ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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第3話です。書きたいポイントが時系列的に遠すぎてどうやる気を繋いだものかと思案しています。


第3話 旅立ちの日 後編

「・・・本気で、言ってるの?」

スミレの声が、数段低くなる。

 

「うん、本気。ヒマはまだ弱いもん。ヒマだけじゃ、カゲちゃんを強くしてあげられない。それに、ヒマはスミちゃんと一緒に旅したいって、そう思ってた。」

ヒマワリは、冷たい目で見てくるスミレから、目を離さなかった。目を逸らしていては、覚悟は伝わらない。

 

「私の意思は?」

 

「ダメならヒマは勝手に着いていくもん。だってヒマはアホだから、分からないこと多いもん。」

 

スミレは、手を額に当てて項垂れ、深い溜息をついた。

「自分でアホを認めてどうするの・・・。」

 

スミレとしては断固として連れていくつもりはない。人がいると落ち着かないし、ストレスが溜まる。

どちらも譲らない膠着状態に移行するか、という所で博士が間に入った。

 

「ほれほれ、2人とも落ち着かんか。まずはポケモンの回復をして、話はそれからじゃ。どっちも譲らんようじゃし、ワシが決めることとしよう。」

 

ヒマワリは忘れてた、と言わんばかりの表情を、スミレは少し目を見開き、モンスターボールを預けて、回復装置で回復を済ませると、ホルダーにつける。

 

「さて、ワシの決定は絶対じゃ。ということで、スミレは3つ目のジムを終えるまでヒマワリの同行を許すこと、ヒマワリはスミレが3つ目を取り次第、別行動を取ること。ただし、スミレがその後も同行を認めたらその時はその時じゃ。さて、いいな?」

 

博士の言葉にヒマワリは嬉しそうに、スミレは渋々頷いた。

 

 

 

「それじゃあ、行ってくる。」

不機嫌な様子のスミレの頭を、モモカは優しく撫でる。

「辛くなったら、いつでも帰っていらっしゃい。私と、ここにはいないけどお父さんは、絶対にあなたの味方だから。」

スミレはその言葉に頷くと、モモカと熱い抱擁を交わす。

「うちのヒマワリが済まない。何か迷惑をかけたら言ってくれ。」

「死なないようには、見張っておきます。別れた後は知りませんが。」

申し訳なさそうなヒマワリの父親と軽く握手を交わす。

「ヒマワリがごめんなさい。頑張ってね。」

「ありがとうございます、頑張ります。」

ヒマワリの母親とも握手を交わす。

それを終えると、用は済んだと言わんばかりにすぐに背を向けて歩き出す。そしてそれに、慌てたようにヒマワリが追従する。

 

「「「「行ってらっしゃい!スミレ、ヒマワリ‼︎」」」」

 

「行ってきまーーーす‼︎」

「・・・行ってきます。」

 

町の人達の見送りにヒマワリは大声で、スミレは静かに答え、広い世界へと一歩踏み出した。

 

そしてちょうどその時、未だ夢の中にいたサトシ(主人公)が、目を覚ました。

 

 

世界が、運命が、動き始める。

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

 マサラタウンを出てすぐのところにある1番道路は、コラッタとポッポくらいしか出てこないため、修行の場として重宝する。スミレはフシギダネの、ヒマワリはヒトカゲのレベル上げが急務だが、戦いを挑むのは群れではなく単独でいる個体だ。トレーナー2人、ポケモン2匹で群れに挑むなど、自殺行為である。2人とは言え、スミレはヒマワリを介護するつもりは無いし、ヒマワリもそれを分かっている。そのため、危なくなったら合流する、という約束をしてそれぞれ戦いを挑むことになった。

 

 

ヒマワリと一時的に分かれたスミレは、草むらにいる一匹のコラッタに目をつける。

 

「フシギダネ。」

「ダネッ。」

ボールを軽く放り、フシギダネを呼び出すと、それに気づいたコラッタが戦闘体勢に入った。

 

コラッタが鳴き声を上げながら真正面から突撃する。技は【たいあたり】だ。それに対してスミレは真っ向勝負を挑む。技は【たいあたり】。しかし両者の【たいあたり】には決定的な差が存在する。それはレベル差だ。ポケモンにはレベルがあり、レベルが上がるごとに強くなる。フシギダネは、コラッタよりもレベルが高いため、真正面からぶつかり合えば、レベルの低いコラッタが押し負けるのは当然のことだ。

涙目で頭をさするコラッタに、少し躊躇するが、再び戦闘体勢に入ったのを見て、今度はヒトカゲにも行った【なきごえ】を行いながらの【たいあたり】。今度は【なきごえ】で動きが鈍ったコラッタの胴体に直撃し、大ダメージを与えると、コラッタは慌てて逃げ出した。

これで戦闘終了だ。フシギダネには、まだまだ余裕がありそうなのでスミレは次の相手を探し始めた。

 

 

 

慌てた様子で野生のポッポが飛び去ってゆくのを見送りながら、少し乱れた息を整える。野生ポケモンとの戦闘開始から、一体どれだけの時間が経ったか分からない。より多い種類のポケモンが生息する道路脇の森にも入り、経験値狩りを続けた。野原や森を歩き回り、すでに疲労が蓄積している。だが、スミレもヒマワリも、どちらにとっても有意義な経験値狩りができた。

そろそろ先のトキワシティへ向かうか、といった時に、空が変わった。

 

突然の豪雨だ。しかも雷つきの。前日の天気予報では晴れると聞いていたので、実に意外である。そして何があったか、脇道の森の上空をオニスズメの群れが凄い勢いで飛んでいる。スミレは本を読み、博士にも聞いたことがあるので知っているが、あれは恐らく、群れで敵を追っている時の行動だろう。だがあれに首を突っ込めば、最悪死が待っている。

自身が死ぬ分には問題ないが、ヒマワリの命を預かっている以上は一度トキワシティに向かうのが上策だ。新人トレーナーが束になって挑むくらいなら、リーグ出場レベルを1人連れてきた方がマシである。それにヒマワリのヒトカゲ、スミレのフシギダネは強力な範囲攻撃を持たないため、広範囲の制圧は不可能に近い。早くトキワシティに向かい、ポケモンセンターで情報を貰うのが正しい判断だろう。

「ヒマワリ。」

「んぁ?」

なんとも間抜けな声を上げながらヒマワリが振り向いた。雨の中なので今はポッポを中心に鍛えていたらしい。

 

「そろそろトキワシティに向かおう。あんまりこの天候の中外に出てると風邪ひく。」

 

「りょーかい‼︎」

元気よく返事をしたヒマワリを連れ、トキワシティへと歩みを進めた。

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

 サトシは、森の中を自転車で走っていた。朝寝坊して3匹のポケモンのどれも貰えず、貰ったのは全く自分の言うことを聞かないピカチュウ。どうにか自力でポケモンを捕まえようと頑張っていたら、投げた石がオニスズメに当たり、群れ総出で追い回される事態になったのだ。ピカチュウは傷つき、サトシもピカチュウを抱えながら命からがら逃げ出して、途中で出会ったオレンジ色の髪の少女からトキワシティの方角を教わり、勝手に拝借した自転車で走り出した。のだが、途中で天候が一気に悪化する。早くトキワシティに着かなければならない、そうしなければ、ピカチュウは死んでしまうかも知れない。焦る気持ちをペダルを漕ぐ力に変えて、懸命に足を動かす。しかし相手は人間を超えたスペックを持つポケモン、素早い飛翔で追い縋ってくる。

 

「頑張れ・・・トキワシティはもうすぐだぞ・・・・。」

ぐったりとしたピカチュウに声をかけながら、サトシは走り続ける。

追いついたオニスズメがサトシの頭を突いてきて、鋭い痛みに耐えながら、サトシは走り続ける。しかし、追われながら走り抜けようとした場所が大きな段差になっており、1人と1匹は、大雨の中、投げ出される。ぐったりとしたピカチュウを見て、ボールに入れようとするもピカチュウは入ろうとしない。そこへオニスズメがやってくる。激しい雷雨の中、泥だらけになりながら逃げ続け、ついに逃げられない状況に追い込まれた。サトシは、ピカチュウを庇うようにオニスズメの前に立ちはだかった。

 

「さぁ、来い・・・オニスズメ。」

 

覚悟を決め、オニスズメの群れに向かって両手を広げ立つサトシ。

オニスズメ達がサトシに一斉に激突するーーーその寸前、ピカチュウは動いた。サトシの体を伝って飛び上がると、空の雷を利用し、極大の雷撃を放った。光の柱と形容できるその雷撃は、たった一撃でオニスズメの戦意を喪失させ、それどころか雨雲すらも吹き飛ばす。

 

そして雨が上がった空には、虹がかかっていた。

美しい七色の光が空を彩り、その側を不思議な鳥が飛んでいた。

まるで空は自分の支配下にあるとでも言わんばかりに堂々と飛ぶその不思議な鳥は、虹の掛かる空のどこかへと飛んでゆき、あっという間に消えていった。

サトシのポケモン図鑑は、そのポケモンのデータがないという。

 

あの不思議な鳥はなんなのだろうか。そう不思議に思いながら、サトシはピカチュウを抱えて歩き出す。

 

目指すトキワシティは、すぐそこだ。

 




読んで頂きありがとうございました。
サトシパートは、YouTubeに1話があったので何度も何度も見返しながら書きました。作者のアニポケ知識はガバガバなので、今後サトシ絡みはオリジナル展開多めになるかと思います。ごめんなさい

3月1日 21:45 にらみつける→なきごえに変更しました(フシギダネがにらみつけるを覚えなかったため)

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