ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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後編です。

評価バーに色がつきました!!!!ありがとうございます!!!!!!
これからも頑張って参りますので、どうぞよろしくお願いします!


第29話 シルフカンパニーの戦い 後編

「ほう、貴方が襲撃者の片割れですか」

そんな冷たい声がスミレの耳に届いたのは、ユンゲラーでニョロボン使いの下っ端を倒してすぐのことだった。スミレが額の汗を拭ってその声の主を見ると、そこにはエメラルドグリーンの髪に帽子を被り、冷徹な目でスミレを見つめる男がいた。先程までのチンピラ擬きとは次元の違う悪意。スミレはこの男の正体に察しがついた。

「貴方が、ランス………?」

「ほう、わたしを知っているとは………。そして小娘の癖に随分とやるようですね。相性不利とはいえそのニョロボンは下っ端のポケモンの中では上位に入る強さ、それがまさかこんな小娘にやられるとは……つい最近はウツボットを使える奴がリザード如きに負けましたが、随分と腑抜けたようですね」

「も、申し訳ありません‼︎」

ニョロボン使いは必死に頭を下げる。

「まぁいいでしょう。どの道わたしがこの小娘を潰せば済む話です」

ランスはそう言って、スミレを見る。その瞬間、突き刺すようなプレッシャーがスミレを襲い、スミレの全身から滝のような汗が流れ始めた。

「ッ……、やってみなよ外道………。アイツとの約束を破る訳にはいかない」

「威勢が良くて大変結構、ですが…貴方はここで終わってもらいます。行きなさい!ゴルバット!!」

「バァァァット!」

「任せるよッ…、ユンゲラー」

「ゲラァァァ!!」

ゴルバットとユンゲラーがそれぞれボールから飛び出し、睨み合う。

 

「ゴルバット、【エアカッター】!」

「ユンゲラー、【サイコカッター】」

両者の放ったエネルギーの刃が空中で激突し、爆発する。

「ユンゲラー、【テレポート】で接近、【ねんりき】で吹き飛ばせ」

「ゲラッ!」

ユンゲラーは一瞬で空中のゴルバットに肉薄すると、それにより動揺したゴルバットの隙をついてサイコパワーをぶつけ、地面に向けて吹き飛ばす。

「立て直しなさい、ゴルバット!」

しかしゴルバットは地面に激突する直前に空中で静止、大ダメージを免れる。

「ユンゲラー、【ねんりき】」

「飛びなさい、ゴルバット!」

ユンゲラーの念力はゴルバットがその場を一気に飛び退いた事で回避される。

「行きますよ!ゴルバット、【エアカッター】!!」

「バァァァット!」

ゴルバットの放った空気の刃がユンゲラーに殺到し、ユンゲラーを吹き飛ばす。

 

「まだやれる?ユンゲラー」

「ゲ…ゲラァ!!」

他のメンバーに比べて鍛え方が足りない為、この時点でかなり消耗している。しかし、ユンゲラーはそれでもまだ行けると奮い立つ。

「しつこいですね…。ゴルバット、撹乱しなさい!」

「バァァァット!」

ゴルバットは空中を縦横無尽に飛び回り、撹乱する。ユンゲラーはそれを目で追おうとするも追い切れない。

 

「チッ…、ユンゲラー。連続で【サイコカッター】」

ユンゲラーは【サイコカッター】を放つも、ゴルバットの影を掠めるのみだ。

「今ですゴルバット!【どくどくのキバ】!!」

「バァァァット!!!!」

ゴルバットがそのキバに毒々しいオーラを纏わせ、ユンゲラーに噛み付く。

「ゲラァァァァァァァァァァァァ!?」

ユンゲラーは痛みに悲痛な声をあげる。

「ユンゲラー、サイコパワーを解放して」

ユンゲラーはその指示に従い、サイコパワーを制御せずに放つ。解き放たれた巨大なエネルギーはゴルバットを吹き飛ばした。

「ゲラ…、ゲラァ…………」

ユンゲラーは膝をつき、荒い息をする。

「(もうすぐ限界か…)あと少し頑張って、ユンゲラー」

「やれますね?ゴルバット」

「ゴル…バァット…………」

ランスの言葉に、ゴルバットは弱々しく答える。

「ユンゲラー、【サイコカッター】」

先に動いたのはユンゲラー。【サイコカッター】を放つが、ゴルバットは攻撃を避けながら飛び上がる。

「ユンゲラー、【ねんりき】」

ユンゲラーのサイコパワーがゴルバットを捉え、吹き飛ばす。

「飛ばされながらで構いません、【エアカッター】!!」

吹き飛ばされながら放った空気の刃がユンゲラーに当たり、爆発する。

そしてそのままゴルバットは地面に落ち、目を回す。煙が晴れるとユンゲラーが目を回して倒れていた。これで両者戦闘不能、引き分けだ。しかしランスとの戦いはまだ終わっていない。彼のボールは、後1つあるからだ。

「よく頑張った…、ユンゲラー」

「……戻りなさい、ゴルバット」

スミレは満足げに、ランスは不満げにそれぞれのポケモンをボールに戻すと、次のボールを手に取る。

 

「決めるよ、フシギソウ」

「行きなさい、マタドガス!」

「フシャァァァ!!」

「ドガァァァ!」

フシギソウとマタドガスが相対する。少し消耗している分、スミレが不利だ。

「フシギソウ、【はっぱカッター】タイプA」

そうスミレが呟いた瞬間、音速と形容できるほどの速度で射出された1枚のはっぱが、マタドガスに炸裂する。

「クッ…、厄介な………。マタドガス、【ヘドロばくだん】!!」

ダメージを食らったマタドガスだが、反撃と言わんばかりに塵の塊を放出する。

「【つるのムチ】」

フシギソウは蔓でそれを叩き落として防ぐが、それは囮。その時にはマタドガスはフシギソウに肉薄していた。

「マタドガス、【ダブルアタック】!」

マタドガスの連続攻撃がフシギソウを襲い、ダメージを与える。

「フシギソウ、【はっぱカッター】」

倒れるもすぐに体勢を立て直して【はっぱカッター】を射出、マタドガスは吹き飛ばされ、距離が開く。

「「フシギソウ、【はっぱカッター】/マタドガス、【ヘドロばくだん】」」

指示が重なり、両者の技が空中で激突し爆発を起こす。そしてその爆煙を貫き伸びるのはフシギソウの【つるのムチ】。蔓がマタドガスを捕らえる。

「叩きつけろ、フシギソウ」

フシギソウは捕まったマタドガスを何度も地面や壁に叩きつける。マタドガスは苦悶の声をあげた。

 

「仕方がありませんね………。マタドガス、爆ぜなさい!」

マタドガスは一瞬悲しげな表情をするも、すぐに覚悟を決める。そして体が光り輝く。

「不味いッ………」

スミレは動揺し、フシギソウは蔓を離すが時既に遅し。マタドガスは【じばく】を放ち大爆発を起こした。マタドガスは戦闘不能になるが、爆発がフシギソウを焼き、周囲にも被害を及ぼす。下っ端達は吹き飛ばされて壁などに叩きつけられる。そしてスミレは

 

「ぁ…………」

階段脇の吹き抜けから転落する。爆風に煽られ、呆気なく一階目掛けて落ちてゆくスミレ。このままでは頭から落下し、死は免れない。スミレの脳内を、走馬灯が駆け巡る。

(思えば、随分無意味な人生だったけど………。それでも最後に、あの子達と出会えて良かった)

脳裏に過るのはフシギソウ、バタフリー、ラプラス、ユンゲラー。そして両親にマサラタウンの人々。オーキド博士、シゲル、サトシ、そしてヒマワリ。楽しかった思い出も、絶望に苦しんだ思い出も、全部抱えて、落ちてゆく。

(心残りはあるけど………、もう十分生きた)

 

「もう、いいや」

そう呟いて、スミレは静かに微笑んだ。

 

「フシャ…………フシャァァァァァァ!」

落下が止まる。フシギソウがなけなしの力で蔓をスミレの腕に巻きつけ、引っ張りあげようとする。もう戦闘不能になっている筈なのに、だ。

 

「フリィィィィィィィ!!」

気絶している筈のバタフリーがボールを抱えて飛び出し、ボールを落とすと出てきたのはラプラスとユンゲラー。どいつも満身創痍で倒れたはずだ。それがフシギソウの蔓をそれぞれの方法で掴み、蔓でぶら下がっている状態のスミレを引き上げにかかっている。

「貴方達………どうして」

「フシャ!!」

「フリィィィ!」

「ラァァ!」

「ゲラァァァ!!」

スミレは呆然と呟き、皆が思い思いの鳴き声をあげる。彼らが何を言っているかは分からない。しかし彼らが、自分を決して見捨てはしないということは、スミレにも分かる。

 

 

「なるほど…戦闘不能になって尚、主人の為に立つとは…。気に入りました。頂きますよ!そのポケモン達を‼︎」

その光景を見たランスが興奮気味に叫び、スミレは顔を青くする。

「私はいい!だから逃げて!!!!」

スミレの口から、自分でも驚くほど悲痛で、大きな声が出た。それでも誰も動きはしない。フシギソウも、バタフリーも、ラプラスも、ユンゲラーも、ただスミレを助けることしか考えてなどいなかった。

 

「いい信頼関係だ。なればこそ、ここで終わらせる訳にはいかん」

聞き覚えのある声が聞こえた。ハンサムだ。

「貴方は…。一体何処から⁉︎」

ランスが動揺する。

「変装はしていたが始めからいたよ…君に襲撃を伝えた下っ端さ。残念だったね!人質に取られたシルフカンパニーの社員達と奪われたポケモン達は、皆私が取り返した!!既にこの町のジュンサーさんに保護されている。お前はスミレ君に敗れ、下っ端はスミレ君とワタルの手で全滅。お前達の負けだ!」

ハンサムは得意げに叫ぶ。

「フシャ!!」

「っと…、すぐ助ける!手伝ってくれ、ガーディ!グレッグル!!」

ハンサムとガーディ、そしてシンオウ地方のポケモン、グレッグルがフシギソウの蔓を掴み、引き揚げに加わるとスミレの体が少しずつ上がり始める。

 

「クッ…ですがただでは終わりませんよ!」

ランスが拳銃を構えてハンサムを睨む。この男は最後の最後に武器を取り出したのだ。

 

「逃げて…。私は死んでもいいから………せめて貴方達はッ………」

「そんなこと、できる訳がないだろう!!!!私は警察であり、それと同時に1人の大人で、人間だ!!!!その私が、目の前で命を諦めようとする子供1人救わずしてなんとする!!私は国際警察のハンサム!私は私の誇りに賭けて、死んでもこの手は離さんぞ!!!!」

スミレは思わず気圧される。彼は命懸けで、死のうとする自分を救おうとしているのだ。

 

「ならば死になさい!!」

ランスは拳銃の引き金に手を掛け

 

横合いから割り込んだオレンジ色の閃光に呑まれ、吹き飛ばされた。

「助かった、ワタル!」

「全くッ…無茶をするなハンサム!」

ハンサムとそう一言やり取りをするとワタルは吹き抜けを生身で飛び降りる。

するとそれを追って飛び出したカイリューがワタルを背に乗せて飛び、ワタルが宙ぶらりんのスミレを回収して飛び上がった。それを見て安心したか、スミレのポケモン達が気を失い、次々に倒れる。ワタルの腕の中でそれを見たスミレは、そこまでして助けて貰えた嬉しさと、そのせいで仲間達を限界以上に酷使してしまった罪悪感で思わず目を背け、ワタルの逞しい胸に顔を埋める。何故かそれをする事に、スミレは抵抗感が湧かなかった。




ありがとうございました。次回は事後処理的な感じになると思います。
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