ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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 最新話です。


第32話 スミレの怒り

 「・・・君は?」

フジ老人と思われる人物の声が、やけに大きく響いた。彼の傍には2人のロケット団員。片方が40代くらいの男でもう片方が20代後半と思われる女。どちらも警戒心を露わにしてこちらを睨みつけている。

「・・・答えろ。ガラガラを殺したのはどっちだ?それとも両方か?」

スミレが聞きたいのは、それだ。

「それ聞いてどうすんの?正義の味方でも気取ってんの?ダッサ!」

女がそう言って下卑た笑みを浮かべる。

「・・・・・・仕事だよ。フジ老人の奪還と幽霊騒動の解決。お前らロケット団の殲滅は個人的な事だけどね」

ロケット団、と呼ばれて2人はぴくりと反応する。

「俺たちの名を知っているのか?」

男が訝しげな表情で問いかけ、スミレは頷く。

「シルフカンパニーでランスとか言う奴やその下っ端共を倒してきた。ムサシやコジロウとはなんだかんだ縁がある」

「ハッ!俺様達をムサシやコジロウみたいなポケモン1匹殺せねぇ甘ちゃん共と一緒にすんじゃあねぇ‼︎そしてランス様を倒したぁ?出鱈目にも程がある!」

「そうよ!アタシらなんてもう何体もポケモンも人間も殺したわ!アタシらはアイツらと違ってエリートなの」

自慢げに笑う2人に、スミレの瞳から、温度が完全に消え失せた。

 

 

「小さい自慢はよしなよド三流・・・。あの2人がロケット団の癖にマトモなのはよく分かった。それは兎も角もう一度聞く、ガラガラを殺したのはどっちだ?・・・・・・それから、フジさんを監禁した理由も吐け」

絶対零度の殺意が2人を射抜き、2人はそのプレッシャーに冷や汗をかく。

「お、俺様じゃねぇ!殺したのはコイツの方だ‼︎このジジイはロケット団の元研究者、幻のポケモン、ミュウの遺伝子から作り出した生物兵器、ミュウツーの作り方を知ってる奴だ!俺達はコイツを連れ戻しにきたんだよ、コレで良いか⁉︎」

男の方が動揺して吐いた。しかし驚きだ。あのサヤの祖父であるフジがロケット団に協力していたなんて。そして何よりミュウツーという存在、ミュウというポケモンはオーキド博士の研究所で読んだ本の記述で知っていたが、それの遺伝子を採取する事に成功していたらしい。それはとんでもない事で、事実だとすれば世界を揺るがしかねない事だ。・・・しかし、それよりも今はやるべきことがあった。

「吐いてくれてありがと・・・。じゃ、用済みね。フシギソウ」

「フシャ」

「テメェ何を・・・グエッ!」

ボールから出したのはフシギソウ。フシギソウは蔓を伸ばして男を壁に叩きつけ、気絶させた。手加減するなと命じているし、フシギソウも怒っていたため、骨折くらいはしているだろうが知ったことでは無い。

「テメェ・・・、アタシとやろうってのかい?別に、あのガラガラは邪魔したから殺してやったのよ!いい見せしめだったわ‼︎」

女がそう笑って言う。

「やめるんじゃ!」

フジはそう叫ぶが、それを聞くスミレではない。

「・・・母親を殺されたカラカラの為、そして何よりお前らと似たような屑に親を殺された私の仲間の為、私はお前という汚物を掃除する。生きて帰れると思うなッ・・・・・・!」

スミレはそう宣告する。その瞳に映るのは絶対零度と表現するのが適切な程の殺意と、煉獄の如く燃える憎悪。それらが刃のように、女に突き刺さる。

「だったら・・・送ってやるよ!地獄へな‼︎行きな、スピアー‼︎」

「スピィィィィ!」

女が出したのはスピアー。スミレは嫌そうな顔をする。前スクール時代、スピアーの進化前であるビードルの死体をロッカーに詰められ、スミレが殺したと勘違いしたスピアーの群れに襲われて瀕死の重傷を負ったことがあった。ちなみにその時の傷は、まだ体に残っていたりする。それ以降、スミレはスピアーがあまり得意ではなかった。

「ハッ!今更怖気付いたかい?今なら跪いて命乞いをすれば助けてやるわ」

女は顔を顰めたスミレを見て、嘲笑を浮かべる。

「・・・いや、とことん癪に触る女だと思ってね。殺るよ、ラプラス」

「ラァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

怒りを胸に、ラプラスが吠える。通常、ラプラスは穏やかで殆ど怒らない。怒りっぽいとされる個体すらも、他のポケモンと比べると数段穏やかだ。そんなラプラスが本気で怒りを爆発させた。ラプラスには、親を殺される痛みが誰よりも分かっていた。そしてそんな孤児に手を差し伸べ、絶望から救ってくれる存在の尊さを知っている。だからこそ、ここでこの女を殺してやろうと思っていた。サヤとカラカラが共に歩くこれから先の明るい未来に、この女は存在してはいけないのだ。たとえその為に、自分が人殺しの罪を負ってでも。

「へぇ、ラプラス・・・。奪えば高く売れそうじゃない!スピアー、【みだれづき】‼︎」

スピアーが両手の針を輝かせ、高速で空を駆ける。

「迎え撃て、【こおりのつぶて】」

ラプラスは氷の礫を連続で発射するが、スピアーは体に掠らせつつも突破し、ラプラスの体を連続で突く。

「追い討ちよ、【どくばり】!」

「噛みついて叩きつけろ」

スピアーはその針に毒々しいオーラを纏わせるが、【みだれづき】の影響で接近していたため、ラプラスに胴体に噛みつかれ、何度も何度も地面にたたきつけられる。

「ラプラス、飛ばして【みずのはどう】」

ラプラスは首を動かしてスピアーを投げ飛ばすと、追い討ちで水のエネルギー弾をぶつけてタワーの壁まで吹き飛ばす。

「なにやってんだい⁉︎役立たずがっ!スピアー、【みだれづき】‼︎」

スピアーは再び【みだれづき】の体勢に入るが、最初の勢いはもうない。

「止めだ、【みずでっぽう】」

最後は水流による狙撃。胴体を撃たれ、吹き飛ばされたスピアーはそのままフラフラと地に落ち、気絶する。

「クソッ!役立たずめ‼︎次はコイツよ、行きなさい!ガラガラ‼︎」

 

 プチリ、そんな音が聞こえた。それは僅かに残ったスミレの理性が切れる音。よりにもよってガラガラを殺した女が、ガラガラを手持ちに入れているのだ。スミレで無くても女を外道と評し、怒りを爆発させただろう。

「・・・・・・ガラガラを手持ちに入れていたのか。仮にもお前が連れているヤツと同種のポケモンを、お前は自慢げに殺したと宣ったか外道!!!!」

スミレは思わず怒鳴る。地獄の炎のように燃え上がる憎悪が、スミレの理性を焼き焦がす。

「はぁ?何言ってんの?同じ姿でも全然違うわよ!アタシのガラガラは人も殺せる立派な道具、あのガラガラはアタシの邪魔をした消えて当然のゴミ。ほら、全然違うでしょ?」

女の言葉に、スミレは怒りを露わにした表情から一転し、無表情になる。

 

「・・・・・・そう。じゃあ、お前というゴミは消さなきゃ。行けるよね?ラプラス」

ラプラスはスミレの言葉に無言で頷く。

 

「やれるもんなら、やってみなぁ!ガラガラ、【ボーンラッシュ】!!」

ガラガラが手に持つ骨を輝かせ、走る。

「やれ、【うたう】」

ラプラスの歌が響き、ガラガラが崩れ落ちる。

「チッ!眠ってんじゃないよ、この無能‼︎」

耳を塞ぎ難を逃れたらしい女が叫ぶ。

「やれ、【みずのはどう】」

眠り、倒れるガラガラを水のエネルギー弾が容赦なく吹き飛ばし、ガラガラは目を覚まさぬまま宙を舞う。

「追撃だ、【みずでっぽう】。長時間放射して」

スミレの冷徹な指示が響く。ガラガラはじめんタイプ、みずタイプの技は効果抜群だ。そんなガラガラに水技を当て続けると、そのダメージは莫大なものとなる。この攻撃で目覚めたガラガラだが、既に満身創痍だ。そこに容赦なく【みずのはどう】が叩き込まれ、ガラガラは1ダメージすら入れられぬまま倒される。

「役立たずが・・・グハッ!!」

ガラガラへの不満を吐き捨てた女の腹に、【みずのはどう】が炸裂した。衝撃に吹き飛ばされ、タワーの壁に叩きつけられて失神する。

 

「ラプラス、【みずでっぽう】」

しかしラプラスが顔に軽く水を掛け、強制的に目覚めさせる。

「ぁ・・・ああ・・・・・・?て、テメェ・・・なめて・・・グホォ!」

ラプラスが続いて【みずのはどう】を放ち、女を痛めつける。

スミレは無表情に、その光景を見ていた。これ以上やれば、自分もあの女と同類に堕ちる事は理解していた。それでも、殺意を抑えることなど出来なかった。

「・・・・・・貴方は簡単には殺さない。タワーの幽霊が成仏できるように、できるだけ酷い状態で殺してあげるし、ラプラスに罪が行かないように、私自らトドメを刺してあげる。どの道屑は死んだ方が世のためだ。精々惨めに足掻いて死ね」

スミレは淡々と話しながら、倒れる女に近づく。女の表情に、怯えが浮かんだ。

「や、やめ・・・・・・ころさないで・・・・・・し、死にたくない・・・・・・アタシ・・・・・・アイツに命令されて仕方なく・・・・・・ね?・・・だから、お願い・・・・・・」

僅かな理性も吹き飛んだスミレが女の惨めな命乞いなど聞き届ける筈がなかった。女を仕留めるべく、一歩一歩、近づいてゆく。

「や、やめるんじゃ!!」

そんなスミレに、フジが縋るように腰にしがみついた。

「・・・何です?」

「殺してはならん!・・・お前さんは、こちら側へは来ちゃならん‼︎未来ある若者が、そんな奴の為に人生を棒に振るでない!!」

「・・・・・・未来なんて、知ったことじゃない。私にそんなもの、ある訳がない・・・。だからせめて、あのカラカラが幸せに生きれるように、この先生まれるであろう、ラプラスのような境遇になる子を少しでも減らせるように、私があの外道を始末する。私のポケモンも博士に送ればいい!私が全てを背負えばいいッ・・・!だからその手を離せッ・・・‼︎」

ラプラスは動かない。ジッとスミレを見つめている。普段、スミレの暴走を止める役目のフシギソウは、何かを察して男を蔓で縛りながらも動かない。

 

 背後からしがみつくフジを振り切ろうと力を振り絞り、自分の影に潜むソレと目が合った。

「・・・え?」

呆然と声をあげるスミレを他所に、ケタケタと笑いながら影から飛び出したのはゴースト。予想外の乱入者にスミレは動揺し、それと同時に理性が戻る。このゴースト、実はサダコが予めスミレの影に忍ばせておいたものだ。サダコはスミレの暴走を予知し、そして壊れかけの家電のように、ショックを与えてやれば勝手に戻ることも自慢の占いで知っていた。だから、ゴーストを派遣し、スミレを動揺させるよう命じたのだ。

 

「・・・・・・ラプラス、付き合わせてごめん」

ラプラスはスッキリしたと言わんばかりに満足げに鼻を鳴らすと、ボールの中へ戻ってゆく。

「ジュンサーです!フジさん、ご無事ですか⁉︎」

そして図ったように、ジュンサーらが到着。ポケモンタワーの戦いは、一応の決着となった。




 ガラガラ殺しの実行犯にガラガラを持たせるというセンス、我ながら頭おかしいと思います。

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