ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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 サダコ戦です。やっぱりバトル回は文字数稼げますね




第34話 マヨイジム戦 サダコvsスミレ

 スミレの目の前に立つのは小さく、寂れた洋館。しかしこここそがスミレが挑むサダコをジムリーダーとするジム、マヨイジム。使用タイプはゴーストで、カントー地方ということもあり、使用ポケモンの幅は非常に狭い。スミレの精神は兎も角、準備は万端。スミレはいつも以上に逸る気持ちに任せ、洋館の扉を開けた。

 

 洋館の中は紫を基調とした、怪しげな雰囲気を持つバトルコート。そしてその奥で椅子に座り、水晶玉越しにこちらを見つめるサダコ。スミレに緊張が走る。

「来たね、スミレ。昨日は迷惑をかけて済まないね・・・・・・じゃが、ワシにもジムリーダーとしての意地がある。負けてやるつもりはないよ」

サダコは昨日見せた弱々しい姿は何処へやら、怪しげな老婆としてスミレの前に立ち塞がる。

「・・・失敗は、敗北は、許されない。私は、強くないと・・・」

スミレが荒んだ目で、呟く。それを見たサダコは、その顔に哀れみと悲しみを浮かべた。

「・・・昨日の今日で、呑まれたかい。成功への妄執に。見ておけば良かったわい・・・・・・しかしワシからは何も言えんし、言う権利もない。ただ、ジムリーダーとして迎え撃つのみ。やりな!審判‼︎」

サダコは悲しみを振り切り、審判に合図を送る。

「これより、ジムリーダー、サダコとチャレンジャー、マサラタウンのスミレによるバトルを始めます!使用ポケモンは2体ずつ、時間は無制限、それでは、両者ポケモンを!」

審判の声が響き、2人はそれぞれボールを構える。

「任せたよ、ユンゲラー」

「ゲラァァ!」

「行きなッ!ゴースト‼︎」

「ゴーッスト!」

出したのはスミレがユンゲラー、サダコがゴースト。サダコのゴーストは、ポケモンタワーでスミレの意識を逸らした、あのゴーストだ。

「バトル、開始‼︎」

両者がバトルコートで睨み合い、審判の号令でバトルが始まる。

「ユンゲラー、【サイケこうせん】」

「ゴースト、【シャドーボール】で相殺しな!」

ユンゲラーが光線を放つも、ゴーストは漆黒のエネルギーの塊を飛ばしてこれを防ぐ。

「ユンゲラー、【ねんりき】」

「ゲラァァ!」

ユンゲラーの強力な念力が炸裂し、ゴーストに不思議なエネルギーが纏わりつきゴーストは動揺する。

「吹き飛ばせ」

「ゲラァァァァ!!」

スミレの指示と共にジムの壁まで吹き飛ばされたゴーストだが、空中で姿勢を整え、激突は回避する。

「ゴースト、【おにび】」

ゴーストは禍々しいオーラを放つ火の玉を複数生成すると、連続でユンゲラーに放つ。

「ユンゲラー、【テレポート】で連続回避」

ユンゲラーはそれに対して【テレポート】で対抗、瞬間移動を連続で行い、縦横無尽に動き回る事で【おにび】を全弾回避する。

「小賢しいね、ゴースト!【シャドーパンチ】‼︎」

ゴーストの手が漆黒のエネルギーを纏い、必中の拳がユンゲラーを吹き飛ばす。

「飛ばされながらでいい、ユンゲラー。【サイケこうせん】」

吹き飛ばされながらもユンゲラーは光線を放つ。ユンゲラーの性格上、打たれ弱いが故に狙いはかなり粗く、出鱈目に連射されるが、それが逆に不規則に動くゴーストを捕らえ、ダメージを与える。

 

「なるほど、やはり強いね。・・・・・・なるほど、妄執に呑まれて初めて熱さを手にするとは、皮肉なもんだ」

スミレの普段のバトルは、よく言えば冷静で、悪く言えば冷めていた。勝ちへ拘る執念も、絶対に諦めないという意地も、バトルを楽しもうとする気持ちもない。ただ淡々と策を練り、それを遂行するのみ。それが悪いとは言わないが、ポケモンと共に限界を超える経験が出来ず、そのまま強者の壁にぶつかり砕け散る。しかし今のスミレには、歪んでいるとは言えど勝利への渇望があった。

『失敗してはいけない』

『強くない自分など無価値』

『勝てなければ努力の意味はない』

自分自身の発言から芽生えた、失敗への恐れ。そこから派生し、歪んだ認識。弱さを自覚し、それでも強くなければと作り上げたハリボテの人格は、自分の心を蝕みながらも相手を傷つける。元から捻くれはしていたし、元から心の弱さはあった。しかしこれは、いつもの暴走のような、ポケモンや人の言葉で止まる状態では無く、かつてスミレが優しいお姉さんのような少女から、人間嫌いで捻くれた少女に変貌したような、人格そのものを歪ませる、呪いだった。

 

 

「やれ、【ねんりき】」

「ゲラッ‼︎」

ユンゲラーの瞳が輝く。サダコは咄嗟に【シャドーパンチ】を指示しゴーストの眼前に放たせると、迫ってきたサイコパワーとぶつかり、小規模な爆発を起こした。

「ふぅむ、どうしたもんかねぇ・・・」

サダコは思案する。勝利を一心不乱に掴もうとする熱さと、相手の実力と状況を見極め、的確に指示を出す冷たさ。強さへの執着で歪んでさえいなければ、スミレはかなり理想的な強いトレーナーに近づいている。スミレとポケモンの信頼関係は、実際の所はかなりガタガタだ。スミレが見ているのは負けない事のみ。普段は仲が良いのか、ポケモン側は嫌な顔一つせずに着いていっているし、自らの主人に勝利を捧げようと奮闘しているからこそ成り立っているが、スミレにバトルを楽しもうという気持ちや、ポケモンと力を合わせて頑張ろうとする気持ちは、カケラ程も無かった。

 

「ユンゲラー、【テレポート】」

スミレの指示で、ユンゲラーがゴーストの背後に一瞬で回り込む。

「しまった!ゴースト、【シャドーパンチ】だよ‼︎」

「ゴォォスト!」

ゴーストは影の拳を振るうが、その前にユンゲラーの技が炸裂した。

「ユンゲラー、連続で【サイコカッター】」

不思議なエネルギーで作られた刃がゴーストを蹂躙し、吹き飛ばす。フラフラになりながらも、ゴーストの体を怪しい光が包み込む。

「させるな、【サイコカッター】」

その前にユンゲラーが【サイコカッター】をぶつけ、ゴーストはコートに墜落する。

 

「あらまぁ・・・じゃが、ワシの思う壺じゃ」

そうサダコが呟くと同時に、倒れて目を回すゴーストから黒いオーラが飛び出して、ユンゲラーを包み込む。

(まさか・・・・・・!)

スミレはゴーストが何をしたかを理解し、自分の失策に震えた。

コートを見ると、オーラは既に消え、ユンゲラーは倒れ伏して動かなくなっていた。

「ユンゲラー、ゴースト、共に戦闘不能‼︎」

審判の声が遠く聞こえ、スミレは呼吸が荒くなるのを感じる。

(あの技は・・・・・・)

「【みちづれ】。自身を戦闘不能にした相手を、道連れにする技さ。お主なら、知っているんじゃないかの?」

スミレの顔が青くなり、冷や汗が流れる。

(失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。私は知ってるはずなのに・・・。私は失敗してはいけないのにッ・・・!)

スミレの脳内を、そんな言葉が駆け巡る。手足は震え、吐き気を覚え、後続のフシギソウのボールもうまく掴めない。

 

「スミレさん!!」

 

声が、聞こえた。勢いよく振り返ると、そこにはサヤと、その影に隠れながらもこちらを見つめる、カラカラの姿があった。

 

「まだ、諦めないでください‼︎カラカラのお母さんの仇を討ってくれたスミレさんなら、きっと勝てます‼︎だから、ジム戦、頑張って!!!」

サヤは、声が裏返りながらも喉が張り裂けんばかりに声をあげる。

 

「・・・どうする?リタイアするかい?」

サダコが、静かに問いかける。だが、スミレの答えは決まった。

「いえ、行きます。・・・もう、失敗は出来ません」

「そうかい・・・そこは、治らないかい」

スミレは、ガラガラの仇を討ち果たす事ができなかった。討ち果たせばそれは殺人で犯罪だが、それでも失敗は失敗。やり損ね、更にはそれ以下の罪で悩み苦しむ自分に嫌悪感を抱いたと同時に、カラカラにも、サヤにも合わせる顔がなかった。だからこそ、もう失敗は許されない。無欠な自分で居なければいけない、そうスミレは思い込んだ。実際、サヤからすればそんな事望んでいない。ロケット団を倒してくれた事は嬉しいし、自分の祖父も無事に帰ってきてくれたので、それ以上は求めてなどいない。しかし、スミレと直接会う機会が無かったが故に、それを伝える事が出来ず手遅れになってしまった。スミレの歪みは、サヤと話すタイミングを逸してしまったが故に起きた悲劇だったのだ。負けてはならない、失敗は許されないという執念に突き動かされるまま、スミレはボールをしっかりと掴む。

 

「勝つよ、フシギソウ」

「引導を渡すよ、ゲンガー‼︎」

「フシャ‼︎」

「ゲンゲロゲェェン‼︎」

それぞれが投げたボールから飛び出すのは、互いの切り札。スミレのフシギソウとサダコのゲンガーだ。

「フシギソウ、【はっぱカッター】」

「ゲンガー、【シャドーボール】!」

フシギソウの放つ緑の刃が、ゲンガーの放つ影のエネルギー弾が、空中でぶつかり合う。

「フシギソウ、【つるのムチ】」

技と技のぶつかり合いで生まれた爆煙を切り裂いて、フシギソウの蔓が唸る。

「避けな!ゲンガー‼︎」

「ゲェェン‼︎」

ゲンガーは右へ、左へと変幻自在に動き、蔓を躱わす。

「逃すな」

そのスミレの指図に応え、蔓が勢いよく伸びる。ゲンガーは地面スレスレを飛び回るが、うねる蔓がコートを叩き、空を裂き、執拗に迫る。

「ゲンガー、【あやしいひかり】!」

ゲンガーは不思議な色に発光するエネルギーの塊を放出する。

「フシギソウ、目を瞑れ。そのまま蔓で牽制」

フシギソウは目を瞑り、混乱を招く怪しい光を回避しつつも、蔓をやたらめったらに振り回す。ゲンガーはその攻撃を受けて吹き飛ばされるも、すぐに空中で姿勢を整え、着地する。

 

 

「全く・・・ワシのジムリーダー人生最後の相手に相応しい強さじゃ。感服するぞ」

サダコはスミレに、そう声を掛ける。

「・・・貴方強い、流石はジムリーダーです。ですが、私は勝ちます。勝たなければなりません」

「そうかい・・・。お主は言ったな、『間違いは誰でもある』と。それはお主にも当てはまる事じゃろう」

「・・・・・・はい。ですが昨日発したあの言葉は、私にとっては自分の行いを正当化しようとする言い訳でしか無かった。だから、私に失敗は許されない」

「失敗は恐ろしい物さ。ワシだって、占いの力に依存する程に怖かった。だが、そうした積み重ねが、今のワシの醜態に繋がった。・・・その執着は、いずれお主の破滅を招くぞ」

サダコが厳しい表情で残酷な真実を告げる。

「なら、破滅など消し去れるほど強くなればいい。絶対的な強さがあれば、破滅なんて回避できるからッ・・・!」

そう叫ぶスミレの瞳を両親が見ればこう評しただろう。

 

『首を吊った頃と同じ目だ』と。

 




ありがとうございました。闇堕ちですがちゃんと光堕ちルートは残ってますので・・・
ちなみに、ゴーストに【みちづれ】を搭載したのは、その方がテンポが良いのとスミレを曇らせたかっただけです。本当はこの時点では覚えません。

マサラ人など、超人の起源の話とかいつしよっかなーと悩み中です。早くてもジョウトかなぁ。

それから、オリジナル小説もまた別サイトのアカウントも使って投稿したいんですよね。

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