ポケットモンスター another story 作:黒雲涼夜
【現状のポケモンと技】
フシギバナ…… はなふぶき、メガドレイン、つるのムチ、タネばくだん
バタフリー…… かぜおこし、サイケこうせん、しびれごな、むしくい
ラプラス…… みずでっぽう、こごえるかぜ、みずのはどう、あやしいひかり
フーディン……ねんりき、サイコカッター、テレポート、シャドーボール
ゲンガー……シャドーボール、シャドーパンチ、みちづれ、たたりめ
ニドキング…… にどげり、メガホーン、だいちのちから、どくばり
ミニリュウ……ドラゴンテール、アクアテール、りゅうのいかり、たつまき
トサキント……アクアリング、ちょうおんぱ、みずのはどう、つのでつく
スミレが繰り出したのは、ミニリュウ。それを見たエリカは、目を丸くした。はっきり言って、スミレとミニリュウの仲は微妙だ。スミレとの信頼度は新参のトサキント以下とも言えるレベルだ。スミレが死にかけた事件以降、ミニリュウはほんの少しの罪悪感を持っているが意地を張っており、スミレからミニリュウに向けるのはただ単純な不信感。
スミレは人間の大人によって抑圧されて育った子供であったが、ミニリュウはそんなスミレによって抑圧された子供であった。ミニリュウは我儘だったが、本来ならばそれもある程度は許される年であった。しかし、トレーナーとポケモンの関係上はある程度躾をしなければならないのは事実で、それをミニリュウは受け入れられなかったし、スミレも他のポケモンを基準にしていたため求めたハードルは高すぎた。スミレにはミニリュウの事情を鑑みるだけの精神的余裕も経験もなく、ミニリュウには自らが下手に出ることへの本能的忌避感があったのだ。それで仲が擦れない訳がなく、スミレとミニリュウの関係はかなり気まずいものとなっていた。
なのに、出した。バタフリーという、スミレにとってはある意味ではフシギバナ以上の信頼を置く仲間が敗れた後に。
(一体何を考えているのでしょう……)
エリカは、そう考えてスミレの戦いを見守った。
◾️◾️◾️◾️
(……はっきり言って、今回の6体では最弱。だけど、バタフリーが倒れた今は重要な役割を果たして貰うしかない)
「ミニリュウ、【りゅうのいかり】」
「リュウゥゥゥ!! 」
スミレの指示で放たれた【りゅうのいかり】を、スピアーは身軽に躱わす。
「スピアー! 【ミサイルばり】!! 」
「後退して避けて 」
「リュウゥゥゥ!? 」
スピアーの【ミサイルばり】が放たれ、それを予測していたスミレは回避を指示する。しかし、ミニリュウは後退をせずにその場で躱わすことを選択、避けきれずに何発かを被弾する。スミレの舌打ちがミニリュウの耳に届き、ミニリュウはビクリと肩を震わせる。
「下らんな……【ミサイルばり】 」
「逃げないならこうするだけ……。ミニリュウ、【りゅうのいかり】」
再び放たれた【ミサイルばり】に向かい、【りゅうのいかり】により幾つもの光の針が飲み込まれてゆく。
「次、【ドラゴンテール】 」
「リュウッ! 」
ミニリュウはその指示に待ってましたと言わんばかりに威勢よく応え、地面を飛び上がる。そして空中で体を捻り一閃。龍のエネルギーを纏ったその尾が唸り、ミニリュウに迫る針全てを叩き落とす。
「よろしい、では【どくばり】だ 」
「スピッ!!!! 」
一方のスピアー、バタフリーとの戦闘でかなり消耗しているが、そんなことは問題では無かった。飛行能力がない故に空中を自由落下するミニリュウに高速で迫ると、【どくばり】の一撃を命中させる。
「リュウゥゥゥ!! 」
ミニリュウは針と毒による苦痛に、思わず顔を歪めて体をうねらせる。
「ミニリュウ、意地で動いて。【ドラゴンテール】」
それも想定していたかのような平坦な声の指示に、その想定内で大きなダメージと苦痛を食らったミニリュウは、内心怒りを覚えつつも自らの尾を振るう。その一撃がスピアーに命中しーーーースピアーが、光になってボールへ戻った。そして出てくるのは、サナダがスピアーの次に出すことを想定し用意していたポケモン、カイロス。このタイミングで、強制的に2体目が引き摺り出された。
「……なるほどな。ミニリュウを出したのは、その為か 」
サナダが、笑みを浮かべた。
「正直、あまり期待してませんでしたが。……よく当てたね、ミニリュウ 」
スミレは、気持ち柔らかい声音で言った。ミニリュウは悟った。2体目に自身を出したのは、この展開を期待してのものだと。自身は、やるべき仕事を為せたのだと。ミニリュウはそれを聞いただけで、自身の内心のモヤモヤが薄れるような気がする。
(なるほど……ポケモンを信じることが難しいなら、技の効果を信じたということですか。なるほど、面白い着眼点です)
エリカは、内心そう思って笑った。ポケモンと信じ合えないのは問題だが、スミレはスミレで色々と考えているらしい。その工夫を否定しようとは、エリカは思わなかった。
「カイロス、行けるな? 」
「ロォォォッスゥ!! 」
サナダの問いに、カイロスは鼻息荒く答える。傷ついた仲間の為にも、カイロスはスピアー以上の働きをしようと奮起していた。
「ミニリュウ、後ろには仲間がいる。だから、キツかったらすぐに変えるつもり。どうする? 」
「リュウ!! 」
ミニリュウは、まだ戦う意志を示した。ずっと見てくれなかった母親が、ようやく自分を見てくれたのだ。ミニリュウは、こんな所で引き下がれる訳が無かった。
「分かった。……私は、少なくともこの試合では貴方を信じようと思う。あの【ドラゴンテール】を決めたとき、そう決めた。蟠りもあるけど、今は手を組まないと無様に負けるだけ。私の指示と貴方の技があれば、最悪な負け方は回避できる。……貴方に、私を信じてみようという気はある? 」
「リュ!!!! 」
ミニリュウは、ひとつ頷いた。スミレからの評価は、底辺から少し上がっただけに過ぎない。だが、少なくとも明確に、ミニリュウにも分かるほどに上がったのだ。ここで、自分がどれくらいできるか、どれくらい成長したかを見て欲しかった。
スミレにとって、バタフリーが倒れた後の作戦は、【ドラゴンテール】を活用した強制サイクル戦だ。それは、スミレ側も交代を利用するという意味である。なんせ、肝心のミニリュウは現状はしかし、今回はミニリュウの戦意を無視しようとは、なんとなく思わなかった。戦術を重んじるスミレにとって、情に流されて戦略を自ら乱すのは下策中の下策、もはや論外といえるレベルだ。にも関わらず、継続を決めた。それは、言ってしまえばその場のノリというやつなのに、どうしてかそれをやめようという思考にならなかった。
その様子を見たサナダは、心の鎖が、ほんの少しだけ緩むのを察知した。スミレの雰囲気が変わり、焦りや恐怖心などの負の感情が、データにすれば殆ど変わっていないレベルの差ではあるが薄れている。だが、ほんの誤差程度の差が、トレーナー業界では大きな差になることをサナダは知っていた。そして相手は、手加減をしまくっていたとはいえど、最悪の精神状態で自身のスピアーを追い詰めた相手だ。
「さて……お喋りは充分か? 」
「ええ……。あとは、戦うだけです 」
サナダとスミレが、カイロスとミニリュウが、視線を交わす。
「カイロス、【シザークロス】! 」
その合図と共に、カイロスは背中の羽を唸らせてミニリュウ目掛けて一直線に進む。
「ミニリュウ、【りゅうのいかり】をしながら横にズレて 」
その指示で放たれた【りゅうのいかり】がカイロスに当たる。しかし【シザークロス】のエネルギーでそのダメージを軽減すると、再び【シザークロス】のためのエネルギーを集めて突貫する。しかし、目の前にミニリュウは居ない。
「そこ。【たつまき】」
スミレが選んだのは、側面からの奇襲だ。ミニリュウによって作られた小型の竜巻がカイロスを横から跳ね飛ばす。
「体勢を立て直せ! 」
「遅い……!【ドラゴンテール】」
再び放たれた龍の尾は、今度こそ交代を為せなかったものの、ダメージを与える。
「交代失敗か? 」
「どちらでも良いです。……どちらにせよ、ミニリュウで削りますから」
「ならば、これはどうだ?【むしのさざめき】 」
サナダの指示で、カイロスは【むしのさざめき】を放つ。【むしのさざめき】は翅を激しく振動させることによる音波攻撃だ。激しい音の波に、ミニリュウのみならずスミレも顔を顰める。
「…………っっっ! 【たつまき】!! 」
耳を塞ぎながら叫んだ指示で、ミニリュウは動いた。【たつまき】を飛ばし、カイロスは【むしのさざめき】を思わず中断する。よろめいたカイロスを見て、スミレは追撃のチャンスを悟る。
「【ドラゴンテール】 」
「今だ、カイロス 」
その指示で放たれた龍の尾の一撃は、カイロスの鋏で受け止められた。
「なっ!? 」
「リュウ!? 」
「連続で叩きつけろ! 」
サナダの指示で、カイロスは頭を地面に振り下ろす。それによって、鋏に硬く挟まれて動けないミニリュウは、地面に叩きつけられる。1回、2回、3回、と打ち付けられた所で、顔を青ざめさせたスミレの指示が飛ぶ。
「ミニリュウ、【アクアテール】 ! 」
今度は、水のエネルギーを纏った尻尾が頭に叩きつけられ、カイロスがよろめくと同時にミニリュウは脱出する。
「続けて【りゅうのいかり】、噴射で飛んで! 」
その指示に従い、ミニリュウは【りゅうのいかり】を放つ。空中を自由落下中で動けなくなっていたミニリュウの体が反動で跳ね飛ばされて、カイロスにダメージを与えつつも無事に地面に着地する。
(サナダさんは今、確実に決められる場面でした……。しかし、敢えて見逃した。少しは興味を持って頂けたようですわね)
エリカは、バトルを見ながら胸を撫で下ろす。サナダは強いが、かなり気まぐれな男だ。余程気に入らないチャレンジャーならば、手持ちは手加減しても戦術で一切手を抜かずに潰しに行くこともあった以上、エリカは自身が組んだバトルだったにも拘わらず、その行く末をそわそわとしつつ見守っていた。だが、サナダは先程のカイロスがミニリュウを捕まえた時点で、指示さえ間違えなければ勝てていたのだ。あそこは、地面に叩きつける訳ではなく技でトドメを刺しに行くべきだったし、サナダが気に入らない相手にはそうやって勝ってきたことも知っている。だから、その大きな関門をスミレは突破したと分かると、安堵の息を吐いた。
「ほんっと……。心臓に悪いですわ 」
エリカは苦々しい表情で呟くと、心の中でスミレへのエールを送った。
(スミレさん……どうか勝ってくださいませ。貴女は、そう簡単に終わるような凡人ではないのだと、わたくしは知っておりますわ)
握った手のひらには、汗が滲んでいた。
「ふぅ…… 」
スミレは、小さく深呼吸をした。額に浮かんだ汗を拭い、未だ不利なフィールドを見つめる。まだ自身は2体目、相手は1体も倒せていないというのに、かなりの疲労が全身にかかっていた。ポケモンバトルは、かなり集中力を使う。それこそ、ポケモンリーグでは試合中に倒れたり、それまで強かったトレーナーが突然弱体化したり、などが良くある。スミレが体感する疲れは、それの序の口に過ぎない。実際、スミレの瞳が見つめるのは、ミニリュウとカイロス、サナダ、バトルフィールドのみだ。肉体の疲れなど知ったことかと、未だバトルから目を離さない。スミレは全力で思考を回し、作戦を立てる。たとえ、悩みの鎖で鈍っていたとしても、できる範囲で全力の思考を回す。サナダが手加減していることは、勝ち筋をあえて見逃したことは、スミレにも分かっているのだから、それに甘えて、活路を探る。
「…………勝たなきゃ 」
小さく呟いて、ペロリと唇を舐めた。
バトルは書きやすくてありがたい……。若干、創作意欲が危ないことになってるから……。
本作のより一層の改善は必要だよなぁと思いつつ、でも物語の書き方下手だなぁとも思います
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