ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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40話です。・・・難産でした。遅くなり、申し訳ありません。相変わらず、自分の理想ほど面白くはないです。文章力が足りない


第40話 王となれ

 『いいか、お前はいずれ儂の座を継ぐ者となるのだ。いいな』

ニドキングから、そう伝えられたのはニドリーノに進化して直ぐ、群れでの戦闘訓練の後の事だった。この群れはニドキングが1体しかおらず、ニドキングの強さによって持っていると言っても過言ではない程に、脆かった。だからこそ、ニドキングは嬉しかった。若きニドリーノに、群れを率いる資格を見たからだ。

『何故ですか⁉︎俺には、貴方の王座を継ぐに値する力などありません‼︎』

ニドリーノは憤慨する。ニドリーノは、群れの王という座が嫌な訳ではない。ニドキングはニドリーノにとって、幼い頃から憧れ、王としての姿をニドリーノの魂に刻みつけた、雲の上の存在。彼を慕っているからこそ、彼の跡を継ぐのが自身だというのが王の座への侮辱に思えて仕方がなかったのだ。

『儂はそう遠くないうちに寿命を迎え、死ぬ。そして、あの訓練を見て分かったが、お前はいずれ、儂をも超えるニドキングに至るだけの才能がある。ならばお前に、群れを託して然るべきだ』

ニドキングは、ニドリーノの気持ちに気付きながらも、ニドリーノに才能があると言い切る。そもそもこの群れは、一体をヌシとして支配していたニドキングを慕って集まったもの達による集団だ。最終進化は王である老いたニドキングのみという、群れと呼ぶにはあまりに脆いもの。王として君臨するニドキングが死ねば、群れのポケモン達は生存競争に敗れ、殺される事は想像に難くなかった。

『弱気な事を仰らないで下さい・・・!貴方がいなければ、この群れはッ・・・‼︎』

ニドリーノは死ぬというニドキングの言葉に異を唱える。彼はいつだって最強の守護者で、つい先日も大規模なサイドン率いる群れを追い返したばかりなのだ。弱っているなど、信じ難いことだった。

『いいや、死ぬ・・・!儂には分かるのだ、自身の最期が。だが、儂亡き後、群れを守ってやれる者はいない。だからこそ、お前は悩み、強くなれ。そして儂の死後、お前自身が望む群れを作ってゆくのだ』

 

 

▪️▪️▪️▪️

 ニドキングの言った事は本当だった、ニドリーノがそう認識するのにあまり時間は掛からなかった。ニドキングが体調を崩し、寝込むようになったのだ。ニドリーノは、焦る気持ちを糧に森を走り回った。そして、ラッキーのタマゴ強奪に至ったのだ。

『断る』

ニドキングは、差し出されたラッキーのタマゴを、拒否した。

『何故ですか⁉︎ラッキーのタマゴは栄養が豊富、食べればきっと元気になれます!』

ニドリーノにとって、ニドキングは誰よりも死なせたくない存在であった。偉大なる彼を生かす、その為に態々、タマゴを取ってきたのである。より栄養価の高いと言われる、有精卵を。

『だが、そのタマゴからは子が生まれる。それを死に損ないの命を繋げる為だけに犠牲にすることなど、できぬ』

ニドキングは、静かに首を横に振る。

『ですがッ・・・!我々にとっては貴方こそが王なのです‼︎貴方がいなくなると思えば苦しいのです、悲しいのです‼︎だから、居なくならないで下さい‼︎我々を、置いていかないで下さい!!!!』

ニドリーノの目から、思わず涙が溢れる。恥も外聞も投げ捨てて、惨めに写ろうとも、ニドキングに縋り付いて訴える。どうか死なないでくれ、と。

『・・・・・・・・・分かった、食おう。だが、条件がある』

ニドリーノの熱意に、条件付きとはいえ、ニドキングは折れた。そして話された条件に、ニドリーノは目を見開いた。

 

▪️▪️▪️▪️

 負けられない、そんな思いがニドリーノの傷まみれの体を突き動かす。ニドキングに出された条件、それは1月以内にタマゴを取り返しに来るものがいない事。そして取り返しに来たものが弱い事。しかし結局、1人の少女がポケモンと共に取り返しに来た。そしてニドキングは彼女を認め、今はその少女のゲンガーに敗れかけている。そんな事、許容できる訳がない。

「リィィ・・・・・・ノォォォ!」

ニドリーノはゆっくりと、だが力強く大地を踏み締め、立ち上がる。ただひたすらに、大切な王を救う為。例え非道と呼ばれても、絶対に助けたい。その為に、ここで負けるわけには、いかない。

 

 ニドリーノの全身が、青白い光に包まれる。四足歩行の足は後ろの二足で歩けるようになり、体は大きく、そして力強く成長する。

「キィィィィィィング!!!!」

ニドキング。敬愛する王と同じ姿にして、群れの王の資格を満たした姿。大切なモノを守る為、ニドリーノは限界を超えたのだ。

 

「ニドキングに・・・進化した⁉︎」

ラッキーらのブリーダー、アカマツは驚愕する。バトル中の土壇場での進化、というのは中々見ない現象で、沢山のポケモンの進化を見てきたアカマツにとっても、初めての経験だった。しかも、本来アイテムで進化するはずのニドリーノが、アイテムも無しで進化するなど、あり得ない話であった。

「・・・・・・なるほど、だけど関係ない。【シャドーボール】」

スミレは警戒心を露わにする。ニドキングは技のデパートなんて言われるほどの技範囲を持つ、強力なポケモンだ。月の石を使わずに進化したのは驚愕すべき事実だが、それを考えるのは研究者の仕事であって今この瞬間のスミレではない。

「キィィィィィィング!!」

ニドキングが、ゲンガーの攻撃をものともせず、その巨体に似合わぬスピードで突進した。その鋭利なツノを輝かせ、反応が遅れたゲンガーを弾き飛ばす。【メガホーン】だ。

「ゲンガー、【シャドーボール】。連打して」

スミレは冷静に指示を飛ばすが、ニドキングの迫力に怯んだゲンガーは思わずその指示を無視した。一気に勝負を決めるべく接近し、【シャドーパンチ】を叩き込む。

「キィィング」

ニドキングは唸り、一歩後方に下がるが、腕を払ってゲンガーを叩き、さらにお返しとばかりに【つつく】を決める。クリティカルヒットしたその攻撃が、一気にゲンガーをスミレの側に叩きつける。

「・・・なるほどね。これは、面倒な事になりそう」

スミレの頬を、冷や汗が伝う。おそらくはこのニドキング、フシギバナともまともに戦えるだけの戦闘力だ。最悪、ゲンガーに【みちづれ】を使わせてニドキングを潰し、その後でフシギバナの【はなふぶき】辺りでニドラン達を一掃して強奪するのも手だ。【はなふぶき】を使えば、アカマツとラッキーの身も危ないが、成功のために手段を選んでいられない。

「ゲンガー、【シャドーパンチ】」

そうと決まれば、体力調整だ。おそらくカウンター攻撃を食らい、相当なダメージを受けるだろうがそれがゲンガーの仕事なのでやって貰おう。当のゲンガーは、やけくそ気味に影を纏った拳を構え、ニドキングに突撃する。

「キィィング!!!!」

対するニドキングは【メガホーン】。ツノを輝かせて突進する。そして両者が今まさにぶつかろうとする、その時、ニドキング王が割り込んだ。ニドキングの角とゲンガーの拳を片手でそれぞれ押さえながら、力強く立っていた。

 

 

▪️▪️▪️▪️

『どうして・・・ッ!どうして、止めるんですか⁉︎オレは、ただ貴方に生きて欲しいだけなのに・・・・・・‼︎』

『もうよい。お前はもう、王の資格を得た。お前に出した条件は、お前を成長させるため・・・。分かってくれとは言わない、ただ、権利が欲しいのだ。死に場所を選ぶ、その権利が』

『ですが・・・』

 

 

『しつこいぞ!!!!!!!』

 

ニドキング王の、怒声が響いた。直後に、大きな咳を繰り返す王の姿は、まさに満身創痍。スミレの目には、どう考えても延命不可能な段階としか映らなかった。それでも、力強く大地を踏み締め、立つその王の姿は、まさに物語に聞いた、"王" そのものであった。

 

『儂は王!・・・誰にも縛られず、支配されず、ただ力を極めた男の成れの果て‼︎・・・・・・そんな王たる儂に、度重なって命令するとは無礼なり!!!!儂は好きに生き・・・好きに戦い・・・好きに死ぬ!これを侵すことなど、誰にも許される事ではない‼︎さぁ・・・タマゴを客人に渡すのだ!!!!』

 

その言葉が、森を揺らす。まるで雷撃のようなプレッシャーが森中に響き、言葉が分からぬ人間の魂すらも震わせる。思わずアカマツは尻餅を付き、スミレも片膝を付く。ニドラン達も震えていたが、叫び終わり咳き込むニドキング王を見て、そそくさとタマゴをラッキーに返却した。

「ありがとうございます!」

アカマツは王の威圧のせいで青い顔を綻ばせ、王に向かってそう声を掛ける。

『当然の事で感謝されるとは・・・まぁいい。では、話そうか』

ニドキング王は地に腰を下ろし、若きニドキングに目を向ける。

『申し訳ありません・・・差し出がましい真似をしてしまって』

涙をボロボロと流すニドキングに、王は優しく笑う。

『分かればよいのだ。・・・さて、新たなるニドキングよ。儂の死後、お前は群れを率いる事になる。ここに拒否権はない、いいな?』

『はい・・・』

『ならば良し。・・・ニドキングよ、お前は、ただ強くなろうとするな。強くなるだけでは、見えないものがある。・・・弱き者に寄り添い、思いやる事を忘れず、強き者から学び、持った力の使い方を考えよ。ただ暴力を振り撒くだけの力など、災厄となるだけ。・・・例え意味があっても、それは世のためになりはしない。視野を広げ、他の価値観を尊重し、それでもお前の意思を蔑ろにするな。・・・他人の言葉を聞きすぎず、軽んじず、どう扱うかはお前の意思で決めるのだ。何をしようが・・・お前の勝手だが、お前は・・・これから群れの仲間達の命を背負う。・・・理不尽かもしれんが、今この瞬間に置かれた状況から目を逸らすな。運命に抗うだけが正義で無く・・・従うだけが正義ではない。・・・お前自身の手で、運命を乗りこなせ。・・・儂など、ただの死に損ないだ。儂を参考にするのも構わんし・・・・・・儂を真似するのも構わん。だが・・・お前の心に負担を掛けるならば儂の事など忘れてしまえ。・・・お前はお前の力で、この群れを率いる王となれ』

 

『はい・・・はいッ・・・・・・!』

ニドキングは王の言葉を涙を流しながらも、一言一言逃さずに聞き取る。もしかしたら、王の最期の言葉になるかもしれないのだから。

 

「・・・一体、何を」

アカマツは困惑する。人間には割って入ることの出来ない、ポケモンとポケモンとの会話。何かしら、重要な話をしていることは両者の表情から窺い知ることが出来るが、言葉そのものを聞くには、人間という種族は未発達であった。

「引き継ぎ・・・。きっとあれは、今代の王から次代の王へ贈る言葉。それが意味すること、それは・・・・・・」

スミレが呟いた丁度その時、ニドキング王の巨体が、崩れ落ちた。




ありがとうございました。ニドキングの話はもう少し続きます。ゲンガーの掘り下げも中途半端なままですからね

次話はいつになるか分からないです。大学で資格の勉強(学芸員+司書)をしておりまして、課題等で忙しいので・・・。出来るだけ早く投稿できるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします

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