ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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お待たせいたしました。満足いくクオリティにはやはり届きませんが、出せる程度にはなったかと思います。



第39話 ニドキングとの交渉

 ブリーダーに場所を聞き、ニドキングが群れを形成する森へとやってきた。ニドキングはカントー地方のポケモンの中でも獰猛な種族だが、刺激しなければ何の危険も無い。だから、ニドキング一族がラッキーのタマゴを襲ってまで奪ったと言うことに引っ掛かりを覚える。ラッキーは基本的に温厚で、人間にも食される無精卵なら【タマゴうみ】という技で量産できるので頼めば渡してくれる。それなのに何故、わざわざ奪いに走ったのか。ブリーダーの話によると、事件が起きたのはブリーダーがラッキーを連れて薬草探しの為、森に入ったとき。大勢のニドラン達に襲われて、応戦している間に無くしたらしい。正直、ニドキングが大規模な群れを率いて住んでいる森に、碌な戦闘経験のないラッキー1匹と共に入るなど自殺行為でしかないのでスミレは呆れ返ったのだが、そこをあまり責めても何の意味もない。

「・・・・・・胸騒ぎがする」

スミレはポツリと呟く。ザワザワと静かに揺れる木々と微かに揺れる草むらが怪しげな雰囲気を醸し出し、スミレの心を騒がせる。機動力のあるバタフリーとフーディンに周囲を見張らせ、スミレの影にゲンガーが入りスミレへの直接攻撃に対応させているのだが、それでも落ち着かなさを感じて周囲を見回す。そして、その胸騒ぎの正体を理解した。

(見られている・・・)

スクール時代に味わった、四方八方から浴びせられる侮蔑と嫌悪の視線とは違う、警戒の視線。スミレ達は既に、周囲を囲まれていたのだ。

「フーディン、バタフリー、ゲンガー、ありがとう」

スミレは一歩間違えれば殺される、という場でスミレは敢えてポケモン達をボールに戻した。超人と違い、ポケモンとまともに争える体ではないスミレが四面楚歌の状況に自ら身を置くのは無謀で、普段のスミレなら決してやらない。ポケモン達をボールに戻した時、確かにその手は震えていた。失敗すれば、殺される。その妄想でもない、紛れもない事実への恐怖心を感じながらも、スミレは一筋の光明を見た。

「この森でラッキーがタマゴを奪われた件で、貴方達のリーダーと交渉がしたい。・・・取り次いで欲しい」

その方法は、交渉だ。ポケモンとはその多くが高い知能を持つ。その知能の高さといえば人間の言葉を理解し、コミュニケーションを取ることが出来る程。群れのリーダーを務める程のポケモンは最終進化に到達しているなど経験豊富である事が殆どだ。一方で人間のような欲に溺れて堕落した奴は、直ぐに群れを追い出されてそのまま死んでしまうので中々居ないし、群れのリーダーになど、なれはしないのだ。だからこそ、話し合いでの解決が可能なのである。

 しかし、ニドラン達は気が立っていた。ラッキーのタマゴを産ませず、わざわざ有精卵を奪うという方法で手にした程に冷静さを失う何かがあった。それなのに、彼らの前で丸腰になるというのは無謀であった。

「リーノ!」

「・・・・・・っぁ」

茂みから飛び出したニドリーノが渾身の体当たりをぶつけ、スミレは激しい衝撃に苦悶の声をあげ、そのまま倒れる。スミレの手に握られた、1つのモンスターボールが転がり落ち茂みに消えた。

「リーノ‼︎」

スミレを攻撃したニドリーノが一声掛けると、茂みからニドランやニドリーノ、ニドリーナが飛び出して来ると、力無く倒れ込むスミレを大勢で背中に担ぎ上げる。彼らが向かうのはこの森の主、ニドキングの元。若く貧弱な女の肉は、柔らかくて貴重だ。スタイルも良いため余計な脂身もない。出来るだけ損傷を抑えて攻撃しており、殺してもいないため鮮度は抜群、ニドキングもきっと食べてくれるだろうとニドラン達は喜んだ。

「リィィノ!!!!」

ニドリーノの号令で、新鮮な人肉を乗せたニドラン達は森の奥へと歩き始める。薄目を開けてその姿を観察する、スミレの視線に気付かずに。

 

 

▪️▪️▪️▪️

 

「・・・・・・痛ッ!うぅ・・・」

ニドランの背中で気絶した演技をしつつ待つこと数分、スミレは突然土の上に背中から落とされた。

(気付かれた・・・、それとも到着した・・・?)

スミレは訝しみつつも、ちょうどその衝撃で目が覚めたように背中を抑えうめき声をあげる。実際の所、少しだけ痛かったので多少盛りはしたがリアクション全て演技とは言い切れないのだが、それは兎も角として彼らはどうやら、目的地に着いたらしい。その証拠に、周囲を先程囲んでいたニドランやニドリーノ、ニドリーナの何倍もの数がそこいた。此処はまさしく、ニドキングが築いた王国だったのだ。そして、周囲を見回していたスミレの視線が、ある位置で固定される。

 

 ニドキング、ドリルポケモン。タイプはどく、じめん。その強さと技範囲の広さから、トレーナー達に愛用されるポケモンだ。そのニドキングの通常のサイズは1.4メートルだが、スミレの目の前にいるそのニドキングは少なくとも2メートルはあるだろう、という大きさだ。そのニドキングが、大木にもたれるように座り込み、目を閉じている。

「大きい。あれが、この森の王。でも・・・あれは・・・・・・」

スミレは、ニドキングを見て気が付いた。何故、ニドラン達がわざわざラッキーから有精卵を奪い取ったのかを。

 

「・・・・・・老いていたのか、森の王が。だから栄養価の高い食材を必要としていた。しかし通常、この森にラッキーは生息していないし栄養価の高い人間も来るのは腕利きのトレーナーばかり。だからあのブリーダーとラッキーが森に入ったのを好機と見て、アイツらはタマゴを奪った」

スミレの声に、ニドキングは僅かに目を見開く。彼は眠っていた訳では無かったのだ。

「・・・キィィング」

ニドキングの低く、重い声が森に響きニドラン達が慌てふためく。

「・・・何を?」

「キィィィィィィング!!!!」

スミレの困惑を他所に、ニドキングは咆哮をあげる。まるで『自分の決定に従え』と言わんばかりに。ニドラン達は暫く何かを渋る素振りを見せるが、ニドキングに睨まれて1体のニドリーナが森の奥に行くと1つのタマゴを持ってきた。

「あれは・・・、ラッキーのタマゴ」

スミレは降って湧いた幸運に安堵の息を吐く。まだ、ニドキングはタマゴを食っていなかったらしい。しかしそれだけでは終わらない。ニドラン達がスミレに体当たりしたニドリーノとスミレを囲うように円を作る。

「リーノ!リノリーノ‼︎」

ニドリーノが威勢よく吠え、スミレは状況を察した。要は、戦って勝てば良いのだ。

 

「スミレさん!」

「ラッキー‼︎」

と、声が響いてニドラン達は一斉に声のする方向を向いた。スミレはニドリーノの方を向いたまま、背後に視線を遣ると其処にはブリーダーとラッキーの姿が。

 

「・・・自殺志願ですか?」

スミレが辛辣に来た理由を問う。そもそも、何故この場所が分かったのだろうか。

「ゲンゲロゲェェェン!」

ブリーダーの影からゲンガーが飛び出し、スミレは彼がブリーダー達を呼んだことを理解した。スミレはニドリーノの攻撃を受けた時、敢えてゲンガーのボールを転がした。万が一食われた時に道連れにしない為である。しかし、結果として彼は戻ってきた。戦力にもならない増援を連れて。スミレは苦い顔をする。正直、交渉が纏まりかけの段階で首を突っ込まれると拗れそうで嫌なのである。

「ゲンガーが慌てた様子で戻ってきて、何かあったんだと思いまして・・・。居ても立っても居られずに、つい」

ゲンガーのボールをスミレに返しつつ、恥ずかしげに笑うブリーダーに、思わず呆れてため息が出る。

「・・・余計な真似を。ニドキング!其処のラッキーがそのタマゴの親です‼︎そのニドリーノに勝てば、返してくれるということでよろしいか‼︎」

ニドキングは、スミレのその言葉にゆっくりと、深く頷いた。

 

「リィィノ!」

ニドリーノは威勢よく吠え、スミレを威嚇する。スミレは腰に付けたボールを手に取り、構える。出すのは勿論、最強の相棒。

「仕事だ、フシ「ゲェェン!!!!」・・・何のつもり?」

しかし、スミレとニドリーノの間に、ゲンガーは飛び出した。スミレは思わず、ゲンガーを睨み付ける。

「ゲェン‼︎ゲンゲロゲェェェン!!!!」

ゲンガーはスミレの苛立ちにも物怖じせず、懸命にアピールをする。まるで『自分にやらせろ』とでもいうように。スミレは苦虫を噛み潰したような表情をする。トレーナーとポケモンは家族であり友、対等な存在とはいうが、戦闘に置いては明確な上下関係が存在する、とスミレは考えている。トレーナーが指示しポケモンが従う、という風に。それが対等であることを意識し過ぎてバトルに於ける指示と行動が噛み合わなくなり、パーティーが壊滅する事は有りがちな事である。ポケモンのやる気を買う、というのは良いように聞こえるがスミレの戦術に於いてその行為は少なくともスミレの戦術そのものを破綻させる、役割の放棄にあたる行為だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・分かった。任せるよ、ゲンガー」

しかしスミレは、悩みながらもゲンガーの運用を決めた。ゲンガーは気まぐれで、スミレの指示を無視することは多々あった。それが、積極的に従ってくれるならば使ってやるのも1つの手だ。

 

「ゲェン!」

「リィィノ‼︎」

 

ゲンガーとニドリーノがニドラン達が作った輪の中心で睨み合う。

「ゲンガー、【シャドーパンチ】」

最初に動いたのはゲンガー。影の拳を振るい、ニドリーノの横っ面を殴り飛ばす。しかし空中で身を翻し、体勢を整えたニドリーノは着地と同時に地を蹴り突進、ゲンガーを額のツノで弾き飛ばす。

「ゲンガー!」

ブリーダーの悲鳴に近い叫びが響くが、一撃食らった程度でやられる程ゲンガーも弱くはない。直ぐに立ち上がって不敵に笑う。

「ゲンガー、【シャドーボール】。連続で撃って牽制しろ」

「ゲェェェン!」

ゲンガーは影の玉を5つ生成すると勢いよく発射し、それは怒涛の勢いでニドリーノに殺到する。

「リノリノリノリノ・・・リィノ⁉︎」

対するニドリーノはツノを輝かせて【シャドーボール】を迎撃し、4発を防ぐも5発目を受け、吹き飛ばされる。

 

「あと一撃くらいかな・・・」

スミレは呟く。ニドリーノにゲンガーへの有効打は【つつく】くらいしかなく、その上傷だらけ。沈むのも時間の問題だった。

 

「リィィ・・・ノォォ!」

ニドリーノは薄れゆく意識を必死に繋ぎ止めながら、気合いを入れる。彼は、この群れの次のリーダー最有力候補であった。

 

 

 

 




終わり切らず、次回に持ち越しです。
ゴールデンウィーク、大学の課題が多くてあんまり執筆の時間が取れないです。すみません、また少しお待ち頂くと思います。できるだけ早く投稿しますので、どうぞよろしくお願いします。
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