ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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赤に戻りました!!ありがたや……ありがたや…………。もっと頑張ります!!


第56話 わたしからあなたへ

 場面が、切り替わる

 

 『選抜の結果、第一陣としてスミレ、シゲル、サトシ、ヒマワリの4人を研究所所属トレーナーとしてスカウトする 』

オーキドの言葉に、歓声や落胆の声が響く。まずスミレは、学問や実力で見て学年トップ、懸念は体のことだが、スーツさえ着れば旅はできる。シゲルは、スミレに対して最も対抗できる才能の持ち主で、性格を除けば目立った欠点のないオールラウンダー。サトシは、バトルで多く発揮されるその意外性とポケモンとのコミュニケーション能力。ヒマワリは、協調性とポケモン育成への適性。誰も彼もか性格に割と難があるが、それは旅の中で成長していってくれればと期待する。4人の反応を伺えば、サトシは目を輝かせ、シゲルは得意げに胸を張り、ヒマワリは照れながらスミレにチラチラと視線をやり、スミレは無表情で軽く目を閉じている。その姿に、オーキドは彼ららしいと内心苦笑した。

『さ、4人は前に出てきて、意気込みをお願いね 』

どこかテンションの高い担任の指示で、4人はノロノロと教卓の前へ出る。

 

『オレは、ずーっと憧れてたものがあるんだ。それはポケモンマスターの称号。憧れのポケモンマスターになりたい……ならなくちゃって思う。いや、絶対になってやる! 』

サトシは生き生きと宣言する。

『まぁ、サァトシくんには無理だろうがね。ポケモンマスターにはボクがなる 』

シゲルは、サトシへの対抗心を隠さずに、挑戦的な笑みを浮かべた。

『えぇっと……。ヒマはヒマらしく頑張って、たくさんのポケモン達と出会いたいなーって、思います…… あはは………… 』

ヒマワリは、隣で既に一触即発な雰囲気に居心地の悪さを感じ、もじもじとしながらも顔を緩ませた。

『…………どこへ行くのか、とかは分からないですけど。私はとりあえず世界を見たいです 』

スミレは静かに、だが目の奥に確かな希望の灯をともして言った。スミレの心は、少しだけ明るかった。

 

場面が、切り替わる

 

「…………ここは 」

10歳のスミレは、呟いた。同時に悟る。ここが、記憶の終着駅だと。地面が存在しないかのように広がる水面には波紋以外を映さず、空は暗い闇に覆われている。そんな世界に、スミレは立っていた。

『………… 』

スミレの視界に、その少女の姿が映る。スミレより少しばかり幼い少女が居た。スミレと同じ髪色、目、火傷のない顔。幼い頃の自分自身だ。

「……あなたは。どうして? 」

『わかんない。でも、あなたはわたしでわたしはあなた。かみさまにしごとをたのまれた、あいかわらずのつかいっぱしり 』

神様、幼いスミレはそう言い、スミレは訝しげに目を細める。

『かみさまについては、まだこたえられないよ? わたしがきたのは、ただあなたをめざめさせるため。わたしでも、さみしさはまぎれるし』

幼いスミレは笑っていた。

「……私で、寂しさが紛れるの? 」

スミレは、絞り出すように疑問を呈した。

『あなたがわたしでも、いてくれるならさむくないもん。わたし、さみしくないよ? 』

「それは錯覚……。自分を慰めてどうするの? 」

『だって、だれもきてくれないじゃない。なら、わたしがわたしをすきでいなくちゃ 』

えへへっと笑った幼いスミレの放った言葉に、スミレは言葉を詰まらせる。

「……だったら、私はどうしろと? 私は貴女がいたって何も救われやしないのに。幻なんかで、私は騙されない 」

『じゃあ、起きればいいんだよ 』

「は? 」

『おきれば、きっとあなたはひとりじゃないよ 』

「嘘だ……!そんな筈は…………!! 」

『じゃあ、そのボールはかざりなの? 』

「…………ぁ 」

スミレの姿は、トレーナーとしての自分に変わっていた。足元には、7つのモンスターボール。そこから光が溢れた。

 

『嬢ちゃん、俺はアンタに惚れ込んで一緒に居るんだ。それはこれからも変わんねぇ。ま、ひとりだって思ったって別に構いはしないぜ? 俺はアンタに捨てられるか、アンタが笑ってその人生を終えるその時までアンタに忠誠を誓う。その言葉に二言はねぇからさ 』

バタフリーが、跪くように舞い降りた。

 

『おかあさん、ボクはおかあさんにめいわくかけてばっかりだったけど、がんばってかわるから。さいきょーのどらごんになって、きっとおかあさんをまもるから 』

ミニリュウが、今までとは違う瞳で告げた。

 

『お姉ちゃん。わたしがヒトを知れたのは、お姉ちゃんのおかげ。お姉ちゃんといっしょなら、きっとわたしは幸せを歌えるから。だから、いっしょに立ち向かわせてよ 』

ラプラスが笑った。

 

『オレ様は気分屋だからな。愛想を尽かせば勝手に出ていくような風来坊さ。でもな、スミレ。オレ様はお前のところが案外気に入ってんだ。お前がお前でいる限り、オレ様はお前を守るさ 』

ゲンガーは、得意げに親指を立てた。

 

『わたし、貴女のことが少し怖いです。だって、貴女はずっと心の中に闇を飼っているから。でも、貴女はそれをずっと抱えてきたのに、わたしだけ逃げるなんてできません。だから、せめて貴女が救いを見つけるその日まで、あなたの道を見せてくれませんか? 』

フーディンは、照れに顔を真っ赤に染め上げて言った。

 

『オレは貴女に借りがある。だから貴女の手持ちに加わった。だが、ただ借りがあるだけで群れの王が主を作りはしない。オレは確かに、貴女という人間に魅力を見たのだ 』

ニドキングが、厳かに告げる。

 

 

『私が貴女を見つけた時、貴女に私は見つけてもらった。あの瞬間は、確かに運命の出会いだったのだ。私と君は運命共同体、だからこそ貴女は貴女の望む貴女であれ。私は、貴女が望む限りその矛となり盾となる。君が進む道がどんな道であれ、私は2度と守り損ねるようなことはしない。貴女が望む道は、私が望む道であるからだ 』

フシギバナは、頼もしげに胸を張った。

 

 

『次はこれ……! 』

幼いスミレは、笑って指を振った。

 

『……ヒマはね、スミちゃんの力になりたかったんだ。余計なお世話どころか、迷惑だったけどさ。その気持ちは、嘘じゃないんだよ 』

ヒマワリの呟きが聞こえる。寂しげで、しかしその気持ちをぐっと堪えている。ヒマワリは間違えた、しかし彼女もまた『善意』という気持ちを残酷な現実によって抑圧させられた子供だった。

 

『アイツに勝ちたい……! 凄いヤツだから、アイツのライバルでいたい! アイツを助けられるくらい強くなれば、アイツは独りにならないだろ!! 』

そう言ってバトルに励むサトシの姿が映る。タケシとカスミはアドバイスや茶々を入れ、時に相手を務める。目指すのは、自分の向上。自分はスミレにはなれないけれど、スミレと同じだけ強くなれば同じ景色を見れると信じていた。そしてそれは、きっとポケモンマスターになる上で大事なものだと感じていた。

 

『スミレは強くて、でも脆い。あの孤独を癒そうとすればするほど、ドツボにハマる。……助けたいって気持ちで助けられるなら、ボクがとっくにやってるさ 』

シゲルは、吐き捨てるように言った。シゲルは、悲しいほどに現実を見ていた。それでもその瞳は、諦めの色をしていなかった。

 

『ワシに一体何ができる?……あの子の未来を、どうすれば守れる?』

オーキドの苦悩が見える。スミレを救わんとしたオーキドの焦りが、却ってスミレからの信頼を奪った。そして未来を脅かそうとする現実に、どう立ち向かえば良いのかを考えていた。そしてその先の答えを胸に、オーキドは独りリーグの門を潜った。

 

『分からない……でも勉強しなきゃ 』

『何とかしよう。まず、何を間違っていたのかを知らないと 』

必死で育児の本に向かい合うモモカとトウリの姿があった。娘はどうして不幸になったのか。それを知らない夫婦は、自身の頭を断頭台に乗せるような作業に、自ずから身を投じた。

 

『今の俺に出来ること、それは戦うことだけだ 』

ワタルは呟くと、目の前のロケット団員の集団に向き合う。周囲は、ロケット団と警察が入り乱れる戦場となっていた。

『さぁ……行くぞ!!!! 』

背中のマントが、激しくはためいた。

 

『スミレに手を出すと大変な報復を食らいます。四天王やジムリーダーの監視があるので、襲撃をかけても逮捕者を増やすだけで危険です。私たちが帰ってこれたのは、運が良かっただけです 』

ムサシ、コジロウ、ニャースはランスに偽の報告を上げる。それはスミレが手出しされないためだ。今回の一件で、彼らは外部からの介入に慎重になった。それはスミレだけでなく、メインのターゲットであるピカチュウを連れている、サトシに対してもだった。彼らは、彼らなりに彼女を守れる道を模索していた、

 

それに続いて溢れ出す、スミレが出会った人々の言葉。かつての友達、旅先の人、そして故郷の知り合い。誰も彼もが、スミレのことを頭の片隅で想っていた。

 

 

『あの人は私のヒーローだよ。だって、ヒーローって完璧じゃない。何度も倒れて、泥に塗れて、でも立ち上がって正しいことを成し遂げる。私にはそう見えた。だから、あの人は私にとってのヒーローなんだよ』

サヤは、そう言って笑った。ヒーローは完璧でないからヒーロー、というのはサヤにとっては幼い頃から学んできた知識だ。

 救えない者もあれば、報われない想いもある。そんな悲劇を見ながらも、" 痛みを知るただひとりであれ " と言わんばかりに立ち上がり、その手を伸ばす。そしてその手が届く時、その存在はヒーローとなる。サヤから見たスミレは、そんなヒーローだった。ポケモンタワーから帰ってきたその悲しげな姿を、そしてそれでも歩き出す姿を、サヤはヒーローに重ね合わせた。

 

 

『これはね、ほんとうのことをうつしてるの。ねぇ、わたし。あなたはひとりじゃなかったんだよ。ただ、タイミングがわるくて、あなたがそれをしっていてうけいれられなかっただけ。だから、きっとあやまりあってはなしあってすむことだよ 』

幼いスミレを、スミレはキッと睨みつけた。

「……ごめんで済むなら、警察はいらないよ 」

『じゃあなんで、" ごめんなさい " ってことばはあるの? 』

スミレは、その問いかけに答えられなかった。

「……分からない 」

『うーんとね、わたしにもわかんない。でも、きもちをつたえるのはだいじだとおもう 』

「………… 」

スミレは、何も返せない。

 

『ねぇ、まだひきかえせるよ?すくおうとしてくれるひとがいる。なら、はやくめざめてあげなきゃ。ひとりぼっちのままじゃ、さみしいよ? 』

「でも 」

未だにウジウジしているスミレに苛立ったのか、幼いスミレはむくれた表情をつくると手を振った。

 

「……これは 」

『これでかえれるよ。……バイバイ、わたし 』

スミレの姿が、透け始めた。それを、幼いスミレは笑って見送る。

 

「…………わたし!!!! 」

スミレが叫び、幼いスミレは反応が遅れる。スミレは幼いスミレに近づきーー優しく、抱きしめた。

『…………ぁ 』

幼いスミレの声が、スミレの耳元に響く。

「わたしは私。だから、こうすれば寂しくないでしょう? 」

『……そうだね。うん。もう、寒くないや 』

幼いスミレの顔が、綻んだ。そしてそのまま視界が明るくなりーー

 

 

 

「…………ここは 」

スミレの視界に、病室の天井が映った。




どうしてこの展開になったのか? っていうのは、この世界の根幹に関わり、アルセウスの存在が不可欠になってくるのでまだ答えられません。ただひとつヒントを出すなら、スミレがいる世界は『子供向けアニメ』の世界がズレた世界、ということです。

ちょっとしたネタ仕込んだんですが、気付く人いますかね……。

サヤのヒーロー観。これは、作者にとってのヒーロー像です。大きくなってからの解釈も加わりますが、のちに他の作品を書こうと表現は変わっても内容は変わらないヒーロー像。その正体は、作者の人生に於いて幼少期に大きな影響を与えたヒーロー、ウルトラマン。彼の背中を目に焼き付けて、作者という人間は育ったのだから、このヒーロー観はサヤに代弁してもらいました。きっと、スミレの背中を見て育つ次世代なのだから。

因みに、スミレがなぜこんなにも想われたのか、ていうのは理由が一応あります。まぁ本編後に書くには無粋でしかない部分があるので、書きませんが。それに、これで解決、といかないのが本作ですからね。スミレはただご都合主義で救われるようなキャラではないので。

11月19日 9:33 本編、前書き加筆修正
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