ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
お気に入り、感想がジリジリ伸びてきていて嬉しいです。可能であれば、評価の方もよろしくお願いします
「・・・・・・!」
シオンタウンを出て、鍛えつつ進んでいたスミレは見覚えのある人達に遭遇し、目を僅かに見開く。
「あー!スミレじゃない‼︎」
大声でこちらを呼び、手を振ってくるのはカスミ、驚いたような表情でこちらを見るのがサトシ、にこやかに手を振るのがタケシ。
「久しぶりだなぁ。元気だったか?」
タケシがスミレの肩を軽く叩く。
「はい、まぁなんとか」
スミレの返答と様子に、タケシは一瞬訝しげな表情になるが、すぐに笑顔に戻る。
「どこに向かってるの?」
カスミの問いかけに、スミレはすぐさま目的地であるヤマブキシティと答えると、3人・・・主にサトシが、苦い顔をした。
「オレ達は今からシオンタウンに行くところさ。なぁ、スミレはヤマブキジムは挑戦したか?」
サトシが苦い表情のまま聞き、スミレは顔を横に振る。
「・・・いや、挑戦しないつもり。バッジも5個集めたし、あそこは碌な噂を聞かないから」
ヤマブキジムのジムリーダー、ナツメは超能力者でバトルに負けた者を人形にするという噂がある。実際、歴史上でポケモンとの異種交配は珍しい事でもなかったらしく(特に『波導の勇者』伝説が生まれた頃の時代)、現代でも超能力者なんかは意外に多いので、オカルトだと一蹴することもできない。スミレは既に5個、バッジを持っておりリーグ参加まであと3つ。時期的にもまだ余裕があるので胡散臭いジム1つスルーしようが、問題はなかった。
「「5個⁉︎」」
「やるなぁ・・・」
バッジを5個集めたと言うスミレに、サトシとカスミが驚きの声をあげ、タケシは感心する。
「大したものじゃないです・・・。私には力が足りませんから、もっと強くならないといけません」
スミレの謙遜に似た全く別の意味を含む言葉に、タケシは眉を顰める。
「ふむ・・・、そうだ!スミレに頼みがあるんだ」
タケシがいいことを思いついたと言わんばかりに、スミレに頼み事をする。
「・・・なんでしょう」
スミレは面倒臭さを感じつつ、内容を聞く。
「サトシと、バトルしてくれないか?」
⬛️⬛️⬛️⬛️
「これより、サトシ対スミレのバトルを始める!使用ポケモンは1体、交代は自由‼︎時間は無制限!それでは、最初のポケモンを!」
審判を務めるのはタケシ。結局、スミレはバトルを引き受ける事になった。スミレ自身はあまり気が向かなかったのだが、対戦相手のサトシは乗り気、さらにタケシの提案ということもあり結局は対戦することになった。カスミは相変わらず観客で、バトルの直前までサトシを煽っては軽い言い争いをしていて、スミレは呆れたものである。だがバトルとなると、サトシは真剣な表情でこちらを見つめる。仮にもこの男はスクールの同級生でたった一度とはいえ唯一、しかも真っ向勝負でスミレを負かした男。スミレが絶対の力を得るならば、いずれ戦いは避けられなかっただろうと思う。
(ここで勝てなきゃ・・・意味がない)
スミレは緊張を感じつつ、1つ目のボールを手に取る。
「ピカチュウ!君に決めた‼︎」
「ピッカァ‼︎」
サトシは被った帽子のツバを後ろに向けると、脇にいたピカチュウに指示を出す。
「・・・ピカチュウか」
スミレは考える。サトシのピカチュウが愛玩用ポケモンに似合わぬ強さを持つ事はマチス戦で承知している。それからある程度は成長しているはずなので、油断は禁物だ。
「仕事、頼むよ・・・バタフリー」
「フリィィィィ‼︎」
スミレが出したのはバタフリー。フシギバナとフーディンはサダコ戦で十分経験値を積んだ上に進化したてで、特にフシギバナはまだ進化後の体に慣れきっていないので除外、ラプラスは相性が悪すぎて除外、ゲンガーはまだ実力の把握が仕切れていない。よって、半ば消去法でバタフリーに決定したのである。
「ピカチュウ、【でんこうせっか】‼︎」
バトルは、サトシの鋭い指示から始まった。ピカチュウは高速で助走をつけると一気に飛び上がり、バタフリーに突進し、ダメージを与える。
「バタフリー、【サイケこうせん】」
「ピカァ⁉︎」
軽く吹き飛ばされたバタフリーだが、空中で素早く体勢を持ち直すと光線を放ち、一撃を当て終えて空中を落下しているピカチュウに直撃、ピカチュウは吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。
「ピカチュウ⁉︎」
サトシがいきなりの大ダメージに動揺する。
「何やってんのよサトシィー‼︎」
「うるさいなぁ・・・!」
そこにカスミの野次が飛び、サトシは顔を顰める。
「ピカ・・・ピッ、ピッカァ‼︎」
「いいぞ!ピカチュウ‼︎」
大きなダメージを受けたピカチュウだが、負けじと力強く立ち上がった。サトシはその姿に思わずガッツポーズをして喜ぶ。
「・・・・・・ダメージは大きい、でもまだ足りてないか」
スミレはピカチュウの姿を観察し、呟く。ピカチュウはでんきタイプな為、【しびれごな】の戦術には頼れない。
「行くぜピカチュウ!【こうそくいどう】だ‼︎」
「ピカピカピカピカピカピカピッカァ‼︎」
サトシの指示で、再びピカチュウは高速で走り出す。【でんこうせっか】と違い、この技は攻撃こそできないものの、自身の素早さを上げることができる技だった。
「バタフリー、【かぜおこし】。近づけさせるな・・・!」
「フリィィィィ‼︎」
バタフリーは烈風を巻き起こし、砂埃が舞う。バタフリーが起こした砂嵐はピカチュウだけでなくサトシの視界をも塞ぐ。ピカチュウはあまりの風と砂埃に思わず足を止めた。
「バタフリー、【むしくい】」
「フリィッ‼︎」
スミレの目からも見えないバタフリーに指示を出すと、バタフリーの応える声がどこからか聞こえる。
「クッ・・・!イチかバチかだ‼︎ピカチュウ、【10まんボルト】‼︎」
「ピィィィカァァァチュウゥゥゥ!!!!」
ピカチュウの放った激しい電撃が砂埃を吹き飛ばし、烈風を切り裂いた。しかしバタフリーは器用にそれを避けると、ピカチュウに接近して【むしくい】を決める。
「負けるなピカチュウ!尻尾で反撃だ‼︎」
バタフリーの近接攻撃に苦悶の表情を浮かべたピカチュウだが、吹き飛ばされるまでのほんの数秒の間で尻尾に電撃を纏わせ、バタフリーの顎をカチ上げた。そして互いに痛み分けの状態で吹き飛ばされる。
「負けてくれるな、バタフリー・・・ッ!【サイケこうせん】!」
「ピカチュウ、【10まんボルト】‼︎」
不思議なエネルギーの光線と10万ボルトの電撃が空中でぶつかり、爆発を起こす。しかしスミレのそれは、囮だ。
「バタフリー、【むしくい】!」
バタフリーが爆風を貫いて、ピカチュウの眼前に迫る・・・・・・その時、ピカチュウとバタフリーを何処からか飛んできた檻が拘束した。
「なんだぁ⁉︎」
サトシが困惑の叫びをあげると、見覚えのあり過ぎる人影が躍り出る。
「なんだ、かんだと聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな敵役」
「ムサシ」
「コジロウ」
「銀河を駆けるロケット団の2人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」
「なーんてニャ‼︎」
「久しぶりに見た気がする・・・。マトモな方のロケット団」
スミレの心からの感想が漏れる。なお、ロケット団は犯罪組織なので人格が比較的マトモでも社会的に全くマトモではないのであるが、今のスミレはシルフカンパニー、そしてポケモンタワーでマトモじゃない方のロケット団と連戦した後である。サトシ一行がうんざりしてすらいる口上にすら、何処か暖かさと優しさを感じた。
「いや・・・ロケット団にマトモも何もないでしょ・・・・・・」
カスミの呆れ気味のツッコミが入る。
「いや、シルフカンパニーで戦った連中とかバトルに負けるくらいならって【じばく】させるような連中だったし、ポケモンタワーにいた2人組は気分で自分の手持ちと同種のポケモン殺した上に殺人経験を自慢げに語るような屑だったから・・・・・・」
『うわぁ・・・・・・』
スミレの口から語られたロケット団のあんまりな非道さに、ロケット団含む全員がドン引きする。
「大丈夫だったのか?」
タケシが真っ先にスミレを心配する。
「・・・・・・問題ありません」
実際は、全く大丈夫じゃなかった(主にメンタル面)のだがそこは割愛する。
「あー、俺らはそんなことやってないからな?な?・・・イダッ‼︎・・・・・・やめろよ・・・」
コジロウが冷や汗をかきながら弁明するが、ムサシがその尻に蹴りを入れて中断させる。
「ごちゃごちゃ言ってないで、アタシらはアタシらの仕事するわよ‼︎」
「という訳でピカチュウ、そしてついでにバタフリーも頂いていくのニャ‼︎ニャー達はポケモンを殺したりはしないので安全安心だニャ‼︎」
シリアスな空気をぶった斬り、ムサシとニャースが得意げに宣言した。
「・・・戯言を」
比較的マトモとはいえ、バタフリーを捕らえられて黙っているスミレではない。
「仕事だ、フシギバナ」
「バァァァナァァァ!!!!」
「ピジョン、君に決めた‼︎」
「ピジョォォォォォ‼︎」
スミレがフシギバナを、サトシはピジョンを出す。
「行けぇ!ドガース‼︎」
「ドガァァ」
「行きなさい、アーボ‼︎」
「シャーッボ‼︎」
コジロウがドガースを、ムサシがアーボを出し、臨戦体勢を取る。
「フシギバナ、【はなふぶき】」
「バァァァナァァァ‼︎」
フシギバナによって勢いよく放たれた大量の花弁が、アーボ、ドガース、ピジョンの3体を平等に打ちのめし、吹き飛ばす。
「何するんだ、スミレ‼︎」
「纏めて潰すほうが効率的でしょ。避けないのが悪い」
「なんだとぉ⁉︎」
サトシは憤慨するが、スミレはサトシの顔をちらりとも見ずに悪びれもしない発言で返す。
「仲間割れか?ならチャンスだ!ドガース、【ヘドロばくだん】‼︎」
「ドガァァ」
ドガースは悪臭を放つヘドロの塊を放つ。
「フシギバナ、【はっぱカッター】」
対するフシギバナは【はっぱカッター】を放ち、これを相殺する。
「アーボ、【かみつく】‼︎」
「シャーッボ‼︎」
「ピジョン!避けて【かぜおこし】‼︎」
アーボの噛みつきをひらりと躱したピジョンが、アーボに烈風をぶつける。強風に煽られて空中でバランスを崩したアーボは、そのまま地面に叩きつけられる。
「フシギバナ、【はなふぶき】」
再び放たれた大量の花弁。色鮮やかな花弁がドガースとアーボを呑み込み、ダメージを与える。だが、ピジョンはダメージを食らわない。
「行くぜピジョン!【ふきとばし】‼︎」
ピジョンはその翼を力強くはためかせ、自身に向かってくる花弁をロケット団の方に吹き飛ばしたのだ。これにより、一部の花弁が檻を壊し、ピカチュウとバタフリーは自由になる。
「ピカチュウ!無事だったか?」
「・・・おかえり、バタフリー」
サトシとスミレはそれぞれ捕まっていた自分のポケモンに声をかけると、ロケット団を睨みつける。
「ピカチュウ、【10まんボルト】!!」
「バタフリー、【サイケこうせん】」
最後は捕まっていた2体の恨みも込めた一撃が炸裂、大爆発を起こした。
「今回もダメだったかー」
「でもま、アタシらはポケモンに優しく、ピカチュウを狙わないとね」
「そうなのニャ。・・・という訳で今回も」
『やぁ〜なか〜んじぃ〜‼︎』
「ドガァァァァ」
「シャーッボ‼︎」
その叫びを残し、ロケット団は空の彼方に消えていった。
⬛️⬛️⬛️⬛️
「じゃあ、気をつけてな」
タケシは苦笑いでスミレに声をかける。サトシは先程の【はなふぶき】への巻き込みが余程気に食わなかったらしく拗ねていて、カスミは気まずげな表情を浮かべている。スミレの蒔いた種とはいえ、なんとも空気の悪い別れである。
「・・・・・・そちらも、お気をつけて」
スミレは小声でそう返すと、彼らに背を向けて歩き出す。スミレ自身、あの時の選択が間違っているとは微塵も思っていない。避けられなかったのならそれはサトシの指示が遅く、避けられないほどにピジョンが弱かったのが悪く、範囲攻撃という当然の手段を使った自分は正しい。少なくとも、今のスミレにはそうとしか思えない。
「私は・・・悪くない。アイツが弱いのが悪い・・・・・・」
スミレは自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
ありがとうございました。
メタ的視点で言うと、サトシのピカチュウとスミレのバタフリーって結構役目が似てるんですよ。パーティーの一番手、切り込み隊長って意味では。ピカチュウは結構一番手で起用されがちですからね。それにピカチュウvsバタフリーにした意味は、後々分かります(かなり後なのでエタらなければ)
評価、感想、お気に入り登録等よろしくお願いします