてやってくれません?経験値が少しでも欲しいので……」
ミコトの提案に、2人は頷いた。
「よし、それで行こう。……ではヤドンをお借りしたい。あまり動かず戦えるなら、変な癖を覚えさせずに済むだろう」
「なら私が使うのはホーホーにするよ。遠距離砲台のヤドンに中距離のベイリーフなら、飛びながらの空中戦闘ができるホーホーの方が都合が良い」
ショウガはミコトからヤドンのボールを借りると、爽やかに笑った。
「良し。……だが初めての3人によるバトルか、嬉しく思うぞ」
「うちもです」
「…………そ」
対するミコトは素直に笑って頷き、対してスミレは顔を逸らす。2人らしさを感じながらも、待っている3人に声を掛けた。
「お待たせした!これで準備完了だ!!」
その言葉に、3人は一糸乱れぬ動きで腰のボールを取り外して構えた。
「ポケモンを借りたみたいだが、甘く見てちゃあ痛い目見るぜ!!行ってこい、ガーディ!!!!」
「オレ達の強さに偽りはない。……証明してみせる。頼むぞ、メノクラゲ」
「よぉっし!元気よくいってらっしゃい!!モココ!!」
投げられたボールから飛び出したのはそれぞれガーディ、メノクラゲ、モココ。
「……格の差って奴を見せてあげな。ホーホー」
「力借りるぞ、ヤドン!」
「お願いします、ベイリーフはん!!」
対するスミレ達もポケモンを繰り出して準備完了だ。
「メノクラゲ、【みずでっぽう】をホーホーに」
「躱して【つつく】」
メノクラゲが放った水鉄砲をホーホーは空を華麗に舞うことで回避、勢いそのままに突っ込んでメノクラゲを吹き飛ばす。
「頼むぜガーディ、【ひのこ】!!」
「ヤドン、【みずでっぽう】」
ガーディの放った火炎とヤドンの水流がぶつかり、激しい水蒸気を撒き散らす。
「っ、これは……」
視界が効かない状況でどうするか、ミコトが思考を巡らせる。
「全部ぶっ飛ばせ!【でんきショック】!!」
「やれ」
モココが周囲に電気を放とうとするが、短い一言と共にホーホーがモココを奇襲。至近距離からの【エコーボイス】で動きを止めると、続いて放った【つつく】で弾き飛ばした。
「くっ……!あのホーホーが一番強いぜ!!」
「ベイリーフは未知数、だがヤドンと同じトレーナーならそれなりに出来るぞ」
「油断はできない、でも勝つのは私達!!」
「スミレ、感触は?」
「立ち回り次第だけどホーホーで1対3でも勝ち目はある。……ま、あまり手を抜いたら負ける程度の腕はありそうだけどね」
「うう、判断遅れてしもうた……」
「ミコト。ベイリーフ……、いやくさタイプの強みはバトルにおいて攻撃から状態異常まで色んな戦術を取れるその万能性だよ。癖が少なく扱いやすいみずタイプ、攻撃に秀で最もバトルに向いているほのおタイプと違ってステータスではなく扱う人間の戦術が最も求められるのがくさタイプ。貴女がどうしたいかで、くさタイプは大木にも枯葉にもなる。……だからこそ、くさタイプ使いは思考を止めた時が敗北も同然。求められるのは、ずっと考えて最適解を出し続けること」
「難しいことですね……。スミレはんは、ずっとそんなことを」
「できないよ。だから、何度も映像を確認したりして事前に戦術を組み立てる。自分の勝ちパターンを定め、負け筋を理解してそれを潰し続ける。バトルの場を、ただの答え合わせに落とし込む。……さ、説教はここまで、やるよ」
そこまで言うとスミレは相手に視線を戻した。
「よぉし、いくぞガーディ!【でんこうせっか】!!」
「メノクラゲ、【どくばり】」
「モココ、【たいあたり】!!」
「ヤドン、【ねんりき】」
「ホーホー、【ねんりき】を地面に」
相手の一斉突撃に、スミレはベイリーフとヤドンよりも前にホーホーを立たせた。そして放ったのは【ねんりき】。ショウガのヤドンが放った【ねんりき】を相手にぶつけ、更にホーホーの放つ【ねんりき】が地面にぶつかり衝撃で土煙が上がった。
「(……ここだっ!)ベイリーフはん、【はっぱカッター】!」
そこに放たれたのは【はっぱカッター】。【はっぱカッター】は全体攻撃故に攻撃範囲の広い技である。だからこそ、土煙の中に放てばある程度は当てずっぽうでも命中するのである。
「【エアスラッシュ】」
そこにホーホーの追撃が入り、爆発。3体は纏めて弾き飛ばされた。
「やられっぱなしで終われるか!【ひのこ】!!」
「【みずでっぽう】」
「モココ、【でんきショック】!!」
【ひのこ】がベイリーフに命中した。【でんきショック】が辺りに広がり、ホーホーを除く2体が攻撃を受ける。ヤドンには効果抜群、ベイリーフは効果抜群の【ひのこ】に続き二撃目を喰らって大きなダメージを受けた。【でんきショック】を躱したホーホーであるが、メノクラゲの【みずでっぽう】を避けきれずに攻撃を受ける。しかし、スミレもホーホーも平然とした表情を浮かべていた。
「うっそだろ、本当に格が違うってことがあるのかよ!!」
「…………あのホーホーさえいなければ互角だったのだろうがな。強すぎる」
「凄い、凄いよ!でも諦めない!!」
口々に言う彼らの表情はマスクのせいで見えないが、しかしその声音は誰もが折れていない。
「動けんポケモンを使うのは難しいな……!あまりうまく立ち回れん」
「あと少し……!頑張ります!!」
「ホーホーだけでも勝てるけど、まぁ2人の援護中心にしても良いか」
最終局面で気合いを入れ直す2人に対して、スミレは勝ちを確信する。
「ぐっ……、余裕だな!だが俺たちは諦めない!!なぜなら、勝てないからと逃げ出す者を、人はヒーローと呼ばないからだ!!」
「人事を尽くして天命を待つ……。勝つことが出来るのは、最後まで人事を尽くした者のみだ」
「ただ私は目の前の困難から逃げたくない!まだ負けてないなら、やってみる価値はある!!
「凄い盛り上がるな、さすがヒーロー」
「これだけ弱いと無意味なのに」
「スミレはん、それはちょっと……」
ヒーローのテンション感に感心するショウガにひたすら辛辣なスミレ、それを嗜めるミコト。温度差がありすぎるし1人すごく冷たい。冷凍庫である。
「ガーディ、【かえんぐるま】!!」
「メノクラゲ、【みずでっぽう】」
「モココ、【でんきショック】!」
「ベイリーフはん、【はっぱカッター】!」
「ヤドン、【みずでっぽう】」
「ホーホー、【ねんりき】で土煙、【エコーボイス】で探索、【エアスラッシュ】で攻撃」
土煙が上がる。ベイリーフの【はっぱカッター】でメノクラゲが倒れ、ベイリーフはメノクラゲの【みずでっぽう】と【かえんぐるま】を食らって戦闘不能、ガーディはヤドンの【みずでっぽう】が命中し戦闘不能、ヤドンは【でんきショック】を受け、モココは【エアスラッシュ】に倒れた。
結果、土煙が晴れた先に立っていたのは、スミレのホーホーだけであった。
◾️◾️◾️◾️
バトルも終わった頃、スミレ達は3人から話を聞いていた。
「特撮作品……?」
「そうだ。俺たちはスーパーレンジャーという特撮作品を作っているチームのメンバーで俳優って奴だ。因みに本名はレッドこと俺がショウタ、ブルーはソウシ、イエローはキラリだ。因みにメンバーはピンクとグリーンも居るぞ!」
「しかし出演予定だった俳優がやらかして捕まったことで撮影が難航、どうしようかと思いながらストレス解消と役作りの為に野良バトルを仕掛けていたって訳さ」
「ごめんねー、迷惑だった?」
どうやら、変なコスプレ不審者集団ではなくれっきとした俳優だったらしい。実際、視線の先ではスタッフらしき人達が忙しなく動いておりそこが遊びではなく仕事場であることが見て取れる。
「いえ。しかし良いのですか、撮影現場を見学させて貰って」
「というか、貴女方のことを話したら監督が目の色を変えて是非って。……なんでも相談があるとかないとか?」
「うちらに……、いやそれならスミレはんじゃないですか?名前売れてるのスミレはんだけでしょう」
キラリが疑問符を浮かべながら言うと、ミコトはスミレに視線を向けた。確かに、カントーリーグで結果を残したスミレのみが3人の中でも世間に名を知られているのだ。
「まぁ、ポケモン育成とかじゃない?あとは技の云々とか。千刃花とか画面映えしそうだし」
スミレが興味なさげに返答すると、ショウガは成程と手を打った。
「……しかし、そういうのに興味なさげなスミレがよく受けたな」
「ポケモンの技の使い方が見たい。それに色んなものを見ろってサナダさんやエリカさんにも言われたし」
そう言ってスタッフ達の動きを見ていると、突然辺りにざわめきが走った。頭に派手なキャップを被り首にタオルを掛け、顰めっ面にサングラスを掛けた小太りの中年男性。
「ヨゥ、お前らが見学者かぃ。俺はナカモリ、こう見えて監督はなりたてホヤホヤの新人だ」
ナカモリ、と名乗った男は監督らしい。
「突然の訪問失礼致しました。私達は旅のトレーナーで私はショウガと申します」
「スミレです」
「ミコトです。よろしゅうお願いします」
ショウガを筆頭に頭を下げる3人に、ナカモリはひらひらと手を振った。
「気にしなさんな、うちのモンがバトルふっかけた挙句誘ったって聞いてるぜ。しかしスミレ先生にここで会うたぁ俺としてもラッキーだったぜ」
「……先生?」
ナカモリの言葉に一番首を傾げたのは、先生と呼ばれたスミレ本人であった。記憶を掘り返した所で、こんな癖のすごい男と関わった記憶はない。
「記憶違いじゃねぇよ。カントーリーグベスト16、俺はその実力を会場で見てたってだけさァ。……んでお前ら、撮影直前に油売ってたんだ。ちゃんと台本は入ってんだろうな?」
「は、はい……!」
「すみません、すぐに回復します」
「勿論、すぐやれます!」
ナカモリが視線をショウタら3人に向けると、3人は慌てて頷いた。
「だったらすぐ回復して撮影準備だ。急げよ」
「「「はいっ!!!!」」」
3人は慌てて走り出すと、ナカモリは大きくため息を吐く。
「…………ったく。俺も素人監督だが、俳優も俳優だぜ」
「新人さんなんですか?」
ミコトが尋ねると、ナカモリは頷いた。
「ああ。ショウタはデビューしたばっかの新人俳優、ソウシは劇団の子役上がりでテレビはこれが初。キラリは俳優どころか新人アイドルだ。ここには居ねぇグリーンことミドリマも新人、ピンクことモモナは親が有名なだけの素人。素人尽くしで撮影は難航中だ。……まぁ、まだ序盤も序盤だし物語が進むと共に俳優も成長するって考えれば悪くねぇがな。しかし撮影直前にバトルふっかけて負けてくんのは頂けねぇよ。撮影用ポケモンは使わせてねぇが、トレーナーだって消耗するってのに」
「確かに。ではなんのシーンを撮るんですか?」
「悪の組織シャトル団の幹部と戦ってボコボコにされて負けるシーンだ。ヒーローになってちょっと人助けして調子に乗ってたヒーロー達が敵幹部との圧倒的な差を突きつけられるのさ」
(シャトル団……。名前的にモデルって)
スミレは思ったが口には出さず、ただ気まずそうに顔を逸らした。
「成程、そこから成長すると。ですが負けたら世界はどうなるんです?師匠枠やら追加戦士やらが登場しなければ危機は乗り越えられませんね」
「へへへっ、分かってるじゃねぇか。でも言えねぇぜ?」
「ほほう、楽しみにしていろと」
「そうだそうだ」
ショウガは特撮に興味があるのか質問を飛ばし、ナカモリはそれに気をよくしたのか嬉しそうに笑う。
「監督、リザさんが入られました」
「おう。準備させとけ」
若いスタッフがナカモリに報告し、ナカモリは表情を引き締めて頷いた。
「リザさん?」
「おう。シャトル団の幹部、ベルセポネ役だ」
スミレが視線を動かすと、長い髪に吊り目のやたらスタイルの良い美女が黒くて露出多めな衣装に身を包んでスタッフと何やら話していた。
「ほう、あの方が。……チラリとどこかで見たことがありますな」
「最近売れ出したモデルでな。スカウトしたんだよ。綺麗だろ?」
ショウガに向かって得意げに話すナカモリ。へぇ、と声を漏らしながら聞いているミコトに反してスミレは辺りを見回した。スタッフ達は監督であるナカモリが油を売っている時でも止まらず動いている。
「それで、戦闘シーンとなると1発撮りになるのですか?」
「おう。だが細かくは指定しねぇ。ある程度大まかに決めてあとは流れでやらねぇと、全部の動きを指定しちまえば不自然な動きになっちまうんだ」
「確かにそうですね」
「……ただ、演出家や脚本家と相談して決めてるからバトルのプロから見た時が分からねぇんだよ」
そう困った様子で言ったナカモリに、スミレはため息を吐く。
「良いですよ、そのくらいなら」
「おっ、いいのか?」
嬉しそうなナカモリと意外そうなミコトに反し、ショウガは眉を顰めた。というのも、ショウガはこの場にいる人間の中では最もスミレと近しい人間。こういう場での言葉の強さを知っていた。そして当然、その不安はスミレにも伝わる。
「…………まぁ、善処はするから」
暗に確約はできないと言いながら顔を背けるスミレに、ショウガは額を抑えた。既に俳優達も集まり、撮影は始まろうとしている。
「よーし、聞け!!今からやるバトルシーンを、ここにいるスミレ先生に見て貰う!子供だからって甘く見るなよ、あのカントーリーグでベスト16を獲った強者、この場じゃあ誰よりもバトルが強い人だ!!そんな人にバトルを見てもらえる機会だ、半端な戦闘シーン演るんじゃねぇぞ!!!!」
ナカモリの大声に、場の人間達が騒めいた。スミレは少し気まずそうに身じろぎをする。
「……大丈夫です?」
「純粋に気まずい。いつもより言葉気をつけないと」
ミコトに耳打ちをされ、スミレは冷や汗を隠さず頷いた。
「よぉし、全員準備について!!」
ナカモリの指示にスタッフ達がその場を離れ、リザと戦隊メンバー5名が残る。スミレ達も台本を貰ってその場に座り、現場の流れに目を凝らした。
「いくぞぉ、よーい!アクション!!!!」
撮影が、始まる。
◾️◾️◾️◾️
下級戦闘員をいつもの如く蹴散らしたスーパーレンジャー。しかしそこに、シャトル団の幹部であるベルセポネが現れた。無人の荒野で向き合う1人と5人、スーパーレンジャーにとっては初めてとなる組織の幹部との戦いが始まろうとしていた。
「お前がベルセポネ……。多くの人間を洗脳し、支配しようとしたシャトル団の幹部!俺たちスーパーレンジャーが、お前の悪事を必ず止める!!」
レンジャーのリーダーであるスーパーレッドがベルセポネを指差し、マスク越しでも分かるほどの怒気をぶつける。
「ふふふ……アハハハハハハハ!!相対して尚力の差が分からないとは、あまりにも愚かよスーパーレンジャー。下っ端如き倒して調子に乗っているお前達では、私に勝つことなど夢のまた夢よ」
しかしベルセポネはその怒りを嗤い、受け流す。挑発を受けたスーパーレンジャーは殺気立ち、ボールを構える。
「夢かどうかは、やってみないと分かりません!」
「そうだ。俺たちだってこれまで戦ってきている。お前に自信があろうとも、俺たち5人に勝てるものか!」
「落ち着け。挑発に乗っては相手の思う壺、冷静にやれば勝てる筈だ」
イエローの言葉にグリーンが同調し、ブルーがそれを嗜める。
「……ちょっと待って、嫌な予感がするの」
しかしいつも元気なイエローが、今日は少し不安げな表情を浮かべる。
「大丈夫だ。嫌な予感も全部、俺たちで超えていくんだ!さあ、いくぞ!!」
しかしその背中をレッドが強く叩き、5人は一斉にボールを投げた。
「行くぞ、ヒトカゲ!!」
「頼む、ゼニガメ」
「行くよピカチュウ!!」
「やれ、フシギダネ」
「お願いします、ピィ!」
飛び出したのはそれぞれの色に合わせたポケモン達。それを見たベルセポネは、大声で笑い出す。
「アハハハハハハハ!!!!」
「……!何が可笑しい!?」
「可笑しいに決まっているでしょう?……だってそんな弱いポケモンで、私に勝てると思っているんだもの。さあ、来なさいムウマ!!」
ベルセポネが呼び出したポケモンはムウマだ。ムウマは怪しげな笑みを浮かべながら宙を舞う。
「やるぞ皆んな!ヒトカゲ、【ひのこ】!!」
「ムウマ、【シャドーボール】」
「ぐあぁぁぁぁ!!」
一撃。【シャドーボール】は【ひのこ】を掻き消すと、ヒトカゲの体を後ろにいたレッドごと吹き飛ばし、爆発に巻き込まれたレッドは地面を転がり動かなくなる。
「レッド!?……援護だ、【みずでっぽう】」
「ピィ、【チャームボイス】です!」
ブルーとピンクが援護を放つが、放たれた攻撃はあっさりと躱され空を切る。
「あまりにも遅いわ。【サイコキネシス】」
「ゼニガメ……!」
「ピィ!?」
そして反撃の【サイコキネシス】がゼニガメの体を操りピィにぶつけ、爆発が2体を襲った。
「おのれ、【つるのムチ】」
グリーンのフシギダネが蔓を巻き付けようとするも、ムウマは素早く捉えられない。
「連続で撃ちなさい。【シャドーボール】」
「ぐっ……!」
「きゃあ!!」
「ぬぅ!?」
ムウマが放った【シャドーボール】がフシギダネを吹き飛ばした。そして連打されたことで起こった爆発がブルー、ピンク、グリーンを吹き飛ばす。
「弱い……あまりにも弱い!これで勝てると思ってたのかしら?……ねぇ、イエロー?」
ベルセポネは歪んだ笑みを浮かべて、震えながら立っているイエローの肩に顔を乗せる。彼女の相棒であるピカチュウは臨戦態勢を取っているが、トレーナーがこれでは勝負はついたも同然だ。
「み、みんなが……」
「負けたわね、無様に。でも貴女は手を出さなかった。力の差ってものが分かってたのかしら?……ねぇ、我らがボスであるクロノス様に臣従なさい。であれば、命だけは助けてあげる」
震えながら声を漏らすイエローに、ベルセポネは続ける。
「待てよ……。俺たちはまだ、負けちゃ居ないぞ…………!!」
しかしそこに待ったをかけるのがレッド。スーツを砂に汚し、息も絶え絶えながらも立っていた。それに呼応するように、他の3人も立ち上がる。
「あらあら。でもイエローちゃんは動かない、4人揃っても烏合の衆。さて、これからどうするつもり?」
「イエローだってスーパーレンジャーの1人!今は動けなくたって、俺たちは信じている!!みんな、行くぞ!!ヒトカゲ、【ひのこ】!!」
「ゼニガメ、【みずでっぽう】!」
「ピィ、【チャームボイス】お願いします!!」
「フシギダネ、【はっぱカッター】!」
「「「「絆の力よ、我が相棒に力を!スーパーチャージ!!」」」」
4人が叫び、腕につけたデバイスに指をかける。それは、スーパーレンジャーだけに許された、ポケモンの技を強化する特殊な力だ。技のエネルギーが一層強まり、凄まじい勢いでムウマに迫る。
「ムウマ、特大【シャドーボール】よ」
しかしそれを、ムウマは巨大な【シャドーボール】で迎え撃つ。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
「ぐぐぐ……」
「う、うう……!」
「ぬぅぅぅん!!」
4人がポケモン達を支え、4匹のポケモンがムウマの攻撃を迎え撃つ。両者の技の威力は僅かにムウマが勝ったか、4人と4匹はすぐにジリジリと押され始めた。
「……このままじゃあ」
そう呟くイエロー。しかし体は震え、思考は纏まらない。
「ピッカァ!」
しかしその背中を、ピカチュウが叩いた。
「痛ァ!!……何すんのよ!?」
背中を押さえながら抗議の視線を送るイエローに、ピカチュウは親指をグッと立てた。彼女らの間には、それだけで良かった。
「スーパーチャージ、【でんきショック】!!」
激しい電撃が、4つの攻撃に加わった。
「「「「イエロー!!」」」」
それを見た4人は安心したようにイエローの名前を叫び、笑みを浮かべる。対するベルセポネは、不機嫌そうに靴を鳴らした。
「…………ふぅん。そうするのね、まぁいいわ。ムウマ、やりなさい!」
苛立った様子の叫びに応じて、ムウマが技の出力を上げる。そして瞬間で爆発、5人と5匹は攻撃をまともに喰らい大きく吹き飛ばされた。
「ま、まだだ……!」
レッドは、地に転がりながらも拳を強く握った。他の4人は気を失い、ポケモンは5体全員が戦闘不能。それでもレッドは、闘志を失っていなかった。
「頑丈ねぇ、スーパーレッド。まぁ、これで終わりだけど」
その言葉と共にムウマの【サイコキネシス】が直撃、レッドも気を失って地面を転がった。
◾️◾️◾️◾️
「カットォォ!!一旦OKだ!!」
ナカモリの叫びが響き、空気が一気に弛緩する。倒れていた5人もすぐに起き上がると、スーツの埃を払い始める。
「……凄いな」
「はい」
興奮した様子のショウガに、ミコトは頷く。2人は物語に没入していたようで、撮影中は目の前のバトルに集中をしていた。反してスミレは、少し困ったような表情を浮かべている。
「スミレは……」
「先生、どうだった!?」
ショウガはスミレに感想を尋ねようとするが、それを遮る形でナカモリが声を上げる。スミレは、相変わらずの困った様子で頬をかいた。
「うーん。取り敢えず言うよりやった方が早いのでポケモン回復したら連れてきて下さい」
「なるほど、何かあったか。……バトルとしてはどうだった?」
「技の選択は良いと思います。わざマシン使って強い技を覚えさせるのはポケモンを強く見せるのに良いですから」
「だろ?」
「バトル自体のレベルは、リーグ基準だととても低いです。あの程度のムウマはバッジ8個持ってなくても、それこそミコト程度ですら勝てます」
「スミレ、言い方」
「んんっ……。まぁバッジ2個くらいと同等って感じですね。ごめん、ミコト」
「いえいえ」
スミレの暴言とも取れる言葉をショウガが咎め、ミコトは否定できずに苦笑いを浮かべた。
「なるほどなぁ。バトルのレベルって以前にポケモンのレベルが低いのか」
「はい。私としてはあのザマで幹部名乗られるのはちょっと……。ロケット団幹部とは何度もやりあってるので」
これまで戦ってきた幹部達は、皆強敵だった。まぁランスが初めて戦った時に使ってたポケモンは彼の本気からは程遠い、あの頃のスミレですら勝てた貧弱さではあったものの、撮影用のムウマに比べれば何倍も強かった。
「そうかい……。極端にレベルの低いポケモンを使うのは反対か?」
「いえ。私が初めてロケット団幹部のランスと戦った時、彼の使ったポケモンは本気に比べれば何倍も弱いポケモン達でした。そう考えれば、本気じゃない手持ちでバトルを仕掛けることはあると思います。……けれど、レベル差が小さすぎる。あの最後の一斉攻撃、当たればダメージは免れなかったでしょう?」
「だろうな」
「だったら駄目です。……と、来ましたね」
話している間に、スーパーレンジャーとベルセポネの俳優達がポケモンを連れて戻ってきた。
「えーと、ポケモン回復して連れて来いって言われたけど……?」
イエロー役のキラリが困惑した様子でナカモリに視線を向ける。
「OKならば次の撮影に移ってもいいだろう。となれば、何かあったか」
グリーン役のミドリマが渋い顔で唸ると、ナカモリは頷いた。
「そうだ、ちっとばかり気になる所があったらしい。という訳で先生、頼んだぜ」
ナカモリに促され、スミレが一歩前に出る。周囲の視線がスミレに集中し、スミレは緊張感に喉を鳴らす。
「ええとベルセポネ役の……リザさん?」
「ええ、リザであってるわ。どうしたの?」
まずスミレが話しかけたのはリザだ。リザは冷たそうな顔立ちと悪役衣装に似合わず、スミレと顔を合わせるように屈んで表情を和らげる。
「ムウマの能力ってどのくらい理解してますか?」
「……いえ、素早く動きながら攻撃をするゴーストタイプのポケモンって感じの理解ね」
リザが困惑しつつ答えると、スミレはポケモン図鑑を指で操作しムウマのデータを調べる。
「戦術としては合ってます。ムウマは全体的にステータスが高い訳ではありませんし、小型で浮遊しているので動き回りながらの戦闘が一番向いてます。ですが、だからこそこの場面でそれをやると弱いんです」
「……当たりさえすればなんとかなる、と思われるからか?」
ナカモリが呟き、スミレが頷いた。
「その通りです。……という訳で検証しましょうか。皆さん、回復させた撮影用ポケモンを出してください。リザさんも、スーパーレンジャーの5人も全員です」
「え、ええ」
リザが困惑しながら頷きレンジャー達に視線を送ると、ボールを投げて回復したポケモン達を呼び出した。それを確認したスミレは距離を置くと、モンスターボールを腰から取り外す。するとボールからは眩い光が伸びて、フシギバナが飛び出した。
「……すげぇ」
レッド役のショウタが呟いた。ここに居る俳優達は皆、芸能関係でここまで生きてきている。撮影用に鍛えられたポケモン達と触れ合ったことはあれど、リーグの上位で戦う本職のバトル用ポケモンを間近に見たのは初めてに等しかった。
「このフシギバナに、レンジャーの皆さんは最後に打った合体攻撃を。リザさんも攻撃を加えて下さい」
「……いいの?」
「良いですよ。検証ですから、気にせず打って下さい」
自分のポケモン1体に技を叩き込めというので流石に彼らも戸惑うのだが、スミレは当然のように言った。
「いや。折角だしやろう!」
「……そうだな、俺たちよりはずっとポケモンに詳しい筈だ」
ショウタは真っ先にその提案に乗り、ブルー役のソウシが同意する。
「フシギバナさん。もし怪我しちゃったら……」
ピンク役のモモナが不安そうに呟くと、スミレは眉を顰めた。
「出来るものならやってみて下さいよ。こちらも見てみたいです」
「さ、すぐやりましょ?あまり時間とってもあれですから」
少し棘を含んだスミレの言葉に続けて、ミコトが先を促した。
「ああ。やるぞ皆!!ヒトカゲ、【ひのこ】!!」
「ゼニガメ、【みずでっぽう】」
「フシギダネ、【はっぱカッター】!」
「ピカチュウ、【でんきショック】!!!!」
「ピィ、【チャームボイス】」
「……ムウマ、【シャドーボール】」
「フシギバナ。【つるのムチ】」
瞬間、空間が爆発した。巻き起こった土煙の先には、無傷のフシギバナの姿が見える。
「……一体なにしたってんだ?」
ナカモリの疑問が、その場の総意であった。
「ショウガ。見えた?」
スミレがショウガに矛先を向けると、ショウガは編笠を手で押さえながら頷いた。
「ああ、見えた。……スミレのフシギバナは、飛んできた全ての技を【つるのムチ】で弾き飛ばしたんだ。しかも【はっぱカッター】で発射された数十枚になる木の葉を、ご丁寧に1枚1枚叩き落としてな」
ショウガの分析に、ざわりと空間が揺れた。攻撃を撃ったポケモン達とは言葉通り、次元が違う。
「……マジかよ」
ミドリマが唸った。彼とてリーグを知らない訳ではないが、にしてもここまで違うとは思わなかったのである。
「そ。因みに私は見えませんよ、そんなに身体能力高い訳じゃありませんし。……でもそうしたことは分かります。何故ならそれが出来ると知っているから。でも視聴者の前でこれをやっても、見えないから伝わる訳がありません。攻撃同士をぶつけたりもせずに丁寧な作業で撃ち落としたなんて、誰も見えないのでどれだけ強いか分かりません。と言う訳でもう1発お願いします」
その言葉に動揺しつつも、もう一度6発の攻撃がフシギバナに殺到する。しかし今度は、フシギバナは迎撃せずに攻撃を受けた。
「なっ……!?」
動揺する声が聞こえるが、スミレは鼻を鳴らした。土煙からは、傷ひとつとてついていないフシギバナの姿が現れる。
「き、効いてない?」
「嘘でしょ……?傷ひとつもつけれないなんて」
モモナが驚きを露わにし、リザが顔を引き攣らせた。
「感じました?」
スミレの一言に、彼らは一斉に頷いた。彼らはバトルのプロではないが表現のプロ、に足を踏み入れた人達である。これだ、というものを感じ取れていた。
「ああ。攻撃の中から全く堪えた様子のない相手ポケモンが出てくる。こりゃあ凄い絶望感だ。攻撃さえ当てれば、が全く通じねぇ。どう足掻いてどんな奇跡が起こったとしても勝てない、でもヒーローは逃げる訳にはいかない。そんな悲壮感を表現できる。……つまりやるのは、ムウマをもっと鍛えて攻撃を受け止められるようにするってことだな。一斉攻撃を受け止めるは無理だろうが」
「はい。一斉攻撃はさっきみたいに吹き飛ばしていいですけど、1体ずつ挑んだ時は攻撃をわざと受けて、反撃で倒すみたいなのが良いのではありませんか?ムウマのステータス上、僅かですが特殊攻撃への耐性が高いので」
「良いな。……リザはどうだ?」
「ムウマ次第ではありますけど、私はやります。これが出来れば良いシーンが撮れそうですから」
リザの気合いが入った瞳に、ナカモリは嬉しそうに頷いた。
「これで決まりだ!撮影隊はベルセポネが要らねぇ別シーンの撮影を進めつつ、リザはムウマのレベル上げをする!!」
ナカモリが指示を出し、スタッフ達にも熱が広がったか辺りが活発に動き始める。俳優達もスミレ達と挨拶を交わすと撮影の為に去ってゆく。それを見送ったスミレは眩しそうに目を細めると、ショウガとミコトに声を掛けた。
「……ショウガ、ミコト」
「ああ、ここらでお暇するとしようか」
スミレに名前を呼ばれただけで察したショウガに対して、ミコトは首を傾げる。
「この先は見なくていいんですか?」
「良いんだ。あとは視聴者としてオンエアを待つとしよう。……そうだな、スミレ?」
「そういうこと」
「……ふふっ。そうですね」
ショウガの確認にスミレは頷き、ミコトは嬉しそうに笑った。それを見たナカモリが、2枚の書類を持ってくる。
「おう先生。お帰りならこの紙に記入してくれ」
そうして差し出したのは、1枚は同意書。……撮影回のエンディングに名前を載せる許可を出すための紙。もう1枚は、振り込み用紙だ。スミレは同意書にサインをすると、振り込み用紙には何も書かずにナカモリへ渡す。
「……これで。報酬はいりません」
スミレの言葉にナカモリは首を横に振った。
「そいつぁ無理だな」
「何故です?私のやったことは大したことじゃない」
「だとしても、俺たちにとっちゃあ大きなことさ。……それに」
「?」
「俺たちは遊びで作ってんじゃねぇ。人生賭けてヒーロー撮ったんだ。だからこそ、協力者への報酬未払いなんて不義理は先生の善意だったとしてもやっちゃいけねぇことなんだ。……だから黙って受け取ってくれ。そうでなきゃ、俺たちは胸張ってヒーロー撮れなくなっちまう」
そう言ったナカモリは真剣だった。たかが子供向け、たかがフィクション。けれどそれを産み出す人間の情熱は、" たかが " という言葉が適さない程に本物だった。
「……分かりました。受け取らせて頂きます」
スミレはポケモン図鑑を操作する。ポケモン図鑑というのは案外ハイテクなもので、図鑑機能に加えてメモ機能もある。しかも世界に名を轟かすオーキド研究所の制作というだけあってセキュリティもこの時代では破格のものだ。口座番号のような重要な個人情報をメモして管理するには丁度いいツールなのである。
「……っと。お帰りならアイツら呼ばねぇとか」
「要りませんよ。挨拶はしましたし、これ以上お手を煩わせると私が気にします」
「まぁそう言うなら良いけどよ」
「ふふっ。……私は今回のジョウトリーグに出る予定なので。その時に来てくれればまた会えますよ」
「そうかそうか。そりゃあ良いことを聞いたぜ」
ナカモリの言わんとすることを察したスミレがクスリと笑って言うと、ナカモリは嬉しそうに頷いた。
「では行くとしようか。ナカモリ監督、完成品を楽しみにしています」
「応援しとります。今日はありがとうございました」
ナカモリはショウガとミコトの2人と固く握手を交わすと、最後にスミレと向き合った。
「俺たちにゃ本物の世界は救えねぇけど、空想のヒーローしか産めねぇけど、先生のこと応援してるぜ。……若けぇんだから、あんま無理すんなよ」
「たかがフィクション。でも、本気でやる人は嫌いじゃないです。お体に気をつけて」
そう言ってガッチリと握手を交わすと、スミレ達はいつもの旅へと戻るのであった。
何でもない回を書きたいと思って書いてみた回です。こういう回は字数多めの1話完結とかにした方が良いかも?とか思ったのでその実験回でもありますね